新進気鋭の2人が、ついに靖国の土俵に立った。毎年5月に行われ、新入生が力を示す場となっている東日本学生新人選手権。早大からは、二見颯騎(スポ1=東京・足立新田)と、勝山烈(文構1=兵庫・葺合)が出場した。このうち、二見はベスト8まで勝ち上がり、敢闘賞を受賞。早大選手が新人選手権でベスト8に入るのは、谷本将也氏(平30スポ卒=鳥取城北)以来4年ぶりの快挙だ。また、先月の早稲田杯に出場し準優勝、その後入部した勝山も、初戦敗退に終わったものの、室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)は「身体能力は高い」と期待を寄せた。ことしも、早大に頼もしい力が加わった。
風薫る靖国の土俵。大学4年間への期待に胸を躍らせた新人たちが集い、熱戦を繰り広げた。そんな中、早大からまず土俵に上がったのは、高校時代から大会での実績を持つ二見だ。初戦は、専大の選手に対し、立ち合いから圧倒。もろ差しで寄り切り、難なく初戦を突破する。2戦目の相手は日体大選手。二見は左をおっつけながら、前に出続ける。最後は、相手の引きに乗じて押し出し。攻めの相撲が光り、決勝トーナメント進出を決めた。決勝トーナメント1回戦の相手は、拓大の選手。体重は140キロ、二見より30キロ重い。ここまで力で圧倒してきた二見だったが、ここは一転、大きな相手に対し『技』の相撲を見せた。二見は立ち合い、左をこじ入れ、頭をつける。右からしぼって前ミツをつかむと、ここで強烈な出し投げ。最後はもろ差しの体勢に持ち込み、寄り切った。15秒ほどの取り組みだったが、内容の濃い相撲を取った二見。この一番で、早大勢としては4年ぶりに、新人選手権でベスト8に入った。1年生ながら、チームの中心で活躍できる力を示した、鮮烈なデビュー戦だった。
ベスト8で敢闘賞を受賞した二見
一方、体重68キロの勝山は悔しい初戦敗退。勝山は、140キロの相手に上手を取られ、寄り倒されてしまった。しかし、室伏監督は試合後「ああやって頭でぶつかるというのはなかなかできないこと」と、立ち合いの当たりを評価した。勝山の相撲人生は、まだ始まったばかり。高校時代は柔道に打ち込んだとあり、早稲田杯では卓越した身体能力の高さを見せていた。相撲には、小さな相手が大きな相手を倒すという、この上ない魅力がある。ワセダの相撲部にも、強豪校の巨漢に土をつけた『小兵の系譜』がある。「技術を向上させて試合で勝てるようになりたい」と語った勝山。相撲の魅力を体現するような選手になる、その素質のある新人だ。
果敢に攻めるも寄り倒された勝山
この日は、室伏監督の誕生日。監督は、二見の好成績に「(誕生日を)祝ってくれたのかな」と言って喜んだ。昨年までチームを支えた5人の4年生を送り出した後、早大は春合宿を行い、チーム内の意思疎通を強化。日体大など、強豪校への出稽古も行い、経験を積んできた。6月に待ち受ける東日本学生選手権の団体戦は、Aクラスからのスタート。しかし、チームの目標は、決してAクラス死守ではない。さらなる高みを見据え、攻めの気持ちを忘れないことが、チームの成長につながるのだ。2人の新戦力を加え、早大相撲部は新たな航海に出る。
(記事 元田蒼、写真 吉岡拓哉)
結果
二見颯騎弐段(スポ1=東京・足立新田)
二回戦 ○対阿部(専大)寄り切り
三回戦 ○対林弐段(日体大)押し出し
※優秀16選手決勝トーナメントへ
一回戦 ◯対水間(拓大)寄り切り
二回戦 ●対干場参段(東洋大)寄り切り
勝山烈(文構1=兵庫・葺合)
二回戦 ●対松田初段(駒大)寄り倒し
コメント
室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)
――新体制が始動しました。新チームの雰囲気は、どうご覧になっていますか
去年、強烈な4年生が5人いたので、それが抜けたことによって、チームの中に「あー、やっぱり4年生がいたから・・・」というところがどこかにありました。それを払拭させるために、今まであまりやったことはないのですが、春合宿を行いました。練習もそうですが、チームでもっといろいろな話をして、チーム力を高めようという合宿でした。それが非常に良い方向に転がってきて、みんなで意思の疎通をしたり、稽古場でもすごく声を出したり。そういった点では、新チームはすごく良くなっていると思います。
――二見選手はベスト8という好結果でした
嬉しいですね。もちろん対戦相手のくじ運もあります。ただ、そこできちっと勝てるというのはとても大事です。その点では実力を出せたのではないかと思っています。
――早大選手が新人戦の決勝トーナメントに残るのは、4年ぶりになります
そうですね。4年ぶりなので、残れればいいなとは考えていましたが、まさかこうして残れるとは思わなかったです。今日は、たまたま僕の誕生日なので、お祝いしてくれたなと(笑)。
――相撲の内容はいかがでしょう
勝負強さなど、非常にいいものを持っています。そのあたりが、今回出たのではないかと思います。
――勝山選手の相撲はどうご覧になりましたか
勝山については、まだ相撲を始めたばかりなのですが、ああやって頭でぶつかるというのはなかなかできないことなので、それができたのは非常に良かったと思います。
――早稲田杯から入部したという経緯については
早稲田杯の前に「入部したい」ということもあったのですが、早稲田杯にも出たいということだったので、それからにしようかというところで、入部してくれました。非常に真面目で、練習もよく来ているので、楽しみだなと思っています。これからもっと活躍できるんじゃないかな、と。身体能力は高いので。
――2人の今後にメッセージをお願いします
ワセダの相撲部に来て良かったなと思ってもらえるように、充実した学生生活と、相撲の稽古に励んでもらいたいなと思います。
――最後に、東日本学生選手権が近づいています
とにかく今年はAクラスからのスタートなので、Aクラス死守ではなく、それ以上を目指したいなと。あえて高い目標を持ってやっていかないと、目標がAクラス死守になるとどうしても弱気になってしまうので。春先から、日体大などの強豪校に出稽古に行っています。自信をつけたり、自信をなくしたり。いろいろなことをやってきたので、成果を出したいですね。
二見颯騎(スポ1=東京・足立新田)
――ベスト8という結果を振り返っていかがですか
きょうは体が動いていて調子は良かったので、上位には行けるかなと思っていましたね。
――きょうに向けてどんな稽古をしてきましたか
下半身のトレーニングを多めにやって、足が動くようにすり足をよくやりましたね。
――勝った相撲の良かった点を教えてください
やっぱり足が出ていて、前に落ちる相撲がなかったところだと思います。
――今後に向けての改善点を教えてください
大きな相手だと立ち合いで負けてしまうので、体重を増やして自分も当たりを強くしたいです。
――次の東日本学生選手権に向けての意気込みを聞かせてください
まだレギュラーに入れるか分からないんですけど、もし入れたら1年生らしく思い切った相撲でチームの勝ちにつなげていきたいです。
勝山烈(文構1=兵庫・葺合)
――きょうへ向けてどのような準備をされましたか
基本の四股、すり足、ぶつかる練習もして、練習の最後の方に実践的に相撲を取るのですが、そこで攻め方の練習をしました。ですが試合では中々発揮できなかったです。
――きょうの取り組みを振り返っていかがですか
まず、立合いで負けないようにと心がけました。これからは足を取れるように練習をしていきたいです。
――収穫や反省点はありましたか
やっぱり立合いで負けずに押して、これから頑張りたいと思います。
――大学で相撲を始めていかがですか
部活も割と楽しくできているので、不安はないです。
――これからどのような力士を目指していきたいですか
もうちょっと体重を増やして、技術を向上させて試合で勝てるような力士になりたいと思います。
――今後への意気込みをお願いします
まずは自分で技を掛けられるように、少しでもいい内容の相撲が取れたらいいなと思います。