9年ぶりの大舞台だった。アマチュア相撲最高峰である全日本選手権に、橋本侑京(スポ2=東京・足立新田)が出場。7月の東日本学生個人体重別選手権135キロ未満級優勝、9月の全国学生個人体重別選手権でも同級で優勝という実績を引っ提げ、早大勢として9年ぶりに全日本の土俵に立った。結果は1勝2敗で予選敗退となったが、2回戦では前に出る相撲で勝利を見せた橋本。来年のさらなる飛躍を誓い、激動の一年を終えた。
全日本選手権は、アマチュア選手権とも呼ばれ、優勝者は「アマチュア横綱」の称号を得る。大学生33人、高校生2人、社会人33人の合計68人は、全員が全国レベル。まさに「弱い人は誰もいない」(橋本)大会だ。最初に予選を3番取り、2勝以上の選手が決勝トーナメントに進出できる。橋本の初戦の相手は、三輪隼斗(新潟県)。110キロと小柄だが、昨年は日体大4年として全国学生選手権ベスト8に入った選手だ。立ち合い、橋本はもろ手を出していった。しかし、三輪はすばやく左へまわる。横から攻められ半身になった橋本は粘れず、寄り切られてしまった。社会人の実力者、最終的には準優勝した強敵を前に、技術とスピードを見せつけられる結果になった。気を取り直し、迎えた2戦目の相手は、谷中尚(九州情報大)。155キロの巨漢だが、橋本はひるまなかった。右のはず押しが効いて一気に土俵際まで運び、白房下へ押し出し。これで1勝1敗となり、決勝トーナメント進出へ望みをつないだ。
予選2回戦、谷中(九州情報大)を圧倒した一番
決勝トーナメント進出をかけた3戦目の相手は、深井拓斗(東洋大)。橋本と同じ2年生で、同世代のトップを走る一人だ。立ち合い、橋本は低く当たり、突っ張ったが、土俵中央で引き落とされてしまった。1勝2敗で、決勝トーナメントには進出できなかったが、それでも前に出る攻めは見せた橋本。室伏渉監督(人卒=東京・明大中野)も、橋本の相撲内容を評価した。早大相撲部にとって、この日は今年度最後の大会。創部100周年だった相撲部は、激動の1年を過ごした。選抜宇佐大会での団体戦ベスト8。東日本選手権でも9年ぶりにベスト8に入り、強豪ぞろいの選抜十和田大会にも出場できた。また、相撲部を沸き立たせた橋本の東日本体重別、全国体重別での優勝。一転、全国学生選手権は団体予選13位に終わり、悔しさも味わった。橋本は1年を振り返り、「嬉しさも悔しさもいろいろ経験した年でした」と語った。
塩をまき土俵に上がるのが橋本のルーティーン
橋本は、若林魁(スポ3=岐阜農林)とともに、12月3日放送(9日再放送)の大河ドラマ「おんな城主直虎」に出演。織田信長に謁見する相撲取りの役で、劇中では「三河の美丈夫」として紹介され、相撲を取った。4年生の5人が抜ける来季、橋本の高校の後輩の入学も決まっているが、上級生として若林や橋本の活躍は欠かせないものになる。次の試合は来年6月の東日本選手権だが、「地力をつける冬」はすでに始まっているのだ。「ワセダの美丈夫」が、経験を胸に、新たな時代を切り開く。
(記事 元田蒼、写真 吉岡拓哉、成瀬允)
結果
橋本侑京参段(スポ2=東京・足立新田)
▽予選
一回戦 ●対三輪四段(新潟県)寄り切り
二回戦 ○対谷中参段(九州情報大)押し出し
三回戦 ●対深井参段(東洋大)引き落とし
※予選敗退
コメント
室伏渉監督(人卒=東京・明大中野)
――橋本選手が早大勢としては9年ぶりの全日本選手権出場でしたね
はい、それは素直に嬉しいです。アマチュア最高峰の大会なので名誉あることだと思います。
――きょうの橋本選手の3戦を振り返っていかがですか
1戦目は少し固くなったかなというのがあったんですけど、2戦目はいい相撲で勝って、3戦目ははたかれて負けたんですが決して悪い相撲ではなくて、本人がインカレで負けて悔しい思いをしてとにかく前に出ることを言っていたので、そういう相撲が取れたのは良かったかなと思います。
―― 今大会がことし最後でしたが、1年の総括をお願いします
ことしは創部100周年で、目標としていた全試合1部で取れたというのは本当に選手を褒めたいなと思います。ただ最後のインカレは優勝を目指してやってきたので、それができなかったというのは監督として勝たせてあげたかったなというのは責任を感じます。ただ今の4年生の頑張りでここまで来られたので、その点では本当に感謝の気持ちでいっぱいですね。
――来年の新1年生に橋本選手の高校の後輩が入部することが決まりました
お父さんも相撲の経験がある人で、僕の一つ上だったので自分ともよく稽古していてよく知っているんですよ。彼は非常に思い切りのいい相撲を取るのが良さですね。まずは基礎体力をさらにパワーアップさせないといきなりAクラスでは戦えないので、最初はそこの練習を大事にしたいなと思います。
――最後に、来年に向けての抱負をお願いします
来年は宇佐と宇和島の選抜大会には出られないんですけど、その分6月の東日本大会はAクラスからのスタートなので、Aクラス死守ではなくて最低でもベスト8に残って上位を目指していきたいなと思います。
橋本侑京(スポ2=東京・足立新田)
――きょうの大会にはどのような意気込みで臨みましたか
この大会は、自分が大学に入ってから、出場できる機会があったら一度は出てみたいと思っていました。ランクとしては一番高い大会なので、目標ではありました。それに出場できたということは、自分の中では成長できたかなと思います。でも、試合に出てみたら、やっぱり勝ちたくなってくるもので、負けると悔しさもすごくありますね。今年出たので、来年以降も出られないと、弱くなったと周りに言われると思うので、来年以降も出るチャンスを得て、リベンジしたいです。
――早大勢として9年ぶりの出場でしたが
プレッシャーはそんなになくて、自分がやってきたことを出すだけかなと思いました。
――3番取りましたが、振り返っていかがでしょう
この大会は、ある程度実績を残した人じゃないと出られないので、弱い人は誰もいません。最初の試合の相手(三輪隼斗)も、去年の日体大の4年生で、強い相手でした。最初頑張って、流れを作ろうかなと思ったんですが、くじかれました。2試合目は自分の相撲が取れて、勝ててよかったです。3試合目の相手(深井拓斗)は、新人戦でもやった相手で、同年代のトップを走っている選手です。そこで勝ちたいという気持ちはすごくあって、負けてしまったのは本当に悔しいですね。
――今年1年を振り返ると、体重別での優勝など、躍進の1年だったかと思います
今年1年は本当にいろいろな経験ができたと思っています。相撲をやってきて初めて全国優勝できたので、それは素直に嬉しかったです。でもその反面、インカレ(全国学生選手権)では良い結果が残せなくて、嬉しさも悔しさもいろいろ経験した年でした。来年以降に向けて、実りのある年になったと思います。
――高校の後輩のワセダへの入学が決まったそうですね
そうですね。自分も堀越先輩(豊輝、スポ4=東京・足立新田)が2つ上で入って、それを見てワセダに入ろうと思いました。後輩も、自分を見て来てくれたので。同じ道場でやっていて、小学校から知っていて、付き合いも長いです。一つの目標としてくれているところがあるので、嬉しい反面、自分も頑張らなきゃいけないなと思っています。
――若林選手とお二人で、大河ドラマに相撲取りの役で出演されたとうかがいました。それはどのようにして決まったのですか
最初は監督のもとに(オファーが)来て、写真選びをして、自分と若林さんが選ばれました。きょうの8時からです。ぜひ見てください。チョイ役ですが(笑)。
――最後に、来年に向けて、東日本選手権が初戦になるかと思いますが、抱負をお願いします
インカレで思うような結果が出なくて、ここ2年間出ていた(宇和島・宇佐の)選抜大会の出場を逃してしまって、いきなり東日本という大きな大会になりますが、逆に言えば、選抜大会がない分、地力をつける冬になるかなと思います。4年生が抜けてしまった穴を埋められるチーム作りをして、みんなで地力をつけて東日本に向かいたいと思っています。