インカレ直前特集「Wの相撲道」。初回「先鋒戦」は、谷本将也(スポ4=鳥取城北)、堀越豊輝(スポ4=東京・足立新田)、そして若林魁(スポ3=岐阜農林)の3人だ。普段の生活や、相撲部への思い、そして全国学生選手権(インカレ)への意気込みをうかがった。
※この取材は10月7日に行われたものです。
「みんなで一丸となって」(谷本)
照れ笑いの谷本
――秋学期が始まりましたね。大学生活はいかがですか
堀越 いま教育実習中で、母校に行っているんですよ。
若林 もう3年後期なので、そこまで単位を取らなくていいので、楽といえば楽ですね。
堀越 谷本はニートです(笑)。
若林 ユーチューブ生活ですね(笑)。
谷本 俺ユーチューブ見てへんから!授業は2個しかないので。
若林 基本的に部屋のぞいたら寝てるかユーチューブ(笑)。
谷本 隠れて下で重りを挙げて、疲れ果てて寝とる(笑)。
堀越 大体「昼飯食いに行こう」って言ったら「寝てたわ~」って起きてくるんですよ(笑)。
――相撲部の皆さんは普段テレビで大相撲は見ますか
谷本 僕は見ます!
――好きな力士はいますか
谷本 高校の先輩が(大相撲に)行っているので、逸ノ城とか。応援してます。小さい頃から見るのは好きなので、けっこう見ますね。個人的には安美錦が好きです。堀越はあまり見ないよな。
堀越 渋いね。魁(若林)も相撲けっこう見るよね?
若林 まあまあ見ます。貴景勝と阿武咲が同級生で、けっこう試合とかしてたので。
堀越 中学、高校のときその3人で争ってたんですよ。
谷本 若林、佐藤(貴景勝)、打越(阿武咲)、西野(現・東洋大3年)。
若林 恥ずかしいやん(笑)。
堀越 4強、中高4強(笑)。
――相撲を始める前に何か他のスポーツをやっていましたか
谷本 お前(若林)、クリケットやってたやん(笑)。
堀越 あ、それ聞いたことある(笑)。
若林 それは無理があるやろ、そもそもクリケットってなんすか(笑)。水泳とバスケやってました。バスケは小学校の時、ミニバスやってたんですよ。
堀越 僕は水泳と形の空手やってました。
若林 ちょっとやってみようや(笑)。
堀越 もう覚えてないよ(笑)。形だけなのがつまらなくて、実際に勝負したいと思って相撲を始めました。
谷本 僕はサッカーを5年間やってました。ちょっとうまかったですね(笑)。地区の代表とかには選ばれてました。
若林 鳥取なんでね(笑)。
谷本 お前言うなや(笑)。鳥取県民怒ったら怖いで~(笑)。
堀越 確かに、神奈川選抜とかなら分かるけど(笑)。
谷本 鳥取県民バカにしたらあかんで(笑)。あと、囲碁!こいつ(若林)囲碁で全国大会出てるんですよ(笑)。
若林 恥ずかしくなってきた(笑)。
――宇佐大会、東日本ではベスト8に入るなど、着実に成長していると思います。これまでを振り返っていかがですか
堀越 自分は最初の宇和島大会で膝をけがしてしまって、そこから手術をして練習も試合も出れていませんでした。見てしかいないのですが、みんな去年より勝負強さが付いてきて、相撲の取り方も変わってきて、今回のインカレは本当にやれるんじゃないかと強く思います。
若林 個人の力が絶対に上がっているというのはあるのですが、それ以上にチームの団結力というか、試合に向かう姿勢が、試合を追うごとにだんだん良くなってきているなと思います。団体戦で戦う上でそれが一番大事だと思いますし、ワセダは個人的な力よりもそれが大事だと思うので、そういうところがだんだん良くなってきているのは、次のインカレに向けて良いことかなと思います。
谷本 ベスト8という結果が出てきているというのは、普段の稽古で実力がみんな上がってきて、その中でみんなぶつかり合って削り合ってきたのがあるかなと。大きい要因としては1年生の長谷川(聖記、スポ1=愛知・愛工大名電)や2年生の橋本(侑京、スポ2=足立新田)の実力が伸びてきて、僕ら上級生もそれに負けないように頑張って、下級生も力を付けてきています。個人戦で橋本が優勝したり、若林も全国体重別で3位になったり、僕たちの実力が稽古を積み重ねることで少しずつ上がってきているというのが、結果に出てきていると思います。インカレに向けてそこを自信にして、みんなで一丸となってやっていきたいです。
――お二人から見て若林選手はどういう後輩ですか
谷本 部員としては、(3年生の選手が)こいつ1人というのもあって、良い意味で壁がないですね。僕らを先輩と思っているのか・・・(笑)。一緒にいる時間も長いので、僕らとは仲が良いですね。打ち解けやすいというのが良さだと思います。
堀越 谷本が言ったように、良い意味で先輩と後輩の壁がないですね。二人でごはんを食べに行ったりもしますし。4年生それぞれと仲が良くて、プライベートで買い物とかにも行っています。かわいい後輩です。
谷本 かわい・・・くはないな(笑)。生意気な後輩です(笑)。来年があるので、しっかりして引っ張っていってほしいというのはありますね。
――では、若林選手から見て、谷本選手、堀越選手はどんな先輩ですか
若林 堀越先輩は結構遊びに行ってますね(笑)。逆に谷本先輩はいつも部屋にいます(笑)。
谷本 友達おらんみたいになるやろ!(笑)。
若林 二人とも飯誘ってくれます。4年生全員なのですが、尊敬できる先輩ですね。いまの4年生じゃなかったら、僕はここまで楽しくできていなかったと思います。さっき言ってもらったのですが、打ち解けられたというか、良い意味で楽しくやらせてもらっています。
谷本 個人的に何かないの(笑)。
若林 堀越先輩は東伏見にいないですよね、どっか行っちゃう(笑)。
谷本 プライベートが充実してるな。
堀越 元々東京出身で遊ぶ人が多いので、出かけたりしてます。
若林 谷本先輩は基本的に部屋にずっといる(笑)。でもカラオケとかすごく好きですね。
谷本 真面目だから無骨に相撲に集中して、部屋に閉じこもってるって設定にしとこ(笑)。
若林 谷本先輩は高校がめちゃめちゃ強い高校だったので、大相撲の先輩と一緒にごはんに行ったりして、休日の過ごし方も相撲に関わることが多いですね。
「負ける気はない」(若林)
4年生に愛される、唯一の3年生若林
――成長している一方で、まだ上位校との差というのはあると思いますが、その差をどのようにとらえていますか
若林 まだ力の差はあるかなというのは感じます。だんだん差が縮まってきているというのは確かだと思うのですが、勝負強さの面だったり、僕らの勝負にかける思いというのがまだ足りないのかなと思います。でも、ワセダのチーム力があれば、インカレで勝てる可能性は十分にありますし、インカレ1部で優勝を目標にやっているので、インカレでは負ける気はないです。
堀越 ここまで戦ってきて、最初は本当に全然相手にならなかったのですが、最近は相撲が取れているというか勝負になっていると思います。ことしだったら橋本が体重別の決勝で東洋の選手に勝って優勝していて、その橋本と一緒に練習して勝ったり負けたりしているので、(上位校に)勝てないということはないと思います。なので、気持ちや、勝負どころでどれだけ自分の相撲が取れるかで勝てるかどうか決まってくるのかなと思います。
谷本 やはり上位の大学は自信を持って自分たちの相撲を取り切る、自分たちの相撲を出せる割合が高いところで安定していると思います。僕らは良いときの相撲はすごく良いのですが、悪いときもあって、幅が大きいなと。そういうところが僕らの課題でした。でも、徐々に徐々に力はついてきていると思っていて、それが一部に昇格したりだとか、リーグ戦でもきょねんは入れ替え戦になったのですが、しっかり一部に残れたりというところに出ていると思います。少しずつ上がってきているので、自信を持ってやるというのが1番大事だと思います。あとは、相撲にも流れというのがあって、この前のリーグ戦でも日大は圧倒的に力があったのですが、最後日体大が優勝しました。そういうふうに上位の大学も負けるときというのは絶対にあるので、そこで僕らが力を出し切ってプレッシャーをかけていけば、相手も人間なので、勝たなければいけないっていう風になるかなと。僕らは逆にチャレンジャーなので、自分たちの力を一気に出し切ることができれば、それはできないことはないので、もう1回インカレまでに自分たちの出せる力を上げていって、力を出せるようなチームの雰囲気を作っていきたいと思います。インカレでの優勝はできない目標ではないと思います。
――堀越選手は春先にケガをしてしまったということですが、やはりもどかしさはありましたか
堀越 いままで相撲をやってきて手術をしたこともなかったので、初めての大きなケガでした。見ていて、出たいなという気持ちもあり、役に立てなくてふがいない気持ちもありました。その中でチームのサポートをしてどうにか役に立ちたいと思ってやってきました。まだインカレを諦めてはいないので、出場できるように頑張りたいと思います。
――谷本選手は、春は調子があまり良くなかった一方で、最近とても良くなっているように感じます。何か気持ちの面で変化などあったのですか
谷本 自分としては最後の1年なので、気合を入れて結果を残したいという気持ちがありました。自分なりに準備をして臨んだつもりだったのですが、試合の中で「勝たなければいけない」と固くなってしまいました。この前のリーグ戦も、最後だからあまり考えても仕方ないかなと開き直って。試合の前は考えて準備をしていくのですが、試合のときは出し切るというかできることをやろうって考えていったのが、結果に出たのかなと思います。
――若林選手は体重別で3位になりましたが、周りの反応はいかがでしたか
若林 「おめでとう」とは言ってもらえたのですが、個人的には悔しい気持ちの方が大きくて。優勝を目指していたので。侑京(橋本)が優勝したので、自分のは薄れましたね(笑)。
堀越・谷本 お前ちっちぇ~(笑)。
若林 来年は頑張りますよ!
――夏合宿ではどのようなことにフォーカスして練習したのですか
若林 合宿では体の使い方をやりました。あとはチーム力と基礎体力の向上ですね。
谷本 筋力を上げるというよりは、今ある力を出し切ってどれだけ相手に伝えられるかというのを重点的にやりました。1番重きを置いたのは、自分の重心をコントロールして重心をぶらさないことです。相撲は重心をずらされると負けやすいので、しっかり芯を通すと残したりできるというのがあります。それにも関わるのですが、自分の力を出し切ることに関しては、自分の力が相手に伝わるときは100ではないので、なるべくそのロスをなくすということを意識しました。立ち合いで、どれだけ強い力で当たっていっても、ゆっくり当たってしまうと相手が先に来て当たり切れないので。そこの反応など、自分の持っている力を相撲に出せるようなトレーニングをやりました。
堀越 今までの合宿の中で1番練習したなって感じがありますね。
谷本 体作りに関しては、マネージャーがごはんを作ってくれるんですが、朝昼晩としっかり食べて。みんな5kg体重が増えました。マネージャーは毎日3回作るの大変だったと思うのですが、よくやってくれて。サポートの力も感じた合宿でした。
――オフの日は何をして過ごしているのですか
谷本 寮にいることが多いですね。寝て、トレーニングして。あとはカラオケかテレビですかね。スマブラとか桃鉄とか、みんなでゲームもします。
若林 僕は寝るか、友達や先輩とごはんに行きます。田無寮の友達ともごはん行ったりしますね。
堀越 僕はケガしていたのでリハビリやって、飲みに行ったり遊びに行ったりします。
――ごはんの話が何度か出てきましたが、よく行くお店はありますか
堀越 試合の前に、自分と若林でステーキ食べ放題で何枚食べたかを勝負するんですよ。試合前になったら、「そろそろ行こうよ」ってかんじで。先輩として負けたくないのですが、大体いつも大差で負けてますね(笑)。
若林 弱いんですよ(笑)。
谷本 僕は『味一』っていうラーメン屋が好きですね。けっこうよく行くんですよね。調子良いときは週2とか(笑)。
若林 僕は『明喜屋』好きなんですよね。ごはん行くところは大体決まってますね。
――取組の前は緊張したりするのですか
谷本 僕は緊張しますね。緊張するので多めにアップして体を温めるのは意識してます。
堀越 ここ2人(堀越、若林)はほぼ緊張しないですね。
若林 高校の時はすごく緊張していたのですが、大学に入ってからは緊張しなくなりました。
堀越 ワセダはすごく自由に取らせてくれて、なんでもやっていいので、緊張しないでやれますね。
若林 高校よりはみんな緊張していないと思いますよ。
「優勝できる実力はある」(堀越)
土俵を背に笑顔の堀越
――4年生のお二人はもう少しで相撲部での4年間が終わってしまいますが、今の心境を聞かせてください
堀越 4年間同期5人で一緒に戦ってきて、本当はインカレも最後5人で出たいという気持ちがあったのですが、自分や市川がケガをしていてあまり試合に出れていない状況で。後輩にも頼って成績を出しているのですが、本当だったら4年生全員で出て、優勝して終わりたかったなと。引退まであと少しで、5人で出られるかは分からないですが、4年生としてみんなを引っ張って良い結果で終われるように、悔いが残らないように頑張っていければなと思います。
谷本 4年間やってきた同期もなのですが、監督やコーチ、後輩、このメンバーでできるのももう少しなんだなと。そこまで寂しいなとか特別な感情はないですが、このメンバーでできるのも、大学相撲生活も最後ですし、悔いが残らないようにという気持ちは大きくて。こうしとけばよかったなと思わないように、あと1ヶ月しかないので1日1日を大事にして、最後思い切ってやりたいです。毎日を大事に頑張っていきたいと思います。
――やはりワセダの相撲部に入って良かったと思いますか
谷本・堀越 そうですね。
谷本 色々な人に出会うことができました。ワセダに来なかったらこのメンバーでできなかったですし、人数が少ない分、部員の仲もすごく良くて。やっぱりこういう環境でできたというのは、自分にとって大きかったと思います。
堀越 いまの自分があるのもワセダの相撲部に入ったからだと思うので、本当にここに来て良かったなと思います。
――4年生は人数も多く、相撲を含め様々な面で引っ張っていってくれていると思いますが、若林選手は4年生にどのような思いがありますか
若林 ずっと4年生を追いかけてきて、尊敬できる部分が本当に多いです。来年自分が主将になると思うのですが、全然4年生に比べたら未熟だなと感じます。あと1ヶ月しかないのですが、先輩方が抜けても伝統を受け継いでいかなければいけないと思いますし、実力だけではなく人間性などの部分も先輩から学んで引き継いでいきたいです。やっぱり先輩方の存在は大きいなと思います。
――インカレに向けて、部としてはどのような稽古をしているのですか
谷本 普段と変わらないですね。僕は自分の力を出せるようにというのを意識してやっています。試合も近いので各自集中して、というのは大きいですが、そんなに試合前だからどうこうというのはあまりないです。普段の積み上げが1番大事だと思うので、普段と変わらずやってきたことを出す、という感じです。
――個人的にフォーカスして練習していることはありますか
谷本 僕は、リーグ戦前は立ち合いを意識していました。固くなるとどうしても足が出なくなったりしますし、立ち合いが悪いと流れが全部悪くなってしまうので。立ち合いでしっかり当たれて、自分の形からスタートできれば、ある程度いけると思うので、立ち合いに集中してやっています。
若林 僕も立ち合いと、足の運びをやっています。すり足をみんなよりもたくさんやって、相手もいない個人的な練習なのですが、相手がいることを想定してやっています。体が小さいので足で付いていってスピードで勝つしかないので、立ち合いから足の運び方というのを意識してやっています。
堀越 自分はとりあえず膝を治すことがメインで、あとできることと言ったら上半身のトレーニングしかないので。自分が思うに、強い人は体幹がしっかりしていて、がちっと受け止めてのけ反らないと思うんですよ。体幹や腹筋を意識して重点的にやっています。
――インカレで「俺の相撲のここを見ろ!」というところを教えてください
谷本 僕はどちらかというと押し相撲とか四つではなくて、対応できるというところが良さだと思っています。カチカチじゃなくて、相手をうまく操るというか、そういうところを見てほしいです。華麗な技を(笑)。
堀越 土俵際の魔術師(笑)。
若林 自分の流れの相撲を見てほしいです。相手の流れの相撲じゃなくて、自分が前に出てスピードで勝つという、それが自分の相撲なので、そこを見てほしいかなと思います。
堀越 突きと、突いてから相手の力を使って引いたりいなしたりというところが得意ですね。
若林 堀越先輩は勝負強いですよ。
堀越 思い切りのいい相撲を見てほしいです。
――インカレに向けて意気込みをお願いします
若林 この代になってからのチームの目標がインカレ1部優勝で、集大成でもあるので、1部優勝に向かって一致団結して頑張っていきたいと思います。
堀越 1年生のときから優勝を目標にやってきて。4年目になって、優勝できる実力はもう十分あると思うので、あとは気持ちとどれだけ自分の相撲が取り切れるかだと思います。みんなで力を合わせて、最後良い結果で終われるように、優勝目指して頑張りたいと思います。
谷本 4年間の集大成でもありますし、100周年を飾れるようにしたいです。自分たちの力を出すというのが大前提で、それができないと優勝もないと思うので、まずはチームの力を集結して、自分たちの力を出し切る。その結果として優勝して、監督を最後胴上げして、最後嬉し泣きで終われるように頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 本田理奈、小林理沙子)
笑いの絶えない対談になった
◆谷本将也(たにもと・まさや)
1995(平7)年8月21日生まれ。182センチ、135キロ。鳥取城北高出身。スポーツ科学部4年。明るく対談を盛り上げる一方で、相撲の話は真剣な眼差しで語ってくれます。「嬉し泣きで終われるように」との言葉通り、谷本選手の嬉し涙が見られるか、注目です!
◆堀越豊輝(ほりこし・とよき)
1995(平7)年10月25日生まれ。187センチ、113キロ。東京・足立新田高出身。スポーツ科学部4年。宇和島大会でけがを負った堀越選手ですが、「インカレは諦めていない」とのこと。復活の土俵を見たいところです。
◆若林魁(わかばやし・かい)
1996(平8)年7月3日生まれ。180センチ、105キロ。岐阜農林高出身。スポーツ科学部3年。若林選手は、相撲部唯一の3年生。4年生の先輩たちとはとても仲良しですが、尊敬できる部分も多いそうです。インカレでは、引退する4年生への恩返しの相撲に期待が高まります!