今年で7回目を迎えた早稲田杯が、16日、東伏見にて行われた。相撲部員ではない一般の早大生が集い、実際にまわしを締めて相撲を取る体験イベントである。今年は留学生も多く参加。審判長を務めるデーモン閣下(社卒)が見つめる土俵で、例年にも増して熱い戦いが繰り広げられた。
体の大きさも様々な19人の参加者は、まわしを締めた後、まずは相撲部員の胸を借りぶつかり稽古を体験する。注意点などの説明を受けた後、整列。ここで、相撲部の特別参与であるデーモン閣下の入場だ。好角家として知られる閣下は、一時部員不足により廃部の危機にまでなった早大相撲部の存続に一肌脱いできた。早稲田杯にも、毎年審判長として参加している。閣下とともに校歌を歌った後は、ついに本番。予選リーグでは、頭から当たり速攻相撲を見せる参加者、土俵際の粘りを見せうっちゃりを決める参加者もあり、体験イベントとは思えない本気の勝負が行われた。
留学生同士の対戦。審判長のデーモン閣下が見つめる
スペインや台湾からの留学生も参加。日本の国技に触れてみようという気持ちがあったのだろう。スペインからの留学生は、高校時代水球に励んでいたとあって、がっしりとした体格。相撲のことはあまり知らなかったというが、興味があり参加したそうだ。準決勝で惜しくも敗退したが、「リング(土俵)の中は、私と相手だけ。気持ちの戦いです。来年も必ず出ます」と、相撲に魅了されたようだった。迎えた決勝戦は、酒井貴之(政経3)と松田凌人(基理1)の顔合わせ。松田は、小学生の頃相撲を取っていたとのことで、ここまで巧い相撲を見せ、予選リーグでは酒井も倒していた。一方、酒井は相撲の競技経験はないが、幼稚園の頃から相撲を見るのが好きで見ていたという。デーモン閣下が土俵の真ん中に立つと、こぶしを効かせた美声で両者の名前を呼び出し、ついに待ったなし。予選リーグで負けた相手に対し酒井は、「まともに組んでは勝てない」と考え、立ち合いから突っ張っていった。「作戦通りにはいかなかった」と言うが、組み合ったのち、酒井の土俵際の突き落としに松田の左足が土俵を割り、勝負あり。3年連続出場の酒井が、悲願の初優勝を飾った。
優勝した酒井にはコメ、デーモン閣下グッズ、相撲部のTシャツが贈られた
戦いを終え、振る舞われたちゃんこを食べながら互いの健闘を讃えあった参加者たち。肌を交えて戦った者同士は、最初は見ず知らずであっても、固い絆で結ばれる。鬼谷智之主将(スポ4=愛知・愛工大名電)が「相撲部が頑張っていることを知ってもらえると、頑張る源になります」と語ったように、相撲部の活動を広めるという点では、大成功の早稲田杯になったに違いない。早大相撲部は、今年が創部100周年。参加者たちがちゃんこ鍋を囲んだ畳の間には、学生横綱に輝き綱を締めている昔の部員たちの古い写真が飾られ、100年の長い歴史を物語る。次の100年へ、早稲田杯がこれからも相撲の歴史を継承する架け橋になっていくことを願いたい。
(記事、写真 元田蒼)
※掲載が遅れましたことをお詫び申し上げます
コメント
鬼谷智之主将(スポ4=愛知・愛工大名電)
――早稲田杯は今年で7回目になります。回数を重ねてきて、変化はありますか
年々人数も増えてきて、盛り上がって、相撲に興味を持ってくれている人も多くなっています。相撲人気もあると思います。自分達からすると嬉しいです。
――印象に残った参加者はいますか
2位になった松田くんは、小学校の頃相撲をやっていたとのことで、いい相撲を取るなと思って見ていました。全体的に見てレベルは毎年上がっているなと思います。
――今年相撲部は創部100周年を迎えます。気持ちは高まっていますか
そうですね。今年が勝負の年だと思っています。こうして早稲田杯などで、相撲部が頑張っていることを知ってもらえると、頑張る源になりますね。
――今年のチームとしての目標は何ですか
全日本インカレ(11月)の1部優勝を目標にして、日々精進しています。
――主将個人として目指すことは何でしょうか
主将としてチームをまとめることはもちろん、全国大会で個人入賞して、アマチュア(12月)に出場することが個人的な目標です。
酒井貴之(政経3)
――優勝おめでとうございます。3度目の出場ということですが、最初にこの大会に出場しようと思ったきっかけは何ですか
早稲田ネットのメールで、相撲大会があることを知りました。僕は幼稚園の頃から相撲が好きだったので、ぜひ出たいと思い、出場しました。
――相撲は、見るのがお好きなのでしょうか
そうですね。相撲を取る方は、わんぱく相撲などの経験はないですが、幼稚園の時からずっと見ています。
――他にスポーツの経験はありますか
小中で野球をやっていまして、高校は陸上を、大学からはバレーボールを始めました。スポーツは好きでいろいろやっています。
――今日たくさん相撲を取られましたが、最も印象に残った相撲はどれですか。
負けた一番です。本当に相手(松田)の動きが上手く、全く歯が立たないという感じでした。決勝で同じ相手と当たりまして、まともに組んでは勝てないと思ったので、突っ張って行こうと決めて臨みました。うまく想定通りにはいかなかったのですが、なんとか勝つことができました。
――相撲の魅力はどこにあると思われますか
小さい相手が大きい相手に勝つことですね。大技が出た時の周りの盛り上がりなども醍醐味だと思います。何より、この前の稀勢の里関もそうですが、精神的な強さを見て取れる、そういったところに魅力を感じます。
――稀勢の里関がお好きなのですか
僕が今まで一番好きだったのは朝青龍関なのですが、久しぶりの日本出身横綱ということで、稀勢の里関も応援しています。
――これから相撲に関わっていく気持ちはありますか
あります。来年は4年生になり就活をしていくのですが、将来はスポーツに携わりたいと思っています。テレビ局に入るなり、記者になるなり、なんらかの形でスポーツに関わっていきたいと考えています。
松田凌人(基理1)
――相撲経験、またはスポーツ経験ははありますか
相撲は、小学校4年の途中くらいまでやってました。小学校5年から中学校までは野球をして、高校ではほぼ帰宅部みたいな感じで。あんまり何もしてなかったです。今は大学のサークルで野球やってます。
――すごく体つきが良くて体幹がありそうですが、体作りのために何かしますか
生まれつきですね(笑)。恵まれました。
――普段相撲は見ますか
テレビとかでも時々見ますね。
――相撲のどこに魅力を感じますか
昔の相撲取りで千代の富士っていう人がいて、その人はすごく筋肉質であんまり太ってないんですけど、それでも強くて。太ってなくてもつよい、そういう人がいるとやっぱり凄く憧れますし、魅力を感じますね。
――今後、大会に出場したり同好会に入ったりする予定はありますか
それはまだちょっと分からないです(笑)。来年の出場についてはまた来年考えます。
――相撲を普及するということについてどう思われますか
この大会に来てみて、思ったよりも参加者が多くて、相撲も案外人気あるんだなと感じました。自分はもともと相撲をやっていたので、相撲を普及する側の立場として何かできたらいいと思います。
Guillem(経営管理研究科)
――早稲田杯に出られるのは初めてですか
初めてです。
――知ったきっかけは
私は相撲に興味がありました。友人の紹介です。
――スポーツは何かされてましたか
高校の時は水球です。スペインではよくフットサルもしていました。
――相撲を見たことはありますか
テレビで1回だけです。相撲のことはよく知りません。
――たくさん相撲を取られましたが、一番印象に残ったことはなんですか
最初の相撲で、相手はいいファイトで来ますから、面白いと思いました。
――相撲の魅力はなんだと思いますか
リング(土俵)の中には私と相手だけ。気持ちの戦いです。
――これから相撲をやってみようという思いはありますか
練習しに来ます。来年も必ず、この大会に来ます。
デーモン閣下(社卒・相撲部特別参与〔6期目〕)
――今日のご感想をお聞かせください
毎年熱戦が多いことは確かなんだけれど、今年はいつもの年と違うところが何点かある。まずは、立ち合いを頭から当たっていく参加者が多くいたことが驚きだ。なかなかそういう相撲はできないものなので。あと、外国出身、留学生の数が増えているというあたりは、プロの相撲とも似てきたなと感じている。
――参加者も増えていますね
早稲田杯自体は、だいたいこのぐらいでちょうどいいと思うんだ。20人ぐらいで、時間的にもちょうどいい。本当は、早稲田杯がゴールなのではない。早稲田杯を通して、相撲部の活動に興味を持ってくれる人が増えたり、相撲部に入る人がいたり、同好会でやってみようという人が出てきたり、ちょっとでも相撲に触れてみようという人が増えることが目的で、そちらの方が大事である。かつても、この大会がきっかけで相撲部に入り軽量級で全国大会に出た先輩もいるので、そういうことがこれからも頻繁にあるといいな。
――閣下が相撲をお好きになったきっかけは何ですか
いろいろあると思う。きっかけというとよくわからないね。いつの間にか相撲を取っていて、面白いから好きになったというのもあるだろう。あと、吾輩の世を忍ぶ仮の祖父は、早稲田ではないが、大学時代に相撲部員であった。そういう話を聞いていたから、普通の人より興味を持つことも多かったんじゃないかな。
――閣下はこうして相撲に対して貢献されることが多いですが、それはどういう思いからですか
基本的にはファンである。ファンというのは面白いもので、何かしてくれと言われると、役に立てることがあるのなら、という思いはずっと変わらない。欲があるとよくないんだろうね。ファンなのだから、利用してほしいという気持ちでいる。
――最後に、100周年を迎える相撲部に、メッセージをお願いします
まあ100周年なので、100周年の年はこうだった、と語り継がれるような成績が残せれば、それに越したことはない。だからと言って、100周年だから、絶対成績を残さなければならないということでもないと思う。いい成績に越したことはないということだ。また、今年の4年生は、入部してきたときに将来を嘱望され、期待されてきた。ある程度、その期待に応えてきてくれたと思ってはいるが、吾輩や監督、相撲部のOBは、今の4年生ならもっとできると思っていると思う。ここはひとつ、最後に1年頑張って、歴史に名を残すつもりでやってもらいたい。