3名が全国大会へ、見せた勝利への執念

相撲

 早大相撲部が、進化した姿を見せた。靖国神社相撲場で行われた東日本学生個人体重別選手権。この大会では、各階級に一定数の全国学生個人体重別選手権への出場枠が与えられている。早大からは11選手が土俵に上がり、前川晋作主将(社4=東京・早実)、佐藤太一(社1=大分・楊志館)、鬼谷智之(スポ3=愛知・愛工大名電)の3選手が全国大会出場を決めた。

 前川は85kg未満級に出場。初戦は勝利したが、二戦目で長い相撲の末敗れてしまう。しかし、気持ちを切らすことはなかった。全国大会への出場枠、残り一枠をかけた敗者復活戦に進むと、激しい相撲で勝ち上がり、勝てば全国出場の一番を迎える。相手は、突き放しの相撲を見せていた立教大の選手。前川は、相手得意の突きを封じるため、立ち合いで低く当たり、相手より下に潜る体勢に。そこから電車道、一気の寄り切り。立ち合いの作戦が成功し、見事全国大会出場を決めた。一方、100kg未満級に出場した1年生の佐藤も、気迫の相撲で全国出場を勝ち取った。初戦、立ち合いから突き放し、左差しからの巻き落としで相手を下すと、二戦目も専大の4年生に対し攻め手を休めない相撲を見せ、最後は上手投げで勝利し全国出場が決定。三戦目は惜しくも敗れてしまったが、1年生ながら「緊張はあまりなかった」と語るように、気持ちの強さがうかがえる相撲を見せた。

1年生ながら全国大会出場を決めた佐藤

 鬼谷も115kg未満級で全国大会への出場権を得た。初戦、二戦目と、激しい突き押し相撲で勝利。三戦目は取り直しの熱戦の末、敗れてしまったが、敗者復活戦でも気迫の相撲を取り続けた。敗者復活の初戦、同じ早大の堀越豊輝(スポ3=東京・足立新田)を下すと、二戦目も勝利。東農大選手との勝てば全国出場の大一番でも、頭からの激しい当たりを見せ、突き押しで相手を一気に土俵外へ運んだ。本人は試合後、今日は優勝するつもりだったと言って悔しがったが、全5勝が押し出しと、徹底した押し相撲で勝利への執念を見せた。その他、全国大会への出場が成らなかった選手たちも、それぞれが熱のこもった相撲を取った。65kg未満級の中田敦志(社4=埼玉・大宮)は、初戦、激しい相撲の末こまたすくいで勝利、技を見せた。115kg未満級に出場した堀越は、激しい突き押し相撲を見せ、三回戦まで勝ち進んだが、全国大会出場まではあと一番及ばなかった。同じく115kg未満級の市川拓弥(社3=長野・更級農業)は二回戦で敗退したが、初戦は駒大の選手を相手に下半身の安定を感じさせる相撲で押し出した。

鬼谷はすべて押し出しで白星を挙げた

 今大会は個人戦だったが、早大の選手が土俵に上がったとき、監督や他の選手たちが熱く声援を送っている姿が印象的だった。その一体感を武器にして、夏の合宿で鍛錬し、目標である秋のインカレAクラストーナメントベスト8を目指す。早大相撲部の挑戦は続く。

(記事 元田蒼、写真 中村ちひろ、高橋団)

結果

▽65kg未満級

中田初段

一回戦

対伊藤(東大)小股すくい○

二回戦

対舘岡弐段(日体大)送り倒し●

敗者復活戦

一回戦

対山添(東大)寄り切り○

二回戦

対池田弐段(東洋大)寄り切り●


▽85kg未満級

前川参段

一回戦

対千葉初段(東北大)上手投げ○

二回戦

対中畑弐段(東農大)上手投げ●

敗者復活戦

一回戦

対六井(拓大)寄り切り○

二回戦

対薮本参段(慶大)寄り倒し○

三回戦

対野口弐段(立大)寄り切り○

※全国大会出場


▽100kg未満級

佐藤初段

二回戦

対平澤弐段(大東大)巻き落とし○

三回戦

対福山参段(専大)上手投げ○

優秀8選手トーナメント準々決勝戦

対石川(東農大)押し出し●

※全国大会出場



若林参段

一回戦

対飯田弐段(日体大)押し出し●


▽115kg未満級

市川参段

一回戦

対西初段(駒大)押し出し○

二回戦

対藤原初段(明大)押し出し●


鬼谷参段

一回戦

対片桐(日体大)押し出し○

二回戦

対佐藤初段(東農大)押し出し○

三回戦

対川村弐段(明大)上手投げ●

敗者復活戦

一回戦

対堀越参段(早大)押し出し○

二回戦

対藤田参段(東農大)押し出し○

三回戦

対冨栄弐段(東農大)押し出し○

※全国大会出場


小山参段

一回戦

対藤岡参段(明大)押し出し●


堀越参段

一回戦

対川井弐段(東洋大)上手出し投げ○

二回戦

対小原参段(日大)叩き込み○

三回戦

対前田参段(明大)上手投げ●

敗者復活戦

一回戦

対鬼谷参段(早大)押し出し●


▽135kg未満級

橋本参段

一回戦

対白石参段(東洋大)叩き込み●


▽135kg以上級

谷本参段

一回戦

対高橋弐段(法大)押し出し○

二回戦

対村田参段(東洋大)送り出し●

敗者復活戦

一回戦

対川本参段(拓大)叩き込み●


▽無差別級

本田参段

一回戦

対大波参段(東洋大)突き落とし●


コメント

室伏渉監督(平16人卒=東京・明大中野)

――前回大会より全国大会出場者が増えましたね

そうですね、内容もよかったです。特に前川(晋作主将、社4=東京・早実)と鬼谷(智之、スポ3=愛知・愛工大名電)は全国大会出場者決定戦で勝ったので最後まであきらめなかったところが良かったと思います。

――勝負への厳しさが実践できたのでしょうか

もちろん負けたのもあったんですけど、勝ち切るということをずっと目標にやってきたので成果を出せたと思います。1年生の佐藤(太一、社1=大分・楊志館)なんかはなかなか強い専大の4年生に勝ってるので、大したものだと思います。

――合宿は2回やるということですが、1回目との違いは何ですか

1回目は相撲を中心に一週間がっちりやって、2回目はトレーニング合宿です。休み明けにもう一回体力を戻すという合宿です。

――きょうの取り組みを踏まえて、次に生かせることはありますか

最後まであきらめなかったということから、勝負に対する気迫がみんな出てきたかなと思います。それを、体重別、今度はAクラスで行う東日本学生リーグ戦でどうやって出して経験できるか、それをやらせたいと思います。

――春シーズンの総括をお願いします

やはり、少しずつですが地力がついてきているので、これを継続させて全国学生選手権(インカレ)でなんとしてもAクラスの団体でベスト8になって決勝トーナメントに出たいです。そこはなんとかしたいなと思っています。

前川晋作主将(社4=東京・早実)

――どのような意気込みでこの大会に臨んだのですか

自分は体が小さいので体重別なら勝てると思って大学4年間やってきたので、体重別の大会は年に1回しかなくて、それもことしで最後なので何としてでも全国に行こうと思って臨みました。

――順番に取組を振り返っていただきたいと思います。まず、一回戦を振り返っていかがですか

初戦はたただ動きが固かったですね。みんなからも言われました。ちょっと気負っている部分があったので、自分としてはあまり良い相撲は取れなかったですね。

――二回戦では上手投げで敗れました。それも固さが出てしまったということでしょうか

いや、二回戦は1回勝って緊張はなかったのですが、相手が強いとは分かっていました。頭つけ合って辛抱していて、先にしかけようとは自分で思っていたので自分からしかけていって足を取ったのですが、最後詰めのところがうまくいかなくて、回り込まれてしまいました。最後の詰めのところがだめでした。

――全国大会出場者決定戦になったとき、どのような気持ちでしたか

勝たなければいけないというよりは少し開き直った部分もあって、1回負けたことで全国に出なければいけないというより、シンプルに勝ちにいこうと思えました。そこで気持ちが変わってよかったと思います。

――全国大会出場者決定戦の最後の取組では、立合い後すぐに上体が上がる相手に対して低く入っていきました。狙っていたのですか

狙いましたね。相手は突っ張りなので、それさえしのげば勝てると思っていて、うまくいきました。

――この大会での収穫や課題は何ですか

負けた試合は(負けた)相手が結局優勝したのですが、ああいうふうに同じ階級の強い人にうまさで負ける部分があったので、全国で勝つためにも同じ階級の技をもっと極めていかないといけないなと思いました。収穫としては、1回負けた後に敗者復活で3試合勝ち上がれたので、気持ちの持続はできたなと思いました。

――全国大会に向けての意気込みをお願いします

体重別で全国大会に出ることができるのは3年ぶりで、ことしは特に自分にとって最後の年でもあるので、東では9位というぎりぎりでの通過でしたが、全国では優勝を狙っていきます。

鬼谷智之(スポ3=愛知・愛工大名電)

――きょうはどんな意気込みで臨みましたか

きょうは優勝するつもりでいきました。

――試合を振り返っていかがでしたか

身体自体はきょうはすごく動いていたので良いかなと思っていたんですが、運なども色々あってああいう結果になってしまいましたね。

――途中、取り直しもありましたが動揺はありましたか

正直、あのときは勝ったと思っていたので。もう一番ということで集中したかったんですけれど、集中しきれていなかったですね。

――全国大会への残り一枠を巡ってトーナメントがありましたが、初戦は堀越豊輝選手(スポ3=東京・足立新田)でした。どんな気持ちで臨みましたか

もう負けは引きずらずに、気持ちをしっかり切り替えてやろうと思って、なんとかできました。

――夏はどんなところを鍛えていきたいですか

やはりもう少し体重を増やしたいです。前に落ちやすいので、下半身を鍛えて足腰を強くして、これからインカレに向けて頑張りたいですね。

――全国大会に向けて意気込みをお願いします

きょうやって自分の実力が通用するとわかったので、しっかり優勝を狙っていきたいです。

佐藤太一(社1=大分・楊志館)

――全国大会への出場が決まりましたが、いまのお気持ちはいかがですか

1年生で出場ということなので、想定外でした。二回戦は強い相手だったので、厳しいかなと思っていたので、率直に嬉しいです。

――緊張はなかったですか

個人戦ということもあり、緊張はあまりなかったです。

――きょう相撲を取る上で、特に意識したことはありましたか

固くならずに取ることです。自分から攻めることを意識して、思いっきり取れていきました。

――今大会での反省点はありますか

二回戦が終わってから三回戦で、少し集中が途切れてしまったところです。あのまま続けていれば、もう少し上へ行けたのかなと思います。

――今後、全国大会に向けて、意識していきたい点はありますか

今回、強い方を倒せて自信になったので、これをこのまま続けて行ければいいと思います。