金沢の地で勝利への厳しさを追求

相撲

 今回で6回目となる全日本大学選抜金沢大会。早大は団体戦、個人戦共に出場し、団体戦は16校中10位で予選落ち、個人戦は7人が出場し本田煕誉志(社3=大分・楊志館)が一回戦を勝ち進んだが惜しくも二回戦で敗退という振るわない結果に終わった。しかし、団体戦では前回優勝校の東農大に1勝を奪うなど要所で光った取り組みも見られ、室伏渉監督(平16人卒=東京・明大中野)も「意識が変わった」と話す。結果には表れなかったが、今後のチームの雰囲気を形作る良い内容の試合となった。

 団体戦予選第一回戦は昨年の優勝校の東農大。しかし早大は臆することなく堂々とした取り組みを見せる。先鋒の本田は相手の激しい頭突きにも必死に食らいつき、得意の突きで応戦するが押し出された。しかし、それを取り戻すように鬼谷智之(スポ3=愛知・愛工大名電)が豪快な下手投げを決める。その後、前川晋作主将(社4=東京・早実)が相手の力を利用し引きに転じて勝ったかに見えたが、惜しくも取り直しになった。勢いに乗り切れなかった早大は善戦するが黒星が続き1-4で敗れた。気持ちを切り替えて臨んだ第二回戦の相手は拓大。しかし、先鋒から連続で土が付き後がなくなった。チームが沈みかけたところで前川主将が意地を見せる。相手は前回の学生横綱だったが「狙っていきました」(前川)と立ち合いから足を取り見事白星。この勝利に触発され若林魁(スポ1=岐阜農林)も気迫の押し出しで連勝。勝負の行方は大将戦へと持ち込まれた。しかし、結果は2-3での敗北。あと一歩のところで勝利には届かなかった。予選最後の相手は九州情報大。なんとしても勝ち越したい早大は勝利への執念を見せる。2-2で大将戦を迎えすべては大将・堀越豊輝(スポ3=東京・足立新田)の手に託される劇的展開に。チームメイトの応援の中、堀越が相手を押し出し仲間に勝利の雄たけびを上げた。3-2で最終戦を勝利で飾る。1-2からの逆転だった。

学生横綱を下した前川

 個人戦は今後の課題が浮き彫りになり、唯一勝ち抜いた本田も満足できる結果ではなかった。本田が二回戦で当たった相手は立命大の80キロの小柄な選手。一回戦ではスピードを生かし動き回りながら大柄な選手から白星を得ていたため、本田も当然その手を読んでいた。しかし、予想は大きくはずれ立命大の選手はまっすぐにぶつかってきた。これには思わず本田も「びっくりしてしまった」と、意表を突かれ立ち合いから崩されてしまいそのまま敗戦。勝てた試合だけに悔しさも大きかった。

個人戦で唯一勝ち進んだ本田

 早大は日体大への出稽古を行い、高いレベルの練習を知ったことで勝利への執念がより強くなったという。「勝利に対する厳しさ」という言葉が室伏監督からもよく出たように、チームの雰囲気が格段に良くなっていた。秋までの団体戦はこの大会ですべて終わり、あとは全国学生選手権(インカレ)に向け個々の力を磨いていくだけだ。勝利に燃える早大の力士たちの暑い夏が始まる。

(記事、写真 高橋団)

結果

▽団体戦

団体予選

一回戦 対東農大 1勝4敗

先鋒 本田参段●(押し倒し)○鈴木参段

次鋒 鬼谷参段○(下手投げ)●山内弐段

中堅 前川参段●(突き出し)○境 参段

副将 若林参段●(押し出し)○松原弐段

大将 堀越弐段●(押し出し)○富栄弐段



二回戦 対拓大 2勝3敗

先鋒 本田参段●(首投げ)  ○寺沢参段

次鋒 鬼谷参段●(引き落とし)○勝呂初段

中堅 前川参段○(足取り)  ●黒川参段

副将 若林参段○(押し出し) ●川本参段

大将 堀越弐段●(寄り切り) ○山市参段



三回戦 対九州情報大 3勝2敗

先鋒 本田参段○(寄り倒し) ●大原初段

次鋒 鬼谷参段●(送り倒し) ○橋本参段

中堅 前川参段●(引き落とし)○海上征参段

副将 若林参段○(突き落とし)●海上弘参段

大将 堀越弐段○(押し出し) ●宮地弐段

※団体予選10位



▽個人戦

前川参段

一回戦

対寺沢参段(東洋大)押し倒し●


市川参段

一回戦

対藤原参段(明大)送り投げ●


鬼谷参段

一回戦

対西野参段(東洋大)寄り倒し●


谷本参段

一回戦

対古澤参段(金沢学院大)うっちゃり●


堀越参段

一回戦

対佐藤参段(日体大)引き落とし●


本田参段

一回戦

対名和参段(明大)押し倒し○

二回戦

対河村  (立命大)寄り倒し●


若林参段

一回戦

対北川参段(東洋大)棄権●



コメント

室伏渉監督(平16人卒=東京・明大中野)

――チームの雰囲気がよくなっていた印象を受けましたが

東日本学生選手権(東日本大会)で負けて本当に悔しい思いがみんなあって、それから3週間後の6月の終わりに日体大に出稽古に行かせてもらいました。ことしは2回目で、日体大の稽古は二時間しかやらないんですけど勝負に対する厳しさがすごくて、それでその厳しさを身に付けなくてはいけないと感じました。いい相撲というのはやはり勝負に徹しないとこのままズルズル行っちゃうよと、それで本人たちも相当変わったと思います。意識が変わったというか勝ちたいというのがすごく伝わってきました。でもやはり日体大にはいい相撲を取るんだけど勝ちきれないというのがあって、そういう積み重ねが少しずつ勝負に対する厳しさを追求してそれを稽古からも意識したというのが、ようやく出てきたかなという感じです。

――前回の大会からの改善点はなんでしたか

同じことを言うようになりますが、勝負に対する厳しさです。結局、甘さがあるから気持ちで負けてしまっている部分だったり、実力が少しづつ付いてきているのに出し切れていないというところがありました。初戦の東農大戦は本当にもったいなかったです。あれで勝てれば勢いに乗って3連勝できたかもしれないので。

――個人戦は振り返っていかがでしたか

個人戦はもちろん相手のこともあるので、何とも言えないですけど、そここそ自分たちがしっかりしなければいけないと思います。例えば団体戦でもそうですが自分より前で勝負が決まっていても、勝つところはみんな勝っています。日体大なんかは団体戦で負けていましたけど、後の二人は絶対に勝っていました。やっぱりそこが差になるなと感じました。谷本(将也、スポ3=鳥取城北)、市川(拓弥、社2=長野・更級農)なんかは、今回本当はみんなの調子を見て予選で使おうか悩んでいました。(個人戦は)アピールの場であるからその辺がまだアピール不足かなとは感じます。

――団体戦の内容はよかったですが、きょうの収穫はありますか

収穫は最後大将戦でチームが勢いに乗れたことです。先鋒の本田が取って鬼谷、前川が負けたけどもそこから若林が勝って2ー2まで持っていって最後に堀越が勝ったという良い相撲で勝てました。あれはチームにとって非常に大きい自信になったんじゃないかなと思います。今回はそこだけですね。競り合いで勝てたということですが、欲を言えば拓大戦でも出して欲しかったですね。本田と鬼谷は勝たなければならないところで負けてしまい反省しましたけど、あの二人と谷本は稽古場の中心なのでもっと頑張って欲しいです。二人が負けたにもかかわらず前川、若林、堀越が勝ったというのも本当に大きいです。特に前川は推薦組ではなくて、高校時代専門でやっていたわけではないのにきょう学生横綱に勝って、本当にすごいことです。あいつはストイックに稽古をやっているので、そこは褒めてあげたいなと思います。

――きょうの内容を踏まえて、これからの大会にはどのように臨みますか

きょうのをまず自信にして、全国学生個人体重別選手権(体重別)で去年は全国大会に一人二人しか出られていないので、ことしは少しでも多くの人数が出られるようにやっていきたいです。あとはこれから夏合宿を2回やる予定で、2回やるから強くなるかはわかりませんが、本人たちがなんで2回やるのかという意味はわかっています。勝たなければいけないというのがあるので、そこをきちっとやりたいなと思います。あとはインカレでは絶対にベスト8に残れるように頑張ります。

前川晋作主将(社4=東京・早実)

――チームの雰囲気がとてもよかったですが、全体に呼び掛けたことなどはありますか

春の選抜大会から東日本大会とあまりいい結果が出ませんでした。去年の東日本学生リーグ戦で一部昇格した時とかインカレで勝った時と比べてチームワークがよくないという反省点があがったので、そこをよくしようとみんなに声をかけました。

――初戦では惜しくも取り直しになってしまいましたが、その時の心境はいかがでしたか

正直勝ったと思ったんですけど、際どいところを勝ち切れるようにしていきたいです。けっこう自分は際どい勝負で負けてしまうことが多いので、そこのところで勝負強くならないと、と思いました。

――前回の大会でも足取りを狙っていましたが、今回は見事成功しましたが

相手は去年の学生横綱だったということもあって、まともにやって勝てる相手ではなかったので、最初から決めて狙っていきました。前回は足取りにいってギリギリで負けたので、その時の反省を踏まえて練習してきたので決まってよかったです。

――来週の個人体重別の大会に向けて、短い期間ですが次の試合に生かせる反省などはありますか

今度は体重別なのできょうの相手とはタイプが変わります。惜しい相撲で負けたところがあったのでそこはしっかり直して、勝ちにこだわって絶対全国大会に行けるように頑張りたいと思います。

――夏の練習で部として伸ばしていく点はありますか

これでことしの大会が4回終わってこうやって全国大会も経験できたので、それぞれみんな課題が出たと思います。それぞれがもう一段階レベルアップして、秋のリーグ戦、インカレで結果を残せるようにしていきたいと思います。

――個人として後の試合に向けての意気込みをお願いします

あと4か月弱の短い競技人生ですので、悔いなく終われるように全身全霊をかけて残りの期間を相撲にさざげていきたいと思います。

本田煕誉志(社3=大分・楊志館)

――前回の大会でも先鋒を務められていましが、その狙いはなんですか

僕の相撲の取り口が突き押しで元気な相撲なので、チームに活気がつくという面でも僕のスタイルは前の方に置かれることが多いです。

――団体戦を振り返っていかがですか

二回戦の拓大の時は、立合いが合わなくてどうしようもなかった感じでしたが、東農大も九州情報大も内容はよかったです。東農大には負けたものの、という感じで内容はよかったですよ。今までの僕の課題はどうしても地力の差が出てしまうことでしたが、個人戦でもそうでしたがだんだん押し勝てるようになってきたかなとは思いました。それが結果的に九州情報大のときみたいな相撲を取ればチームに流れがくるので、引き続きインカレに向けてあのような相撲を取っていきたいです。

――個人戦では唯一、二回戦まで進まれましたが

本当はもう一回勝ってもよかったくらいなんですけどね。結構僕はうっかりミスが多くて、完全にきょうのは相手が当たってこないと思っていたので、結構強めに当たってきてびっくりしてしまったというのが一番で、そこは読みが甘かったのかなとは思います。勝てるところで勝っておかないと次につながらないのかなと思います。そういうところを無くしていきたいです。

――きょうの大会を通してチームとして反省や収穫はありますか

チームとして悪いところでいえば拓大戦ですね。前二つが連続で負けたときにどのようにチームのモチベーションを保っていくかというところが大事だと思っています。九州情報大戦なんかは、すごい良い雰囲気でワセダらしい勝ちだったかなと思っています。ああやって全員が負けても雰囲気を作り上げていってチーム力で勝つ、というのがワセダらしかったです。それはすごく収穫だったと思います。去年は0勝で予選落ちしてますが、ことしも予選落ちですがものが違うのかな、と思っています。

――これからの試合に向けて夏に伸ばしていくポイントはありますか

僕の場合はもっと地力を付けることです。重たい相手には結局押し負けてしまっているので、ああいう大きい相手や自分より体重のある相手に押し勝てるように、地力を付けていきたいです。だんだんやってきていることが形になってきているのはきょうの試合で実感したので、もっと稽古してインカレでは一部に昇格できるようにしたいです。