早大相撲部の一員となってはや6カ月。今季の集大成となる全国学生選手権(インカレ)が迫ってきた。今回は1年生の社会科学部所属ペア、市川拓弥(社1=長野・更級農)と本田煕誉志(社1=大分・楊志館)にお話を伺った。どんな思いを抱いてワセダの土俵に足を踏み入れたのか、インカレの目標と併せて選手の素顔を探る。
※この取材は9月28日に行われたものです。
文武両道
笑顔で語る本田
――初めに、お二人がワセダに入学しようと思った理由を教えてください
市川 全国大会で相撲部の監督からワセダはどうだという声をかけてもらったことがきっかけです。そこからワセダへの進学を真剣に考え始めて合格することができたので、しっかりワセダで頑張っていこうと思いました。
本田 勉強と部活を両立させたかったからです。1部の強い大学に行ってしまうと勉強がどうしてもできないので、両方とも全力でできるワセダを選びました。
――勉強との両立はいかがですか
市川 高校の時ほどではないですが、両立できていると思います。
本田 ワセダの相撲部は授業優先という方針なので、授業が終わってから稽古場に戻って練習といった生活を送っています。
――一緒の授業を取ったりするのですか
本田 結構被るよね、教職とか。
――教職を取るのは大変ではないですか
本田 授業数多くなるので大変ですね。
――将来は教育者への道を考えているのですか
市川 自分は教員を目指しています。将来は母校に戻って社会科の教員になりたいです。
本田 僕は全然(笑)。とりあえず取っておいた方が良いと思ったんです(笑)。
――お二人とも寮暮らしですよね
本田 同じ部屋です。
市川 隣の部屋が1年生の残りの3人なのでテレビゲームで遊んだり話したりしています。
――食事は寮で出してくれるのですか
市川 朝と夜だけ出ます。
本田 昼は各自です。夏休みの間とかはここ(道場)で料理したりしています。
――オフはどのように過ごしているのですか
本田 とりあえず寝るか遊ぶかですね。
市川 映画見に行ったりとか、服とか買いに行ったりしています。
――相撲部の雰囲気はどうですか
本田仲良いですね。先輩たちもみんなフレンドリーで、全然怖くないです。とても優しいです。
相撲一本
土俵で悔しい表情を見せる市川
――お二人が相撲を始めたきっかけは何ですか
市川 小学校1年生の時、担任の先生に地元の相撲大会に出てみたらどうかと声をかけられました。その試合で2位になり優勝できなかったのがすごく悔しくて、次の大会にも出ようと思って始めていったのがきっかけです。
本田 元々体が大きくて小学校3年生の時に柔道か相撲で迷っていたのですが、親がどちらかというと相撲の方が好きで大分の相撲道場に連れて行かれました。
――相撲を辞めたいと思ったことはありますか
本田 あります。
市川 高校生の時に一番思いましたね。高校1年生の時になんであの時相撲を始めたのだろうって毎日のように思っていました。
本田 いつ一番思うかって放課後に友達が「いまから遊びに行こう!」「きょうバイト~」みたいに言っているのがすごく羨ましかったです。「こっちは稽古なのに!」って。
――1日の稽古量や生活スタイルはどのような感じですか
本田 短期集中型なので2時間しっかり集中して練習するという形を取っています。普段の練習が夜7時からで、その後課題に取り組んで、風呂に入って寝て、そして朝迎えて満員電車に乗って学校に行くといった生活です。
――高校と大学の練習は違いますか
本田 全然違いますね。高校の時は監督がずっといて、言われてやる様なしばられた練習をしていました。ここは監督が土日しか来れないので、監督が来れない平日は各自がそれぞれ目標を持ってやっていく感じです。この部は自主性を重んじていますし、1年生5人とも全国でもそこそこの相撲部出身で、それぞれ練習の方針が違うので、各自で自分がいま何をやればいいかということを考えて自由に練習しています。
――普段の練習ではどんな練習をするのですか
市川 四股とか競り足などの準備運動をしてからテレビでやっているような相撲を取って、そのあとまた相手を押す相撲を何回か取って、といった感じです。
――夏合宿ではどういう練習をしたのですか
市川 まわしは持って行かずに、基礎トレーニングをしていました。坂があるところで坂道ダッシュや階段ダッシュ、ウエイトトレーニングとかを熱海の方で約1週間やっていました。こういう1日トレーニングというのは初めての体験で新鮮でした。
――お二人にとって相撲とはどういうものですか
市川 地元とかお店とかで「体格いいね」と言われて、「相撲をやっています」っていうと「頑張ってね」と応援されるんです。そういう時に、自分には相撲がなくてはならないものだな、頑張っていかないといけないなと思います。
――将来も相撲とは関わっていこうと考えていらっしゃいますか
市川 関わっていこうと思います。教員として相撲を教えたり、国体にも社会人として出たりしたいです。だから僕にとって相撲とは人生そのものです。今までも相撲一本でしたし、これからも関わり続けていくので相撲がなかったらいまの自分はいないと思います。
――本田さんも将来相撲と関わっていこうとお考えですか
本田 僕は全然(笑)。大学卒業まで続けていこうと思っています。高校の時ずっと料理の勉強をしてきたので、フレンチなどのレストランの経営者側をやりたいと考えています。
――試合前は緊張しますか
市川してしまうのでしないように心がけています。新人戦の時にも緊張して自分の相撲が取れなかったので、緊張しないように頑張ります。
本田 緊張はしますが、土俵にあがったときは1人で戦うしかないので自分を信じて戦っています。
――個人戦と団体戦の時は気持ちの入り方は違うのですか
市川 団体だと一人一人が取る1点が大事なので責任感が重くなりますが、個人戦でも団体戦でも「負けない」という気持ちは変わらないと思います。
本田 俺はすごく変わります(笑)。個人戦と団体戦ではプレッシャーが全然違います。
――責任がありますもんね
本田 団体だと自分が負けたら負けという所があるので。
市川 確かにワセダを背負っているという責任がありますね。
最後に笑うのは俺たち
東日本学生リーグ戦で活躍を見せた本田
――相撲部の100周年をどのような気持ちで迎えたいですか
市川 自分らが100周年を迎える時に部に所属できることがすごく嬉しいです。
本田 だから結果を残して100周年をかっこよく飾りたいな、と思います。
――相撲部の知名度をもっとあげていきたいと考えていますか
本田 相撲部が広まりすぎたら相撲部のレッテルを貼られすぎて「相撲部の本田さん」みたいな感じで生活に支障をきたすのは嫌ですね(笑)。
――でも皆さんの活動をもっと見てもらいたいと思いますよね
本田 現状見られたところでまだ結果を残してないので、しっかり結果を出していかないと。良い成績を残したら早スポの1面に飾ってください(笑)!
――1番近い目標はインカレですか
本田 そうですね。やはり1部昇格を目指しています。
――インカレまであと1か月くらいですがいまの調子はいかがですか
市川 僕はヘルニアになってしまって、まだちゃんとした練習ができていないです。この1ヶ月でどんどん調子をあげていかなくちゃいけないのでいまが本当に大事な時期ですね。
――間に合いそうですか
市川 本当にぎりぎりになってしまいますが間に合うと思います。
――現在はどのようなトレーニングをしているのですか
市川 あまり負荷をかけないように、腕立てとか基礎中の基礎の練習を重点的にやっています。
本田 自分はいまは調子が良い方だと思いますが、練習中の調子が良くても悪くても試合の当日にスイッチが切り替わるタイプなので、あまり気にせずに本番に集中できればいいかなと思っています。
――1部リーグ昇格はいけそうですか
本田・市川 いきます。
――チームとしての目標は1部リーグ昇格だと思いますが、個人としての目標はありますか
本田 インカレの個人戦でのベスト32です。4年生になった時にはベスト8を目指します。まだ1年生なので挑戦者として頑張ります。
市川 自分の納得できる相撲を取ることです。具体的に何位になりたいとかではなく、一戦一戦悔いのない相撲を取ったら結果はついてきます。変な相撲を取って団体戦を迎えるより、良い相撲を取って負けて団体につなげたいと思います。
――今季の大会でインカレに向けて得た収穫などはありますか
市川 1部昇格とか2部優勝とか最初は口だけで言っていたのですが、このままじゃダメだな、もっと頑張らないと目標には届かないな、と本気で思うようになりました。
――夏合宿でもそういう目標を掲げながら練習していたのですか
市川 室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)が「このままでは勝てないぞ」と鼓舞してくれました。
本田 階段ダッシュとかでもう1本やれば誰々に勝てるとか言いながらみんなで頑張りました(笑)。でも夏合宿は楽しかったです。
――最後に、ワセダでの4年間の目標や意気込みを教えてください
市川 大前提にこれ以上けがをしないで4年間終わるということと、1部に昇格するだけではなく、1部にずっといられるように頑張ります。
本田 強い大学に行った人たちは僕らと高校時代ずっとやってきた人たちなので4年後にその人たちに勝ちたいです。それで勝ったら、1部に昇格して1部でも良い成績を残せると思います。4年後笑っているのは俺たちなので皆さん是非期待していてください!
――ありがとうございました!
(取材・編集 中村ちひろ)
プライベートでも仲の良い二人。取材も終始笑顔で答えてくださいました!
◆市川拓弥(いちかわ・たくや)(※写真左)
1995年(平7)7月12日生まれ。171センチ、122キロ。長野・更級農高出身。社会科学部1年。教員を目指していると言う市川選手は、教職に部活にと多忙な日々を送っている。相撲部では本田選手と一緒に料理もしているそうで、取材前には積極的にお皿を洗う姿も見られた
◆本田煕誉志(ほんだ・きよし)(※写真右)
1995年(平7)11月14日生まれ。175センチ、125キロ。大分・楊志館高出身。社会科学部1年。早大相撲部のコックと言えば本田選手。調理師免許を持っているそうで、本田選手の作るちゃんこ鍋は絶品だそうだ。今後は相撲の腕前とともに料理の腕前にも注目だ