【連載】インカレ直前特集『伝統』第1回 鬼谷智之×谷本将也×堀越豊輝

相撲

 いよいよ今季の集大成である全国学生選手権(インカレ)まで残すところあと1か月となった。インカレの鍵を握るのはもちろん先月行われた東日本学生リーグ戦(リーグ戦)で大活躍を見せた1年生5人だ。今回、鬼谷智之(スポ1=愛知・愛工大名電)、谷本将也(スポ1=鳥取城北)、堀越豊輝(スポ1=東京・足立新田)のスポーツ科学部所属の3人組に、創部100周年目前の相撲部についてやインカレへ向けての意気込みなど早大相撲部にまつわる様々なお話を伺った。

※この取材は9月28日に行われたものです。

一対一の世界

東日本学生リーグ戦で大活躍を見せた堀越

――相撲を始めたきっかけは

鬼谷 父親がやっていたことと、地元の相撲クラブがすごく盛んで小学校の校庭に土俵がありました。それで校庭で遊んでいたら誘われて始めました。

谷本 自分は鳥取出身なのですが、鳥取は相撲がとても盛んでした。それで小学校の時に体が大きかったのでよく大会に出ていていました。小学校の時はサッカーをやっていたのですが、5年生の時に鳥取県で優勝して全国大会に出て、本格的に相撲を始めたのは中学生の時からです。

堀越 自分は小学生の時から身長が結構高くて親に小学生から始めるわんぱく相撲を勧められて始めました。学校で応募して出られる大会にずっと出ていたのですが、小学校3年生の時にたまたまボランティアで相撲クラブの方がいて、体が大きいので誘われてクラブチームに行ったことがきっかけで始めました。

――谷本選手はなぜサッカーから相撲へ転向しようと思ったのですか

谷本 サッカーはチームスポーツじゃないですか。自分がいいプレーをしても負けてしまうことがあるし、自分が悪くても勝つこともあって結構チームスポーツは難しいなと思っていました。相撲は団体戦がありますけど土俵に立ったら一対一なんです。勝っても自分の実力だし負けても自分のせいだから、そういう一対一の戦いが面白いかと思いました。

――相撲をやめたいと思ったことは

鬼谷 自分はないです。今まで小さい頃からずっと相撲をやってきたので強くなりたいので。つらくても、相撲しかないと思っています。

谷本 自分は結構相撲が好きなので、きつい時もいい方向にとらえて、ここで頑張れば強くなるなという感じでやっているのでやめたいと思ったことはないですね。

堀越 小学生の時とかそんなに強くなかったので、自分は何回もやめたいと思ったことあります。でも周りの先生に「続けたほうがいいよ」と言われて流れで今までやってきていますね。

――相撲以外にスポーツの経験は

鬼谷 自分は相撲だけです。

堀越 自分は中学校で水泳部でした。中学校は相撲部がなかったので部活で水泳をやっていました。相撲はクラブチームでずっと続けていました。

――相撲部の雰囲気はいかがですか

谷本 みんなテンションが高いので、自分もそれについていっています。

――相撲の魅力とは

谷本 まず一対一じゃないですか。相撲は自分が勝つしかないんです。作戦とかがないので本当に短い時間ですし、一瞬の駆け引きが勝負なのでそういうところが魅力ですね。

堀越 一対一でやるところと、あとは相撲ならではの肌と肌でぶつかり合う時に感じる相手の息遣い、実際に相手の力を感じ取ることができるし、相手の呼吸に合わせてやるっていうのは相撲にしかないことだと思うので、そこが魅力的だと思います。

鬼谷 ほかの競技と違って数秒で勝負がつくので、一瞬の勝負がすごく魅力的ですね。

――相撲をやっていてよかったと思うことは何ですか

鬼谷 相撲って礼儀を重んじるのでそういう面では相撲を通して学ぶことができていいと思います。

谷本 相撲の稽古は厳しいので辛いですが、そういうのを乗り越えて勝った時やいろいろ達成した時に、きつかったけどやっていて良かったなとすごく思います。

堀越 礼儀もそうですけど、相撲という競技はすごく狭い世界なのでいろいろな人と関わりがあります。自分も高校の時は考えていなかったワセダを受験させて頂き、いろいろな人と関われるところがいいなと思います。

「人間として大きくなりたい」(谷本)

笑顔でインタビューに答える谷本

――ワセダでの4年間の意気込みは

鬼谷 自分たちが4年生になった時の全国学生選手権(インカレ)で1部優勝することです。

谷本 やっぱり相撲で勝つこともそうですけど、人間として成長することですね。相撲で強くなるためにはそれなりに稽古をしないといけないじゃないですか。そこで自分と向き合って稽古することによって自分を高めていくことができると思います。そういう厳しいところを我慢することは、社会に出た時に色々なところで通じると思うんです。自分で努力をして、何かを目標に頑張る過程で、相撲だけでなく精神的な面でもそうですし、色々なことを学ぶことがあると思います。もちろん相撲で勝つことも大事ですけど、そういうところでもっと人間として大きくなりたいなと思います。

堀越 1部に昇格して1部で優勝することです。あとは体育教師になることが夢なので、その夢に向かって大学4年間の間でいろいろなものを吸収して勉強して、自分の夢に近づけるように頑張りたいと思います。

――目標としている選手はいますか

鬼谷 自分の中学時代の先輩なのですが、中大の吉本先輩という選手です。すごく活躍していて憧れで目標にしていますね。

谷本 安美錦は相撲がうまいと思います。相手との間合いを取ることと前さばきとかがうまいので、そういう所は見て勉強しています。

堀越 自分はやはり監督(室伏渉監督、平16人卒=東京・明大中野)です。体型も似ているし、いつもマンツーマンでやってもらっています。

――好きな力士は誰ですか。

谷本 逸ノ城です。自分の高校の先輩なので。応援していますね。

堀越 大相撲は見ないです。

――学校生活はいかがですか

鬼谷 楽しいです。トレーナーに興味があり、体のことを勉強したくてスポーツ科学部に入ったのでそういう点ではいろいろ学んでいます。

谷本 ほかの部にも優秀な選手がいるので、そういう選手と話したり、出会ったりすることで様々な人と友達になることができ、充実しています。みんな意識が高く、競技の話になるとみんな上を目指しているので自分も刺激されます。

堀越 自分もほかの競技の人と関わることによって、全国レベルの人が多いので勉強できるところが多いです。

――勉強との両立はいかがですか

堀越 本当に大変ですよ(笑)。運動の授業を取っています。

谷本 大変ですけど、高校の時も部活をやりながら勉強もやってきたのでそのままですね。

鬼谷 前期は単位も取れていて、稽古もそれなりに充実していたので自分の中ではできていると思います。

――食事はどうしているのでしょうか

谷本 寮で食べられます。朝と夜は寮です。

――お昼ごはんは

谷本 お昼は各自で学食とかその辺で食べたりします。

――1日に稽古はどれくらいしますか。

谷本 大体2時間くらいですね、学校が終わってから。高校では毎日指導者や監督、コーチが来てメニューを考えて練習するのですけど、大学では監督が基本土日にしか来ることができないので自分たちでメニューを考えてやっています。高校では固定されている感じでしたが、大学では自由に自分の思うように稽古できるので、そういうところが違いますね。

――オフの日はどんな生活をしていますか

堀越 みんなでテレビゲームとか。自分は結構服を買いに行ったりとか。

谷本 それは月に1回くらいだろ。

堀越 まあゲームも結構やりますけど、気分転換したいときはやっぱり外で買い物します。

谷本 自分は基本寝ていますね。寝るのが好きなんです。得意なことは寝ることと食べることです。

鬼谷 筋トレですかね。

谷本 鬼谷はずっとYouTube見ています。ずっとパソコン持っています。パソコンの画面にくぎ付けです(笑)。

鬼谷 違うよ。あとは大相撲観戦です。

1部優勝に向かって

大きな相手にもひるまず攻める鬼谷

――現時点での課題は

鬼谷 大きい人と当たるときにはどうしても力負けするので、立ち合いで押されないように立ち合い強化と、体重ももう少し増やしたいです。

谷本 試合で固くなって力が出ないので、稽古でやっていることを試合にもっと結びつけ、試合で力を発揮できるようにして、気持ちの面でも稽古のメニューをもっと充実させて試合に出すことが一番の課題です。

堀越 自分は全体的にほかの人と比べて筋力が全然足りないです。筋力強化と体重をもっと増やしたいと思います。

――インカレに向けてどんな稽古をしていますか。

鬼谷 この前のリーグ戦であまり勝てなかったので一人一人が持っている課題を稽古で克服して、いまも朝稽古が終わって、午後から積極的に筋トレとかもしていますし、すごく良い方向に向かっていると思います。インカレに向けて頑張ります。

堀越 自分はいまは立ち合いの強化と相手に前に出られるより自分が前に出られる、自分から攻められるように相撲をしています。

谷本 試合で自分の力を出せていないので自分の相撲を見直して、取りこぼさないようしたいです。具体的にいうと自分はけっこう頭から行くのですけど、身長が低い相手だとどうしても自分の頭が下がってはたかれたりするんです。だから胸から当たって、安定感を出して取りこぼしのないようにしています。そこを完成させることと、精神的な問題です。稽古の相撲を試合で出せるように、勝ち負けにはあまりこだわらずに自分の形でいつも同じような立ち合いができるようにやっていきたいです。そうしたらそれが試合にそのまま出せると思うので自分の形を見直していきたいです。

――相撲部の100周年を目前に控え、これからどう盛り上げていきたいですか。

谷本 自分たちが最終学年の年に100周年なので、自分たちが中心となって、100周年に向かってやっていかなくてはいけないと思っています。どうしても100周年ということで色々なことを頑張らなくてはいけないと思いますけど、最終的には結果が求められると思います。そこでやはり100周年のときに勝てるように、1年生のことしはしっかりそれを見据えてつくっていかないと、たぶん4年の時に急に勝負しようと思ってもできないと思うんです。現在は日大や日体大が強いですが、そういうところに食い込んでそこを倒せるようにやっていかないと。ワセダは現在2部ですがこれから上を目指して、2年生になったら今度1部に上がり、1部の上位と戦えるようになって、最終的には1部で優勝したいので、そこに向かって一生懸命やりたいと思います。

――今後の早稲田杯ではどんな活動をされる予定ですか

鬼谷 多くの人に相撲を知ってもらえる機会なので今後も継続していってほしいですね。

――鬼谷さんは全国大学・実業団刈谷大会に出場されたそうですね

鬼谷 出身は高知で高校が愛知なのですが、地元高校枠のようなもので個人戦だけ出させてもらいました。ベスト32位でした。

谷本 これは全国大会です。大学生と社会人の実業団も出るので選抜大会みたいな感じで、大学生はあまり出られない大会です。そこで32位になるというのは非常に力があると思います。鬼谷君みたいに全国大会でも勝てる選手になりたいです。本当に尊敬の念しかないです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 平川さつき)

最後は土俵の前で!

◆鬼谷智之(おにだに・ともゆき)(※写真右)

1995(平7)年6月18日生まれ。170センチ、118キロ。愛知・愛工大名電高出身。スポーツ科学部1年。地元高知と高知の鰹が大好きだという鬼谷選手。趣味は筋トレと大相撲を見ることだそうです

◆谷本将也(たにもと・まさや)(※写真中央)

1995年(平7)8月21日生まれ。182センチ、132キロ。鳥取城北高出身。スポーツ科学部1年。得意なことは食べることと寝ることだという谷本選手。食べる量では早大相撲部の中で谷本選手の右に出る人はいないそうです

◆堀越豊輝(ほりこし・とよき)(※写真左)

1995年(平7)10月25日生まれ。187センチ、110キロ。東京・足立新田高出身。スポーツ科学部1年。得意のニャンちゅうのモノマネで取材を盛り上げてくださった堀越選手。最近はアニメにもはまっているとか