天皇賜杯・皇后賜杯全日本選手権 11月8~10日 東京・有明テニスの森、有明コロシアム
冬の気配を感じ始めるこの時期、日本最高峰を争うトッププレイヤーたちによる幾多の名勝負が繰り広げられる。半世紀ぶりに東京開催となった昨年同様に、今年も東京・有明テニスの森、有明コロシアムで天皇賜杯・皇后賜杯全日本選手権が開催された。早大からは矢野颯人(社4=奈良・高田商)・端山羅行(社4=石川・能登)組、吉田樹(法4=東京・早実)・松本翔太主将(スポ3=香川・尽誠学園)組、浅見竣一郎(スポ1=宮城・東北)・安達宣(スポ1=奈良・高田商)組、永原遥太(スポ4=島根・松江南)・津田知紀(令6スポ卒=現かみありクラブ)組の計4組が出場。最終日に残った矢野・端山組はベスト8という結果で本大会を終えた。有明コロシアムの真っ青なステージに踏み入ることはできなかったが、青をまとった二人の姿は観る者の心に深く刻まれた。
試合中の永原
晴れやかなコンディションに恵まれた1日目。永原は昨年までペアを組んでいた高校・大学の先輩である津田とペアを組み、本大会に臨んだ。1回戦では石川裕基・中野寛大組(厚木市役所)相手に、長い我慢のラリーを強いられたが、展開づくりを武器とする永原が正確につなぎ、5-3で勝利。しかし、続く2回戦では序盤に許してしまった流れを覆せず、2-5で敗退となった。吉田・松本組は東北高校の千葉琉翔・國松巧組と対戦。課題として大事に磨き続けてきたサーブ・レシーブを生かし、得点を奪う場面も見られたが、高校生らしい強腰のプレーに抗えず、2-5で初戦敗退を喫した。出場している全選手のレベルが高い天皇杯であるが、矢野・端山組、浅見・安達組は初戦から相手を圧倒し、2日目へ駒を進めた。
サーブを打つ安達
2日目は3回戦から再開された。浅見・安達組は学法石川高校の富塚遥翔・髙島蒼太組と対戦。4-2とリードを奪い、優位にゲームを進めるも、高校生も引けを取らない。1ゲームを返されたが、抜群のコンビネーションでファイナルゲームに持ち込ませず、5-3で勝利した。続く4回戦でも高校生との対決となった。浅見の後輩の水木洸・松田拳弥組 (東北高)だ。両者攻めの姿勢で、序盤は拮抗(きっこう)した展開となったが、2-2から一気に引き離し、そのまま5-2で白星を挙げた。最終日3日目に進むことのできるベスト8が懸かった5回戦では橋場柊一郎・菊山太陽組(法大)と対戦。全日本学生選手権(インカレ)での決勝の再現となった。序盤から橋場のシュートボールと菊山の隙のないボレーに圧倒され、二人らしいテニスができず。1ゲームも奪えず、ストレートで敗戦した。4年間の目標として「天皇杯で優勝争いに絡みたい」と話していた浅見。今大会はベスト16で、最終日への進出はお預けとなったが、来年は必ず上位に上がってくることだろう。
レシーブをする端山
一方、矢野・端山組は3回戦で藤村拓弥・田村和弥組 (波多クラブ)に5-1で勝利し、品川貴紀・早川和宏組(福井県庁)との4回戦へ。1ー1、2-2と、左利き同士の譲らぬ打ち合いが続いたが、矢野も前で勝負に出るなど、決定力に長けた果敢な攻めで勝利を収めた。5回戦では塩田顯・松本炎組(京都第二赤十字病院・ワタキューセイモア)と対戦。矢野の左手から繰り出される強打と端山の渾身のレシーブやスマッシュで、リードを取るも、精細なコントロールと隙を突く飛び出しで対抗され、ファイナルゲームにもつれこんだ。ファイナルゲームではテンポよく決定打を放って得点を量産し、7-3で勝利。ベスト8入りを決めた。
試合中の矢野
最終日となる3日目。曇天で肌寒いコンディションの中、矢野・端山組は上岡俊介・丸山海斗組(Up Rise・one team)との準決勝に挑んだ。相手のミスを誘うプレーでまずは1ゲーム目を奪う。しかし、降り始めた雨による中断も響き、ネットやボール1個分のアウトが徐々に出始め、連続3ゲームを奪われる。ただ、そのまま流れを許さないのが矢野・端山組。ダブルフォワードの陣形を積極的に取り、猛追を見せ、ゲームカウントは3-3に。先行したいところであったが、先に上岡俊介・丸山海斗組に1ゲームを追加され、崖に立たされた。3-4で出迎えた8ゲーム目。レシーブを上手く生かせず、最初に続けて2ポイントを許してしまう。それでも、局面でスマッシュが冴え、3点を連続で返す。ファイナルゲームに持ち込みたい場面であったが、デュースに持ち込まれた。先にアドバンテージを取るも、あと1点が届かない。繰り返されるデュース。最後はアドバンテージを取った相手に、アウトボールを献上してしまい、ゲームセットとなった。
ハイタッチをする矢野・端山組
矢野・端山組がベスト8という結果で終えた今年の天皇杯。インカレダブルスの優勝を逃して臨んだだけに、再び苦しみとも言える悔しさが心に残った大会となった。もちろんコートに立ち、戦った二人の悔しさを超えるものはない。しかし、一線を走り続け、圧倒的な強さと絆を築いてきた二人が、コロシアムの青舞台に立つことを想像し、夢見た人たちがどれほどいるだろう。二人が打ったボールの数だけ、胸を打たれた人が計り知れないほどいるに違いない。素晴らしい敗者がいるからこそ、勝者が輝く。最後まで二人らしいテニスで魅せてくれた矢野・端山組に、惜しみない拍手を送りたい。
(記事・写真 佐藤結)
結果
▽1回戦
津田知紀(かみありクラブ)・永原遥太⑤-3石川裕基・中野寛大 (厚木市役所)
▽2回戦
津田知紀(かみありクラブ)・永原遥太2-⑤宮本颯人・稲田翔太 (東邦ガス・中部電力愛知)
吉田樹・松本翔太2-⑤千葉琉翔・國松巧 (東北高)
矢野颯人・端山羅行⑤-2村田優・菅谷峻大 (羽黒高・山形市スポーツ協会クラブ)
浅見竣一郎・安達宣⑤-1中山大翼・東侑希 (四万十黒尊クラブ・波多クラブ)
▽3回戦
矢野颯人・端山羅行⑤-1藤村拓弥・田村和弥 (波多クラブ)
浅見竣一郎・安達宣⑤-1富塚遥翔・髙島蒼太 (学法石川高)
▽4回戦
矢野颯人・端山羅行⑤-3品川貴紀・早川和宏(福井県庁)
浅見竣一郎・安達宣⑤-2水木洸・松田拳弥 (東北高)
▽5回戦
矢野颯人・端山羅行⑤-4塩田顯・松本炎(京都第二赤十字病院・ワタキューセイモア)
浅見竣一郎・安達宣⑤-0橋場柊一郎・菊山太陽(法大)
▽準々決勝
矢野颯人・端山羅行-上岡俊介・丸山海斗(Up Rise・one team)