インカレチャンピオンここにあり!矢野が悲願の全日本制覇/沖縄インカレシングルス

男子軟式庭球

全日本学生シングルス選手権 9月13日 沖縄県総合運動公園テニスコートほか

 3日間に及ぶダブルスの戦いにピリオドが打たれたこの日、早くもシングルスの試合が行われた。早大からは矢野颯人主将(社4=奈良・高田商)、端山羅行(社4=石川・能登)、浅見竣一郎(スポ1=宮城・東北)の計3名が出場。矢野が最終学年にして初めてのインカレのタイトルをつかみ、有終の美を飾った。

 1年生の浅見は1回戦で福岡大の永江孝二郎と対戦。永江は強豪・高田商業高校出身の3年生エースだ。浅見のサーブから始まった1ゲーム目。浅見の鋭いショットにも難なく対応し、多彩な攻撃を仕かけてくる永江に圧倒され、1-4で先手を取られる。続く2ゲーム目では、浅見も負けじと前後左右に揺さぶりをかけ、デュースに持ち込む。自ら締めることはできなかったものの、流れをつかんだ浅見は粘りを見せ始める。1-2と1ゲームを奪い返すと、勢いそのままに激しい攻防戦を展開。勝負を握るファイナルゲームでは、振り回されるラリーに食らいつくも、的を絞ったシュートボールを浴び、惜敗した。ダブルス後の疲労を感じさせることなく、堂々戦った浅見。ベスト4という目標には遠く及ばず、1回戦で足は止まったが、存在感を見せつけた。常に高みを目指す彼は強くなってまた帰ってくるだろう。

 端山は1回戦で平山綾一 (熊本学園大)、2回戦で合屋颯人 (愛知学院大)相手に白星を挙げ、3回戦へ。3回戦の相手は、同大の清水駿。上宮高校出身の有望株だ。1ゲーム目は凄まじいラリーに苦しむも、2ー3からデュースに持ち込む。アドバンテージを取られてから奪い返し、アゲインとなるも、機先を制される。2ゲーム目も、ネットプレーも器用にこなす清水にボールを支配され、1-4で落とす。しかし、ただでは引き下がらない端山。視野を広く、ボールを操り、4-2で3ゲーム目を返す。4ゲーム目を再び奪われたが、4年生のプライドをかけ、2ゲームを連取し、ファイナルゲームへ。追いつ追われつの大接戦を繰り広げるも、勝利の女神は微笑まなかった。ダブルスに続き無念の結果となったが、1-3から追いつき、大勢が固唾をのんで見守る中で冷静にプレーし続けた端山。ゲームセットとともに、降り注がれた拍手は端山が戦い抜いた証拠であった。

 2回戦から始まる矢野は白井大希 (志学館大)を4-1で下すと、3回戦で思わぬ山場にぶつかった。国学院大の2年生・大和昌生だ。矢野の武器であるファーストサーブが3本炸裂し、1ゲームを先取すると、自分のペースでゲームを進め、2ゲーム目も連取。しかし、矢野のミスが出始めると、相手も本領を発揮。続く2ゲームを奪われ、2-2に。先行したいところで、サービスエースを決め、波に乗った矢野は5ゲーム目をものにする。6ゲーム目ではダイナミックなスマッシュを決めるも、締めることはできず、ファイナルゲームへ。ファイナル序盤は1-1から2-2、3-2と拮抗(きっこう)した展開となった。ファーストサーブをしっかりと収めるも、2点を追加され、3-4と逆転される。しかし、確認してきたサーブとレシーブを生かし、4点を続けて取り、難を免れた。続く準々決勝では3-0と序盤のリードが有利に働き、4-1で黒坂卓矢 (日体大)に勝利。準決勝では橋場柊一郎 (法大)や米川結翔(明大)、幡谷康平(中大)と昨年と同じ顔ぶれがそろった。矢野は幡谷と対戦し、高田商業高校同期対決に。幡谷が追いつかないほど絶妙なコースにボールを落とし、相手を手玉に取る。幡谷のミスも続き、一気に3ゲームをリード。前に上がったところを打ち抜かれ、4ゲーム目を落とすと、徐々にミスが増え、デュースの末5ゲーム目も許す。3-2で迎えた締めたい6ゲーム目。3-1からファーストサーブで猛追し、デュースに持ち込むと、さらにファーストサーブでチャンスをつくりアドバンテージへ。最後は華麗にサービスエースを決め、今大会初の決勝への切符を手にした。

 そして決勝戦。米川を破り、勝ち上がってきたのはシングルス連覇を狙う橋場。矢野にとっては、高田商業高校の後輩であり、同日ダブルス準決勝で三冠を阻まれた、絶対に負けられない相手だ。大事な1ゲーム目。序盤から、サウスポー同士のクロスでの長いラリーが展開される中、落ち着いて橋場のアウトを2本取る。そのままネットミスを誘う安定したボールで2点を追加し、4-1で2ゲーム目へ。リードを広げたいところだったが、橋場のコートを大きく使った配球に苦戦し、2-4で1ゲームを献上した。ゲームカウント1-1。先陣を切ったのは、矢野だった。高い打点から放ったファーストサーブがエースになると、サイドに隙を突くバックハンドの一撃でもう1点を追加。さらにサービスエースをおかわりし、バックハンドで3ゲーム目を締める。橋場にサイドラインを打ち抜かれ始まった4ゲーム目。橋場のダブルフォルトで振り出しに戻ると、今度は矢野がサイドを攻める。流れをつかんだ矢野は審判までもを惑わす白線ギリギリのショットを見せる。「矢野の1ミリ」が決まると、もう矢野は止まらない。橋場のアウトを誘い、4-1で5ゲーム目へ。運命とも言える、サービスゲームだった。激しい打ち合いの中で、矢野が不意を突くショートボールを仕かけ、先制。橋場のレシーブがバックアウトになり、得点を重ねる。橋場のレシーブが今度はネットにかかり、連続サービスエースに。そしてゲームカウント3-1の3-0。魂の込もった一球一球がコートで軌道を描く。動きを変えたのは橋場渾身のミドルショット。反応した矢野がバックハンドを繰り出す。その球が白帯に当たり、ネットを超えた瞬間、矢野のラケットが喜びを表すかのように宙に舞い、4-1でゲームセットを迎えた。

 下級生の頃から、インカレの王座に近い位置にいながらも、あと一歩のところで全日本のタイトルを逃してきた矢野。「死ぬ気で練習してきた結果」が実を結び、最後のインカレで見事に栄冠をつかんだ。残すところは団体戦のみ。「このチームで最初で最後の日本一になりたい」。インカレチャンピオンから日本一の主将へ。全国の頂への、最後の挑戦が幕を開ける。

(記事・写真 佐藤結)

▽1回戦

端山羅行④-0平山綾一 (熊本学園大)

浅見竣一郎3-④永江孝二郎 (福岡大)

▽2回戦

矢野颯人④-1白井大希 (志学館大)

端山羅行④-1合屋颯人 (愛知学院大)

▽3回戦

矢野颯人④-3大和昌生 (国学院大) 

端山羅行3-④清水駿(同大)

▽準々決勝

矢野颯人④-1黒坂卓矢 (日体大)

▽準決勝

矢野颯人④-2幡谷康平(中大)

▽決勝

矢野颯人④-1橋場柊一郎 (法大)