互角の熱戦を演じるも、紙一重及ばず

女子ソフトボール
TEAM
早   大
東京国際大 ×
泉、●宮川、常盤―大内

 雨の影響で日程がずれ込んだ関東大学選手権(関カレ)3日目。順調に1、2回戦を突破した早大は、準々決勝で東京国際大と対戦した。全日本大学選手権(インカレ)の制覇も経験している強豪校相手に互角の戦いを繰り広げ、3回に手塚麻菜美(スポ1=北海道・とわの森三愛)の遊撃強襲適時打で先制する。しかし直後に逆転を許すと、その後は打線が沈黙し追い付けないまま試合終了。1-2で敗れ、吉村正監督(昭44教卒=京都・平安)の最後の大会を優勝で飾ることはできなかった。

 先攻の早大がまず3回に試合を動かした。先頭打者として打席に入ったのは9番・藤井美潮(スポ2=神奈川・平塚江南)。初戦の千葉大戦では2本の二塁打を放つなど打撃でアピールし、この日もスタメンを勝ち取った。その藤井が四球で出塁すると、犠打で1死二塁。得点圏に走者を進め、続く角頼遼香(社2=千葉経大付)も安打を放ち、盗塁を決めて1死二、三塁と好機を演出。そして、1年生ながら3番に座る手塚が打席に向かう。7球目を捉え、遊撃手のグラブをはじく適時内野安打で先制した。しかし、この後が続かない。1死二、三塁と続く好機に大内佳那女子主将(スポ3=千葉・木更津総合)、武内有紀(スポ3=埼玉・星野)が応えられず、この回1点止まり。「最大の敗因だと思っています」(大内)と悔しさの残る打席となった。その後は安打が出ず、1点ビハインドの最終回。先頭の峯口和沙(人3=東京・富士見)がきれいに三遊間を破り、久々の安打で出塁。しかしまたしても後が続かず、最後は藤井が9球粘るも併殺に倒れ試合終了。3回に畳み掛けられなかったことが最後まで響く結果となってしまった。

3番に定着し活躍した手塚

 先発の泉花穂(スポ4=香川・高松南)は3試合連続で先発を任され、無難に2回を無失点に抑えた。先制し、大事な3回のマウンドを託されたのは宮川眞子(スポ2=福島・帝京安積)。先頭に安打を許すも後続2人を内野ゴロに打ち取り、2死一塁、となるはずであった。しかし2死目を取った後プレーが切れていなかったため、それに気付かず早大の選手たちがマウンドに集まる間、一塁走者が一気に三塁まで進塁。思わぬかたちで2死三塁のピンチを迎える。続く2、3番に連続で四球を出し、これで2死満塁。この重要な場面、絶対的エース・常盤紫文(スポ3=千葉・木更津総合)に交代か――。しかし吉村監督は宮川を続投させる。「常盤が抑えてしまったら、宮川の成長はない」。続投した宮川は4番打者に逆転の適時打を放たれたが、これでまた一つ大きな経験を積めた。4回からは常盤が登板し、3回を投げて無失点。エースの実力は示された。泉はこの試合で引退となり、今後は2人を中心として夏のインカレまでを投げ抜く。宮川がこの冬でさらに成長を遂げ、常盤とともに絶対的な2本柱を形成したいところだ。

さらなる成長に期待のかかる宮川

 実力は拮抗(きっこう)していただけに、紙一重のところで敗北となってしまった。またこの試合では記録に表れないミス、ボーンヘッドも多く、改めてソフトボールという競技について考えさせられる機会にもなっただろう。ただ、負けたとはいえ、この時期にこのミスを犯せたというのはかえって収穫でもある。この後早大は早慶戦を戦ってオフに入るが、この関カレで経験したことは間違いなくオフに向けての重要な材料になるはずだ。控え選手の躍動、強固な投手力の再確認、そして打力強化の必要性。インカレ優勝という最終目標に向け、伸びしろはまだまだ多く残されている。まずは早慶戦に勝利し、充実のオフを過ごすための弾みとしたい。

(記事 中丸卓己、写真 本田京太郎)

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コメント

吉村正監督(昭44教卒=京都・平安)

――きょうの女子部の戦いぶりはいかがでしたか

あんなもんでしょう。一番心配していたのは泉なんですよ。インカレが終わってからあんまり私の目の前でしっかりとしたピッチングをしていなかったので、打たれるとしたら見てない泉なんじゃないかと。「体力づくりはしっかりしておきなさい」と言ってあって、しっかりついてましたね。試合にも出ていなかったので、試合勘は弱いチーム相手だったけどおととい、きのうと2イニングずつ投げさせて。それでけさ見たらボールのキレというか、クッと来るものがしっかりあって、良かったなあと思って。だからきょう泉は良く投げてくれたと思いますね。きょうからの試合はまあまあ互角で、結果だけを見るとおととい、きのうからの心の整理、準備ができていなかったというのが一つ。あとこれは学生にも言ったんだけども、あんまりこの言葉は使いたくないんだけれどもボーンヘッドがあった。宮川の時、せっかく2死一塁にしたのに三塁まで行かれてしまった。本来ピッチャーズサークルにボールがあるときは進塁できないんですけどもね。私も若かったら抗議するんだけども、これで最後だからって抗議しなかったんですよ。というのも、あれはアメリカの本物のルールブックにはないんですよね。遅延行為をしたら進塁できるんだけども。日本だけなんですよ、1死取るごとに集まるのは。私はあまり好きじゃなかったんだけども、それで盛り上がるならいいかと思って、その辺もルーズになっていたんですね。まあそこは東京国際大もギャンブルで走ったんでしょうね。しっかりとしたソフトボールをやろうとするならば、それは走りますよ。で、うちがそういうことをやったら勝てないんですよ、ああいうとこには。というのは練習量はあっちは3、4倍ありますし。そういうところに勝とうというなら、ガンガンと打ってピシッと抑えるしかないんですよ。その方が私も体力が持つんや(笑)。昔みたいに一球ごとに指示すれば勝つ確率も上がるかもしれませんが、勝つ確率を高くしたからといって負けることもあるから。だからしっかり打って打ち崩してしまえ、それでピッチャーがしっかり抑えればいいと。きょうポイントになったのはそこで、(3回に)一、三塁になったじゃないですか。タイム取ってマウンドに行ったら宮川が顔面蒼白だったんですよ。これが東日本大学選手権とかインカレだったら常盤に代えてたんですけど、ちょっと待てと。2死で常盤が抑えてしまったら、宮川の成長はないでしょ。このオフでピッチャーがどれくらい努力してうまくなるかが決まってくるので。私も長くやってるから分かるんですよ。抑える確率が50パーセント、打たれるのも50パーセント。二人に一人抑えればいいよと。追い込んで、そこからドロップを見せたりしていけば良かったんだけども、まだ細かいコントロールが足りなかったですね。それで四球を出してしまって。次は4番で、その時に私がサードを下げたんですよ。その時ショートの武内は下がらなくて。2死満塁だからフォースプレーでいいんですよね。そこを下がると相手もやりづらいんだけども、そういう連携がうまくいかなくてね。あとは峯口が一塁にいる時にファールフライでタッチアップしなかった。あれはボーンヘッド以前で、ソフトボールを知らないからこそ出てしまって、しんどいなと思いましたね。

――大会全体を見ると、いつもは控えの選手たちが活躍する場面もありました

1カ月くらい前、鎌田(彩花、文1=神奈川・平塚江南)とか西本(彩香、文構2=大阪・早稲田摂陵)とか窪田(麻未、人2=神奈川・大和)とか、普段出てない人を出すよと言っていたでしょ。それで今回出して、しっかりやってくれましたよね。

――きょう9番に入っていた藤井選手も9番としていい働きをしていたと思います

最初の千葉大戦で二塁打2本打ったじゃないですか。きのうは出さなかったんだけども。それできょう、スタメンを決める時に私が藤井という名前を出して。活躍している人間を使わなきゃ、活躍しようという気にならないじゃないですか(笑)。それで使ったわけですよ。いいでしょ? ミートはうまいし、賢いし、集中力もあって信頼できるプレーヤーですよ。背が低くてきゃしゃだからそんなに打てないかなと思うんだけど、どっこい、いい選手ですよ。いい活躍をしてくれましたね。

――先生はこれでユニフォームを着てベンチに入られるのが最後ということでしたが

あまり考えないようにしているんですよ(笑)。さりげなくユニフォームを、脱ぐというよりも着ない、でいいかなと。

――ここまでの監督生活を振り返っていかがですか

選手に育ててもらいましたよね。教授生活でも学生によって育ててもらったというのは常に思っています。それがなかったら早々と辞めていただろうし、こんなに長く続けていなかったでしょう。ワセダにいさせてもらえることを感謝していましたし、本当にいい大学だと思ってます。いい学生が確実に入ってきてくれて。あとは未熟な学生が入ってきて、出ていくころにはガラッと変わっている喜び。それも毎年味わわさせていただいて。でもこれからもあるから、それを私に代わってできる人がまだいないわけですよね。これは継続していかないとこういう喜びもないですから。ワセダの魅力的なチームを保ち続けていかなければいけないなと思いますね。ただボケたり、邪魔になるなと感じる前には身を引こうと思っています(笑)。

大内佳那女子主将(スポ3=千葉・木更津総合)

――きょうの東京国際大戦はいかがでしたか

チーム全体とはかけ離れてしまうんですけど、1死二、三塁の場面で4番として打てなかったのが最大の敗因だと思っています。

――チーム全体としてはいかがでしたか

しっかりとバットは振れていましたしヒットも何本か出ていたのですが、ソフトボールの知識力というのがまだまだ欠けていて、タッチアップを取るべきところで取れなかったり、相手のランナーに空いているベースの隙を突かれて走られてしまうというような知識の差がチームとしては敗因かなと思います。

――走者に進塁を許した場面はプレーが切れていなかったのですか

そうですね。ピッチャーズサークルでピッチャーが捕球するまでに、(走者は)戻っていくことはできないんですけど行く意思を最初から示していれば進むことができて。それを野手陣が戻りさえすればいいというふうな勘違いで、「何で走っているんだろう」となって把握できていなかったという感じです。

――盲点だったということでしょうか

そうですね、あまりああいうケースはないので。でも走ってくるのは目に見えていたというか、きのうの時点で隙を突くようなランナーワークをしてくるというのは十分警戒していた中でベースを空けてしまったというのは、チームとしてはきのうの反省ができていなかったのかなと思います。

――これで敗退となりましたが、関カレ全体は振り返っていかがですか

1、2回戦は3部と2部のチームということで、いろいろな選手に出場機会があったんですけど、普段出場機会をあげることができていない選手が結果を残してくれたというのはチームの総合力が上がっているという証拠だと思います。でもそれと同時にきょうの試合は、先生がミーティングでもおっしゃっていたのですが「おととい、きのうの試合はきょうの試合と違う。ここからが関カレだ」ということだったので、まだまだ実力が足りないというのを痛感した大会でした。これからの冬の過ごし方を考えて、春・夏といい結果が残せればいいなと思います。

――オフ前最後の公式戦でしたが、オフではどのようなことを重点的に強化していきたいですか

うちの代々伝統というわけではないですけど、うちのチームカラーとしてはやはりピッチャー陣は非常にまとまっていて、投手力でいったら他に引けを取らないと思うので、毎年のことですが打力かなと考えています。

――次の目標は何でしょうか

本当は、先生が公式戦で30番を着て出られるのが最後だったので、先生に有終の美を飾ってもらいたいということで、リーグ戦が終わってから1カ月は関カレでの優勝を目標にやってきたんですけれども、それが終わってしまったので。先生が30番を着てベンチに入られることはもうないんですけれども、これからも携わっていただけるということなので、また今年度にインカレ優勝すると10年ぶりになるので、しっかりと優勝に向けて頑張っていきたいと思います。