【連載】インカレ直前特集『prove ~証明せよ~』 第3回 芹田泉紀女子主将×斉藤みく乃女子副将×石川沙恵

女子ソフトボール

 ソフトボール部の4年生は例年、夏に開催される全日本大学選手権(インカレ)を最後に引退する。昨秋から約1年、チームは芹田泉紀女子主将(社4=千葉経大付)、斉藤みく乃女子副将(スポ4=埼玉・星野)、主務の石川沙恵(社4=静岡・常葉学園菊川)といった首脳陣を中心に運営されてきた。入学以降ずっと続いてきた早大でのソフトボール生活も、いよいよ終わりの時が近づく。最後の大舞台であるインカレを目前に控えたいま、不動のレギュラーとしても活躍する三人の胸中に迫った。

※この取材は8月19日に行われたものです。

「信頼し合っているからこそ言い合える」(斉藤)

不動の一番打者としてチームに勢いをもたらす斉藤

――まず今シーズンを振り返っていかがですか

芹田 冬に練習したバッティングが春に成果として表れて、みんな必死に練習したので成長したなと思いました。また、1年生が4月から加わったことで、人数はあまり多くはないですけど少ない中でお互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、一人一人がしっかりレベルアップできているかなと思います。

斉藤 私自身が、後輩として思い切ってやっていいと言われるよりも一番上の代になった方がやりやすいといいますか、プレーの面でいうと私的にはすごくやりやすかったので、実際に結果とかにも出てきたというのがうれしかったです。後は、芹田も言っていましたが少ない人数で、私のポジションは外野手ですけど外野も人が少なくて、その中でちょっとずつ目標を達成していくような練習方法をずっとしてきたんですけど、継続して同じことをずっと続けていく練習が実を結ぶとやっぱりいいかなと思います。

石川 私は昨年の9月に主務になりまして、書類づくりとかいろいろな仕事があって練習に参加できないこともあったんですけど、練習に参加できないことは私にとって選手としてはマイナスなのかもしれないですけどチームにとってプラスになればいいなと思って。春季リーグ戦や他の大会でも、私自身が活躍したかといえばそこまでではないですが、春リーグで優勝できたり東日本(東日本大学選手権)でも3位になれたというのはうれしかったことなので、インカレが終わるまでも自分の仕事をきちんとこなして、たとえ自分が活躍できなくてもチームが勝てるようなサポートなどをこれからもしていきたいと思います。

――4年生から見て、ことしのチームはどういった点できょねんと違いますか

芹田 先輩後輩が非常に仲良くて。もちろん上下関係がないとかではないんですけど、しっかりコミュニケーションも取れてたり、プライベートでも遊びに行っていたり、仲が良いというのはいいところだと思いますね。

斉藤 まあきょねんも仲は良かったですよ(笑)。多分それが、具体的にプレー面とかでも注意し合える仲というか。もちろん仲が良いのはソフトボール部がずっとそうなので。信頼し合っているからこそ言い合えることもあって、後は何より後輩が結果を望んでくれて、大会とかに対する思いも伝わってくるので、ありがたいです。

石川 これまでのチームにはスター選手がいまして、「この人ならホームランを期待できる」だとか、そういう場面が多かったんですけど、このチームになってからは吉村先生(吉村正監督、昭44教卒=京都・平安)に「1試合ごとにヒロインが変わる」というお話をいただいていて、特にすごく秀でた選手がいなくてもみんなで力を合わせて勝っていくというスタイルが、いままでとは違うと思います。

――春季リーグ戦も制しましたが、何より成長したのがバッティングだと思います。きょねんに比べるとどういった点が成長したと思われますか

石川 やっぱり吉村先生のおかげかなと。

芹田 きょねんまでは先生も忙しくて、打撃指導もあまりしていただけなかったんですけど、今年度はすごく指導してくださって、個人指導などもあったので着実にレベルアップしていると思います。

――斉藤選手は1番打者として何を心掛けていますか

斉藤 先生との共通理解ができるようにしていて。私は1番バッターとして最初に相手ピッチャーを見るので、できるだけ多くの球を投げさせて、私以降のバッターが打ちやすくなるような打席を1打席目からつくれるようにと心掛けています。先生からも、多くボールを投げさせて凡退するのなら仕方ないということも言っていただいているので、そこだけは意識しています。

――逆に石川選手は下位打線としては

石川 私は7番や8番を打たせてもらうことが多いのですが、先生からも「7番8番は、3番4番の次の、裏の3番4番だ」と言われていまして。例えば上位打線で点が取れなくても、その後の5~8番で点を取れるチームが強いという風に言っていただいて、下位打線でも私自身は3、4番の気持ちで打席に入れていますね。

――芹田選手は表の4番ということですが

芹田 はい(笑)。斉藤がピッチャーの球を投げさせてくれるので、私たちとしては「このピッチャーはこういうピッチャーだ」というのが良く分かって、ありがたいですね。初回に誰かが塁に出れば必ず私に回ってきて、初回に点を取れればワセダのペースにも持っていけるので、絶対に(走者を)かえすという気持ちでやっています。

――お話にも出ましたが、吉村監督は皆さんにとってどういった存在でしょうか

石川 私にとっては、何でもお見通しなんだなって思うことが多くて。例えば主務でいろいろな話し合いをしても、ちょっとしたミスでもすぐに見抜いて指摘をくださるので、私自身も先生に対して真摯(しんし)な姿勢で書類を持っていったり、前々から準備を重ねて先生が見ていないところでもちゃんとしていようと思えます。ソフトボールを教えてもらっている以外の時間でも成長できているなと思えますね。

芹田 私はプレー面でお話しすることが多いんですけど、逆に怖いですね。私が考えていて言おうと思っていたことを先生から先に言っていただいたりだとか、最近は先生と考えが一致することも非常に増えてきているんですけど、それはあまり先生が練習に来られなくても選手一人一人のことをよく見ているなと感じています。こっちから選手の状況を伝えなくても先生が先に知っていたりとかするので、そういう面ではすごい人だなと感じています。

斉藤 先生に限らず、人と人が信頼し合うためには、私から信じても相手が信じていなかったらギャップを感じるじゃないですか。それが3年生くらいまでは少しあって。先生は4年生をすごく大切にする方で、4年生になってからは表に出して私たちに信頼を伝えてくれるので、4年生になって先生の偉大さとか教えの素晴らしさとかをもっと学ぼうと思ったり、先生の存在の大きさを感じています。

石川 いま思ったんですけど、私は先生に認めてもらいたいんだなと思いました。だからこそ、何か頼まれたときもその次まで準備して先生を驚かせたいというか、認めてもらいたい欲があったんだなと思いました(笑)。

「目標があるから固まって強くなれる」(石川)

主務兼レギュラーとしてグラウンド内外で活躍する石川

――皆さんはオフの日はどう過ごされていますか

芹田 本当に人それぞれだと思います。基本的に私は家から一歩も出ないこととかあって、どこも行かないみたいな日もありますね。めっちゃ言うの恥ずかしいんですけど(笑)。撮りだめしてたテレビを見たり、パソコンだったり、画面と向き合ってますね。ベッドの上から一歩も動かなかったり、だらだらしてます。

斉藤 あまり法則性はないかもしれないです。疲れている間のやっと来たオフとかだと、芹田みたいに一歩も出ないこともありますし、みんなで遊びに行く予定が立っていればどこかに行ったり。

石川 私もそんなに決まってないんですけど、4年生になってからはインドアで過ごすことが多いですね。

一同 (笑)。

斉藤 もう日光に当たりたくなくなっちゃいましたね。

芹田 外に出るのが面倒くさくなっちゃって。

――後輩と遊びに行くことなどはありますか

芹田 夏だったらバーベキューしたり、それ以外でもボウリングに行ったりはしますね。

――それぞれ主将、副将、主務と役職に就いていらっしゃいますが、就くことは予想されていましたか

斉藤 そこまで予想外ではなかったですね。

――では、お互いに見て印象はいかがですか。まずは芹田主将を見てどうでしょうか

芹田 そんなこと言われるの初めて(笑)。

斉藤 ある意味あまり人間味がなかったりするので(笑)。偏って情を与えちゃうような人ではなくて、誰にも分け隔てなくできるので、そういう面では主将向きの人ではないかと思います。

石川 プレーとかしてても、その場で悩みすぎるとかいうことがないので。主将がうまくいかなくて悩んでいたらチームもがたがたになってしまうと思いますが、そんなに表立って出すことがないので、それはチームにとって良いと思います。

斉藤 やっぱり人間味がないんだよ。

石川 そうかもね。

芹田 おい(笑)。キャラです、キャラ。

石川 実は裏ではめっちゃ悩んでたりしているかもしれないですけど、表に出さないところがすごいと思います。

――斉藤副将はどうでしょうか

芹田 アドバイスとか指示もすごく的確に出してくれるので、私がいないときに斉藤に任せても全然支障はないですね。

石川 芹田も言ったようにアドバイスとかが的確で、スパッと分かりやすいですね。

――では石川主務はどうでしょうか

斉藤 いや、もう適任です。

芹田 本当に主務って感じですね。仕事もきっちりやるし、すごいよ。私たちの知らないところで活躍してくれているので、裏から支えてくれているのはすごく感謝しています。

斉藤 もうそれに尽きますね。

――4年生同士の雰囲気はいかがですか

芹田 もう個性的過ぎて。

石川 まとまれば強いですけどまとまらなかったらみんなばらばらなので。それでもインカレという目標があるから固まって強くなれるかなと思います。

芹田 個性的なのはすごく良いことだと思うんですけど、たぶんインカレ優勝という目標が無かったらここまで一つになれていないという部分もあって。でも個性的でもいいかなと思うこともあって、それぞれ良い部分があるので。それをプレーでも生かしてくれてたりするので、そういうところは良いと思います。

「全員の力で勝ち上がっていく」(芹田)

主将、四番打者とチームの命運を握る芹田

――ことしのチームの強みはどこにあると思いますか

斉藤 スター選手がいないところですかね。後は、どの人から始まっても点が取れる打順を、先生が中心となってつくってくれているので、その打順を私たちが生かさなきゃいけないというのもあるんですけど。

芹田 それこそ本当にスター選手がいないというところにつながってくると思います。

――逆に、課題はありますか

斉藤 いま言ったことを生かすにはやっぱり全員が打てなきゃいけないので、バッティングですかね。

石川 バッテリーがしっかりしていて、点をあまり取られないチームだと思うので、だからこそバッティングが課題かなと思います。

芹田 あと一歩のところで点が取り切れなかったりするので、打順はできているんですけど本当にあと一歩のところを詰めていかないといけないかなと思います。

――東日本が直近ではありましたが、インカレに向けて収穫などはありましたか

芹田 課題がはっきりしたというのは収穫だったと思いますね。打撃強化は必須だなと感じました。バッテリーを中心に点を取られない形にはなっていると思うので、そこで自分たちがどう点を取っていくかというのを考えないといけませんね。まだ自分たちの考えじゃ浅いです。

――その打撃強化に向けて、どういった練習をこれからされますか

斉藤 やっぱり打つしかないですね。芹田が言った考え方ももちろんですけど、とにかくいっぱい打つこと。春もそうやっていたから結果に出たと言ってもいいくらいバットを多く振っていたので、ここからはとにかくボールを打って、バットを振ることが大事だと思います。

芹田 うちのピッチャー陣はどこへ行っても通用するような選手がそろっていて、それを練習で打てるようになればどこのピッチャーでも打ち崩せるという自信はあります。

――ご自身のアピールポイント、また逆に課題などはありますか

斉藤 私はソフトボールを始めた時から自分の強みは脚力だと思っていたので、そういうバッティングスタイルをずっと続けてきたんですけど、大学3、4年生になってからは「自分のアピールポイントは脚力だけじゃない」というのをアピールポイントにしたくて。先生にバッティングを教えてもらってから強い打球を打つこととか遠くに飛ばすことの楽しさも分かったし、それによって私にチャンスで回ってきたら代打、ではなくて斉藤のまま、それで走者をかえせるバッターになるというのをずっと意識していて、それをインカレで発揮できたらいいと思います。課題は、もちろんバッティングしたからといって自分の脚力を生かせなくなるわけではなくて、セーフティーバントをしてもセーフになれるし、打ってもヒットを打てるし、守備範囲も広いしっていう選手が最終的には理想なので、インカレに向けてはバントの練習もきっちりしたいし、バッティングの練習もきっちりしたいし。守備でも少しでも遠くの打球が捕れるように、練習をしていきたいと思います。

芹田 前まではアピールポイントはしっかりミートして間を抜くというバッティングスタイルだったんですけど、冬の練習を越えて少し遠くに飛ぶようになって。でも基本的にはいままでのスタイルと変えないで、しっかり走者をかえすことだと思っています。後は、ここぞという場面での一打というか、精神面の方は自分でも結構強いと思いますね。あまり緊張もしないですし。例えば、ワセダがすごいピンチのときとか、ここで1点取らなきゃ負けるというときに自分が打席に立ったら、すごく燃えますね。少しは緊張しますけど、やっぱりそこで打ったらかっこいいじゃないですか。逆に力入りすぎないで打てたりするので、そこは強みかなと思います。課題は、初回に1~3番が作ってくれたチャンスでしっかり打つことが課題ですね。初回に点を取らないといけないので。いままではかえせないこともあったんですけど、そこでしっかり気持ち入れて一本打っていきたいなと思います。

石川 私は小学校からソフトボールをやっていて、ずっと背が高かったので周りの人と比べても飛距離が出るというのが強みだったんですけど、大学に入ってから腰を痛めることが多くなって、思い切りバットを振れない時期というのがたくさんあって。それで吉村先生から、いまやっているバントの構えから打つというのを教えてもらって、そうするとあまり腰を使わなくてもバットを振れるので、そういう打ち方を練習してきました。高校時代までのように飛距離が出なくても、集中してミートをするという点がいままでと比べて伸びてきた点かなと思います。課題は、東日本では三振してしまうことが多くて、そうするとベンチに帰ってから悩んだりとか、「あの時こうしていれば良かった」と思ってしまって守備に行く時も少し考えてしまうことがありました。インカレでは、自分が三振しても誰かが打ってくれれば勝てるし、チームが勝てればそれが一番最高なので、自分が駄目なときの切り替えというのが課題だと思います。

――インカレの初戦は強豪の園田学園女大ですが、決まった時の印象はいかがでしたか

芹田 園田か…って感じでした(笑)。私たちが入学した1年生の時もインカレで園田に負けて、2年生の時も負けてっていうちょっとした因縁があるので、そういう面では絶対に勝ちたいなと思います。

――そういった強豪校を倒すには何が必要だと思われますか

芹田 チャレンジャー精神ですかね。ワセダもリーグ戦は優勝しましたけど、そこで気持ちが浮き足立っていたら良くないので。インカレで対戦する大学は勝ち抜いてきているので、そこに自分たちが挑戦者のつもりで立ち向かっていかなきゃいけないと思います。

――特に東京富士大には現時点で1勝2敗と負け越していますが、意識はしますか

斉藤 富士大も園田もいっぱい練習しているチームじゃないですか。私たちってその人たちに比べると全然練習できないというか時間がないので、いっぱい練習している人たちに勝つには、先生も最近おっしゃっているんですけど一球に対する精度とか勝負強さが必要かなと思います。「その一球を見るのが大事だ」と先生はよく言うんですけど、数多くやるのではなくて、その一球、その打席、その瞬間に対する勝負強さとか精度が大事なんだと思います。

芹田 特に富士大に負けるのは悔しいですね。同じリーグというのもありますけど、やっぱり負けるのはみんな悔しがります。

――では最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします

芹田 インカレはこのメンバーでやる最後の大会でもありますし、一人一人この先ソフトボールをやらないという人も4年生には多いので、インカレに懸けているものは一人一人大きいと思います。やっぱり自分たちにはスター選手がいないので、全員の力で勝ち上がっていくしかないです。チーム一丸となって、全員で一戦一戦戦い抜いて、ことしこそは絶対にインカレ優勝したいなと思います!

石川 インカレに向けてはもう勝つことだけだなと思います。私は小学校の頃からソフトボールをやっていて全国大会にも何度か出ているんですけど、優勝経験がないので、大学4年生の最後の年には日本一になりたいと思っています。そのために、晩ご飯が出なくなったりしたら困るので(笑)、主務の仕事を最低限のこととしてこなして、そこからインカレの勝負に挑んでいけたらと思います!

斉藤 私はずっとソフトボールをやっている中でこういう大会への意気込みなどで一貫していることがあって。自分勝手なんですけど、常に自分が活躍したいと思っています。自分の活躍は自分のためだけじゃなくてチームの勝利にも絶対つながるので、自分が活躍したいです。活躍すれば悔いは残らないので、活躍したいです!

――ありがとうございました!

(取材・編集 中丸卓己)

三人で『W』をかたち作ってくださいました!

◆芹田泉紀(せりた・みずき)(※写真中央)

1994年(平6)1月11日生まれのA型。163センチ。千葉経大付高出身。社会科学部4年。女子部主将。内野手。「肝心なときにかむ」、「ミーティングでも何を言っているのか分からない」と他のお二人から酷評されていた芹田選手でしたが、最後に意気込みをうかがった際にはビシッと一発で締めてくださいました。インカレでも、ここ一番での主将の勝負強さに注目です!

◆斉藤みく乃(さいとう・みくの)(※写真右)

1993年(平5)11月1日生まれのO型。164センチ。埼玉・星野高出身。スポーツ科学部4年。女子部副将。外野手。部内で流行していることに、部員の美意識が高いことを挙げてくれた三人。中でも斉藤選手はそのパイオニアで、色の白さは部内でも群を抜いているそうです。「かわいい後輩たちがまねします」と、ご本人も得意げな姿が印象的でした!

◆石川沙恵(いしかわ・さえ)(※写真左)

1993年(平5)11月1日生まれのA型。168センチ。静岡・常葉学園菊川高出身。社会科学部4年。外野手。飛行機が好きだという石川選手。1、2年生のころは、オフには一人で空港に行ってずっと飛行機を眺めていたそうです。主務として尽力した3月のハワイ遠征成功の裏には、この無類の飛行機好きも生かされていたのかもしれません!