【連載】インカレ直前特集『誇り』 第1回・女子部 泉花穂×常盤紫文

女子ソフトボール

 この夏、最も熱い戦いが間もなく幕を開ける。東日本大学選手権(東日本)を終え、いよいよ全日本学生選手権(インカレ)を残すのみとなった。大会優勝校を相手に、悔しい初戦敗退を喫した昨年のインカレから1年。雪辱を果たし、学生日本一の座を勝ち取るべくチームは練習に励んでいる。インカレ制覇に必要不可欠なのは泉花穂(スポ3=香川・高松南)、常盤紫文(スポ2=千葉・木更津総合)両投手の活躍だ。二人の持つ『投手』へのこだわりやインカレへの思いとは。優勝のかぎを握るお二人を直撃した。

※この取材は8月16日に行われたものです。

「楽しいがワセダらしさ」

普段から仲のいいお二人

――オフの日の過ごし方は

 オフの日は遠出します。家にいるよりよりは。電車で1本の池袋とかしか行かないんですけど。

常盤 私は家に引きこもっています。ベッドの上で生活します(笑)。

――オフの日に部員の皆さんで遊ぶことはありますか

 この前バーベキューに行きました。1~4年生ほとんど半分以上で。飯能に行ってやってきました。

――お互いの第一印象はいかがでしたか

 声がかわいいと思いました(笑)。あと目が大きいなと。なんかかわいかったです(笑)。

――常盤選手から見た泉選手は

常盤 正直言うと、話しててばかっぽいなって。

 むかつくわそれ(笑)。ぽいしょ?ばかではないでしょ?

常盤 ばかじゃないですか(笑)。

 お前には言われたくないわ(笑)。

常盤  いやいや良い勝負ですよ。

――時間が経って中身も知った今、印象は変わりましたか

 ばかはそのままなので何も変わってないです(笑)。このままでした。この前も朝から練習だったんですけど昼に終わって、そこから5時くらいまでずっと二人で動画を撮るアプリを使ってここで撮影やってました(笑)。先輩のために撮ってたんですよ。濱田さん(のぞみ、人4=徳島・脇町)のためにね。

――ワセダに入学した経緯は

 私は姉がいて、兵庫県の大学に通っていたんですけど、本当はその大学に行きたくて。ずっとそこに行くそこに行くって言っていたんですけどワセダに誘っていただいたんです。試合がすごく楽しそうで、ちょっと頑張ってみようかなって。

常盤  自分はばかでも入れるんだっていうところを見せたくて。ありえないでしょっていうところを。

――ソフトボールは大学でも続ける予定でしたか

 はい。推薦で取ってもらったので、自分たち二人は。

常盤 はい。

――入学当初のワセダの印象は

 後輩と先輩が仲良しという印象が強かったです。あと試合中がすごく楽しそうで。みんなヒットとか打ったらイエーイとか試合中でもやっちゃうから楽しそうだなって。

――それは他大にはないワセダの特徴ですか

 自分は初めて見ました。試合中でもあんなことして良いんだって。

――常盤選手はいかがですか

常盤 一緒ですね。

――高校と大学で違うところはありますか

常盤 高校の時は楽しくではなく、怒られないようにということを第一にやってきたので。ワセダはそれと比べて楽しいです。

 確かに。あと高校までは全部先生がメニューとか決めるんですけど、大学に入って全部選手たちが全員で決めるので、先輩たちはすごいなと思っていました。学生主体ですね。

「堂々としたピッチャーに」

東日本では粘り強い投球を見せた常盤

――お二人はソフトボールを始めた時からずっと投手一筋ですか

 他のポジションだったこともあります。一度肩を壊して肩甲骨を痛めてから上投げしかできなくなって、その時センターで外野を守っていたことがあります。半年くらい外野でした。中学生の時ですね。

――常盤選手は

常盤 私は初めはレフトでした。レフトでレギュラーで出ていたんですけど、ピッチャーの先輩がいなくなるのでやってみないかと言われてやってみたら楽しくてピッチャーを始めました。

――泉選手はけがをしていた時は早く投手に戻りたいと思われていましたか

 はい。でもその時は姉がいて、自分が1年生の時に3年生でエースピッチャーだったんです。姉が打たれ始めたら私に代わるという感じだったので、その時は「お姉ちゃん頑張れ」くらいにしか思っていませんでした(笑)。

――ソフトボールを始めたきっかけはお姉さんだったのですか

 はい、そうですね。あと、父が昔野球をやっていて、ピッチャーだったんですけど野球肘になってしまったんです。それで私たちにピッチャーをやってほしいという願いもあって。

――常盤選手がソフトボールを始めたきっかけは

常盤 くだらなくても良いですか(笑)。小学校で絶対に部活に入らなくてはいけない決まりがあったんです。バスケットかソフトボールの2択しかなかったんです。バスケは絶対疲れるじゃないですか。それを考えたらソフトかなって(笑)。

 バレーとかなかったんだ(笑)。

常盤 あ、あったかも(笑)。運動はその3つかな。

――自分の意志というよりは仕方なくソフトボールを始めたのですね

常盤 そうですね。

――始めたばかりの頃のソフトボールは楽しかったですか

常盤 いえ。帰りたかったです(笑)。苦痛でした(笑)。

――投手というポジションは大変なことも多いとおもいますがいかがですか

 打たれたら投げたくないよね。

常盤 下をずっと見ていたいです(笑)。ロージンとのにらめっこが始まっちゃう。上向けなくて(笑)。

 私たぶん遠くの方見てる(笑)。でも好きですよ!

――どこが投手の魅力ですか

 責任もプレッシャーも多いですけど、自分で試合を決められる。自分で頑張りさえすれば試合に勝てます。

常盤 はい、その通りです(笑)。

――常盤選手は何か投手の好きなところはありますか

常盤 三振?

 三振取った時はどやって感じですね(笑)。

――ゴロで打ち取るよりは三振の方が気分が良いですか

 三振の方が良いですね!

――空振りと見逃しは違いますか

 私は空振りかな。

常盤 私は見逃しかな。

 常盤は空振りが取れるピッチャーなので。ライズとかでね。自分は打たせて取るピッチャーなので三振はあまりないんです。だから空振りとか嬉しくなっちゃう(笑)。

――イニングの途中でも嬉しくなりますか

 なりますね。ピンチの時とか特に取れたら。

常盤 なりますね。

――練習以外でもお二人でピッチングの話はされますか

 そんなにはしないです。

常盤 「疲れたね」とか「きょう投げすぎたね」とかくらいですね。

――練習中はアドバイスし合ったりはしますか

常盤 自分はアドバイスをもらいます。(泉選手は)教えてくれるので。ドロップとかチェンジアップを自分は投げられないのでそこはアドバイスをもらってます。

 どや(笑)。自分は見て学んでますね。すごいなって思いながら(笑)。

――他の投手の方とピッチングに関する話はしますか

 みんなで話すのは練習で誰から投げるか決める時くらいですね。濱田さんはすごく良くしてくれますね。アドバイスもしてくれるし、その日の調子も聞いてくれるしすごくお世話になっています。すごく面倒見てくれます。

――普段から濱田選手はムードメーカーの印象がありますが

常盤 ピンチのときは濱田さんのベンチからの声はすごいです。

 そうですね。もう感謝しかないです。助けてくれます。一番気持ちをわかってくれるので。

――後輩の宮川眞子選手(スポ1=福島・帝京安積)はいかがですか

 宮川はわいわいしてるんですよ、ブルペンで(笑)。時々はアドバイスしますけど。

常盤 でも(泉選手と)二人で歌とか歌っててもまだ入ってこないですね。まだ素が出てない(笑)。

――試合中のマウンドから見てバックの選手たちはいかがですか

 安心して任せられます。ショートとセカンドに先輩がいるので、後ろを向くと「あ、先輩だ」って思いますね。あとはファースト外野に同期もいるので。

常盤 私も大内(佳那、スポ2=千葉・木更津総合)が高校から一緒に来てるので、大内の声掛けは本当に頼りになります。

――お二人とも先輩とのバッテリーですがサインなどはどうしているのですか

 首は振らないですね。任せています。

常盤 自分では配球を考えられないので。

――先輩捕手との信頼関係があるのですね

 試合が終わってから話して改善するので、試合中は任せ切っていますね。

――試合の中で変えていくことはあまりしないのですか

 イニング間に話し合ってもう少しチェンジアップ欲しいとかライズ欲しいとかインコース投げたいとかは言います。

――バッテリーを組んだ直後は緊張はありましたか

常盤 緊張しました。山岡さん(里奈、人4=福島・帝京安積)は最初の印象が怖かったので恐る恐る投げてたんですけど、いまは打ち解けて冗談も言える人になったので。最初は緊張しました。

 あまり緊張はしないです。1年生の時も先輩のキャッチャーに試合中は捕ってもらってて。2年生の時も4年生に捕ってもらってたのでずっと4年生なんです。なのであまり緊張はしません。

――自分のピッチングの強みは

 チェンジアップかな…。決まれば良いんですけど、ストレートが落ちるドロップ系なのでそれが決まってチェンジアップも決まればそこが強みかなと思います。

常盤 スライダーです。

 常盤はコントロールが良いのとスライダーがよく曲がるのが強みだと思います。あまり自分ではわからないですね。

――譲れないピッチングへのこだわりは

 私はチェンジアップ。これがないと普通のピッチャーになってしまうので。これからも磨かないとと思っています。

常盤 誰に声を掛けられてもちゃんと応えることです。

――試合前に必ずすることはありますか

常盤 最近なんですけど、東日本から山岡さんと西野カナの『Darling』を聞いています(笑)。山岡さんと一緒に踊ってモチベーションを上げています。

 みんな知らないと思うんですけど、マウンドに上がって初球を投げる前に、常盤や濱田さんとか宮川とか峯口(和沙、人2=東京・富士見)とかピッチャー陣を見てから投げてます。

常盤 そうなんですか。私見たことないです(笑)。

――いつ頃からやっていることですか

 いつからだろう?あまり意識したことはないんですけど、見て、「あ、ちゃんと応援してるな」って思ってから投げています(笑)。

――目指す理想の投手像は

 私は余裕を持てるピッチャーになりたいです。おどおどしていたら相手チームにも舐められてしまうので。堂々としていないとピッチャーはいけないと思うので、余裕のあるピッチャーになりたいです。

常盤 私は堂々と投げたいですね。

 一緒(笑)。

常盤 すいません(笑)。打たれると泣きそうになってしまうので、涙がこぼれないように耐えるので。打たれても堂々としていたいですね。すぐ泣いちゃうので。

「4年生と先生を胴上げしたい」

インカレへの思いを語る泉

――トヨタ遠征を振り返っていかがですか

 私は投げていないので、常盤が頑張っていました。

常盤 恐怖でしたね。

 実業団でもトップクラスのチームだもんね。恐怖だよね。

常盤 いつ骨折するかと。

 いつ私の体にボールが当たるかと思うよね。

――トヨタのどこが強いと感じましたか

 体つきからですね。カモシカのような体。先生が「カモシカのようになるんですよ」っていうから(笑)。

――強豪チームの投手を見て学ぶことはありましたか

常盤 その余裕はあまりなかったんですけど、自分のピッチングでいっぱいいっぱいで。何か学びました?

 堂々としてたなって。強いからかな?打たれないからすごく堂々としていて、同じピッチャーから見ていてもかっこよかったです。こんなにも違うのかって。

常盤 そうですね。

――東日本を振り返って成長した部分は

常盤 初戦の東京国際大戦で感じたんですけど、0-0で来てて満塁を作ったらしいんですけど覚えていないんです、集中しすぎてて。いつもは満塁を作ると気持ち的に余裕がなくて打たれてしまうんですよ。でもその時は、いつもはすぐ集中力もすぐ切れてしまうのに、集中を切らさずに堂々と投げられたんじゃないかなと思います。

――泉選手は登板機会はありませんでしたが常盤選手の投球を見ていかがでしたが

 私も実はあまり覚えていないんです。たぶんずっと濱田さんと常盤に声を掛けていたと思います。常盤しかあの場面で抑えられるピッチャーはいないので。「頑張れ!」って言っていたんですよね。

――泉選手はけがの影響で登板回避をされたのですか

 はい。ちょっとやってしまいました。練習ではチームがドロップ系のピッチャーと当たったときに打てるように、ドロップ系を投げるピッチャーは私しかいないので投げていました。みんなに打ってもらえないと勝てないので。

――東日本では早く投げたいと焦る思いはありましたか

 でもけがをしているこの力では絶対に抑えられないので。私が投げても勝てないから、常盤とか濱田さんとか宮川とかが頑張ってくれるのを応援していました。

――いまのお二人の調子は

 その日によって違うんです。その日一番良いピッチャーを使うので。

――インカレまであと2週間ほどです。個人としての目標を教えてください

常盤 とりあえず優勝が目標なんですけど、優勝まで行く前にみんなが安心していられる試合をするのが目標です。

 一緒です。試合に出た人が、プレッシャーはあるかもしれないけど、ピッチャー陣の気持ちを背負っていかなきゃいけないと思っています。

――チームとしての目標は

 日本一です。4年生と先生を胴上げしたいので。

常盤 はい。

 後輩の私たちが頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 土屋佳織、藤川友実子)

投手としての意気込みを書いていただきました

◆泉花穂(いずみ・かほ)(※写真右)

1993(平5)年8月25日生まれ。香川・高松南高出身。スポーツ科学部3年。投手。暇な時間があると料理に挑戦するという泉選手。得意料理は創作料理で「なんでも入れちゃう」とのこと。取材前日も常盤選手と一緒に食事をしたそうで、お二人の仲の良さがうかがえました。

◆常盤紫文(ときわ・しゆき)(※写真左)

1994(平6)年11月16日生まれ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部2年。投手。常盤選手のマイブームは洗濯物をいかに速く干せるかに挑戦すること。かごに入った洗濯物をCM2個分で干し終えたのが最高記録だそうです。楽しみながら一人暮らしに奮闘する常盤選手の一面が垣間見えました。