ルーキー稲垣が好投 収穫と課題を得た試合に

男子ソフトボール
春季リーグ戦
早大
日体大
投手…●稲垣-澤 ◇(二塁打)なし◇(三塁打)なし ◇(本塁打)なし

 慶大を下してから約1時間後、早大は昨年まで4年連続大学日本一に輝いている日体大と対戦した。第1試合と打って変わり、試合は緊迫した展開となった。2回、早大は守備の乱れを突かれ2点を失うが、以降は先発のルーキー稲垣拓朗(スポ1=群馬・新島学園)が力投。6回まで毎回の11個の三振を奪うなど、大学王者を相手に一歩も引かない投球を見せた。一方の打線は、3回二死満塁の好機で、4番・澤優輝主将(人4=東京・国学院久我山)が三振に倒れるなど、あと一本を放つことができず。0-3で悔しい敗戦となった。

 大きなインパクトを残した投球だった。先発の稲垣は、高校時代にU18日本代表に選出され、W杯優勝にも貢献した投手。初回は「久々の試合ということもあり、緊張した」というが、2個の三振を奪うなど上々の立ち上がりを見せた。しかし、2回に守備が乱れる。無死一塁からの6番・新井優太の犠打は飛球となったが、ちょうど内野手の間に落ちてしまい、チャンスを広げられる。さらに、7番・我如古海斗の犠打処理をめぐっては、稲垣と三塁手の西村悠太郎副将(スポ4=福岡・筑紫丘)が一瞬見合ってしまい、最終的には内野安打に。無死満塁のピンチを招くと、スクイズと内野安打で2点を先制された。そのまま大崩れしても不思議ではない展開だったが、稲垣は立ち直りを見せる。3回を三者凡退に切って取ると、4回には3つのアウトを全て三振で奪った。5回に1点こそ失ったものの、終わってみれば6回11奪三振の見事な投球。「三振を取る投手」(稲垣)という自身の特長を遺憾なく発揮し、大学王者を相手に自らの力を出し切った。

6回11奪三振の見事な投球を見せた稲垣

 稲垣を援護したい打線は、2度の好機をものにすることができなかった。最初の好機は3回。1死から9番・白石健祐(スポ3=東京・小平)が二塁打を放つと、後続もつなぎ2死ながら満塁の場面をつくる。打席には4番の澤。その打席の3球目、捉えた打球は左翼ポール際への大きなファールに。このファールで澤のバットにより一層期待が高まったが、内角に投じられた4球目には手が出ず、見逃し三振。「僕が打てればチームは勝てた」(澤)と試合後は悔しさをにじませた。

 続く好機は5回。1死一、二塁から2番・安孫子徹(スポ3=東京・昭和)の右前打で二塁走者・白石が本塁に突入する。しかし、右翼手・新井の好返球に阻まれ、生還することはできなかった。6回には澤が再び大きな飛球を放つも、惜しくもあと一伸びが足りず。結局、本塁を踏むことはかなわず、完封負けを喫した。

 大学王者・日体大との初戦を振り返り、主将の澤は「このままずっと9月(全日本大学選手権)に向けて練習していけば最後倒して日本一になれるのではないか」と前向きな言葉を口にした。とりわけ好投した稲垣については、「一番大きな収穫」(澤)であろう。打線は無得点に終わったが、澤以外の選手であっても随所で快音を響かせており、一定の手応えを感じることはできたはずだ。一方で、課題は走攻守全ての面における『精度』ではないか。特に守備面においては、連携ミスが失点に直結した早大と、好守により1点を防いだ日体大との差が試合結果に表れた。また、攻撃面についても、おのおのが自分の役目を全うすることで「上位打線、下位打線関係なく点が取れる、攻撃のリズムがつくれる打線」(稲垣)になっていた日体大に比べると、早大打線には粗さが目についた。東京都大学連盟春季リーグ戦の残り2試合を、「課題としてチームで共通認識を持っていることをできる2試合」(澤)にして、早大は次なる日体大との再戦に向かう。

(記事 杉﨑智哉、写真 手代木慶)

コメント

澤優輝主将(スポ4=東京・国学院久我山)

――開幕を迎えた今のお気持ちはいかがですか

率直にいよいよ始まったなというのが印象です。その中でも難しい時期にこうやって大会を開催してくださる関係者の方であったり、自分たちがこうやってプレーできていることに感謝して臨んだ一戦でした。

――現在のご自身の調子はいかがですか

僕は3週間前に肉離れをしてしまって、ずっと練習も試合もできないという状態だったんですが、ようやく治ってきて、今日の試合も出れて、自分としてもようやくラストシーズンのスタートが切れたのかなと思います。まだ調子は全然上がってきてはないんですけど、ここから徐々に上げていければいいなと思います。

――今日の2試合をそれぞれ振り返るといかがですか

1試合目に関しては、1打席目はフォアボールで仕方なかったんですが、2打席目に関しては1球で仕留めてヒットで出たかったところを、思うような打球が打てなかったので、そこは反省点かなと思います。2試合目に関しては、特に2打席目に関して、僕が打てればチームは勝てたと思うので、そこの1打席が悔しいなと思います。

――1試合目も2試合目もあわやホームランという特大ファールがありましたが

手応えは非常に良くて、練習でもホームラン性のあたりをたくさん打っていたので、バッティングの状態はいいのかな、と思っていたので、あとちょっとというところですね。

――2試合目で先発した1年生の稲垣投手をどう評価されますか

非常に良いピッチングで、よかったという一言に尽きるのかなと思います。ここまで日体大相手に堂々と投げられるのは凄いと思いますし、その中でも、今日は持っている力を全部出して押していくというスタイルでやったんですけど、臆することなくしっかり勝負できていたと思います。

――毎年しのぎを削っている日体大との初戦でしたが、今年の日体大はどのように映りましたか

今年はチャンスじゃないかと思いました。去年すごかった4年生が抜けられて、うちにも新しい戦力が入りましたし、このままずっと9月に向けて練習していけば最後倒して日本一になれるのではないかと思わせてくれたゲームでした。手応えはかなりありました。

――ここからはチームについてお聞きします。チーム全体の調子はいかがですか

まだ練習試合も2試合しかできていなくて、強いチームとも対戦できていないんですが、課題を見つけながら一つずつつぶしていくという流れは取れているのではないかと思います。チーム内での意志統一もできていて、チームでやりたいことが試合につなげられているので、いい兆しではないかと思います。

――試合で見つかった課題はありましたか

主に攻撃面と走塁面が目立ったと思います。攻撃であったら、PG(ポイントゲッター)に関しては一球で仕留めるという力が足りないのかなと思います。小技の選手に関しても、バントの精度であったり、スラップの精度であったりが、まだまだかみ合ってないので、そこがかみ合って切磋琢磨(せっさたくま)していければ、打線としてもっと機能するのかなと思います。

――この試合での収穫はありましたか

稲垣のピッチングが一番大きな収穫だと思います。あとは、日体大相手にここまで対等に渡り合えて、僕の1本があそこで出ていれば勝てるような僅差の試合を、この時期からできているというのは非常にいいかなと思います。

――打順や守備位置をかなり変えられていたと思いますが、そこはまだ試行錯誤されているのでしょうか

そうですね。リーグ戦に関しては、毎試合違うオーダーにして、打順も変えています。5月や9月の大会に向けてベストオーダーを組めるようにいろいろ選手を起用しています。

――最後に残り2試合に向けての意気込みをお願いします

もちろんチームとしては勝利するというのが大前提なんですけど、その中で自分たちのやりたいソフト、課題としてチームで共通認識を持っていることをできる2試合になればいいと思います。

白石健祐(スポ3=東京・小平)

――今日の2試合を振り返っていかがですか

1試合目の慶大戦はコールドだったのですか、試合の終盤にだらけてしまったので、そこは改善していきたいと思います。日体大戦に関しては、ロースコアのいいゲームができたのですが、ところどころのチャンスをものにできなかったのが敗因かなと思います。

――慶大戦は捕手として出場されましたが、事前に決まっていたのでしょうか

決まっていました。1点もやるつもりはなかったので、0点に抑えてコールドゲームにしようという気持ちでキャッチャーとして出場しました。

――スタメン捕手としてのご自身のプレーを評価してください

10点満点中の7点くらいですかね(笑)。これと言っていいところも悪いところもなかったかなと思います。

――これからどんなポイントを高めていきますか

今日の日体大戦を見ていて、やっぱり正捕手の澤選手との差は配球だったり声かけだったり、余裕感だったり、いろんなところで感じていました。そういうところを着実に埋めていって、(実力的に)差がなく澤さんの上にいけるようキャッチャーになりたいと思います。

――先発の佐藤投手(慶弥、スポ2=静岡・飛龍)の出来や調子はどう感じましたか

今日の調子はだいぶよかった方だと思います。ただ、今練習中のドロップの落ちが悪かったです。でも、そこは練習中なので仕方がないかなと思います。

――日体大戦は2安打でしたが、打撃の調子はいかがでしたか

リーグ戦前の練習試合ではヒットが出ていなくて調子が悪かったのですが、思い切って振ろうと思っていたので、結果が出て良かったです。10点満点なら6点ですかね(笑)。1打席目は良かったのですが、2打席目があまりいい当たりではなくて、あれはたぶん実質エラーだと思うので。

――今後の試合に向けて、意気込みをお願いします

バッティングの調子が上がってきたので、調子を落とさずに頑張っていきたいです。守備は、捕手で出るか外野手で出るか分からないのですが、出たポジションでしっかりと役割を果たしてきたいなと思います。

稲垣拓朗(スポ1=群馬・新島学園)

――大学初の公式戦でしたが、投球を振り返るといかがでしたか

全国トップである日体大と初めて戦ったのですが、大学のレベルの高さを感じました。今まで自分は日本代表に入っていたとはいえ高校生を相手にしていたので、それより上のレベルで自分の力が通用したかはわからないですが、力を発揮できたことは良かったです。

――通用した部分や手応えを感じた部分はどのようなところですか

僕は三振を取る投手なのですが、それが多く取れた(6回11奪三振)のがすごく良かったかなと思います。あと、5点は取られる想定だったので、3点の取られ方も良いわけではないですが、3点で抑えられてたところは良かったです。

――課題だと感じた部分はありますか

初回に久々の試合ということもあり緊張してしまったので、スタミナという部分が後半になってきつくなってしまったところが課題かなと思っています。ボールが思ったようにいかないということが(後半は)ありました。

――2回の失点シーンを振り返るといかがですか

(ヒット性の)安打を打たれて失点したわけではないので仕方ないと思う部分もありますが、守備の連係ミスで取られてしまった点なので、今後の練習で詰めていければと思っています。久々の試合ということで試合慣れしていないのかわからないのですが、テンパってしまったというか、冷静さを失ってしまったのかなと思います。

――日体大は犠打など小技を絡めて攻撃してきたと感じました。日体大の打線にはどのような印象を持ちましたか

上位打線、下位打線関係なく点が取れる、攻撃のリズムがつくれる打線になっているところが特徴的だなと感じました。

――今後の試合に向けての意気込みをお願いします

自分はまだ始めてなので、これから経験を積んでいきながら、チームに貢献できる投手になりたいと思います。チームとしての目標はインカレ(全日本大学選手権)優勝なので、そこにつながるように、課題を見つけながらやっていきたいと思っています。