まさかの初戦敗退 6年ぶりの日本一は叶わず

男子ソフトボール
インカレ代替大会
立命大 10
早大
投手…山内、●松下、山内-澤 ◇(二塁打)なし ◇(三塁打)浅田 ◇(本塁打)なし

 秋晴れの下、全国大学選抜男子ソフトボール選手権大会(インカレ代替大会)が開幕した。この大会は、新型コロナウイルスの影響で中止になった全日本大学選手権(インカレ)の代替大会。代替大会という名称ではあるが、全国から選抜された強豪が集い、実質的に今年度の日本一を決める大会だ。『打倒日体大』を掲げて、1年間戦ってきた早大にとっては、何としても日本一を達成したいところであった。試合は初回、杉本亮太(教4=神奈川・柏陽)の2点適時打で先制し、早大が主導権を握る。しかし、3点リードで迎えた6回、先発・山内壮起(スポ4=千葉・成田国際)が集中打を浴び、逆転されてしまう。その裏に浅田剛志(スポ4=大阪・清風南海)の適時三塁打などで追い付くも、再び勝ち越され、そのまま試合終了。6年ぶりの日本一を目指した早大は、初戦で姿を消すこととなった。

 試合は初回から動いた。1番・浅田が中前打で出塁すると、後続打者もつなぎ、1死満塁と好機をつくる。打席には5番・杉本。低めに沈むドロップを捉えると、2点適時打となり、先制に成功した。続く2回も、中畑友博(スポ4=愛知・清林館)、安孫子徹(スポ2=東京・昭和)が立て続けにドロップを捉えると、中畑の好走塁もあり、無死一、三塁とする。度重なるドロップ打ちは、自粛期間中にチーム全体で相手投手を研究した際に、「ドロップが多いよ、という話になった」(杉本)ことが反映されたものだった。1死後、吉原陸副将(スポ4=福島・安積)も絶妙なバント安打を決め、1死満塁と好機を広げると、続く3番・石井智尋(スポ4=千葉敬愛)の遊ゴロの間に1点を追加する。さらに、4番・澤優輝(人3=東京・国学院久我山)の打席において、捕手が投球を弾く間に、三走・安孫子が好判断を見せて5点目のホームイン。2回を終えて4点のリードを奪った。小技に強打、さらには好走塁を絡めて得点を重ね、「序盤の2イニングで点を取って、コールド(ゲーム)に持っていく」(高橋尚希主将、スポ4=宮城・泉館山)という理想通りの試合展開を見せた。

初回、先制の2点適時打を放った杉本

 しかし、先発・山内がピリッとしない。ストライク先行でテンポ良く投球を展開することが持ち味だが、この日は微妙な制球が定まらない。インコースも攻めきれない中、球数がかさむ苦しい投球を強いられた。「もともと球も走っていませんでしたし、タイミングも合っているなと思いながら投げていました」という山内。その中でも何とか5回まで2失点としのいできたが、6回に崩れる。変化球でストライクを取ることができず、直球中心の投球を余儀なくされたバッテリー。序盤から球数を投げさせられて球威が落ちた山内の球を、立命大は見逃してはくれなかった。無死満塁のピンチを招くと、まずはレフトへの大きな犠飛で1点。その後、怒涛(どとう)の3者連続適時打を浴び、逆転を許してしまう。ここで山内は降板し、松下直矢(スポ4=京都・南陽)にマウンドを託した。松下は1点こそ失ったが、「感覚が良くて、球も走っていた」との言葉通り、武器のドロップとタイミングを外すクイック投法を駆使して、これ以上の失点を許さず。2点差で味方の反撃を待った。

逆転を許し、悔しげな表情を見せる山内

 何とか追い付きたい打線は、その裏に意地を見せる。先頭の中畑が左前安打で出塁すると、大きくガッツポーズ。この一打でチームに活気がよみがえる。続く代打・新井裕也(社4=埼玉・早大本庄)は三振に倒れるも、1番・浅田が放った飛球は、あわや本塁打かという適時三塁打となり1点を返すことに成功する。続く、2番・吉原もきっちりとレフトへ飛球を打ち上げ、同点に。『このまま負けるわけにはいかない』。そんな早大の意地が垣間見えた、見事な攻撃だった。

1点差に迫る適時打を放ち、ガッツポーズを見せる浅田

 勝負が決まる最終回、6回は好投を見せた松下が乱れる。「自分の調子が悪い時の感覚があった」と語るように、先頭打者に四球を与えると、無死満塁のピンチをつくる。そして、続く2番打者に勝ち越しの適時打を打たれてしまう。ここで、エース・山内が再登板するが、さらに2点を追加されて、7-10と点差を広げられてしまう。そして迎えた最終回の攻撃。先頭の4番・澤のバットに期待が高まったが、この打席も内角を嚴しく責められ、快音は響かなかった。2死後、主将の高橋がこの日2本目の安打で出塁したが、最後は梶谷陽介(法4=神奈川・柏陽)が倒れて試合終了。6年ぶりの日本一を目指した戦いは、無念の1回戦敗退というかたちで終幕を迎えた。

 『打倒日体大』を掲げて、日本一だけを見据えていた選手たち。早大が日体大以外の大学に公式戦で敗北することは、2018年の東京都大学ソフトボール連盟秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)以来、約2年ぶりのこと。それだけに、試合後は現実を受け止め切れておらず、気持ちの整理がついていない様子だった。しかし、新型コロナウイルスという未曽有の危機に見舞われながらも、日本一を目指してきた選手たちの努力はこの試合からも確かに見てとれた。研究の成果もあり、相手投手のドロップを立て続けに仕留めたように、自粛期間も日本一の目標に向けて有意義に過ごしてきた。さらに、小技に強打、好走塁を絡める早大らしさを、この試合でも随所に発揮。また、この試合では打ち込まれてしまったが、今年の秋季リーグ戦では日体大戦も含めて全試合3失点以内に抑えるなど、投手陣も確かな成長の跡を示した。インカレ2年連続準優勝に貢献してきた多くの4年生が抜ける来季は、早大にとって大きな転換の年を迎える。新主将を務める澤は、インカレで優勝することはもちろん、「はたから見て気持ちの良いチームと思われるようなチームをつくりたい」と決意を語った。悲願の日本一奪回、そして高い人間力を兼ね備えたチームになるために、早大は再出発を切る。

試合後、『W』ポーズで集合写真に収まる選手たち

(記事 杉﨑智哉、写真 杉﨑智哉、篠田雄大)

コメント

澤優輝(人3=東京・国学院久我山)

――試合を終えた現在の率直な心境はいかがですか

すごく悔しくて、自分自身が情けないなというのが率直な感想です。

――打撃について伺います。無安打に終わりましたが、インコースをしつこく攻められているように感じました。打撃全体をどのように振り返りますか

インコース攻めされているのはわかっていて、それを何とかうまくさばこうと思ったのですが、うまくさばくことができずに、バットを振りすぎたなという印象です。少しずつは良くなっているのですが、そこが僕の課題だと思っているので、インコースに対応できるスイングを身に付けて、また新しい姿で来年ここに来れればなと思っています。

――山内投手の投球について伺っていきます。調子自体はどのように感じていましたか

調子自体は悪くなかったと思いますし、僕が1年生の頃から山内さんとはバッテリーを組んできて、たくさん球数も受けてきているので、何とか相手のタイミングを外せればなと思っていましたが、うまくいかないままずるずる行っていしまって、修正できなかったなという感じです。

――6回に逆転された場面は、変化球でなかなかストライクを取れずに真っすぐ中心の配球になっているように見えました。配球するうえでの苦しさは感じてらっしゃいましたか

その通りで、いつもはポンポンとストライクを取れているところが、なかなか思うように取れずに、インコースも死球になったり、中に入ったりもしてしまって、使いにくいなという状況でした。うまく僕がリードできればよかったのですが、できずに力不足を感じました。

――今日が最後の試合となった、4年生に向けてメッセージをお願いします。

僕は1年生の頃から試合に出させていただいて、一緒に試合に出ている時間もそれ以外の時間も4年生の方と非常に多くの時間を過ごさせていただきました。非常に多くのことを教えてくれたり、一緒にふざけあったりと濃い時間を過ごしてきた4年生と優勝したかったので、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、この悔しい気持ちを僕がしっかり引き継いで、主将としてリベンジできればなと思っています。4年生の思いを晴らすためにも、来年僕が頑張らないといけないなと思いました。

――来年はどのようなチームをつくりたいと考えていますか

負けないチーム、優勝できるチームをつくるというのはもちろんなのですが、早稲田はそれだけではなくて、人間力を鍛えて、しっかりと世界で通用する人間をつくるというチームです。そこもしっかりと達成できるような、はたから見て気持ちの良いチームと思われるようなチームをつくりたいと思っています。

 4年生のコメントは後日、別記事にて掲載いたします。