【連載】2018年度インカレ直前特集『克』第7回 杖子量哉×実重僚右

男子ソフトボール

第7回は男子部が誇る強力バッテリー、杖子量哉(スポ4=岡山・新見)と実重僚右(人4=高卒認定)の二人である。ことしの東京都大学連盟春季リーグ戦(春季リーグ戦)、ワセダは極度の打撃不振に陥った。そんな中、チームを守りから支えてきたのがこの二人だ。現役生活最後の大会を目前に4年生バッテリーは何を思うのか、お話を伺った。

※この取材は8月23日に行われたものです。

ライズボール

これまでの投球を振り返る杖子

――まずは春季リーグ戦について。振り返ってみてどのような春季リーグ戦でしたか

杖子 結構苦しいシーズンだったのかなというのはすごい感じました。新チームがスタートした秋リーグ(秋季リーグ戦)は滑り出しが良かった分、中央に負けたショックが大きくて。どうしたら勝てるんかなあっていうのはずっと考えていて。結果的にインカレ(全日本大学選手権)には行けるようになったので良かったんですけれども、やっぱり勝ちたかったリーグ戦でした。

実重 杖子の話にも合ったように、秋は本当に滑り出しが良くて、それこそ去年(インカレで優勝し)日本一になった日体大を0点に抑えられたりできて。国士舘には負けたんですけれども、すごく新チーム始まったという中ではすごくいいかたちでスタートを切れたのかなという思いがあった中で、それぞれが目標や課題をもって取り組んだ冬が明けて、自分たちの成長を感じられる春なのかなと思って春リーグが始まったんですけれども、思いのほか結果が出ず。秋には大差で勝てた中央大学に負けたりするということもあって、すごく、これまでやってきたことが良かったのかなとか、これからどうしていったらいいのかなといった不安というか、ネガティブな気持ちが先行していました。

――ご自身の調子や状態はいかがでしたか

杖子 春リーグ・・・。俺どうだった?

実重 そんなに球が悪いとかはなかったな。(杖子の)調子が悪いとかはなかったかな。でも、ポテンヒットとかが増え始めたのはその時期からかな。

杖子 確かに。冬場に結構ライズボールとかを練習して、それ良くなった逆にあだになったって言った方がいいんかな?それで内外野の間に落ちるようなヒットが増えちゃったりして、それが結局、点に絡むっていうのがあるリーグは多くて。都総合(全日本総合選手権東京都予選)くらいから守備のシフトを色々変え出した結果、守備とピッチャーとの連携がうまくいき始めました。(春季リーグ戦でも)負けはしたんですけれども、日体大といい試合ができたりしたので、そう考えたら調子は悪くなかったのかなと思います。

――実重選手から見て、杖子投手の状態はいかがでしたか

実重 すごく球はいい球を投げていて。秋(秋季リーグ戦)に日体を抑えた時からちゃんと段階を踏んで、いいボール、いいピッチャーになっているなという印象はあったんですけれども、それによって不運なヒットも増えたりというか。今までよりバッターが(ボールを)捉えにくくなったので、外野の前に落ちる打球が増えたりとか。それによって使う球や配球がちょっとずつ変わっていったので、春は杖子の成長と相手の力量をうまくかみ合わせることができなかったのかなと思います。でも杖子の球自体はすごく良くなっているという印象があります。

――具体的に配球をどのように変えたのですか

実重 ライズボールがすごい良かったので、力で押していくピッチングというか。緩い球というよりも、真っ向勝負してロースコアで抑えることができるというのをイメージしていましたね。

――春季リーグ戦は4位でした。

杖子 有り得ない、という言い方が正しいのかな。僕が(ソフトボール部に)入ってから春では初めてで、18年ぶりに二次予選(全日本大学選手権東京都二次予選)に回ってしまったので、正直、マジかって思いました。僕らにも慢心があったのかなというか、中央大学にもこれまでは勝てていたので、(中大戦前に)どうやって日体、国士(国士舘大)を倒すかっていうことしかみんな考えていなかったと思うので、(中大戦の)最終回に3点取られるということにつながってしまったのかなと。今となっては、いい反省材料になったのかなと思います。

実重 秋リーグは2位で、いいチーム状況の中で(春季リーグ戦での)日体、国士に照準を合わせてやっていたので、中央に負けたあたりからチームの歯車が狂い出したというか。そこからマイナスの雰囲気が連鎖してしまって、チーム状況も非常に苦しかったのかなと思います。

――春季リーグ戦の結果を受けて、東日本大学選手権(東日本)にはどのような思いで臨まれましたか

実重 春のリーグや全総(全日本総合選手権東京都予選)を受けて、チームがまた一つになろうと動き出した中で、チームがいい方向に向いていると感じていたので、やれるんじゃないかと思っていました。また、準決勝で国士舘、決勝で日体大というトーナメント表が出ていたので、そこでしっかり勝負できるだけの準備をして、勝つつもりで臨んでいました。

杖子 東日本の前の自分の調子はすごく良かったです。自分の中でしっくりくるものがあって、これなら抑えられるという思いがあって臨んだんですけれども、(準々決勝で国際武道大に)負けちゃいました。

――準々決勝で敗退でした

杖子 ライズ(ボール)に頼りすぎたのかな、とは思います。ここまで積み上げてきたものがあって、結構(ライズボールに)手応えを感じていたので、ひたすらライズを投げ続けてドロップ(ボール)を使えていなかったのかなと。ライズが(ストライクゾーンに)入らないってなったときに結局自滅してしまうケースが多くて、置きにいったライズをホームランにされたり、ヒットにされたりというのがあったので、もっと引き出しを多く持っておけば、事故はなかったのかなと思います。

実重 それまでの練習試合とかでは杖子のライズボールがすごく良くて。僕もライズボール主体でというか、苦しいときはライズボールで三振というピッチングスタイルで臨んできたし、臨めるなという自信があったので、どうしてもライズに頼るところがあって。ライズに頼り過ぎた結果、バッターにタイミングを合わせられ、出会いがしらの一打があったりしました。ピッチングを見直さないとなという、一つのきっかけになりました。

新歓で・・・

気心が知れたバッテリー

――ここからはプライベートな質問をいくつかさせていただきます。まずはお互いの印象を教えてください。

実重 (出会って)初めの頃は、話していて強気なイメージがあり、怖いなと思っていました(笑)。でも僕が2年の春からキャッチャーをやるようになって、少なかったですけれども試合に出させていただく機会やソフトボールについて杖子と話す機会が増えていくにつれて、(杖子は)自分の能力だけを頼って(ソフトボールを)やってきたんじゃなくて、ちゃんと考えながら、工夫しながら、苦労しながらやっているというのがすごい伝わってきました。あんまり外には見せないんですけれども、思っていることとか考えていることは、さすがアスリートだなという感じです。

杖子 最初の印象は、ここ(早大所沢キャンパス)で新歓やっていたときなんですけれども、一人入学生が遅刻ギリギリで来てない状況だったんですよ。新歓って(在学生がサークルや部活動のビラを配る)列をつくるじゃないですか。その列の隅からブアーって走ってくる人がいて(笑)。正面じゃなくて在学生ルートみたいなところを(笑)。「なんやこいつは」って思ったんですけれども、先輩が声を掛けたら新入生で。新入生で遅刻するなんてヤバイやつだなって思っていたら、ソフトボール部に来て、「僕は青春を取り戻したい」とかわけ分からないことを言い出して(笑)。それが最初の印象でした。今の印象は、4年間一緒にやってきて、すごい真摯(しんし)に物事に取り組んでいるなと思います。あんまり嫌な顔もせずに、雑用とかもやってくれたりとか。なんていうか、聖人ですね(笑)。これが後輩からも好かれる理由なのかなと(笑)。

実重 (笑)。

――実重選手は入学する前からソフトボール部に入ろうと思っていたのですか

実重 僕は高校中退とかを経験して、3年間のブランクがあって。当時は野球をやりたかったんですよ、野球が好きなので。軟式野球部に入りたいななんて思いながら、そこを一つの目標にやっていたんですけれども、グラウンドがちょっと家から遠かったりして。そこでちょうど遅刻してきたときに、野球部っぽいユニフォームを着ている人がいて、とりあえずチラシをもらったんですよ。それでもらってみたら、ソフトボール部で。あと、当時はティーボールのボランティアをやりたいと思っていたので、ソフトボール部ではそれができるというのが分かって、「ここなら、自分の高校時代やりきれなかったものを取り戻しながら、ずっとやりたかったボランティアもできるな。ここしかない!」と思って入りました。

――オフの日は何をされていますか。杖子投手はお酒が好きだとお伺いしましたが

杖子 僕は4年間やってきたバイトをやったり、お酒はオフだろうが練習があろうが、飲んでいますね。

――ご自宅で飲まれるのですか

杖子 いや、基本居酒屋ですね。

――実重選手はいかがですか

実重 僕もアルバイトをしているんですけど、お酒はあんまりで・・・。その代わりに散歩をよくしています(笑)。家の近くなんですけれども、普段歩かない道とか、気分転換を兼ねて家の周りを歩いていますね。面白いものがあったら、携帯電話で写真を撮ったりとか、公園でちょっとゆっくりしたりとか。本当にもうおじいさんみたいですね(笑)。

――もし、この夏休み期間にオフが続いたとします。何をしたいですか

実重 この前動物園に行ったんですけれども、結構楽しくて。その時はちょっとしかいれなかったので、今度は1日ゆっくり動物園で過ごしたいなと思います(笑)。この前はパンダが混んでいて見られなかったので、パンダに挑戦したいです。

杖子 高校のソフトボールやっていた友達と、みんな引退したら、今まで全国大会で行った各地を巡りたいなって計画しているんですよ。

実重 めっちゃいいじゃん。

杖子 結局(高校時代の)みんなで集まったらソフトボールの話になっちゃうんですけれども、だったらその場に行って、みんなでお酒飲みながら当時のことを振り返るって良くね、とみんなで話していて。高卒で働いているやつとかもいるんで、日程が合えばなんですけれども、やりたいなあって思っています。

後輩たちへ

最後の大会への思いを語る実重

――今の調子や状態はいかがですか

実重 きのう(8月22日)も中央大学との練習試合があったんですけれども、しっかり勝つところを勝てていて、みんながそれぞれの役割を果たしつつ、3年生や2年生もすごく輝いているチームになってきていて、あとは軸となる4年生がどうやっていくのかというのがインカレのカギだと思っています。個人的には、バッティングがちょっとだけ上向いてきたかなと思っているので、そっち(バッティング)の方で今までチームに迷惑を掛けてきたので、何とか力になれればなと思います。

杖子 今まで打撃不振みたいなチームだったんですけれども、最近機能し出していて、すごい頼もしいなと思っているんですけれども、僕個人としては今めちゃくちゃ調子が悪くて。きのうの試合も元々打者一巡だけ投げる予定だったんですけれども、2回で15人ぐらい投げちゃって3点も取られてしまって。その後山内(壮起、スポ2=千葉・成田国際)がしっかり抑えていて、情けないなという気持ちがすごいあって。めっちゃ調子悪くてどうにかしないと、ともがいている状態であります。

――インカレにはどのような思いがありますか

杖子 自分がワセダを選んだ理由として、当時(ソフトボール部は)最強でしたし、高校時代から知っている手の届かないような存在の1個上の先輩たちもいて、その人たちにどれくらい自分の実力が勝負できるのかなっていう思いがあって、ワセダに来ました。「インカレも7連覇します」って当時言ったんですけれども、結局1回も優勝していないし、自分はまだインカレでまともに投げたことがないので、ことしのインカレが(試合に出場するという意味では)最初で最後になるので、そろそろ笑って終わりたいなと思います。

実重 僕もインカレのベンチには入ったことはあるんですけれども、プレーしたことはまだ一度もなくて。そういった意味では杖子と同じように最初で最後のインカレですし、自分の場合、(大学入学に)3年間遠回りしたからこそ今の出会えた先輩や同期や後輩がいるので、そういう最高の仲間たちと一緒に最後笑って終われるようにするには勝つしかないので、優勝目指して頑張りたいなと思います。

杖子 (優勝したら)泣くよ。

実重 じゃあ優勝して泣いて、祝勝会で笑えるように頑張りたいです(笑)。最高の仲間たちと泣けるように頑張ります(笑)。

――後輩たちと過ごす時間はあとわずかですが、後輩たちに残したいことはありますか

実重 去年の4年生は1年生の時にインカレ優勝を経験していて、僕らの代からは優勝経験者がいないので、何とかして優勝して、勝ち方であったりとか、春4位からどうやってチームがインカレへと盛り返していったかっていうのを見せることで、もう一回強いワセダがかえってくる一つのターニングポイントになるのかなと思います。

杖子 勝って、憧れてもらえるような先輩になりたいですね。自分も憧れの先輩に追い付け追い越せでずっとやってきたので、そういう目標とする人がいるっていうのは、自分の成長には欠かせないと思っているので、僕を一つの目標としてもらえるような選手、つまりはインカレ優勝ピッチャーになっちゃえば必然としてそうなれると思うので、そういう存在になれる大会にしたいなと思います。

――最後にインカレへの意気込みをお願いします

杖子 勝って飲む!

実重 青春を取り戻す!

――ありがとうございました!

(取材・編集 石﨑開、写真 守屋郁宏)

強力バッテリーで敵をねじ伏せます!

◆杖子量哉(つえこ・りょうや)(※写真左)
1996(平8)年6月3日生まれのO型。180センチ68キロ。岡山・新見高出身。スポーツ科学部4年。投手。右投右打。お酒が好きだという杖子投手。よく大学の友達やバイト仲間と飲みに行くそうです。現役生活最後のインカレで胴上げ投手となり、優勝の美酒に酔いしれます!

◆実重僚右(さねしげ・りょうすけ)
1993(平5)年11月18日生まれのO型。173センチ85キロ。島根・高卒認定。人間科学部4年。捕手。右投右打。何事にも真摯(しんし)に取り組むと杖子投手に紹介されていた実重選手。本取材にも非常に丁寧に対応してくださいました。インカレでは杖子投手を巧みにリードし優勝へと導き、青春の道に花を添えます!