【連載】インカレ直前特集『REVENGE』 第2回 宮川眞子×廣瀬夏季×伊藤貴世美

男子ソフトボール

 まさかの最下位という結果に終わった今春のリーグ戦。そこからチームはひたむきに努力を重ね、入れ替え戦で勝利すると東日本大学選手権でも白星を挙げた。チーム状態が上向く中、現体制で戦う大会は残すところ全日本大学選手権(インカレ)のみ。この大舞台を勝ち上がるのに欠かせないのは何より投手陣の本領発揮であろう。今回はその投手陣を代表して、宮川眞子(スポ4=福島・帝京安積)、廣瀬夏季(スポ2=北海道・とわの森三愛)、伊藤貴世美(スポ1=千葉経大付)にお話を伺った。

 

 ※この取材は8月9日に行われたものです。

全力を出し切れば勝ちにつながる(宮川)

 

インカレへの強い思いを語る宮川

――春季リーグ戦のチームの戦いぶりを振り返っていかがですか

伊藤 全体的にみんなの調子が悪かったり、上手くいかないことが多くそれが印象に残っています。それでも今は調子を上げてきていてインカレに向けてピークを持っていけるような練習ができているのではないかと思います。

廣瀬 春季リーグは今回、自分は2回目で前回とは違った印象というか。やはり、勝てないのが印象に残っていて、言葉は悪いのですが、どん底まで落ちて地獄を見たというか。そこから一番下までいった分、もう上がっていくしかなかったので、今、上り調子のところもあるのでインカレに向けてはいい感じで進めているのではないかと思います。

宮川 2人が言っていた通り、春季リーグというのはどん底であったなと思っています。やはり勝てないというのと、全員の歯車がかみ合わなかったというのが印象的です。やりたいことや目指しているものはみんな同じはずなのに行動や結果として表れないということは選手の私たちもつらい時期でした。でもつらい思いをした分きょうに至るまで、そしてインカレに向けて上り調子になっているのは、全員が感じていることで、あの経験があったからこそ私たちは今高い意識でインカレに向かっていけるのかなと思います。 

――その中でも特に印象に残っている試合はありますか

伊藤 自分は春季リーグの日体大戦が印象に残っています。大学に入学してから自分が今どのレベルなのか、チームがどのレベルなのかが分からないまま春季リーグを迎えて、全国トップレベルの日体大と対戦する機会があったときにやはり打撃のスピードや守備の俊敏性、チームワークを見ても全然違って。それを見たときにこういう相手を倒して全国で戦わないといけないんだなというのを感じて身に染みたのが印象的です。 

廣瀬 同じく日体大戦で、私は途中から登板したんですけど、点差もあってあと1点取られればコールド負けという状況でした。日体大側からすると余裕があったので、全力ではあると思うんですけど、そんなガツガツした感じではなかったのが印象に残っていて。その中でバッテリーでどう抑えるか、何パターンか考えながらピンチをしのげたのは印象に残っています。 

宮川 私が一番印象に残っているのは日女体大戦です。ここで負けてしまったら1部2部入れ替え戦に回らなければならない状況であのときは入れ替え戦には絶対に臨みたくないという気持ちで挑みました。しかし、結果0-1で負けて、あの試合は悔しさしかなかったですし、ここまでどん底を見なければならないのかとつらい思いをしました。あの試合に必死で臨んでそれでも負けたということで、その後自分を成長させるというか、もっと頑張らねばならないと感じさせる試合だったかなと思います。

廣瀬 あそこまで長い春季リーグを体験したのは初めてでしたね。

――ことしは一年生が多く起用されていると思うのですが、そのことに関してはそれぞれどのように感じていますか

伊藤 自分は入学してから結構登板する機会をいただいていて。ですけどやはり先輩方もいる中で自分が投げさせてもらっている責任を感じています。試合中は、自分が持っている実力を最大限出し切ろうと思いながら投げていて、他の野手も出ているのですが、一年生だから失敗していいということは絶対ないと思うので、もっと高いレベルを目指してチームに貢献できるように頑張っていきたいです。

廣瀬 そうですね、新しい風といいますか。自分たちの同期や先輩方にしかできないこともたくさんあると思うんですけど、逆に一年生だからこそできることもあるわけで。高校から大学に入学して何も分からない中、ただひたすら一生懸命やる姿や考え方に刺激されて、自分たちの引き出しにもなりますし、チーム全体としていい方向につながっていると感じます。

宮川 一年生のフレッシュさはチームに必要なものだと感じています。私たちが一年生のときも四年生から元気だな、若いなと思われていたと思うんですけど、私が四年生の立場になって明るくて元気なフレッシュさはチームに明るい風を入れてくれるんじゃないかと思います。チームの勝利には必要だと感じています。

――その中でもことしの一年生の印象はいかがでしょうか

宮川 やはり伊藤の千葉経大付はあと2人野手がいるんですけど、高校時代に三冠を達成しているチームでネームバリューがありますし、もちろん実力も伴って入ってきてくれています。また他の一年生も実力と高い志を持って入ってきているので、周りのチームからの評価だったり、ワセダにいい選手がいるということは、高く見られているなと思います。 

廣瀬 技術ではなく性格の話をしますね。一言でいうと面白いんですよね。自分たちの代もうるさいとか個性的と言われるんですけど、また違った面白さというか。そうくるのかと思わせてくれるので、楽しいです。あとは仲がいいなと感じます。

――5月、6月から吉村先生(吉村正、昭44教卒=京都・平安)が本格的に指導されていると思うのですが、それに関してはいかがですか

宮川 私は教育実習で3週間ほど練習を抜けていた時期があったんですけど、その間に後輩投手が吉村先生に徹底的に指導していただいていて。自分が戻ってきたとき、動きのキレやボールの質が目で分かるくらいに変わっていて、先輩として後輩の成長を見ることができてうれしかったです。自分にとっても先生からご指導いただいて基本に戻るというか、初心を忘れないという指導をいただきインカレに向けていい方向に向かっているなと思います。 

廣瀬 技術面はもちろん先生の指導では動くボールをテーマにしていて。やはり夏場は体力勝負なのでボールを動かしながら三振を取ったりすることが目標となります。先生からご指導いただいて自分も他の投手もボールを動かしながら実践でも多くやっているので、秋や春よりも成長できてるのが身に染みて感じています。それに関してありがたいと感じます。

伊藤 自分は高校と大学で使うボールが違うので戸惑ったり上手くいかないことばかりで。そんな中、(吉村先生に)教わって、球種を増やしてもらったり、自分でも考えて球のキレが良くなっていくようにしたりだとか、少しずつ自分も変われてきているとは思います。また、まこさん(宮川)がいない間、廣瀬さんが中心となって試合で投げていたんですけど、それを見ても指導や練習で成長しているのかなと思います。ここにくるまでの3、4か月が大きかったなと思います。 

――インカレに向けての今のチームの雰囲気というのはいかがですか

宮川 かなりいいと思います。毎年東日本大学選手権(東日本インカレ)からインカレに向けて調子を上げていくというのがワセダの流れかなと思うのですが、ことしは特に春にどん底まで落ちたこともあり、東日本インカレでの成長ぶりがすごくて。ベンチが一体となって勝ちに行く姿勢だったり、打者投手ともに課題はあるのですが、練習してきたことを出せた面もあってインカレにつながる試合ができたと思っています。

廣瀬 言うことがなくなっちゃったな(笑)。チームの状態はいいとは自分も思っています。春季リーグでできなかったことが東日本インカレや実践でできているので、少しずつではありますが、いい方向に進んでいると感じます。 

伊藤 私も同じで春季リーグが上手くいかないことばかりで普段なら負けることはないであろう相手にも負けてしまい、どん底を見たんですけど、それがあったからこそ強い相手はもちろん同じレベルの相手にもチャレンジャー精神で向かっていけるというか。1試合1試合自分の実力を出し切るという気持ちで臨めたのでそういう部分では成長できていると思います。

一球でも多く投げて長く試合をやりたい(廣瀬)

 

持ち前の明るさでチームを盛り上げる廣瀬

――他己紹介をしていただけますか

伊藤 (→宮川)入学してきて眞子さんのボールに刺激を受けました。高校のときの自分のチームには特別速い球を投げたりボールを動かしたりするピッチャーがいたわけではなく、自分もスピードがない中で球を動かしながら、(相手を)かわすピッチングをしていたんですけど、眞子さんは球も速くてキレもあって。練習に対しても誰よりもストイックだし、そういう姿勢を見習っていきたいと思います。でも普段は面白くてイジられたりとか。眞子さんがいるからピッチャー陣も和気あいあいとやれてます。あと耳が遠くてサインの出し方が独特です(笑)。

廣瀬 (→伊藤)ソフトをやってるときは真剣ですし、負けず嫌いなので、練習が終わってもずっと一人で投げてるんです。だからそういうストイックな姿勢を私も見習わなきゃと思います。性格的には天然というか抜けてるというか。ノックを待ってる間にも走ったりトレーニングをしているんですけど、次お前の番だよ、みたいな(笑)。

宮川 (→廣瀬)廣瀬はこのチームの太陽みたいな感じです。こうやっていつも明るくチームを引っ張ってくれているんで、この明るさだったり、声だったり、負けず嫌いな姿勢だったりがチームに伝染して、いい影響を与えてるんじゃないかと思います。テスト期間になるとこんなに明るいのに暗くなっちゃうんですけど(笑)。

――投手としてお互いに得るものはありますか

宮川 3人とも本当にタイプが違うピッチャーなので。お互いの長所だったり、マウンドさばきとかは、後輩からもいろいろ聞いて学んでいます。

廣瀬 二人から学ばなきゃいけないことはやっぱりストイックさです。自分を追い込む姿勢っていうのはやっぱり見習いたいなと思います。

伊藤 高校の時は自分が引っ張っていかなきゃいけない立場だったのが、今は追いかける背中があるということがすごく頼もしいです。足りないことだらけなので、技術的にも性格的にも学んでいかなきゃと思います。

――オフの日の過ごし方について教えてください

廣瀬 歌ったり踊ったりするのが好きなので、カラオケとかにはよく行きます。あと漫画とかゲームが小さい頃から好きです。

伊藤 何をするっていうのが特になくて(笑)。昨日は初めての1日オフだったのですが、とりあえず午前中は寝て、その後髪を切りました。普段は寝て、親とか友達とご飯に行ったりしてます。

宮川 芸術鑑賞が好きで、よく観劇に行っています。あとは買い物に行くんですけど、服とかじゃなくて家具を見に行ったりします。いい椅子があったら座ってみたり、この前はロデオボーイみたいなのを一人でやったりしていました(笑)。

――部内の推しメンはいますか

宮川 プレーのおすすめは増子(奈保、スポ2=東京・日出)です。ショート守っていて動きにすごくキレがありますし、抜けたと思ってもそこに増子がいたりしてくれるのでピッチャーとして助かってます。普段の面では遠藤(真衣、スポ1=東京・日出)です。本当に後輩なのかといった感じでグイグイ来るので(笑)。でもその明るさが可愛い妹みたいな感じがして推しメンです。

廣瀬 プレーだったら自分は山内(実咲、スポ4=神奈川・向上)さんです。ここぞというときに打ってくれるのがチームとしてもピッチャーとしてもありがたいです。普段の面では隈元愛子(スポ1=千葉・木更津総合)です。波長が合うので、二人そろうとずっとうるさいです(笑)。

伊藤 自分は神(樹里乃、スポ2=北海道・ときわの森三愛)さんです。普段はいつも笑顔なのに、ノックのときになるとキリッとしたり、打席でも確実に塁に出たり、自主練に付き合ってくれたりします。普段の面ではもちゃさん(山内実咲、スポ4=神奈川・向上)です。言葉一つ一つが面白いというか(笑)演劇とかも好きなんですけど、言葉で表せない面白さがあります。

今のチームで頂点を取りたい(伊藤)

 

1年生ながら即戦力としてチームに貢献している伊藤

――インカレの組み合わせを見た率直な感想を教えてください

宮川 1試合目が大阪青山大ということで、2部のチームなんですけど、関西なので油断はできないと思います。その次が問題で、東海大とは練習試合でも勝っていませんし、富士大には前に負けているのでどっちと戦っても大丈夫なように調整したいです。

廣瀬 大阪青山第はほとんどデータがない分、自分たちの対応力が試されると思うので、目先の一戦にこだわってやっていきたいです。

伊藤 自分は初めてのインカレということで、初戦は浮き足立ちやすいので、うまく抜きながら勝ちたいです。その後が富士大と東海大の勝者ということなんですが、前に負けている富士大ともう一度当たりたいというのがあって、そこでリベンジをしたいです。

――インカレに向けて特別に強化しているところはありますか

宮川 強振してくるチームが多いと思うので、バットの芯で当てさせないボールを追い求めてピッチャー陣としてはやっていかなきゃいけないと思っています。今はワセダメソッドということで、実戦練習を多くこなしてそこで出る課題を解消するということをやっています。

廣瀬 一番大事にしていることは試合での感覚で、打球との距離感だったり、ピッチャーであれば配球や動く球をしっかり考えて試合でのプレーに出していくという事をやっています。

伊藤 インカレに向けて特別ってわけでもないんですけど、試合形式の練習の中でピッチャーはボールを動かしたり、バッターはその動くボールを打ち崩すために練習したりっていう事をしてチーム全体をあげてやっています。それをやり切ればインカレでも成果を残せると思います。

――皆さんにとってインカレとはどのような大会なのでしょうか

宮川 私にとっては最後のインカレでソフトボール人生で最後の大会になるかもしれないので、思い入れは強いです。これだけいい仲間に恵まれてソフトボールができているので最後は勝って笑って終わりたいです。 

廣瀬ことしでインカレは二回目できょねんは右も左も分からない状態でインカレに臨みました。しかし、一年間を経て、基礎や大学のことを少しずつ理解してきている中、今回2回目のインカレなので自分ができることは微量かもしれませんが一生懸命やりたいなと思います。 

伊藤 初めてのインカレで分からないことだらけなのですが、一つ分かるのはこの大会が四年生最後の大会であって、これ以上先には延ばせないので。この大会、最後に笑って終わりたというのはあるので、ここで勝って、もし自分に登板する機会があれば、絶対抑えて先につながる大会にしたいと思います。あとは楽しい雰囲気で。チャレンジャー精神しかないので、その雰囲気づくりをべンチからしていきたいと思います。 

――今回のインカレでカギになると思う選手はいらっしゃいますか

伊藤 団体競技がなので、誰がカギになるというよりも全員がやり切らないといけないと思います。ただ大会を迎えて特定の人に打球が多くいったりチャンスの場面でいつも回ってくる人がいたときは、その人がファインプレーをするとチームは盛り上がると思います。

廣瀬 私は四年生全体だと思います。やはり大学での最後のインカレなので一から三年生が出せる力は限られてきてしまうと思うのですが、そこで四年生が意地やプライドを見せられると4年間やってきたものは自分たちには出せないので。やはり四年生がカギになると思います。 

宮川 廣瀬が言った通り私たち四年生がカギになると思っていて。四年生が思い切ったプレーをすれば後輩たちもやりやすくなりますし、勢いに乗ることで後輩たちは何も言わずとも乗ってきてくれると思うので。私たちがどれだけ試合を引っ張れるかということで、もちろん調子がいい9人が試合には選ばれると思うのでそれぞれがベストを尽くし、あとはベンチの選手も試合に対する情熱をぶつけられるかだと思います。

――宮川さんにお聞きしたいのですが、後輩たちに残していきたいことなどはありますか

宮川 たくさんあるな(笑)。一つ一つの経験を大事にしてほしいですね。自分たちは春季リーグがダメでどん底を見たんですけど、でもその反対側の側面というのはインカレに向けて自分たちの悪いものが出せた。悪い経験にはそれだけいい側面もあると思います。いいときは逆に油断してはいけないだとか、一つ一つの経験を大事にしなければいけないので、一日一日を無駄にしてほしくないと思います。

廣瀬・伊藤 ありがとうございます!

宮川 ここで言うのは恥ずかしいな(笑)。

――インカレで四年生の先輩方は引退されると思うのですが、やはり勝利で終わりたいという気持ちは強いですか

廣瀬 今の四年生とは一年半一緒にやって長い時間プレーできてありがたいです。また一球でも多く投げて長く試合をやりたいと思います。やはり勝ちたいです。

伊藤 やはり勝ちたいです。自分は入学して4か月なので長くやれているわけではないんですけど、その中でも四年生の素晴らしさやインカレに向けての必死さはずっと見てきてプレーもさせてきてもらってきているので。この四年生がいなくなったチームというのは自分の中で変わってくると思うので、今のチームで頂点を取りたいというか。最高のかたちでワセダのソフトの伝統を自分たちも受け継いでいければいいと思います。

――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

伊藤 最初にも言ったんですけど自分のできることを精一杯やって、ピークをそこにもっていくのと最後に笑って終われるように全力を尽くしたいと思います。

廣瀬 四年生とやれるのもあと少しなので自分のできることを出せるように今から調子を整えて先輩方とプレーしたいので全力でやります。 

宮川 かわいい後輩たちに囲まれているので、今から楽しみです。毎年お祭りのような最後の大会なので後輩たち、そして同期と勝ちたいですし、自分が全力を出し切って試合を楽しみたいと思います。全力を出し切れば勝ちにつながると思うので、元気よくワセダらしく勝ちたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 望月優樹、岡田静穂)

 

◆宮川眞子(みやかわ・まこ)(※写真右)

1996(平8)年1月11日生まれ。B型。163センチ。福島・帝京安積高出身。スポーツ科学部4年。4年生ながら後輩である廣瀬選手、伊藤選手に対談中、何度も愛のあるいじりを受けていた姿が印象的でした。集大成ともなる今大会。宮川選手の勇姿に注目です!

◆廣瀬夏季(ひろせ・なつき)(※写真中央)

1997(平9)年8月21日生まれ。B型。161センチ。北海道・とわの森三愛高出身。スポーツ科学部2年。持ち前の明るさで対談を盛り上げてくださった廣瀬選手。その明るさと豪快なピッチングでチームを勝利に導きます!

◆伊藤貴世美(いとう・きよみ)(※写真左)

1999(平11)年2月4日生まれ。O型。164センチ。千葉経大付高出身。スポーツ科学部1年。一年生ながらすでに試合で活躍を見せている伊藤選手。ストイックな姿は先輩方のお墨付きです。一年生らしい若さとパワーでチームに勢いをもたらします!