下級生にとって、ことしの全日本大学選手権(インカレ)は4年生たちと臨む最後の大会となる。1学年下の後輩として、これまでずっと一緒に戦ってきただけに思い入れは強いだろう。今回は萩野谷知大(人3=水戸第一)、山本修平(スポ3=大阪・清風南海)、塩沼泰成(スポ3=福島・安積)の三選手に先輩との思い出やインカレへの意気込みを伺った。
※この取材は8月11日に行われたものです。
ここまでの振り返り
爽やかな笑顔の山本
――今季のシーズンを振り返ってみていかがですか
萩野谷 春から夏にかけて日体大という同じ相手に苦戦していて、その大学にどうやったら勝てるのかというところを追求しています。東日本大学選手権(東日本)でも対戦したんですけども、自分たちのやりたいことができずに負けてしまいました。その反省材料をもって、インカレに臨むといった感じです。
――早大のやりたいこととは
萩野谷 早大では選手それぞれに果たすべき役割があります。僕の場合だと走者を生還させるというよりは走者を次の塁に進める。強いゴロを打って内野の間を抜く。こういう明確化された役割です。それが東日本ではできず、チームとして噛み合ってこなかったです。
――お二人は今季のシーズンを振り返ってみていかがですか
塩沼 3ヶ月あった冬のオフシーズンで各々トレーニングをしてきました。そして、それを春に発揮しようとシーズンに入ったのですが、萩野谷が言ったようになかなかそれが噛み合わず、まだ試行錯誤しているところです。各々の役割が噛み合うときは噛み合うのですが、日によってできることができなくなったりしています。そこをどうにかなくしていく工夫をしているところです。個人的には5月後半から脚をケガしていて、チームの補助だったり、リハビリを継続しています。そのケガで東日本とかは出場できなかったのですが、4年生にとって最後のインカレになるのでケガをしてでも試合には出るつもりでいます。
山本 特別ページシステムを含めて春季リーグ戦(春リーグ)を3位で終えました。そこで国士舘大を相手に1失点に抑えるなどバッテリーとしては収穫がありました。しかし、その後、二大会連続で日体大に結構点を取られてしまいました。そこに関しては不安要素を抱えながらインカレに臨む感じになります。塩沼がケガからそろそろ復帰してくれるということで、追加点で投手陣を救ってくれるのでないかと期待しています。
――特に直近にあった東日本を振り返ってみていかがですか
塩沼 3回戦までは投手が抑えて、野手が全員出場して良い流れで試合ができていました。そして、紺碧隊もそこでチームに加わって、雰囲気に関しても収穫がありました。しかし、準決勝、日体大と対戦で、バッテリーが序盤から大量失点をしてしまったり、打撃陣も相手の1年生投手を打ちあぐねてしまって最終回以外は打線のつながり見えていませんでした。金子主将(祐也、スポ4=長崎・佐世保西)は打順の一巡目から積極的に攻撃をしていこうとおっしゃっていて、それができないと序盤から失点をしてしまって、東日本のような試合になってしまいます。そういう意味では東日本の日体大戦は課題が多かったなと思います。
萩野谷 東日本の1,2,3回戦から小さなミスというのはありました。それがあっても勝ててしまったので、気にせず試合をしていた。その直後に日体大と試合をして、やはり、力のある大学と対戦した時にはそういった小さなミスでも命取りになる、そこに付け込んで畳みかけてくると改めて感じました。インカレに向けて、そこを修正することが最優先だと感じました。
山本 全総予選(全日本総合選手権東京都予選)で日体大に敗戦して悔しい思いをしました。そこからリベンジするつもりで東日本に臨んで再び敗戦しました。初回から相手の勢いを抑えることができずに7失点。僕はそこをとても反省しています。でも、最終回に打撃陣の方たちが連打で得点してくれたというのは成長を感じました。打者陣の成長の反面、僕たちが大量失点してしまったのでそこに関しては不安要素があります。
――インカレに向けて最近はどういった練習をされているのでしょうか
塩沼 東日本では結構、内野陣のエラーが目立っていた印象がありました。内野の守備練習であったり、外野と内野の連携を強化しています。ケースノックであったり、実践に限りなく近い状況でプレッシャーを与えながら練習しています。
萩野谷 どの場面においても低く強い打球を打つというところを意識して練習しています。僕は長距離打者や得点力の高い金子主将たち4年生とは違う方向性で走者が塁にいるときに次につなぐことができる打撃を心掛けています。
――バッテリーとして取り組んでいることなどありますか
山本 打者と勝負できる球、コントロール、そして球威などをブルペンで確認しています。インカレでは継投をすることも考えているのでブルペンに多く入って、各投手の球を多く受けるようにはしています。
――昨年のチームと比較してこのチームの強みは
山本 1、2年の出塁ですかね。1番打者の川上(卓也、スポ1=岡山・新見)は、小技もできるんですけど、強い安打も打てて塁に出てくれます。そして、2番の増形(俊輔、社3=千葉敬愛)も同じ感じです。1、2番がしっかり出塁してくれて、それが得点につながり始めました。それが確立されているのがことしのチームの強みでもあるのかなと思います。昨年と比較すると戦術のバラエティーが豊富なのかなと思います。
塩沼 打線のつながりに関していえば昨年よりはあるのかなと思います。しかし、プレッシャーのかかる場面においては昨年の4年生たちの方が勝負強かったのかなという印象です。
萩野谷 二人と同じですね。
――昨年はインカレでの4連覇を成し遂げることができられませんでした。その瞬間ことを教えてください
塩沼 僕は当時、試合に出ていました。金子主将が不調やケガがあって、自分は5番打者として出場していました。 負けた瞬間は悔しかったんですけど意外とあっけなかったです。あっというまでした。1年生の時は応援として先輩たちのプレーをあこがれるように見て、安心して試合を見ていたのですが。もっとできることがあったんじゃないかとか、負けたくないなと感じるようになりました。
山本 あの試合は序盤から点を入れられてしまって、ビハインドの状態から試合でした。僕はベンチから応援していて、負けていてもきっと勝ってくれるだろうという思いでした。しかし、負けた時には、「あ、負けてしまった」といったようにあっけなかったです。インカレでの初めての敗北だったので、来年はそんな思いをしたくないなと感じました。
萩野谷 この早大ソフトボール部に対して、勝つことが当然というイメージを持っていました。その上で練習にも取り組んでいましたし、インカレでは紺碧隊として応援していました。なので、2回戦での敗戦というのは悔しかったですね。日本一を目指せる環境がソフトボール部にはあると聞いて入部した経緯があるので、負けたことに抵抗があったというか、負けたくなかったですね。
――その敗北から学んだことはありますか
萩野谷 昨年のインカレを経験して、主将にかかるプレッシャーは多大なものだなと感じました。そこから、僕がグラウンドにいるときは自分も主体的な姿勢を見せて、下級生も含めてプレッシャーを分散させることが重要だと学びました。
山本 萩野谷と同じで、最後のインカレとなるとかなり4年生は重圧を感じるようになっていたと思います。プレッシャーでなかなか普段の実力が出せない、そういった問題を抱えながらの試合になると思うので、僕たち下級生の活躍が重要になってくるのかなと思います。僕が1年生の時にインカレで優勝した時も決勝で当時2年だった金子主将が本塁打を打っていましたし、最後の大会となると下の学年がしっかりとチームを支えないといけないのかなと思いました。
塩沼 確かに上級生たちに重圧がかかっているという印象は持ちました。僕は当時、2年生として伸び伸びプレーをしてくれと言われていたのですが、ことしは昨年よりも重圧を感じるようになってきました。でも、重圧を一番感じているのは4年生。僕たち下級生が溌剌(はつらつ)としたプレーで貢献するということが重要だと感じるようになりました。
――学年が上がっていくにつれてインカレへの思いは変化していきましたか
塩沼 1年生の時は圧倒的な存在の4年生を感じていて、何も僕たちはチームに貢献できていないと感じていました。でも、2年生になって試合に出るようになってくるとプレーの面や後輩の指導などで貢献しないといけないと感じるようになり、3年生の今はこのインカレが終わったら次は僕たちの代なんだと思うようになりました。学年が上がっていくにつれてインカレが身近な存在になっていきましたね。
萩野谷 昨年までは試合に出ても、自分のプレーを頑張ろうと。しっかりと自分のプレーができたら勝てるとだけ思っていました。しかし、試合に出る機会が多くなってきて、自分のプレーができても、できなくてもチームが勝つこと自体に意識を向けるようになっていきましたね。
山本 ことしから試合に出るようになって、投手陣と共に相手を抑えたいという気持ちが強くなってきました。勝ってほしいなという気持ちより、僕たちバッテリーが重要な場面で勝負して勝ちたい。インカレに向けてこういう気持ちが強くなっていきましたね。また4年生は一個上の学年の先輩ということでずっとお世話になってきた先輩です。なので、今までの恩返しではないですけど、今のチームで結果を残すことができたらなと思います。良いこと言ったわ(笑)。主将に褒められる(笑)。
萩野谷 評価につながる(笑)。
4年生との思い出
塩沼は苦い思い出を語ってくれた
――3年生はどういう学年ですか
塩沼 仲が良い印象はあります。そして、みんな個性が強い。あと、本キャンの人が多いので他の学年と雰囲気が違いますね。絡み方がおかしかったり(笑)。みんな仲が良いです(笑)。
山本 人数が多いので。
――4つの学年で何番目くらいに仲が良い自信がありますか
塩沼 圧倒的に一番ですね(笑)。
萩野谷 全体的に仲が良いので(笑)。
――同期で遊びに行ったりはするのでしょうか
山本 全体ではあまりしないですけど、各々、誕生日会を開いたり、ご飯を食べに行ったりします。
――同期の中で推しメンを挙げるとするなら
山本 僕と萩野谷は一緒に遊んだりします(笑)。最近、ちょっと付き合いが悪いですど(笑)。
萩野谷 お互いに(笑)。事情はシークレットで(笑)。
塩沼 僕は1年の時は坂本(大樹、法3=愛知・名古屋)と仲が良かったです、今も仲は良いんですけど(笑)。坂本が家に泊まりに来てたりしてました。推しメンではないんですけど、今は豊田(誉彦、スポ3=兵庫・滝川)とゼミも同じでよく一緒にいます(笑)。
――先輩に推しメンはいますか
山本 やっぱり松木(俊皓、スポ4=宮崎・日向))さんかな(笑)。部内だと、オフの時によく一緒に遊びに行ったりします。僕と結構、趣味が合っていたり、見たい映画が一緒だったり、服を買いたくなる時期が一緒だったり(笑)。松木さんから「行くぞ」と誘ってくれます。あと同じ学科のコースなので授業も一緒に受けたりします。
――尊敬している先輩は
萩野谷 金子主将ですね。視野広くチームを見れているところ。結構、金子主将は厳しいことを言う人なんですけど、要所でちょっとしたフォローをしてくれて、その優しさが一番良いところですかね。
塩沼 僕も金子主将ですかね。萩野谷はうわべだけのところがあるんですけど(笑)。
萩野谷 そんなことないって(笑)。昨日だって、金子主将から電話もらったんだぞ(笑)。
塩沼 ご飯とかを一緒に食べに行っても、チームのことを第一に考えているなというのも感じますし、練習メニューにだったり、このチームに関することはすべて金子主将が考えてくれていることなので。金子主将のチームに対する思いに尊敬しています。怒るときは怒る。楽しむときはみんなで楽しんで(笑)。
山本 師匠ですね(笑)。水本将文(人4=長崎・佐世保西)さんは僕が師匠と崇めている先輩です。プレーでしっかりとチームに貢献していて、なおかつ遊ぶところは遊んでいる。松木さんも同じですかね。水本師匠と松木さんは尊敬している先輩です。
――4年生との思い出は何かありますか
塩沼 僕は昨年の春までは遊撃手だったのですが、それに関して思い出というか辛いエピソードがあります(笑)。最初、金子主将が三塁手をやっていて、僕が遊撃手でした。でも、僕が試合中にエラーをたくさんしてしまっていて、全体の会議で金子主将に「なぜ、そこまでして塩沼を遊撃手として試合で起用するんですか」と言われてしまいました。そして、そこから僕と金子主将がコンバートされるようになりました。それが結構、印象深い思い出ですね。高校時代に野球で守っていたショートとは違って難しいと感じていたので、会議で金子主将があの発言したことによって結果、良い方向に行ったと思っています。自分自身としてもサードのほうが守りやすいですし。あの出来事は僕が大学に入ってソフトボールをやっている中でのターニングポイントだったのかなと思います。
山本 なんでかわからないんですけど、僕は松木さんと二人でテラスハウスの映画を見に行ったことがあります(笑)。テラスハウスって男二人で観に行くものじゃないですか(笑)。帰ってからなんで松木さんといったんやろって思いましたね(笑)。
萩野谷 僕は入部した時の話をします(笑)。僕は高校まで野球をしていて、1年の冬くらいに早大ソフトボールに入部しました。なので、ソフトボールについて分かっていなくて、どういう世界があるのか知りませんでした。そして、ある日、ティーバッティングをしているときに濱中さん(勇輝、人4=神奈川・桐光学園)とペアになって、「松木さんの球を打つことができればどこの大学と対戦しても打てるよ」という言葉をいただきました(笑)。その時、濱中さんが自分も強打者風な話し方をしていたので、きっと濱中さんも大学で上位の打者なんだろうなと思っていました(笑)。それから、濱中さんに打撃の指導とか受けるようになって、細身なのに松木さんレベルの球を打てるやばい人なんだろうなと(笑)。でも、冬が終わって、実戦形式の練習をしている濱中さんを見て、あれ?って(笑)。
山本 やめろって(笑)。
萩野谷 結構、普通の人なんだって(笑)。松木さんの球を打てるわけじゃないんだって(笑)。という濱中さんとのエピソードがあります(笑)。
「僕たち3年生が結果を残して4年生を支えたい」(萩野谷)
元気だけは部内で誰にも負けないと話す萩野谷
――インカレでの役割は
萩野谷 4年生に多大な重圧がのしかかってくる中で僕たち3年生が結果を残して4年生を支えたい。それにこだわってやっていきたいです。金子主将から言われていることを徹底して、隙なく試合を進めることが重要かなと思っています。具体的に打撃だと低く強いゴロをフルスイングで打っていく、これを貫きたいです。それがチームに支えることにつながっていくと思います。何気なくそれを実行するのではなく、確実に意識的にやっていくこと。これが重要です。
塩沼 僕はまず、ケガをしているので万全の状態で試合に出るということをひとつの目標として取り組んでいます。万全な状態で試合に出場するというところでチームに貢献していきたいです。今は川上が三塁手をやっているんですけど、またもう一度、ポジションを獲得する覚悟でやっていきたいです。そういう意味ではインカレまでの期間が重要になってくると思います。僕はチャンスで一本打ったり、長打狙ったりする打者なのでインカレでは苦しい場面でそういった一本を出せるような。そこでの一本を打ってチームに貢献したいです。また金子主将が重要な場面以外でタイムアウトをかけなくてもいいように、三塁手として出場したら、ピンチの場面では積極的に僕が投手に声を掛けたり、励ましたいです。また3年生以下を僕がまとめていければ、それもインカレでの勝利につながるのではないかと思っています。
山本 チームが勝つためには投手陣と協力をしてバッテリーで相手チームを抑えるのが役割になってくると思います。リードの面以外でも、守っている野手に声を掛けて元気づけたい。また堂々と溌剌(はつらつ)としたプレーをして結果的に自分たちの得点未満に相手を抑え込めればと思っています。
――初戦で対戦する関西大学についてはいかがですか
塩沼 春先の練習試合でも負けていて、西日本大学選手権でも2位の強豪です。レベル的にはワセダと同じかそれ以上だと思っています。自分たちができることをインカレでどのくらい発揮できるかがカギとなってくると思います。
萩野谷 試合の状況は本番になってみないとわからないですが、僕たち3年生に盛り上げキャラが多いので、もし劣勢になってしまったら、僕たちが盛り上げて、元気づけて劣勢を跳ね除けたいと思っています。
山本 相手投手が良いというのはわかっていることなので、僕たちがいかに最少失点で相手を抑えられるかだと思います。粘り強く守っていれば、今の打線ならいつか逆転してくれると思えるので辛抱強く守って、自分のできる限りのことをやっていけたらなと思います。
――インカレへの目標と意気込みを教えてください
塩沼 チームとしての目標はやはり優勝です。僕の個人的な目標は打つべきところで打って、守りではノーエラー。今までチームとして掲げられてきたことを完璧にこなしていきたいですね。4年生と一緒にできる最後の試合になりますので、完璧なプレーでチームに貢献していきたいなと思っています。
萩野谷 チームとしては当然、優勝です。個人としては4年生を僕の元気の良いプレーで助ける。これです。同じが野手として、水本さんや笠井さん(新一朗、スポ4=徳島・城東)を支えたいです。元気の面に関していえば人よりもある方だと思うので、それを今までのようにプレッシャーに負けることなくしっかりと出していければと思います。
山本 チームとしては優勝です。個人としてはチーム発足時に掲げていた目標が日体大に5-2で勝利するということなんですけど、インカレで対戦できるかわからないですけどもチーム発足時に掲げた目標を貫いていきたいと思います。また全試合2失点以内に抑えたい、投手をしっかりとサポートして、それが達成できれば優勝は見えてくると思うので、頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 本田京太郎)
◆萩野谷知大(はぎのや・ともひろ)
1994年(平6)8月19日生まれのA型。身長171センチ。茨城・水戸第一高出身。人間科学部3年。外野手。取材の前日、死球を受けてお顔が腫れてしまっていた萩野谷選手。プレーには問題ないと明るい口調でおっしゃっていましたが心配です。インカレまでに腫れが引いていることを祈っています。
◆塩沼泰成(しおぬま・たいせい)
1995年(平7)12月12日生まれのO型。身長177センチ。福島・安積高出身。スポーツ科学部3年。三塁手。落ち着いたトーンで簡潔に話をする塩沼選手。その雰囲気は何処となく金子主将に似ていました。金子主将と過ごす最後の夏、最高のものにしてください。
◆山本修平(やまもと・しゅうへい)
1995年(平7) 5月24日生まれのB型。身長171センチ。大阪・清風南海高出身。スポーツ科学部3年。捕手。爽やかな笑顔で受け答えをしてくれた山本選手。試合ではその甘いマスクの上にさらにマスクをかぶってプレーをします(捕手)。インカレでも山本選手の笑顔は見られるでしょうか。