【連載】インカレ直前特集『prove ~証明せよ~』 第5回 松木俊皓×豊田誉彦×吉田尚央

男子ソフトボール

 インカレを戦う中で非常に重要となってくるのが、松木俊皓(スポ3=宮崎・日向)、豊田誉彦(スポ2=兵庫・滝川)、吉田尚央(人2=長崎・佐世保西)の三人を軸とした投手陣の働きぶりだ。4年生には投手がいないため、4年生の思いも背負ってマウンドに上がる。大舞台を前に三人は何を思うのか、その胸中に迫った。

※この取材は8月19日に行われたものです。

「三人ともタイプが違う」(吉田)

相手の流れを断つ抑え投手として期待がかかる吉田

――まず今シーズンを振り返っていかがですか

松木 自分たち三人が抑えれば勝てるはずなんですけどなかなか踏ん張れなくて、結果特に日体大には3試合やって全敗しちゃっているので。この代は特に自分たち三人が機能すれば勝てる、逆に機能しないと勝てないチームだと思うので、しっかり抑えれば最後のインカレで勝って終わって、シーズンが良いものになるのではと思います。

吉田 そんなに多くは投げていなかったとしても、自分の仕事が完全にできていたかと言われるとそうではなかったりします。いま振り返って思うのは、自分が風邪をひいたり1年間でインフルエンザに2回なったり、リーグ戦もインフルで1回休んでしまって、体調を崩して迷惑をかけることが多かったかなと思います。

豊田 最近だと東日本(東日本大学選手権)がありましたが、そこでまず初戦自分が先発を任されて、5回3点取られてしまってあまり期待に応えられなかったというのがありますし、準決勝でもこれ以上点を取られまいという場面で出していただいたのにまた相手に追加点を許して、勝ちが遠くなってしまって。せっかく機会が与えられたのにその期待に応えられなかったというのが、今シーズンの振り返りですね。

――お三方とも下級生の頃から登板されていますが、以前と比べて成長した点などはありますか

松木 2年生の時と比べると、どんなに強いチームと当たっても緊張が無くなったかなと思います。でも自分ではあまり実感がないというか、良い結果が残せていないので。きょねんもインカレで優勝しましたが、それ以外の試合でも自分がほとんど先発を任されて負けているので。またインカレで優勝しなきゃいけないというのはあるんですけど。インカレしかまだ取れていないというか、他の大会を自分たちで取れていないので、まだ成長過程かなと思いますね。

吉田 自分は成長したというよりか、きょねんよりは高校時代に精神的に戻れたんじゃないかなと。高校時代は大きな場面とかも強かったんですけど、きょねんはそういう場面でダメなときが基本多くて。でもことしは東日本でもピンチとかで抑えられて、まあ最後日体大には打たれましたけどそれまで良かったと思います。

豊田 自分は技術的な面で、変化球を一つ二つ先生(吉村正監督、昭44教卒=京都・平安)から教えてもらって。ちょっと増えるだけでも投球の幅が大きく広がるというのを教えていただいて、それでやっと大学でもそれなりに通用するようになったと思います。

――投手として試合のときに意識していることなどはありますか

松木 このチームの目標が『日体大に5-3で勝つ』というのがあって。自分はだいたい先発を任されるという中で、自分の後には尚央がいて、尚央にマウンドを譲るまで絶対に無失点でつなげば後はこいつが抑えてくれるというのがあるので、とりあえず吉田に良い流れで回すというのを考えています。きょねんのインカレもこの流れでいって、抑えれば勝てるというかたちができているので。

吉田 自分の仕事は抑えで、松木さんと豊田という2人の先発がいて、自分はどちらかというと抑えとして2人よりも向いている、というのがあってこそだと思うので。また、そうやって投げる時に自分は自分のピッチングをするというよりかは、松木さんや豊田と違う、かぶらないピッチングをするという方がバッターとしても嫌なのかなと思うので、かぶらないように、その中でも自分の特徴を生かせるようにというのを心掛けています。

豊田 この中だと一番打たれるというのがあって、その中でもワセダは守備が堅いと思うので、特に内野手。だから三振を取るのではなくて、バッターに打たせて取るにはどうすればいいのかというのを自分の中で考えるようにしています。

――今シーズンから大嶋翼選手(スポ4=群馬・新島学園)が捕手となりましたが、大嶋選手の存在は投手陣から見ていかがですか

松木 翼さんは配球に自分のスタイルがあって。例えば僕の調子に合わせて、その時に良いボールを生かすようなピッチングを要求してくるので。翼さん自身自分に自信もあるし、自分のスタイルを曲げずにやるので僕自身も投げやすいですね。野球部の方からアドバイスももらったりしているみたいで、まあ先輩にこんなこと言うのも失礼ですけど、キャッチャー初心者でもここまで頑張ってきたなと思います。

豊田 チームの中でもムードメーカー的な存在であると思いますし、その方がキャッチャーにいると全体にも視野を広く持って指示を送っているので、チームの軸となる人がキャッチャーに座ると締まるというか。チームの雰囲気は前と比べても良くなっているかなと感じます。

吉田 自分は革のソフトボールが2年目で、いまだに投球の組み立てとかはゴムとの違いに慣れないところもあるんですけど、きょねんは沓澤さん(翔氏、平27スポ卒=大阪・関西大倉)や柏原さん(祐太氏、平27スポ卒=大阪・清風南海)というずっとキャッチャーをやっていて革のソフトにも慣れている方がいて。翼さんは始めたばかりで、ピッチャーをやっていたというのもあって組み立てとしては攻めの組み立てというか、守りに行かない組み立てをしています。キャッチャー歴が短いからこそそういう組み立てをしてくれるのかなと思います。後は、松木さんも言っていたように野球部の方からアドバイスをもらったり、多分ですけどうまい人の動画を見たり、もともとキャッチャーである林さん(友暉、スポ3=大阪・清風南海)とか山本(修平、スポ2=大阪・清風南海)に練習中でも質問したりしていて。翼さんは努力の人というか、努力するのが好きな方だと思いますね。自分は後輩ですけど、投げていると「日に日にうまくなっているな」と感じたりします。

――ワセダの投手陣の強みはどこにあると思われますか

吉田 三人ともタイプが違うことですかね。

豊田 それはいいね。

松木 確かに。吉田はドロップ系で、自分はライズに近いのかな。豊田はいろんな変化を持っている投手で。三人ともピッチングの色が違って、だからこそさっき言ったように自分と尚央、豊田と尚央でつなぐというのが強みかなと思います。

――それぞれ色が違うということですが、ほかのお二人から見て松木さんのすごいところはどこですか

吉田 三振を取れる球種が多いというのと、調子が良い、悪いに関係なく、なんだかんだ試合をかたち作る力があるというところですね。

豊田 どれを使っても三振を取れるのは本当にすごいです。理想的ですね。

松木 とりあえず、どの変化にしてもノーマルに投げられるという感じですね。あまり「これで三振を取れる」という球は無くて、その日によって違う球でスタイルを変えられるという感じです。

――吉田選手についてはいかがですか

松木 何と言ってもスピードですね。後はドロップ。幅が広い投球もあって、でも彼はやっぱりスピードですね。

――豊田選手については

吉田 器用ですね。

松木 教えられたらなんでもできちゃうというか、それをまた応用して使って投げられるというところですね。後は緩急。同じ球でもスピードが違います。三人の中では一番遅いですが、決めるときの球が体感で速く感じるというのも特徴だと思います。豊田はライズ、尚央はドロップ、自分はノーマルです。

――教えられるというお話が出ましたが、吉村監督からはどういった指導を受けるのでしょうか

松木 三人とも主にドロップとチェンジアップを教えていただいているんですけど。例えば試合前とかに見てもらうときは、たった15分くらいの指導でもそれを使えば試合で抑えられるということもあって。特にドロップとかは下の打球が多くなってホームランも減ります。先生に教えていただいたことを実行できれば、抑えられるんじゃないかと思います。レベルが高いですね。先生からよく指導をいただくのは緩急です。上下左右の変化があって、先生はさらに『前後』の変化を意識させるような指導をされます。いまのこの時代、バットも良いしボールも飛ぶものなので、どれだけ芯を外すかという中でその前後の変化は大事だと思います。

豊田 自分は最近、ナックルボールという変化球で先生からそれ相応の評価をいただいているのですが、変化せずに打たれたりしたときも「一球一球ギャンブルなものだから仕方ない」という風に言っていただいて。でも相手がそれを振らなければその後に速い球を投げれば打てない、というアドバイスもあって、それを意識してピッチングするようにしています。

吉田 自分は「これは良いな」と思ったものを優先的に取り入れるようにしています。自分の性格的に、人から教えてもらったものをすべてうのみにしてしまうと調子を崩して自分を見失ってしまうので、先生から指導をいただいたことをきちんと聞いて、自分の中で吟味して、これは欲しいと思ったものを自分の力にして、自分のレベルを上げていけるようにしています。

「優しい気持ちも持つようになった」(豊田)

器用な投球術で相手打者を翻弄(ほんろう)する豊田

――オフの日の過ごし方は

松木 服が好きなので、池袋や原宿行ったりして、それから誰かに連絡取ったりしてご飯行ったりして遊びます。部活の人というよりも、他大の先輩や学部の友達とが多いですね。ソフトボール部ではあんまり遊ばないかなあ。でもこの前はサマーランドに行ってきました、ソフトボール部で。まあ、疲れているときは寝れるだけ寝て、録画見たりする日もあります。

豊田 自分も池袋とか、秋葉原とかへよく行きます。基本的には一人で行くことが多いですね。その方が自由がきくんで。練習で疲れているときは家でテレビ観たりしています。あ、今秋葉原というワードが出ましたがアイドルは好きじゃないですよ(笑)。アニメのほうが好きですね。

吉田 この前のオフは…洗濯してました。

松木 それがオフかよ(笑)。

吉田 マジで洗濯なんです。午前中は基本洗濯しています。そのあとは、この前は水族館行ったりしました。買い物ってわけではないですがどこか出かけることも多いですね。

豊田 この前一緒に秋葉原行ったじゃん。

吉田 あれは昼に食べたいものがあったから付き合っただけだし(笑)。学会に行きたくなって、調べたら秋葉原にもあったので。

――1年生の印象は

松木 みんな真面目というかいつになくまともですね。1年生はノーマルですね。真面目に言うことも良く聞くし。この前のお楽しみ会では、こいつこんなに面白いんだって発見がありました。一番変わっているのは杖子(量哉、スポ1=岡山・新見)ですかね。ピッチャーなんですけど。なんか変なんです(笑)。

吉田 うん。なんか変わってる。ほのぼのしてる感じで。何考えてるのかわからない。

松木 それおまえもや(笑)。おまえもなに考えてるんかわからへん。まあ、全体的に1年生はいつになく真面目で、いい子たちだと思いますよ。

――2年生のお二人は、後輩が入ってきてなにか変化は

吉田 一番変わったのは、雑用しなくていいってことですね(笑)。

豊田 そうですね。1年生が雑用してるのを見ると、自分らもあんなことしてたな、大変やったなとか思います。

吉田 でも俺もお前も1年生のときからあんまりちゃんとやってなかったやん。

豊田 いやいや。大変そうやし、ちょっと手伝ってあげようかなとか、優しい気持ちも持つようになりました。

吉田 絶対嘘や(笑)。自分は…洗濯早いなって思いました、この前の東日本のときとか。ラインとかはまだ下手な部分もあるんですけれど、洗濯は、めちゃくちゃ早いのにちゃんと乾いてて感動しました(笑)。

――それぞれの学年カラ―は

松木 2年はピンクやな。俺ら真っ黒かな(笑)。この前ちょっと問題を起こしてしまった奴がいて、みんなで色々話し合った時に、同期内で悪いところはお互いに言い合える仲になろうって話しました。ちょっとまだ面と向かって言い合えていないところがありますね。だから黒。お前ら(2年生)はピンクだろ(笑)。

吉田 俺らそんなに桃色っすか。やだ(笑)。うーん、個性が豊かなんでカラーとかはないですかね。いろんなタイプの人間がいるので虹色ですってことで。

――下級生から見た4年生の印象は

松木 優しいですね、かなり。自分が1年生の時の4年の先輩が正直すごい怖くて。体育会系だなって思っていたのですが、年々優しくなってきていて、今の4年生は厳しさとかもほとんどないです。まあ、優しいのが長所でも短所でもあって、怒るところで怒りきれないところがあって、その分部の中で甘くなってしまうところもあるのかなって思います。つぎのキャプテンには厳しいやつを選んでいただいたので、次の代ではちょっと色が変わるんじゃないかなって思います。

「無失点に抑えるのが自分の仕事」(松木)

背番号1を背負い、主力投手として戦ってきた松木

――他大の打線の印象はいかがですか

松木 やっぱり日体大ですね。バットを思い切り振っていながらも芯に当たる確率が高いというか。高校ソフトボール界の中でもトップの選手たちが集まるのが日体大で、特にことしの4年生はトップで、すごいですね。そのチームを抑えられれば他のどのチームでも抑えられるというくらいなので。投げていて一番嫌です。大学日本代表が7人くらいいます。後は西ならIPU(環太平洋大学)とか。西の大学は結構バットを振ってくるので、そこは前後の変化も使っていく感じで。

――日体大ということで、河野拓郎投手(4年)の印象はいかがですか

松木 左投げだし、どの変化もしっかり変化しているというか。スピードもコントロールも大学ではトップクラスですね。

豊田 ランナーが二塁とかに進むと力を入れてきますね。

松木 この前の東日本でもピンチになると力を入れて、でもピンチ以外のあまり力を入れていない状態でもうちは抑えられていたので。それで試合を作れるのはすごいですね。大学では左であのレベルはいないです。

――インカレでも連戦となりますが、体力面ではいかがですか

松木 最近バッター陣が普通にやれば圧勝できる大学にも手こずっているというか、7回まで試合をすることがあって。いままでのワセダのかたちは、圧勝できるチームにはコールドで勝つというのがあるので。ワセダにはそれをできる選手たちがそろっていると思うので、インカレの序盤はコールドでいけるようにしたいですね。まあ暑いのはここ(所沢キャンパス)が一番暑いんで(笑)。

――インカレではどういった試合運びをしたいですか

松木 初回先制、ビッグイニング。初回先制が一番の課題なので、そこは1、2番コンビが出れば3、4番が返してくれるので。後は自分たちが点を取られないように。初回0で抑えて、その裏に先制するというのが理想ですね。そうすれば流れもこっちに来て、中盤でも点を取れればいいです。自分と尚央が代わるタイミングで尚央がぴしゃっと抑えて、またこっちの流れで点を取るという感じで。初回先制がこのチームのカギだと思います。

――昨年と同様、ここまでノータイトルですが意識はしますか

松木 まあ話はしないですけど、気付けばという感じですね。大会前は「これ取るぞ」とか言うんですけど、いまはもう「最後に勝てばいいだろ」って流れになっていますね。インカレは3連覇で来ているというのもあって、取らなきゃいけないタイトルだと感じます。できれば来年は全部取りたいですね。

――4連覇へのプレッシャーなどはありますか

松木 取りたいって気持ちはありますけどね。

吉田 まあ緊張は練習試合でもいつでもします。公式戦となると吐きそうにもなりますし。

松木 まああまり4連覇という意識はしていないですね。

吉田 優勝してからこその4連覇だと思いますね。

松木 後からついてくるものです。でも嫌なのは、4年生の「こうしたかった」というかたちができないまま負けてしまうことです。4連覇できなかった話をするのも変ですけど、もしできなかったとしても4年生の作りたかったかたちで終われるようにしたくて。結果的に、その4年生の作りたかったかたちで4連覇できるというのが最高ですね。

――最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします

豊田 インカレでは攻撃につなげられるようなピッチングをできるようにしたいです。四球のランナーとかはなしで、簡単に打たせて堅い内野で取って。それで簡単に終わった後、皆さんの攻撃で点を取ってもらって勝つ、というかたちを目指していきたいと思います。

吉田 内容は別として、最終的に勝てれば優勝できるので。言い方は悪いですけど相手のワイルドピッチでもいいから点を取って、そのまま1-0で勝つというかたちでもいいので。10点取られても11点取ればいいので、0点に抑えるとか打たれないというよりかは、勝てるピッチングをすることですね。10-0で勝っている試合をノーヒットノーランしたところでそんなに意味ないので。抜くところは抜く、力を入れるところは入れる。全部思い切り投げるというのも二十歳を越えた以上できないと思うので、大学生のピッチングといいますか、そういうのを求めていくのもいいんじゃないかなと思います。

松木 自分は先発が多いので、任された試合はいまの目標である3点以内に抑える、というより無失点で抑えて尚央につなぐ。それが自分の仕事だと思うので。無失点でつなげば絶対尚央が無失点で抑えてくれるので。インカレはこの三人のピッチャーがカギになると思うので、自分たちがこのチームを引っ張るかたちを作れれば最高ですね。点を取れなくても、点を取れるような攻撃の流れに自分たちが持っていければ、インカレも良いものになるのではと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 中丸卓己、久野映)

三人そろって最後は決めていただきました!

◆松木俊皓(まつき・としひろ)(※写真中央)

1994年(平6)8月25日生まれのO型。171センチ。宮崎・日向高出身。スポーツ科学部3年。投手。積極的に会話を盛り上げて下さった投手陣最年長の松木選手。投手として試合をリードするだけでなく、チーム全体のことを真剣に考えているからこその意見を、丁寧に言葉を選びながら話す姿が印象的でした。

◆豊田誉彦(とよた・もとよし)(※写真左)

1995年(平7)5月27日生まれのB型。166センチ。兵庫・滝川高出身。スポーツ科学部2年。投手。2年生ながら投手として上級生からの信頼も厚い豊田選手には、真顔で冗談を言うお茶目な一面も。それに突っ込む吉田選手との絶妙なやりとりからは、お二人の仲の良さがうかがえました。

◆吉田尚央(よしだ・なおちか)(※写真右)

1995年(平7)7月16日生まれのA型。180センチ。長崎・佐世保西高出身。人間科学部2年。投手。クールな言動とは裏腹に、ソフトボールに懸ける熱い思いが見て取れました。一つ一つの質問に丁寧に答えようとじっくり考えて下さる姿からは、誠実な人柄が伝わってきました。