【連載】インカレ直前特集『prove ~証明せよ~』 第4回 貴志奎太朗×吉野恵輔×野井颯平

男子ソフトボール

 チーム始動当初から飛躍的な成長を遂げたワセダ打線。強豪ひしめく全日本大学選手権(インカレ)で勝ち進むためには打線の活躍が必要不可欠だ。そのカギを握るのは貴志奎太朗(スポ4=大阪・関西大倉)と吉野恵輔(スポ4=福岡・城南)の一・二番コンビと、代打の切り札・野井颯平(人4=福岡舞鶴)。最終学年である三人がこのインカレに懸ける思いの強さは並大抵ではない。最後の大舞台を目前に控えたいま、チームのこれまでとインカレに抱く思いを語っていただいた。

※この取材は8月19日に行われたものです。

「責任感の強い人が多い」

リードオフマンとして打線をけん引し続けてきた貴志

――いまの代になってからを振り返っていかがですか

吉野 個人的にこの一年間は、新チーム始まったときに、主務としてマネージャーと選手を兼任するようになって、プレーヤーとして考える時間がなくなったんですけども、主務として吉村先生(正監督、昭44教卒=京都・平安)と接する時間が長くなるにつれて、いろんなことを学ばせていただいて、そのなかで集中力とかいろんなことを考える力とかを身に付けたので、すごい選手としても人間としても成長できた一年だったんだなって振り返って思います。

貴志 試合に出させてもらう時間が増えて、自覚が芽生えた、自分の中での責任感が生まれた一年だったっていうのと、チームや4年生全体としては、仲はいいんですけど怒る厳しさがあまりないチームなのかなあと感じていたんですけど、うまくここまでやってきたんじゃないかなと思います。

野井 何をやるにしても、「あ、最後なんだな」って。リーグ戦にしても、全日本総合選手権予選にしても悔いのないようにやろうと思って始まったのが新チームだったなっていう印象で。あと貴志も言ったんですけど、先輩もいなくなってそれまで先輩に頼ることが多かったんで、後輩をどう引っ張ることができるか考えてできるようになった一年かなと思いました。

――4年生になって意識が変わったというようなことはありますか

吉野 自分は主務なんで、グラウンド外のことでいろんなことを決断しないといけないときに責任感を持ってやらないといけないなというのはまず初めに思いました。いままでは先輩がいたから、自分が失敗しても先輩がどうにかしてくれたり、先輩が助けてくれたりしたんですけども、先輩がいなくなって、自分が主務としてグラウンド外の責任者になったときに自分の失敗は自分で責任を取らないといけないですし、失敗に対する恐怖感もあったんですけども、それ以上に責任を背負うことで成長できたのかなって思います。

貴志 自分の取りえは明るさかなって思って。やっぱり溝口(聖主将、人4=長崎・佐世保西)とか山口(晋平副将、法4=兵庫・白陵)とか、主将と副将が、グラウンドの中では厳しい姿勢をとってしまって、雰囲気が重くなりがちなときに、自分の明るさは出し続けようって。チームの雰囲気は良くしていこうっていう気持ちは持っていました。

吉野 まあやりすぎのときもあるけどな(笑)。

野井 自分は二つあって。結構かぶるんですけど。4年生になったら後がないんで後悔しないことと、あと責任感が芽生えたことですかね。役職も、吉野のサポートをしていたんですけど、吉野がめちゃくちゃ頑張ってくれてるんで。何かできればと、そういうところで責任感が生まれたかなと思います。

――ことしはポジションの変更が多くありましたが

貴志 僕大学の途中までピッチャーをやってて。高3のときのは国体を優勝してて。ご存知ですか。

一同 (笑)。

貴志 雨降って同時優勝で、まあ本当の日本一じゃなくて。大学でもピッチャーやろうかなって思ってたんですけど、都留文科大のときが最後のマウンドで。そのあと野手に転向して、いろんなポジションを守って。キャッチャー以外全部試合出たことあるんですけど。やってきてつらかったというよりどちらかというと楽しかったっていう気持ちが大きくて。高校3年間ずっとピッチャーだけやってきて、その3年間よりも、大学でいろんなポジションを守った4年間のほうが楽しかったし、いろんなポジションを守ったことによって言えてくることも変わってくるし。そこはワセダの強みだし、僕の強みでもあると思います。

――他の方は守備練習のほうでは

野井 自分に関しては、ほぼ守備をしなくなりました。外野で今までやっていて、散々迷惑をかけて。2年前にいた粟田さん(俊哉氏、平26スポ卒)のときとか…。よくお叱り受けてたんで。そこからやっぱりバッティングに集中したほうがいいんじゃないかというのを溝口に相談して。守備をほとんどせずに、たまに紅白戦とかで。あと点差ついたときとか、ちょこっと守るんですけど。でもそのぶん精神的に楽になったかなっていう。それで打撃がだめだったら、だめって開き直れるので。自分ポジションがほとんどないので。そのぐらいです。

――吉野さんはここ1年で激動の守備位置変更がありましたが

吉野 はい。大会ごとにポジション変わってるんで(笑)。僕は今ファーストでずっと試合に出させてもらってるんですけども。高校時代はピッチャーとファースト以外守ったことなくて。基本ファーストで守って、エースの人が投げないときにたまに投げるぐらいのピッチャーだったんで。大学入ってからもずっと、3年生のアメリカ行く前までファーストしかやってなくて。でアメリカ行って、外野にも挑戦して。幸いスタメンで出させていただくこともあったんで。そこで自分でファーストと外野やれて、貴志と同じくすごく楽しいなっていう。いろんな角度からソフトボールが見れて楽しいなって思ってたところで、新チームになったときに、吉村先生からある日突然、「キャッチャーに行け」と言われ。自分は左利きキャッチャーなんてできないなって。野球とソフトボールって左のキャッチャーとかプロ野球とかでいないわけで。で、その発想が自分にはなくて、そのときすごい衝撃を受けて。吉村先生からは日々概念を崩しながら、成長していくんやっていう話をよくされていて。これが概念崩しかと思って左利きのキャッチャーに挑戦しました。で、正直、ファーストと外野を守った以上にキャッチャー楽しくて。自分が試合をコントロールしているなっていう、プレーの中でも責任あるポジションで、試合をどんどん動かしていくことにやりがいを感じていて。楽しいなって思って。キャッチャーやりたいなっていう思いはあったんですけども、やっぱり春季リーグ戦の前に自分がキャッチャーとしてやっていった先に、インカレ優勝というのがどうしても幹部一同見えないというのがあって、またキャッチャーやめてファーストに行ったんですけども、本当にキャッチャーとしての経験っていうのはすごいプラスになっていて。配球を読むとか、バッテリー心理を読むっていうことにつながっていて。いまの打撃につながっているんじゃないかな、というふうに思ってます。

――見ている側としては、どうやって変わっているのか気になっていました

吉野 自分からポジション増やしてチャンスをもらおうというのと、やっぱりいろんなポジションやったほうが楽しいっていうのも。ソフトボールをせっかく大学生活かけてやってきている中で、いろんなことを経験して、いろんな角度からソフトボール見れるようになったほうが、今後の人生にもすごいプラスになるんじゃないかと思ったので。僕と貴志がすごいポジション変わってるんですけれども、試合に出てない部員でもいろんなポジションに挑戦する部員がたくさんいます。

貴志 野手に転向したときに、やっぱチャンスもらえるのはどのポジションも守れる人かなっていうのは絶対で。誰かが怪我したときにチャンスもらえる機会もあったから、守って良かったなとは思います。

――キャッチャーを最初やれと言われたとき、どう思われましたか

吉野 「まさか!」という(笑)。左利きのキャッチャーなんてやっぱ試合前に自分がキャッチャーしてたら、「あ、左のキャッチャーや」って言われるんで。珍しいとは思ったんですけど。まあ実際にやってみて、こんなに楽しいんだって思ってて。いまでも忘れないんですけど、秋リーグの中央大学戦で、2打席目かヒット打って、進塁して三塁にいるとき、三塁ベース上で吉村先生が「おーい吉野!次の回キャッチャーな!」っておっしゃったんですよ。「は!?」って思って。で、そこから次の回守らせていただいて。初めはリードのこととか、ピッチャーしかやってなかったんでよくわからなかったんですけど、やっていくうちに「奥が深いな」っていうふうに思ったので、すごく楽しかったなあっていうのが思い出ですかね。

――キャッチャーの技術的な話は誰とされたのでしょうか

吉野 そうですね。後輩にも聞きましたし、ピッチャーにも「どうやってほしい?」「どういう球投げたい?」というのは常に聞くようにしていて。1学年上に柏原さん(祐太氏、平27スポ卒=大阪・清風南海)と沓澤さん(翔氏、平27スポ卒=大阪・関西大倉)というすばらしいキャッチャーがお二人いらっしゃったので、自分がキャッチャーやったときは二人とも、まだ引退したあとも授業とかでいらっしゃったのでお話をうかがうようにはしていました。

――代打と一・二番ということで、打撃練習でなにか意識することはありますか

貴志 まず前提として出塁率。どんなかたちであれ、変な話フォアボールでもデッドボールでも、ボッテボテの内野ゴロでも出塁。それは意識してるし、役目だなって感じていて。あとやっぱり回の一番初めに打席が回ってくる。なんなら試合の一番最初の打席で、こう試合の流れを決めるんじゃないかなっていう責任感を感じながら打席に入っていて、やっぱり一球一球大事にするようにはしています。練習でも。できるだけ試合のイメージで入って、その一球で仕留められたかな、仕留められなかったかなっていうとこは反省材料にしてます。

吉野 僕は常に意識していることは一番の貴志がどういった内容だったかっていうのを常に意識して打席に入るようにしていて、実際貴志と自分で一つのコンビだと思っていて。

貴志 (笑)。

吉野 はい、仲良しなんで(笑)。やっぱ貴志がバントして出塁して、すごい盛り上がったところで、盛り上がった雰囲気プラス、(相手の)野手が「またバントが来るんじゃないか」って僕が打席入ったとき前に来るところで、三遊間をパーンと抜くようなヒットを打つ。そうするとワセダのペースに持っていけるんで。本当にその試合でワセダのスタート、1番2番でいいスタートを切れるように、練習でも自分と貴志がどういったコンビネーションをすればうまくいくのかっていうのを常に考えながら打撃練習をしています。

野井 練習のときは、やっぱり代打で使われるときってたいていランナーがセカンドとか、そういうチャンスのときに使われると思うんで、イニング打撃とかでも、チャンスで回ってきたときは自分が「ここは代打なんだ」っていう気持ちを持って入るようにして打っています。やっぱりそのときに代打だったら絶対初球打たないといけないし、やっぱりその一打席しかない、基本的にその一打席で終わりなんで、日ごろのスタメンとかと違って何打席もないんで、集中力というかその一球で捉えることを意識して練習ではやっています。

――具体的な練習方法などはありますか。練習方法はバッターそれぞれに異なるものなのでしょうか

吉野 小技系のバッターは、外野手がつかない打撃練習をしていて、内野手だけ守備について、バッターがバントか野手の間を抜くか。それ以外は、フライを打ったら即アウトっていう練習をして、負荷をかけながら実戦に近い形で。溝口もそこにすごい時間を割いてくれていて。チームとしてもすごい求められてるなって。求められている分プレッシャーを感じながら、そういった練習をやっています。

――役割ごとに打撃練習をしているというわけではなく、打線全体で小技のときは小技、というふうに練習しているのでしょうか

吉野 小技のメンバーだけが集中的にやる練習があります。グラウンド広いんで、外野のほうで長打系のバッターがマシーンを打ったりしている間に、小技系はホームベースのところでそういった練習をしたり。

貴志 小技メインでやってくれる時間があって、ワセダの特徴はそこかも知らんけど、これはあまり他の大学には言いたくないな?そういうことをしてんのはたぶんうちだけじゃないかなっていう。

吉野 いいよ、俺らの代で終わるから(笑)。

――その練習方法は、ことし溝口主将の代になってから始めたのでしょうか

吉野 いやいやいや。あれよね。いま3連覇してるけど、一回目の優勝のときから始まった練習。それをずっとやり続けて3連覇しているので、伝統の練習かな。

野井 強打系はバンバス(バントやバスターの練習)をホームでやっているときに外野のとこでマシーンとかピッチャーの球を打たせてもらっているんですけど、バンバスより打席数がそんなに多くないんで、一つ一つの打席をより大事にしていかないといけないなって思ってます。で、ピッチャーもマウンドじゃないとこで投げてくれているんで、感謝じゃないですけど、ありがたさを持ってバッターもしっかり打たないといけないなと思って打ってます。でも代打の練習とかは特にないんで、自分でイメージしてやるしかないかなって思ってますし、たぶん代わりなんていくらでもいるんで、日ごろのバッティング練習で常に結果を出さなけりゃ代打の候補自体変えられるんで、常にそういう一球一球で結果を出していこうというふうに練習しています。

「信頼できる後輩が多い」

レギュラーのほか、主務としても尽力してきた吉野

――4年生になるとチームの運営もされますが、溝口さんの代の学年のカラーはなんでしょうか。

野井 浪人生が多くて…。

吉野 半分が浪人。俺ら三人とも浪人。

貴志 ちょっと気持ち悪い代やと思う。浪人多すぎて。

一同 (笑)。

――確かにソフトボール部は浪人された方が多いイメージがあります

吉野 どの体育会よりも浪人の割合が高いですね。

貴志 結局十何人か。

吉野 何人やったかなあ…三分の一ぐらいじゃなかったっけ。

貴志 学年カラーかあ。まあ仲がいいよなあ。

吉野 仲いいねえ。本当に。

貴志 それがいいか悪いかわからんけど。

吉野 優しいね。優しくて真面目。

野井 あと責任感の強い人が多い。それは貴志くんがよく感じてることだと思うんだけど。みんな責任感があるっていう感じ。

吉野 あとね…助け合いの精神がある。

貴志 (笑)。

吉野 すごいと思う。役職が分かれてて、主将、副将、主務、副務、学連ってすごい役職に就いてる人と、貴志みたいに広報。そういった役職がそれぞれあるんだけど、その役職ではない人が手伝ってくれたりすることが多くて、みんなでチームを支えていこうっていう空気があると思います。特に僕は主務として、OB発送とか大変な作業をすることがあるんですけど、横の貴志くんが、自分で手伝うよって言ってくれる。

貴志 あんま言ってない。ちょっとだけ。

吉野 本当に、特に松本(壮平、商4=埼玉・早大本庄)だったり小針(大輝、教4=東京・早大学院)だったり、本キャンの人でもそういったOB発送のときとか、すごい自分が仕事が立て込んでるときに、助けるよってふうに言ってくれてるんで、すごい助け合いがあり、優しさがあり、仲良しな学年かなって。

――お互いの印象をお願いします

吉野 じゃあ野井の印象からいこうか。

貴志 野井の印象は「老けてるな」。

一同 (笑)。

貴志 印象もくそもないけど、最初「あ、老けてるな」と思って。でまあしゃべったら変な奴やなって感じで。

吉野 俺は?

貴志 なんかいわゆる真面目って感じ、最初の印象は。

――貴志選手の印象はいかがですか

吉野 (貴志選手が)大阪の高校で、僕福岡の高校だったんですけど、一度も対戦したことなかったんです。お互いソフト部やったんですけど。でも、僕貴志のこと知ってて。高校生のときから。というのも、僕が高校の部活動引退したあとにふらっと立ち寄った本屋でソフトボールマガジンを開いたときに、大阪の国体代表の特集が組まれてて、その時に貴志がピッチャーとして写真付きの特集されてて。
で、大阪に3人のいいピッチャーがいて、そのうちの一人だったんです。それを高校生の僕が本屋で見て「大阪ってこんないいピッチャー3人もおるんや!」って思って。貴志って名前特徴あったんで覚えてて、「ああ貴志っていうピッチャーおるんや」ってそのときは思って。その本は買わずに帰って。まあ一年浪人経て、ここの練習に来たら、いたんですよ(笑)。

貴志 それも浪人して…。

吉野 そう。同志社も受けていて、お互い同志社受かって、ワセダだめだったら同志社のソフトボール部で一緒になっていたっていう。でもワセダで出会って、「うわ貴志や!」って球捕ってみたら・・・うん。

一同 (笑)。

野井 クビになるなっていう(笑)。自分も最初国体優勝投手って聞いてて。すごいのいるなって思って。その前に、翼(大嶋翼、スポ4=群馬・新島学園)のことは浪人してるときに「大嶋匠(平24スポ卒=現プロ野球・北海道日本ハム)の弟、早稲田大学に入学決定!」みたいな…。

貴志 ネットニュースに出てたもんね。

野井 そう、ネットニュースで見て、いいなと思ってて、キャンパス来たら大嶋翼本人がおって。大嶋もインターハイ準優勝投手だった。で、その中で国体優勝投手がいるみたいな話を聞いて「わあやっぱりすごいのいるなあ」って思ったイメージがあります。

貴志 いや僕はそんなオラオラ言ってないんで。「優勝してますよ」っていう感じで入部してないんで。

――4年生になりましたが、一緒に過ごしてみて印象は変わりましたか

吉野 貴志とは授業いっぱい一緒に取ってて。やっぱり貴志だなあっていう。いい意味で、いい意味で!力を抜きながら生活してるんだなっていう。

貴志 脱力。メリハリね。

吉野 貴志のように抜くところは抜いて、力入れるところは力入れるっていうのは、自分も見習いたいなあって思ってます。

貴志 僕は、どっちかというとメリハリの利いてるタイプなんで。やっぱり二人はちゃんと、しっかりやるイメージがあって。4年生は本当にしっかりしてる人が多くて。僕は入った当初、ただただふざけてて、大嶋と一緒に怒られることがよくあって。けどそんな僕をワセダらしく変えてくれたのは同期。真面目な同期が僕をいい方向へ導いてくれたから、いまがあるなって思います。本当に。

野井 吉野はやっぱり役職に就いて、それまでも頑張るイメージがあったんですけど。より頑張るなっていう。

一同 (笑)。

野井 頑張りすぎるなっていうイメージですかね。変わったところは。

貴志 俺のイメージ変わった?

野井 貴志くんそんなに…変わんないかな。4年間授業の態度も変わらないし。

吉野 練習態度変わったんじゃない?

野井 ああ。4年生になってから。

吉野 外野引っ張るようになった。

野井 それまで4年生の外野が自分と松本しかいなくて。正直そんなにバリバリ外野で試合に出る感じでもないし、そんなに引っ張っていく感じでもなくて、こういう責任感とリーダーシップのある貴志くんが来たことで、外野がよりまとめられて、活性化された。外野がいい方向にいっていると思います。

――後輩のみなさんは先輩として見ていてどのような感じでしょうか

貴志 自分の意見を持ってる人が多いなっていう。ワセダのソフトボール部だけかは知らんけど、ワセダの人は自分の意見を持ってるなっていうのは感心する。

野井 あと頭の回転速いなって思ってて。後輩でも意見言うときとかに、プレーとかうまくまとめられて、その背景とか、そういうものまでしっかりしてるし、論理的に語られてるから。自分にはそういう能力ないんで。そういうときにソフト能力とかじゃなくて、根本的に人としての考える能力が高いなと思う後輩は結構います。

吉野 自分も、ワセダだからこそだと思うんですけど、いろんなバックグラウンド持った人がすごくいて。そういった人は先輩だけじゃなくて後輩からも学ぶところが多くて。本当に後輩として尊敬できるような部員も多くいるんで。特に自分が主務としていろんな仕事やっていて判断に迷ったときとか、後輩に相談することもなくはないですし。本当に信頼できる後輩が多くて。頭のいい後輩もたくさんいるんで。日々部として活動していて、後輩から学ぶことはたくさんあると思います。

貴志 後輩とか、例えばプレーの実力とかで差ができても、みんなが意見できるのがソフト部の強みだと思います。

吉野 練習もみんなでやるしね。強豪校だったら試合出るメンバー、出ないメンバーで練習を分けたり、時間帯も分けたりするとは思うんですけど。僕たちは絶対にそういうことはしなくて。みんなで練習して、みんなでいろんな角度から一つのプレーを見て意見を出し合って、より良いプレーを目指していくっていうのが早稲田大学ソフトボール部のスタイルだと思うんで。そういったところは自分たちの強みかなって。

――練習メニューなどについて後輩のみなさんが意見を言うことはありますか

吉野 溝口が基本、溝口と山口で練習メニュー決めるんですけど、そこの中でやる前にしっかり、こういった意図がありますっていうのを示した上で練習して、で後輩からどうだったっていうフィードバックをもらうような、そういった姿勢を見せてくれるんで、後輩からも練習に対する意見とかは多く取り入れられてるんじゃないかなって。

――試合前などに必ずやると決めていること、ルーティーンなどはありますか

吉野 僕は、絶対にホームベースの角っこをバットでぽんぽんぽんって。

貴志 試合前のあれは?試合前、田原(大幹、スポ3=早稲田渋谷シンガポール校)とあれするやん。

吉野 (笑)。僕結構験を担ぐタイプで、僕が一回紅白戦かなんかをやったとき、試合前に田原と軽いトスバッティングをやったら、4打数4安打で。そこから3月にやった紅白戦からずーっといかなる試合のときでも、絶対試合前には田原とキャッチボールをして、田原とトスバッティングをして、田原にうんとエネルギーをもらって試合に臨むようにしたら本当に結果が出るようになったんで。田原とキャッチボールしてトスバッティングして試合に臨むというのが、僕のルーティーンだと思います。

貴志 僕はぎっくり腰持ちなので、これルーティーンっていうか分からないんですけど、腰をやらないように腹筋を意識しながらアップしています。武道文化論という授業をとったんですが、そこで宮本武蔵の話を聞いて、バッターは武士だと、サムライだと思っているので、僕剣道は授業でやった程度なんですけど、剣道のような素振りをして気持ちを落ち着かせるようにしています。これは本当に、真面目に。

吉野 だからバットを縦に振ってたのか(笑)。

貴志 気持ちを落ち着かせて。一球一球が大事なので、試合なんて打席数も少ないし。一球で仕留められるような集中力を出すために気持ちを落ち着かせるようにはしています。

野井 ルーティーンかな、最近始めた試合前の食事として、カットフルーツを食べるっていう…。

貴志 なんやねんそれ!初めて聞いたわ。

吉野 おしゃれか(笑)。

野井 遠征なら毎回朝にコンビニに行くのでカットフルーツ探して買って食べます。できればパインがベストなんですけど。

貴志・吉野 パインがベスト(笑)。

野井 パインがなかったらメロンとか。試合になんの関係もないんですけど。ただ単に、試合前に落ち着くというだけです。

――遠征のバス移動の間には音楽を聴いたりして気持ちを落ち着かせたりされるのでしょうか

貴志 校歌です。それぞれの出身高校の校歌を歌って、盛り上がる校歌ないかなって探して。(出身校の)関西大倉の校歌もとても盛り上がる曲で、このチームは関西大倉の校歌が好きですね。

吉野 4年生はたぶんみんな歌える。

野井 普通は校歌を歌うときは誰かに振ってから歌い始めるんですけど、関西大倉の校歌だけ自然発生的に(笑)。

吉野 最後にワセダの校歌を歌ってバスを降りて試合に向かうので、それまでのつなぎとして紺碧隊長(部内の応援隊長の通称)が誰かに振ってそれぞれの高校の校歌を歌ってというのを繰り返して盛り上がります。それで最後ワセダの校歌を歌って試合会場に入るっていうのが部としてのルーティーン。

「個の力より皆の力で」

代打の切り札として大一番での活躍を誓う野井

――インカレの組み合わせ表を初めて見た時はどう思われましたか

貴志 結局勝たなあかんから、優勝するには。だから別にそんなに気にはならなかったというか…。

吉野 厳しいのは自分たちだけじゃないので、一試合ずつ丁寧に目の前の敵を倒していけばいいかなと思います。やりがいがある。

貴志 同じ山に強豪校が集まっているとは思いましたよ。まあそれは…いいんじゃない?(笑)

吉野 大変だけど(笑)。

――最終調整の時期に入りましたが、何を重点的に練習されていますか

貴志 チームは守備じゃないか?

吉野 守備の連係の練習だね。だいたいメンバーも固まってきて、あとはお互いの関係性を詰めていくだけなので。

野井 いままでは(兼子)修治さん(平27スポ卒=群馬・新島学園)とか池田さん(康平、平27人卒=長崎・佐世保西)とか(吉田)享平さん(平27スポ卒=群馬・中央中教校)とか、4年生になる前からそのポジションで試合に出ていた人がそのまま守っていたので、連係という課題が出てこなかったのかなと。ことしは初めてそのポジションを守るという人ばかりなので。

吉野 打撃は一・二番やね。3番の溝口と4番の大嶋は大学ソフトボール界でも屈指の好打者なので。もちろん次に控える金子もすごくいいバッターで。そこにつなぐための一・二番というのが本当に重要なのでどんな形でも出塁するというのは課題であり絶対にやらないといけないことかなと思います。

――ご自身から見て打線はチームがスタートした時から変わりましたか

貴志 全然違う。

吉野 伸びた。本当に伸びた。

野井 自分は基本的にベンチから見ていることが多かったんですけど、秋の頃は三振するなあとかこの回3人で終わるなって思っていたのが、もうそんな感じはなくて。この回絶対先頭が出るやろとか点入るなあというのをベンチから見ていて思うので、期待感というか。レギュラー選手じゃない人から見ていて秋の頃から比べて全然「やってくれそう感」がすごく出ていると思います。

貴志 最初(きょねんの秋季リーグ戦)は1-10か、日体大。

吉野 うん、もう歯が立たなかった。

貴志 そこからのスタートで、本当にもう打線が底にいたので。三振多いし、点取る雰囲気ないし、でも溝口打ってくれるかな大嶋打ってくれるかなくらいの打線だったのが最近はレベルが相当上がりました。

――何かのタイミングで劇的に変化したのでしょうか

吉野 一・二番固定し始めた頃かな、春季リーグ戦の前。3月くらいに吉村先生が一・二番を固定して打線をつくっていくとおっしゃって。本当に溝口と大嶋はすごいバッターなのでその前に走者を置いておけば得点が入るので2人の前の打者を誰にするかというときに吉村先生が貴志と僕という4年生を「4年生は気持ちが入っているから違う」ということで選んでくださって。あとは下級生の増形(俊輔、社2=千葉敬愛)と笠井(新一朗、スポ3=徳島・城東)の小技系のバッターがいるんですけど、その4人を徹底的に鍛えていただいたことで打線にリズムが生まれるようになったのが春季リーグ戦だったかなと思います。

貴志 そもそもスタートが本当に実力不足。個々の実力が全然足りない状態から冬とか皆でただただひたすらバント練習したり。本当に日々成長していったからいまがあるんじゃないかな。

吉野 小技系のバッターでつなげて、そうしたら打線になった。なので冬場は溝口がいろいろ考えて。秋季リーグ戦でこれじゃ戦えないって皆感じて、関東大学選手権でも勝った試合でも2ケタ三振していたり、投手陣に頼って3位になったという結果だったので。皆危機感を持って冬場練習して、いろんな取り組みもして。西岡(卓哉、スポ2=香川・高松)っていうトレーナーがいるんですけどすごく考えてアップとかメニューを変えてくれて、そういった一人一人の意識が冬場の練習に出てレベルアップして、打線ができあがったのかなと思います。

――インカレで勝ち進んでいくためのカギは

貴志 集中力です。

吉野 集中力と役割の徹底。

貴志 自分たちが本当にやりたい方法で勝っていったらその勢いで行けると思います。特にトーナメントですし。

野井 ワセダは勢いが大事かなとこの3年間でかなり感じました。一回点が入ったらそこから大量得点することがあるので、たぶん一気にコールドゲームに持っていけると思うので。勢いに乗れるかっていうことだと思います。

貴志 先生がよくおっしゃっているのは「ワセダには集中力がある」ということで。それを言ってもらうことによって自分たちも「俺らは集中力があるんだ」って思ってまた集中力が上がる、それが強み。

吉野 日体大とか国士舘大、環太平洋大や神戸学院大、中京大は高校時代から有名な選手が集まっていて。そういうチームと、浪人とか一般入試をしてきた人とかが集まっているワセダが戦って勝つには正面からぶつかる力だけでは勝てないので、そこはワセダらしく。考えて、一球に誰よりも集中して取り組むというのが勝利のカギかなと思います。それぞれが役割に徹底して勝ち切るというのがワセダの勝ち方かなと。

――個人としてはどこを強みに戦っていきたいですか

吉野 コンビネーションや、俺と貴志の。貴志が出られなかったら俺が出て、貴志が出たら俺が進塁打なりセーフティバントなりで得点圏に打者を置いて溝口につなげる。自分だけじゃなくて貴志と協力してチャンスをつくって三、四番に回すっていうのが仕事なので、そこを徹底して。ホームランとか全く打たなくていいので、打ちたいけど。

野井 左ピッチャー打てればいいかなと思います。河野くん(拓郎、日体大)を打ちたいです。スタメンより代打が中心になると思うので、そのために練習の段階から準備していきたいと思います。あとは勝負強さと意外性をポイントにしていきたいなと思います。「こいつ打つんかい」みたいな。流れを変えられるような代打になりたいなと思います。

貴志 俺は一球集中と、あとは足。足が速いのと大事な場面で乗れるタイプなので、そこが強みです。

吉野 貴志の結果によって打撃のスタイルを柔軟に変えられるところかなとも思います。

――インカレのキーマンは誰だと思いますか

吉野 俺は山口かな。

貴志 俺も山口やな。

吉野 山口はレギュラーで出たことはなかったんですけど、皆からの厚い人望で副将に選出されて。レギュラーじゃなかったときも本当に一生懸命練習していたり、考えてチームに貢献しようという姿勢ですとか、そういったものが同期としても心から尊敬できます。副将になってからもベンチのマネジメントを試合中やることが多くて、その姿も試合に出ている側から見ても本当に尊敬できると思うし山口は自分たちの信頼できるような人間なので、そういった人が最後1本打って勝利に導いてくれるんじゃないかなと思います。

野井 グッチ(山口)はベンチワークをめっちゃやってくれるから控え選手とかにちゃんと配慮してくれて。「次代打あるからな」とか出番がないときもそういうケアがしっかりしているからレギュラー選手のことは溝口がメインで、控えの気持ちを良く分かってくれているなと控え選手から見ているとさらに感じます。ということで3人とも山口です(笑)。

貴志 グッチは本当は面白いやつなんやけど副将に就くことで全然面白くなくなって。そのくすぶってたユーモアを攻撃回が始まる前に集まったときに基本的には溝口が喋るんですけどいないときには山口が喋る、そのときに何かをぶちこんでくる。秘めたるユーモアが流れを一気に変えるものを持っている。そういうすごいものを持っているのはグッチです。

――インカレは4連覇が懸かっています。みなさんは1年生の頃からインカレでは優勝しか経験されていませんが、タイトルはどれくらい意識されていますか

貴志 いままでの3連覇の中にもいろいろなカラーがあったし、いろんなチームやったし、ピッチャーも変わったし。そうやって変わってきて、俺らも日体に1-10のコールド負けからスタートしていて。自分たちなりにやってきて戦えるレベルまで持ってこれたと思っているので、自分たちがやってきたことが最後の大会でどこまで出せるかが本当にわくわくするというか。試したい気持ちの方が俺は強いです。だから4連覇が欲しいんやけど、俺たちの代での優勝が欲しいっていうイメージがあります。

野井 いままでずっと先輩に引っ付いてきた感覚があって、自分たちでチームを運営していなかったし。いままでの3連覇とはまた別だという考えも最上級生になってからやけど、生まれました。4連覇とはまた別の自分たちの優勝っていうイメージがあります。

吉野 きょねんのインカレ後に高橋希望さん(平27政経卒=埼玉・早大本庄)が言っていたんだけど、「初優勝の気分」って。僕も本当にそう思っていて、いままで4年生になるまで先輩についてきて先輩に言われた課題をこなして試合に出て貢献して。自分たちが引っ張ってきてやったわけじゃないので。いまこうして1年間、チームを4年生8人で引っ張ってきた中で優勝できたら本当に初優勝の気分だと思います。それが結果的に4年連続の優勝だったというのがあると思うので、背負いすぎず自分たちの戦い方で優勝して結果的に4連覇であればいいなと思います。

――いままで3連覇してきたそれぞれの代とは違う、自分たちの勝ち方は何だと思いますか

野井 結束力かな。僕たちが1、2年の時の勝ち方はそれぞれ似ていて、3年の時の勝ち方っていうのは僕たちに似ているかなって。1、2年の時は圧倒的な力があって優勝していて、きょねんは他大と比べて圧倒的な力があるわけではないからチームワークで勝つ面が大きいんじゃないかなと、ことしもそういう方向でいかなければいけないんじゃないかなと思います。

貴志 最初が戦えないような状態だったからなおさら結束力というカラーになるんじゃないかなと思います。

吉野 個の力より皆の力で。

――インカレが間近に迫っていますがチームの雰囲気はいかがですか

貴志 上がってるんじゃないかな。俺は勝手に上がってるけど。

吉野 翼中心に盛り上げ役の部員がいてインカレが近付くにしたがってもっと盛り上げ力に磨きがかかって。やっぱり仲がいいのでいままで以上に盛り上がってきているなと感じます。

野井 盛り上げ役も盛り上げようとしてくれているのが分かるので、濱中(勇輝、人3=神奈川・桐光学園)とかもそういう感じ。

吉野 うん。濱中と、萩野谷(知大、人2=茨城・水戸第一)とあとは飯泉(召、教2=埼玉・与野)。

野井 チームを上級生だけじゃなくて盛り上げようとしてくれているのでありがたいです。

吉野 4年生がなんせ真面目なので。翼と貴志が盛り上げ役みたいな感じで、下級生をうまく盛り上げてもらって僕たちもそれに乗っかる。ピリピリしているわけじゃないけど、緊張感はあります。

――インカレに向けて意気込みをお願いします

野井 自分は支えてくれた人にプレーすることで感謝の気持ちを伝えられたらと思っていて。レベルの低いところから入部して、先輩方にお世話してもらって、特に自分が1年生の時に4年生だった先輩には「あんなに下手だった野井がここまでプレーできているんだ」ということを見せるインカレにしたいなと思っています。それは結果もそうですけど打席に立っている姿でも先輩や両親に見てもらえたらと思います。成長した姿を見せたいですね、そこから結果かなと。

貴志 大学2年の時にピッチャーをクビになって野手に転向していろいろなポジション、打ち方、打順を経験してきた正直な気持ちが、いままで自分のやってきたことがどういうかたちで終わるんやろというわくわくが一番大きいです。たぶん本気でソフトボールをやることはこれが最後かなと思っていて、自分のソフトボールの最後に今までやってきたことを自信に力を出し切りたいという気持ちと、ここまでの4年間で先生をはじめとして先輩にめっちゃ面倒を見てもらって、一から打撃守備を教えてもらったし、それを良いかたちで終わらせることで感謝の気持ちを示したいです。

吉野 結果に関しては貴志と自分でとにかく溝口と翼の前に塁に出てチャンスをつくって、2人の一本でホームにかえってチームを流れに乗せる。自分の仕事は本当にそれだけだと思うのでそれに徹してやっていきたいなと思います。もし自分が高校3年生の時にワセダのソフトボール部に入って主務までやらせてもらって、なおかつレギュラーとして二番バッターを打たせてもらっているって言ったらたぶん信じないと思うんですよね。そういうところまで来れたこと、大学入る時に他人に大丈夫かとか無理だろとかいろいろなことを言われた中で挑戦してきたことなので、最後インカレ優勝して終わることでいい思い出になると思います。選手としてだけでなく主務としても皆を安全に遠征地まで連れて行って所沢に無事に帰ってくるという仕事もあるんですけれども、主務としても選手としても終わった時に本当にいい4年間だったなと思えるような最後にしたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 土屋佳織、廣田妃蘭)

慣れ親しんだグラウンドを背に、記念の一枚です!

◆貴志奎太郎(きし・けいたろう)(※写真中央)

1992年(平4)12月17日生まれのAB型。179センチ。大阪・関西大倉高出身。スポーツ科学部4年。外野手。話題に上がった貴志選手の出身校・関西大倉高の校歌ですが、皆さんそろってお気に入りだというフレーズは冒頭の「潮(うしお)みなぎる」だそう。この部分だけでも聞いてみたいですね!

◆吉野恵輔(よしの・けいすけ)(※写真右)

1992年(平4)10月8日生まれのA型。178センチ。福岡・城南高出身。スポーツ科学部4年。内野手。普段から早スポの記事をよく読んでくださっている吉野選手。取材前にはきょねんのソフトボール部インカレ前特集を参考にして、写真を撮られるときのポージングを考えていらっしゃいました。

◆野井颯平(のい・そうへい)(※写真左)

1992年(平4)4月3日生まれのB型。171センチ。福岡舞鶴高出身。人間科学部4年。外野手。写真撮影用の色紙を2枚書いていた野井選手。没になった色紙には「公」と書いていらっしゃいましたが、チームメートから「ハムやん」といじられていました。穏やかで、仲間から愛されるキャラクター性がうかがえました。