【連載】インカレ直前特集『誇り』第4回 吉田享平主将×高橋希望

男子ソフトボール

 新チームがスタートしてからおよそ1年。男子部がたどってきた道は決して平坦なものではない。それでも地道に歩みを進め、ここまで来た。誰よりも強く、「1番」の輝きに憧れている戦士たち。その中心にいる吉田享平主将(スポ4=群馬・中央中教校)と副将の高橋希望(政経4=埼玉・早大本庄)のお2人に、全日本大学選手権(インカレ)を直前に控えたいまの心境をうかがった。

※この取材は8月23日に行われたものです。

「東日本から少し成長している」

アメリカ遠征を振り返る高橋

――先日行われた東日本大学選手権(東日本)はどういった大会でしたか

吉田 ワセダが5連覇している大会で、後輩に何か結果として残すためにも、僕たちの代が6連覇して後輩に繋ぎたいっていう思いで臨みました。それで例年以上に東日本で勝ちたい思いが強いなかでの大会だったんですけど、結果的に3回戦で負けてしまってとても申し訳ない気持ちです。

高橋 全日本総合選手権の本選に出ようとやってきて関東予選にすら行くことができず、(これまで獲得した)タイトルが何もないなかでの大会でした。東日本は厳しい組み合わせだったので、いまのチームの力を試せるんじゃないかとは思っていて。1年生のピッチャー中心に戦って、ピッチャーは踏ん張ってくれたんですけど、点を思うように取ることができなくて負けてしまったので、ピッチャーが打たれても点を取り返せるような打線にしたいと思いました。

――東日本が終わってすぐ、アメリカで行われたワールドシリーズに参加されました。ワセダからはMAROON、WHITEの2チームが参加してMAROONチームが2位という結果でしたが

吉田 MAROONチームは一応、Aチームみたいな感じのチーム構成でした。その目標は世界一になるということと、アメリカ遠征ってすごく準備に時間がかかって、そのほとんどを主務の柏原(祐太、スポ4=大阪・清風南海)がやってくれていたので、そいつのためにも世界一になりたいっていう気持ちでやっていたんですけど。結果的に1番になれず終わってしまったのは悔しいし申し訳ないという気持ちがあります。

高橋 享平が言っていたように、世界一になれなかったというのが悔しいところです。ただ、ここまでなかなかコールド勝ちができていなかったなかでアメリカでは3試合連続でコールド勝ちができて、ピッチャーも無失点で抑えて、という戦いが予選リーグの段階ではできたのは大きな成長だったと思います。

――海外のチームと戦った感想は

吉田 東日本の課題として、相手ピッチャーと対峙するときにバッターが集中できていない、強い気持ちを持てていないということをコーチの方から言われていて。アメリカに行ったら相手のピッチャーを全く知らないし、知らない球を投げてくるので、チームとして戦うというよりも、「ピッチャーとバッターの戦いで毎回バッターが勝つ」という形を目指しました。結果的にMAROONチームはいい戦いができたのではないかなと、その面では東日本から少し成長していると感じています。

高橋 優勝したチームのピッチャーは高めにも低めにもいいボールを投げてきて、自分も含めてチャンスで打つことができず、あと1本が出ずに1点差で負けてしまいました。やっぱりそういう厳しい状況になったときに打てるバッターになりたいと個人的にもチームとしても思っていて。やっぱりそういう状況を残りの練習でしっかりつくって負荷をかけて準備できたらいいなと思います。

――アメリカ遠征では観光もされたということですが

高橋 最高でした。ずっとアメリカに行きたいなと思っていて、メジャーリーグも初めて見ることができて。ワセダの先輩でもある和田毅投手が先発した試合を見て、いいピッチングをされていて。日本人がアメリカで活躍する姿を見られたのはよかったです。

吉田 大学日本代表でニュージーランドに行ったときの通訳の人が大会にたまたま出ていて、その人も23歳なんですけど。その人と試合できたり、夜ホテルに来てもらって一緒にお酒を飲んだりして、それが一番楽しかったですね。人生で1回しか会えないと思ってたのに、また会えて、一緒にソフトボールもできて、一緒にお酒を飲んで語って。今後の人生でもう会えないかもしれない人なんですけど、会えたっていうのは最高でした。

――アメリカの食事はいかがでしたか

吉田 こいつ(高橋選手)がアメリカ行ったらやたら食うんですよ。食べたら食べた分だけ顔がでかくなる(笑)。むこうで顔パンパンになって、「お前絶対に朝食いすぎだろ」って。朝食もホテルのバイキングみたいな感じで、(高橋選手が)すごく食べるから、日中は顔パンパンっていう(笑)。

高橋 帰ってきて少し小さくなりました。

「34人全員が勝ちたいって思えるようなチーム」

――主将、副将から見ていまのチームの状況は

吉田 レギュラー争いもすごく絞られてきていて。その人たちがどれだけコンディションを上げられるか、どれだけいい状態でインカレに臨めるかっていうことに気を使って、ケアをしたりとか、みんなも工夫してやってくれていると思います。それ以外にもワセダはベンチに入れない人も試合に貢献してくれるような選手がいっぱいいるので。たとえば紺碧隊(ベンチ外の選手で結成された応援団)とか、ベンチには入れないけどチームを盛り上げてくれる存在がいるので、そういった意味ではアメリカ遠征を通じてみんなの団結力とかチームとしてのレベルアップができたと思うので、34人全員が勝ちたいって思えるようなチームになっていることはいい状況なのかなって思っています。

高橋 正直、日本一になれるか不安に思っています。ただアメリカ遠征でコールド勝ちするような戦い方ができたということと、1、3、4番がかなりいい打率を残してくれて、中軸がアメリカで調子を上げてきてくれたので、このチームにとっていい材料なんじゃないかなと思います。あとはアメリカ遠征がチームに大きな影響を与えてくれるんじゃないかと思っていて。世界一になれなかったときも、試合に出ていなかった選手も涙を流していましたし、WHITEチームの選手も悔しく思ってくれたので、34人が一緒になって日本一に向かっているんじゃないかなと思います。

――主将、副将としてのこれまではいかがでしたか

吉田 思った以上にうまくいかないなって。頭の中では「こうやったら絶対こうなるだろう」って思って描いてた予想図が全く当てはまらなかったりとか。特に結果が何も残せていないっていう状況が、昨年や一昨年を絶対に超えられる自信があったので、歯がゆく思います。

高橋 キャプテンを支える副将という役職で、(吉田主将とは)普通にしている分にはそんなに仲良くならないんじゃないかっていうくらいの間柄なんですけど(笑)。だからこそ違った面が見られるというか、そこに気付いてそれを引き出せるように意識しながらやってきて、チームにいい雰囲気を与えられるような副将にはなれたんじゃないかと思います。ただ1番にはどの大会でもなれていないので、最後に日本一になっていい主将、副将だったって言われたいなと思います。

――やりがいはありますか

吉田 たぶん何かの大会で1つでも勝っていれば、大きなやりがいは感じられたんだと思うんですけど。そう考えると(やりがいは)まだ探している最中なのかなと。それはインカレで見つけたいと思います。

高橋 自分が提供した情報だとかアドバイスを取り入れてくれてそれが結果になったときにはやりがいを感じます。

――伝統あるチームで戦うことについては

吉田 東京都大学リーグも吉村先生(正監督、昭44教卒=京都・平安)が発足したものだし、最初から(大学ソフトボールの)リーダーとしてワセダがいて。ワセダはいまインカレでも2連覇しているチームで、そのチームの一員であることにはすごく誇りを感じています。その伝統をもっともっといい形で継承していかなきゃいけないと感じていて、いままでのようなソフトボールっぽいソフトボールチームで勝ちたいって思っていなくて。より憧れられる存在で正々堂々と勝ちたいっていうコンセプトで1年間やってきたので、それを遂行することでワセダの誇りや伝統をいいものにできるんじゃないかと思っています。

高橋 アメリカでもすごく感じていたんですけど、部の歴史が50年あるからこそ自分たちがアメリカでプレーできたんだなって。やっぱり他の大学ではなかなかできることじゃないので、それはワセダのソフト部だったからこそだなと。ワセダにいるからには、試合が終わったあとに会場にいる人たちがワセダに向かって拍手してくれるようなチームにしたいと思ってやってきて。最後のインカレで優勝して、それができればいいなと思います。

――ソフトボールに対するこだわりは

吉田 高校まで野球をずっとやっていて、大学に入ってソフトボールを始めたんですけど。1年生のときはソフトボールのことをなめていて、「レベル低いな」と思っていたんですけど。だんだんソフトボール自体に愛着が湧いてきて。でも男子ソフトボールってなかなか脚光も浴びないし、社会的地位も低い存在なので。自分は大学で競技としてのソフトボールは終わりにすると思うので、卒業してからも「ソフトボールっていいよね」、「ワセダのソフトボール部っていいよね」って思ってもらえるような存在にソフトボール自体を上げたいなって思ったのがきっかけで、ことしの1年間は「早稲田たれ」というスローガンを掲げて。正々堂々とやって、そういうチームが勝つことによって「ワセダのようなチームになりたい」って思われるような勝ち方をしたいって思っています。いまはソフトボールをやっていることへの誇りがあります。

高橋 プレーする上では、自分も高校まで野球をやってきたんですけど、野球よりボールが大きいので、バットも飛ぶし、ミートすればある程度ヒットになると思っているので、トスバッティングを打席でしているような感覚でバッティングをしようと思っていて。自分に内野安打とかポテンヒットが多いのはその感覚があるからじゃないかなと思っています。大きなホームランを打たなくてもチームのために内野ゴロとかポテンヒットでも繋がるバッティングを心掛けています。

「笑って終わりたい」

真剣な表情で話す吉田

――インカレでの個人目標は

吉田 きょねんのインカレでホームランを4本打ったんですけど、インカレの冊子に載るには大会記録の5本打たなきゃいけなくて。あと1本打っていれば名前が載ったのに。きょねんを超えるっていう意味でも5本以上打ちたいなと思います。

高橋 大会全体で打率8割、10打点を目指します。

吉田 現実味がちょっと・・・。根拠のない自信が(笑)。

高橋 これがチームに勢いを与えるっていう。

吉田 ちょっと意味が分からないですけど(笑)。

――インカレの目標をお願いします

吉田 やっぱりこの1年間苦労した分、最後笑って終わりたいです。優勝して、「ワセダすごいな」、「ワセダの勝ち方ってまねしてみたいな」って思われるような勝ち方をして優勝したいです。あとは後輩に結果をつなぐためにも優勝したいと思っています。

高橋 日本一になることが全てだと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 土屋佳織、藤川友実子)

「早稲田たれ」と力強く書いていただきました

◆吉田享平(よしだ・きょうへい)(※写真右)

1991(平3)年4月24日生まれ。183センチ。群馬・中央中教高出身。スポーツ科学部4年。内野手。大会などに向かうバスの中で出身高校の校歌を歌わせるむちゃ振りをする伝統があると教えてくれた吉田主将。取材後には田原大幹選手(スポ2=シンガポール・早稲田渋谷シンガポール)の出身高校の校歌を歌ってくれました。「シンガポール」というフレーズの部分で1番の盛り上がりを見せるそうです

◆高橋希望(たかはし・のぞみ)(※写真右)

1993年(平5)2月25日生まれ。169センチ。埼玉・早大本庄高出身。政治経済学部4年。外野手。アメリカの食事について「最高でした」と語るほど気に入っていた様子の高橋選手。ワールドシリーズの会場で販売されていたステーキサンドは「日本にはないおいしさ」なのだとか