日体大、東京富士大に黒星を喫し、惜しくも4位に終わった春季リーグ。続く全日本総合選手権(全総)関東予選決勝、東日本大学ソフトボール選手権(東日本)初戦でも日体大の前に涙を飲んだ。この悔しさを糧に全日本大学選手権(インカレ)で最高の結果を残そうとチームの士気は高まっている。そこで早大ソフトボール部女子部のダブルエース、後藤めい(スポ4=栃木・大田原女)と森下藍(スポ4=愛知・星城)に今季を振り返ると同時に、最後のインカレに向けての意気込みを語ってもらった。
「絶対に勝ちたい」
――東日本から半月、振り返っていかがですか
後藤 東日本は初戦で負けるという本当に悔しい思いをしました。自分がそのときに投げて1球に泣いて、その1球を忘れられない日々が続いているので、でもそのために練習しているし、インカレでは絶対に勝ちたいという気持ちが日に日に強くなっています。
森下 自分投げなかったのでそれも悔しかったし、チームとして東日本で落ちた分インカレで上がってくるのではないかと思っています。
――今季は日体大に悔しい思いをさせられていますね
後藤 そうですね。やっぱり勝たないといけない相手に勝てないと意味がないと思います。それはやはり日体大と東女体大、あと最近よく上がってきている東京富士大などに勝つと盛り上がるので、そういうチームの雰囲気が良くなる試合で勝つということを特に日体大相手には絶対できないといけないなと思っています。
森下 普通に悔しいので…でもインカレは結構山が遠いので当たることが…(ないかもしれない)。だから東日本は特に勝ちたかったな、と。もし次当たったら負けたくないなと思います。
――インカレに向けての練習はいかがですか
後藤 全体的に言ったら打撃を中心にやっています。投げることは多いのですが、ここまで来たら自分たちが投げるということも考えてもっと練習しないといけないなと思います。そういう兼ね合いなどを考えながら主将、副将は特に考えてくれています。
――お二人はどのような練習をされていますか
森下 投げます!
後藤 とりあえず投げろと言われたところで投げ、って感じ?(笑)
森下 あと投げ込みです。
後藤 投げ込みをし…(笑)。
森下 とりあえず投げています!(笑)
――オフなどはありましたか
森下・後藤 はい!
――どのようなことをされましたか
森下 うーん、読書しました!
後藤 出かけました。とりあえずソフトのことはあんまり…考えてないときも(笑)。あ、甲子園見ていました!(笑)でも「そういうのを見て盛り上がりたい、夏のオフは!」という感じなので(笑)。出かけることもありましたし、夏は家で甲子園見て刺激されようという感じでリフレッシュしていました。
――森下選手は読書をされたということですが、どのようなものを読まれましたか
森下 東野圭吾の『天空の蜂』と、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』です。あ、でも私も出かけました!(笑)渋谷にランチしに行きました!
後藤 おしゃれ(笑)。
森下 25階の眺めがきれいなところへ。
後藤 おしゃれ!(笑)
森下 ランチしていました!もうステーキがおいしかったです(笑)。
「負けたら意味がない」
「真剣な表情で質問に答える森下」
――ワセダでの4年間で成長した部分は
後藤 そうですね、やはり変化球を新しく覚えて、いまそれを使っているのでそれが一番大きな成長であったりするのかな、と。成長していなかったら投げられていないと思っています(笑)。
――変化球とおっしゃいましたが、カーブなどといった変化球ですか
後藤 カーブのようなそんなかっこいいボールは投げられないんですけど(笑)、先生がドロップを教えてくれていて。私本当に全く投げられない状態で(ワセダに)入ったのですがそれをずっと教え続けてくれて、森下とか他のピッチャーの子に聞いたり、先生が見放すことなくずっと見続けてくれていたからこそ、いまやっと投げられているなと思います。
――ドロップを習得してから投球の幅などは広がりましたか
後藤 全然変わりました!
――自分の強みだな、と
後藤 はい。ライズで浸透している分、混ぜて配球するのはすごく難しいのですが、そこはキャッチャーの子といろいろ話をすることによってまとまってきています。まとまるけど幅は広がるように感じます。
――森下選手はいかがでしょうか
森下 確かに変化球とかは使えるようになって、(後藤選手と)同じようにドロップも大学入ってから習得して幅は広がったかなと。あとやはりいままで経験してきたことが大きいですね。ソフトボールもなんですけど、それ以外のこともいろいろ過ごしてきて結構勉強になったので、それで成長できたんじゃないかなと思います。
――経験してきたことというのは
森下 ちょっと恥ずかしいこともあるんですけど(笑)、後輩と喋ることとか!後輩とあまり喋ったことがなかったので、すごく楽しいし…そんな感じです(笑)。
――では4年間を振り返っていただいて印象に残ったことや試合はありますか
後藤 印象に残った試合は2年生のときの全総で、それ負けちゃった試合なんですけど自分にとっての一番の分岐点というか、ここがなければ何も変わっていなかったなという試合で。初めて大切な大会で先発して負けて悔しい思いをして、それで先輩が支えてくれたおかげで乗り越えられたので、その試合のことは一生忘れられないです。
――その試合があったからいまの自分があるという感じでしょうか
後藤 はい。もうあのとき死ぬほど泣いたし、もう苦しかったんですけどあの試合がなかったら何もないと思います。
――森下選手はいかがですか
森下 ワセダに入って1年生か2年生のときに、初心者の先輩が普通に1部リーグの試合とかでヒットを打ったことにすごく感動したことが印象に残っています。
――お二人の投球について、ピンチでも大量失点せず役割を果たしているように思えますが
後藤 負けたら意味ないかなって。やっぱり味方が点とってくれるまで粘り強く投げなきゃいけないと思うし、そう(役割を果たしているように)思ってくれる人が声をかけてくれてもやっぱりゼロで抑えたい気持ちがあるので、ゼロで抑えていきたいという気持ちの方が強いです。
森下 同じく負けたら意味がないなと思っています。
――お二人から見た主将(北村友紀菜主将、人4=熊本・八代東)はいかがですか
後藤・森下 ユキナですか?(笑)
森下 頑張っていると思います!
後藤 やるところはやるし、おもしろいところはおもしろいし、そういう盛り上げ方も知っているのでついていこうと思えます。
――卒業後の予定は
後藤 普通に就職します。
――ソフトの方は
後藤 やりません(笑)。
――森下選手は
森下 先生します。
――高校ですか
森下 いや、まだ決まっていません。中学か小学校か…。
――ソフトボールは何年間続けてきましたか
後藤 13年です。
森下 私もことしで13年です。
――大学卒業と同時にソフトボールを引退されることに、未練などはありますか
後藤 ちょっと(笑)。
森下 ないです。
――全部やりきったという感じですか
森下 次にやりたいことができたので。
――別の競技ですか
森下 いえ、普通に先生とか。そういうこと勉強することが楽しいので。
――ソフト部の顧問をやってみたいという気持ちはありますか
森下 いえ。やらされればやりますけど、あまりこだわりとかはないです。
――ソフト経験者だったら任されそうですよね
森下 任されたらやりますけど、好んで自分からはいいです。
――ワセダに入学した経緯は
森下 最初は部活を続けるつもりはなくて、ワセダのスポ科のセンター利用(入試)を受験して受かりました。あと、高校の監督がワセダのソフト部出身で、すごくその人のことを尊敬しているのでそれもあってワセダならいいかなって。
――勧められたわけではなく、ご自身でワセダに行きたいと思ったのですか
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森下 勉強したかったので。ワセダなら勉強できる環境が整っているかなと思って。
――後藤選手はいかがでしょうか
後藤 私は、もともとソフトボールを続ける気があまりなくて、でもたまたま2つ上の姉の友達がワセダのソフト部の先輩で、高校のときから練習試合をよくやっていたことから私のことを知っていて。それで「ピッチャーほしいから受けてみない?」と言われて。でも私自身ソフトボールあまりしたくないしな、どうしようかなと思ったんですけど、親が結構やってほしいって思っていて。どうせやるんだったら、受験をするならワセダを思い切って受けてみればと言われて、自己推薦で合格しました。
――ご両親の勧めが大きかったのですね
後藤 高校のときに嫌な負け方をして、自分自身はもうそれでこんなの味わいたくないというのを経験したんですよね。応援してくれていた親にそういう姿を見せたので「もう嫌だな」という思いになってしまったんですけど、それでも親が見たいと言ってくれて。だったら4年間しっかり自分のソフトボールができるところで続けられるんだったら続けようと。ワセダが声をかけてくれているのなら挑戦してみなさいと言ってくれて、これは何かを見つけ出せるチャンスなんだなと思ってずっとやってきました。
――ワセダで何かを見つけられましたか
後藤 そうですね。与えられた試合全部がチャンスだと思っているし、あとはやっぱり親が来てくれる試合ではそういう変化を見せたいです。いままであまりそういうことをできなかったので、インカレで最後は見せたいですね、いいところ。終わりたいです、それで。
「与えられた仕事はこなす」
笑顔も交えながら答える後藤
――これまで投手陣を引っ張ってこられていかがですか
後藤 あまり引っ張るという意識はなかった、私は。引っ張るというより、なんだろう…与えられたことをやってきたという感じなので、それを見て後輩がどう思ってくれているかとかは恥ずかしいから聞いてないんですけど(笑)。引っ張るというよりは与えられたことをやってきたというイメージです。
森下 自分のやることをやっていただけなので、あまり引っ張っている意識はないです。
――引退を意識されることはありますか
後藤 それはもう(笑)。でも引退のことは考えますけど、どうなるんだろうという感じですかね。いままでは何だかんだソフトやりたくないと思っても続けるという道を行っていたけど、今回はそういう道に行かないからどうなるのかなって。「どういう自分なんだろう、ソフトボールなくなったら」と思います。
――ソフトボールをしていない自分を今はあまり考えられないという感じでしょうか
後藤 そうですね。ソフトボール辞めたら女の子らしくなりたいなとは思うんですけど、どうなんだろうな、できるかな、みたいな感じで。でもいまはソフトボールのことしか考えられないです、この時期は。ずっとやっていたいなって思います。
――森下さんはいかがですか
森下 引退後の計画は着々と。引退してもやりたいことって来年卒業してもまたやると思うので、順調に計画を進めます。
――いままで一緒にプレーしてきた同期への思いは
後藤 いやー、大切です、もう本当に。ずっとうまくいくということではなかったかもしれないしたくさんいろいろなことがあったんですけど、やっぱりいざというときは同期だし、なんか同期っていいなって。きのうも半田(幸、スポ4=神奈川・厚木商)と北村とご飯に行って、同期っていいなと改めて感じてきています(笑)。
――やはり同期の方はみなさん仲良しですか
後藤 はい。でもそれぞれ自分を持っているなという面があるので、固まっていなくてもいざというときは何だかんだで一つになっているのかなみたいなイメージはあります。でもそういうところが好きです、私は。あまりみんなに執着しすぎなくて、でも自分を持っているから自分の意見もあってというところが良かったなって。恥ずかしい(笑)。
森下 4年間も過ごしてきたので、良いところも悪いところも含めて、いまこうして付き合えているからそれって結構良い関係なんじゃないかなと。居心地良く過ごさせてもらっています。
――試合へ向かうバスの中でのチームの雰囲気はいかがですか
後藤 東日本はずっとみんなで甲子園を見ていました。甲子園を見て、戦略とかね。
いやー、うちのチームでもこれやってないかな、バントしすぎだよ!とか、ピッチャーを見て、いやここはこのボールでしょ!みたいなことで盛り上がっていたね。
森下 あと、出身県同士で「いや、すみません。勝ちますから」とか言って(笑)。勝負をして「どっちが勝つんだろう」とか言って…。自分たちが(野球を)しているわけではないんですけど、勝手にね。それと東日本のときからバスで応援歌を練習したりして盛り上げています!
――チームの中で盛り上げ上手な方はいらっしゃいますか
後藤 半田かなー。同期の半田に東日本インカレでの紺碧隊(試合中に声援を送っている選手たち)の隊長をお願いしていて。それを一生懸命やってくれていて、紺碧隊は本当に盛り上がっていると思うし、半田だからできると思うかな。普段からもう盛り上げ役みたいな感じなので、試合とかも全然変わります。半田が出た試合は、もう何か声の大きさが一人だけ違うみたいな(笑)。でもそれが心強いです、とても。
森下 送りバントで一人ガッツポーズするよね(笑)。
後藤 犠牲バントをしてみんなさらっと帰ってくるところを「ウェーイ」って半ちゃん(半田)いつも自分で言ってくれるんですよ(笑)。でもそういうところが良いよね、すごく。半ちゃんは盛り上がりますね。
――チームとして、試合前に決めて行っていることはありますか
後藤 「反応」ですね。手の動いた方にサイドステップを踏むとか、声を出しながらとかは試合前で盛り上がるためにもアップでやっています。インカレはダッシュのときみんなで声を掛け合いながらダッシュしたりとか。最後だけ全員で「今日頑張っていこうぜ!」とか「絶対勝つぞー!」みたいなことを一人一人言いながらダッシュしたりしていますね、毎年。
――お二人から見て後輩のピッチングはいかがですか
森下 良いと思います。
後藤 驚異的です。抜かされたくないです、普通に。競争しています。良いピッチャーなので、二人とも。
――先輩として、中継ぎの泉花穂選手(スポ2=香川・高松南)のことはどのように見られていますか
後藤 うーん。いや、何だろうなー。泉はライバルと言えばライバル。後輩ですけど。やっぱり泉はすごく安定したピッチングをしてくれるのでチームにとってすごく良いピッチャーだと思うけど、個人的にすごく負けたくないなというのはありますね。そういう後輩がいるからこそピッチャー陣が盛り上がる、チーム自体が盛り上がるのかな。大きい存在です、泉は。
――下級生投手陣へ何かアドバイスを残されたりはしていますか
後藤 1年生2人いるんですけど、この前3年生の濱田(のぞみ、人3=徳島・脇町)と一緒に、先生から「ドロップを(部に)いる間にしっかり教えなさい」と言われたので、いま1年生のその2人にドロップというかピッチングの基本となることを、先生に教わったことそのままになんですけど教えたりしています。濱田とかはもう私が教えることはないかなというくらいしっかりしています。
森下 アドバイスは残せるようなものじゃないので。でも見られていて恥ずかしくないようには行動しようと心掛けています。
――インカレの対戦相手の中京大は昨年と同じ組み合わせになりましたが、対策などは取られていますか
後藤 ビデオを見たりしています。あとはバッター陣の様子を聞いて、どのようなバッターがいるかということは把握しています。
――残り少ない時間の中で強化したいところはありますか
後藤 ピッチング全部ですね。大学のソフトボール生活に何も残したくないので。ピッチングもコントロールも速さも全てを100%でインカレ投げたいので。全てです。
森下 やれることはやりますという感じです。やれることをやって、あとはその日を待てればいいかなと思います。
――インカレでの目標を、個人として、また、チームとして教えて下さい
後藤 個人的な目標は、やっぱりマウンドに立つこと。いまは森下も泉も濱田もいて。自分は東日本で負けていてマウンドに立てる保障は全くないので、まずはマウンドに立ちたい。それで、(マウンドに)立つことを前提に、立ったら絶対に与えられた仕事はこなすこと。全体としては勝つことですね。もうそれしかないです。
森下 チームはことし楽な組み合わせではないので。でも逆に最初勝ったらすごく勢いに乗れると思うので、一戦必勝かなと思います。自分は勝利に貢献できればいいかなと思っています。それが目標ですね。
――最後に、インカレへの意気込みをお願いします。
後藤 まずは中京戦。やっぱりその一回戦に勝つことが全てなので。でも一回戦に勝っただけでは優勝ではないので、それを絶対ものにして、積み上げて優勝することです。
森下 一戦必勝で頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 川口真由、河野美樹)
意気込みを『一戦必勝』と色紙に書いた2人
◆後藤めい(ごとう・めい)
栃木・大田原女高出身。スポーツ科学部4年。投手。昨年のインカレ直前特集でもお二人の対談を担当した記者に対し、取材前「あれ、きょねん…!」と声をかけてくださった後藤選手。取材中も、昨夏と変わらない爽やかな笑顔を何度も見せてくれました。インカレでも最後までその笑顔を見られることを期待しています!
◆森下藍(もりした・あい)
愛知・星城高出身。スポーツ科学部4年。投手。取材中、勝ちへのこだわりを何度ものぞかせた森下選手。「一戦必勝で」と語るその口ぶりから、最後のインカレにかける並々ならぬ決意が受けて取れました!