【女子サッカー】慶大相手に2-0の完勝 早慶戦開催以来無敗の歴史を紡ぐ

ア式蹴球女子

第24回早慶女子サッカー定期戦ー早慶女子クラシコー

2024年8月17日(日)15:00 Kickoff
Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu 

試合結果

チーム 前半 後半 合計
早稲田大学 1 1 2
慶応義塾大学 0 0 0

得点者

前半

41分 生田 七彩

後半

61分 吉田 玲音

 17日、Uvanceとどろきスタジアムby Fujitsuにて第24回早慶女子サッカー定期戦―早慶女子クラシコ―(早慶戦)が開催された。開催以来無敗という重圧がのしかかる中、ア式蹴球部女子(ア女)は落ち着いて試合を進める。時間が経つにつれボールを持つ回数を増やしていくと、41分にセットプレーからFW生田七彩(スポ4=岡山・作陽学園)が先制点を決める。61分には再びセットプレーからDF吉田玲音(社2=新潟・帝京長岡)が追加点を決めた。結果、2-0の完勝を収めたア女。大舞台で無失点と理想に掲げる堅守を披露した。

試合後にハイタッチをかわす選手とスタッフ

 立ち上がりは両チーム共に主導権を握ることができずに試合は始まった。共にボールを保持して敵陣への侵入を試みるが、ペナルティーエリアまではボールを運べずにチャンスをつくることができない。だが、時間が進むにつれてア女がボールを保持する機会が増えていった。ストライカーの生田が左サイドに流れ、右サイドではMF﨑岡由真(スポ3=埼玉・浦和レッズレディースユース)とDF新井みゆきが幅を広げて攻撃の起点をつくる。41分、ア女は右サイドのハーフウェーライン付近でフリーキックを獲得する。キッカーのMF宗形みなみ主将(スポ4=マイナビ仙台レディースユース)がロングボールを送ると、ペナルティーエリア内で競り合いに。この競り合いのこぼれ球がゴール前へと落ちると、ボールにいち早く反応したのは生田。ワンタッチでボールを流し込み、先制点を挙げる。エースの得点でア女が一歩前に出たところで試合はハーフタイムへと進んだ。

先制点を挙げた生田。MVPを受賞した

 後半は先制点で勢いに乗ったア女がボールを握る時間が続いた。特にハーフタイムの途中交代で投入されたMF三宅万尋(スポ2=東京・十文字)の推進力を使った攻撃で相手ゴールへと迫る。右サイドから三宅がドリブルを仕掛けることで、ア女は相手のディフェンスラインに揺さぶりをかけ続け、コーナーキックを幾度と獲得した。すると61分、そのコーナーキックから再び試合が動いた。キッカーの宗形がファーサイドへとクロスを供給。MF千葉梨々花(スポ3=東京・十文字)がゴール前へとボールを折り返すと、中央で待ち構えていた吉田がボレーシュート。このシュートがネットを揺らしてア女がリードを広げた。その後も試合のペースを握ったア女。最後まで相手に試合をコントロールされることなく時間を進めて試合は終了。見事早慶戦無敗の歴史を紡いだ。

コミュニケーションを取る吉田とDF佐溝愛唯(社2=大阪・大商学園)

 最高気温が35度に迫るなど、過酷なコンディションで行われた一戦。ピッチ上でも熱い戦いが繰り広げられたが、ア女の選手たちが最後まで走り抜き勝利を掴み取った。「歓声の中で味方の声が聞こえなかったりとイレギュラーはありました」と宗形が振り返るように普段とは異なる環境でのプレーとなった中、目立ったのは選手間のコミュニケーションだ。ア女の選手たちは常に味方とのコミュニケーションを徹底して試合への集中を徹底。「周りの選手がどんどん仕掛ける姿を見て自分も元気もらえた」という宗形の言葉通り、緊張感や高揚感に包まれる中、お互いの声掛けで普段通りのプレーができる状態を生み出していた。

得点を喜ぶ選手たち

 関東大学女子リーグ(関カレ)では思うような結果が得られていなかったア女。特に失点数が多いことからも守備の改善、そして理想である堅守の実現が求められていた。そうして迎えた早慶戦、大舞台でも動揺することなく好パフォーマンスを見せ、見事クリーンシートを達成。チームとしての成長が示された一戦となった。この勝利は今後のチームにとっても大きな自信へとつながるだろう。これから始まる皇后杯、関カレ、そして目標である全日本大学女子選手権制覇へ向けてア女の戦いは続いていく。

(記事 荒川聡吾、写真 大村谷芳、勝野優子、荒川聡吾、堤健翔)

トロフィーを持つ宗形

 早大メンバー(数字は背番号、◎はキャプテン)

GK 1 田村亜沙美(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
DF 2 新井みゆき(スポ3=埼玉・浦和レッズレディースユース)
→HT、三宅万尋(スポ2=東京・十文字)
DF 3 杉山遥菜(スポ3=東京・十文字)
DF 13 佐溝愛唯(社2=大阪・大商学園)
DF 14 吉田玲音(社2=新潟・帝京長岡)
MF 6 千葉梨々花(スポ3=東京・十文字)
MF 7 﨑岡由真(スポ3=埼玉・浦和レッズレディースユース)
→96分、小林舞美(スポ4=ちふれASエルフェン埼玉マリ)
MF 8 米村歩夏(スポ2=宮城・聖和)
→73分、淀川知華(商4=山梨・日本航空)
MF 10◎ 宗形みなみ(スポ4=マイナビ仙台レディースユース)
FW 9 生田七彩(スポ4=岡山・作陽)
FW 15 福岡結(スポ2=岡山・作陽学園)
→96分、阪本環(スポ4=日体大FIELDS横浜U18)

試合後インタビュー

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
ーー無敗記録がある中での試合でした。どのような気持ちで臨みましたか
 早慶戦に関しては、早稲田のプライドをかけて勝利することが1番重要になります。ただ、今日試合に出られなかった佐藤(美海、スポ2=埼玉・浦和レッズレディースユース)がSNSに「過去の歴史ではなくて、今積み重ねたもので戦いに行こう」という文章を書いたのですが、私もそれがすごく大事だと思っていて、これまでの歴史はしっかりと自分たちの背中に乗っているけども、それ以上に今年のチームとして、今年の4年生で圧倒して勝つということを意識して試合に臨みました。

ーー90分を振り返っていかがですか
 クリーングブレークを挟むレギュレーションだったり、ピッチ内でアップができない状態だったりといつもと違う条件に加えてスタジアムの雰囲気もあり、多少緊張するかなと思いましたが、堂々とアグレッシブに試合に入ってくれたなと思ってます。

ーー対戦相手の慶大は今季波に乗っているチームでした。どのようなことを準備していましたか
 今年に限らず早慶戦で戦う慶大は非常に難しい相手であることは間違いないです。加えて、今年は勢いを持ってくるということはみんなも分かってました。そういう意味では、セットプレーで2点取れたことはポジティブです。ただ、流れの中でもっと相手のファイブバックを崩すこともできたのではないかと、やはり悔しい気持ちも残っています。

ーー試合の中で良かった部分はどこだと思いますか
 関カレ前期を通してビルドアップの前進ができないと、その次の繋がりも生まれないことを意識していたので、センターバックの吉田(玲音、社2=新潟・帝京長岡)と杉山(遥菜、スポ3=東京・十文字)を中心に前進できたことは良かったです。ただ、そこから点を取るところに関して、もっとスペースをつくり出すことは課題だと思います。今日は暑さもあったので、味方を追い越す動きや長いランニングを使うプレーが厳しい部分もありましたが、やっぱりそういうプレーがないとスペースを作って使うことができないので、これから積み重ねていきたいです。

ーー次は皇后杯関東予選が始まります。意気込みをお願いします
 全国大会への本選出場を掴むことが第一の目標です。今日出た課題も含めてチームとして積み重ねた上で、しっかりと本大会への出場権を取っていきたいと思います。

MF宗形みなみ主将(スポ4=マイナビ仙台レディースユース)

ーー試合を振り返っていかがですか
 すごく勢いがあった相手に対して、自分たちの良さを出せました。

ーーご自身にとっては最後の早慶戦でした
 こういう舞台でサッカーができることに対して、いろんな人に恩返ししないといけないと思いました。たくさんの人が見に来てる中で、結果だけではなく内容の部分にもこだわって、自分たちも納得する、見ている人も楽しいサッカーをすることを心掛けていました。

ーー普段とは違う会場での試合でした。緊張はありましたか
 歓声の中で味方の声が聞こえなかったりとイレギュラーはありましたが、お客さんがたくさん入って一喜一憂していただける環境は自分の中でとても楽しかったです。

ーー主将として心掛けていたことはありますか
 選手の中でも半分はわくわくしていて、もう半分は緊張してる選手が多かったと思うので、ピッチの中で緊張している選手への声かけは気にしていました。

ーー来季からはチームメートになる慶大の小熊藤子選手とはどんなやり取りがありましたか
 「やっと戦えるね」という話をしました。

ーー個人のプレーの出来はいかがでしたか
 アンカーということでゲームコントロールを任されていました。自分自身ミスも少しありましたけど、その中でも楽しくできました。周りの選手がどんどん仕掛ける姿を見て自分も元気もらえたので、今のチームがすごく好きなんだなと改めて気づきました。

ーー早慶戦はどのような舞台でしたか
 やっぱり早慶戦という舞台は自分たちの中で大切なものであるし、かけがえのないものなので、改めて運営とか準備の段階から学生主体で行っていることをしっかりと認識してピッチに向かいました。

 MF淀川知華副将(商4=山梨・日本航空)
ーー試合を振り返っていかがでしたか
 試合前は無敗記録に関係なく、目の前の相手に今まで積み上げてきたものをぶつけて勝つという気持ちでしたが、やはりプレッシャーが大きかったので、まず勝てたことに一安心です。

ーー緊張感や高揚感、どのような感情が大きかったですか
 リハーサルでこの会場に来た時に「このピッチでプレイできるんだ」という感動と喜びがあって、ワクワクしながら準備してたので、実際にピッチ立った時は高揚感でいっぱいでした。

ーー副将としてどのようなことを心掛けていましたか
 アップの前に誰か一人が代表して思いを述べるのですが、今日は自分が指名されて「早稲田の誇りやプライドからプレッシャーはあると思うけど、まずこのピッチで試合ができることや早慶戦という特別な舞台を楽むこと」を伝えました。

ーーベンチスタートとなった中、どのような気持ちで準備していましたか 
 個人としては先発として出たかったので、悔しさもあります。ただ信頼しているチームメイトは、みんな各々の個性があって良い選手なので、「頑張って」という思いで見送って今日もいつも通り準備していました。

ーー交代で試合に入る時はどんな気持ちでしたか
 呼ばれた時は「やってやろう」という気持ちでした。早慶戦を迎えるにあたって、早稲田は「熱く泥くさく」ということを大事にしているので、選手としてそれを体現しようと思ってました。

ーー4年間を振り返って早慶戦はどのような舞台でしたか
 4年目にして初めてベンチに入ったので、メンバーに入って最後にこんな素晴らしい舞台でプレーできたことはありがたいことですし、早慶戦が開催されるまでにたくさんの人の支援があり今日もたくさんの方々が応援に来てくれたことに感謝したいです。

FW生田七彩(スポ4=岡山・作陽学園)
ーーご自身にとって最後の早慶戦でした
 無敗記録があり絶対に勝たないといけないプレッシャーもあった中、無事に勝ててほっとしています。

ーー試合を振り返っていかがでしたか
 暑さもある中、みんなが走りきることや切り替えの部分で慶応を圧倒できていたと思う一方、チャンスがあったのに決めきれなかったことは課題だと思います。

ーー来季からWEリーグで対戦することになる慶大の小熊藤子選手とのマッチアップはいかがでしたか
 マッチアップするということで自分の中でも燃えるものがありましたが、一対一の場面で止められてしまった時があったので、次に戦う時は圧倒できるようにしたいです。

ーー先週はWEリーグの試合に出場しました。違うチームの選手として戦う中、難しさはありましたか
 特に難しさはなかったです。ただWEリーグの方では新加入にとっていうこともあって伸び伸びとプレーさせてもらいましたが、ア女では自分が決め切ることを求められてるので、そこの立場の違いは感じました。

ーーご自身のプレーを振り返っていかがですか
 全く納得いっていないですが、先制点でチームの勝利に貢献できたかなと。

ーー4年間を振り返って早慶戦はどんな舞台でしたか
 やっぱり早慶戦ならではの雰囲気は、早稲田に来たから味わえるものなので幸せだなと思います。