圧巻の攻撃で東国大攻略 ア女、関東リーグ最終節を完勝で飾る

ア式蹴球女子
第29回関東女子サッカーリーグ
早大 1-1(前半)
2-0(後半)
東京国際大
【得点】
(早大)10、48分:笠原 綺乃、51分:白井 美羽
(東京国際大)13分:神津 萌

 関東女子リーグ(関東リーグ)は後期第7節、ア式蹴球部女子(ア女)は東京国際大と対戦した。10分にMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)のゴールで先制するが、直後13分に追いつかれる。しかし後半、48分に再び笠原が勝ち越しゴールを奪うと、51分にはMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が決めてダメ押し。関東リーグ最終節を快勝で飾った。

 

1アシストのMF大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)。ボールロストはほぼなく、技術の高さを見せつけた

 11月とは思えない日差しが肌を焼く、東京国際大坂戸キャンパス第3グラウンド。前週の関東大学女子リーグ(関カレ)に引き続き、関東リーグもアウェイでの大詰めを迎えた。序盤から主導権を握ったア女は10分、右サイドでパスを受けた大山が浮き球で前線に送ると、反応した笠原が見事なループシュートを決め先制に成功。しかし13分、コーナーキック(CK)のこぼれ球をファーサイドで詰められ試合は振り出しに戻る。追い縋られる格好になったア女だが、「下を向く人もいなくて、その中でも前向きにチャレンジできる雰囲気を自分たちで作ることができた」とDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)。シーズン終盤らしい、落ち着いた様子で攻勢を強める。22分には右サイドのMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のクロスに、ファーサイドのMF三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)が合わせたがキーパー正面。35分には左サイドで笠原が三谷とのワンツーで抜け出すと、ライン際をえぐって上げたクロスにFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)が合わせたがブロックされる。繰り返しゴールに迫ったア女だったが追加点は生まれず、前半を1-1で折り返した。

 

右サイドでチャンスを作った新井

 後半の頭にFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)を投入し、システム変更を行ったア女。両サイドを使ったダイナミックで厚みのある攻撃に加え、千葉を中心とした前線のプレスからボールを奪いショートカウンターを繰り出すなど、多彩な攻撃で相手ゴールに迫る。すると48分、その千葉が前線でボールを収めて、裏に走った笠原に優しいスルーパス。ゴール前まで運んだ笠原が冷静に決めきって勝ち越しに成功した。さらには51分、三谷からのパスを受けた白井がエリア内で右足を豪快に振り抜き、ダメ押しとなる3点目。連続で得点し、ア女の勝利を手繰り寄せた。66分、千葉がインターセプトしたところから三谷が右サイドでしかけ、パスを受けた大山から再び千葉へ。強引にシュートにつなげたがブロックされる。78分には右サイドの新井が上げたクロスに、逆サイドで待っていた途中出場のMF栗田彩令(スポ3=静岡・藤枝順心)が合わせたがミートしなかった。終盤まで「攻撃は最大の防御」とばかりに攻め続けたア女は、東京国際大に反撃の隙を与えず。ア女の完勝で試合は幕を閉じた。

 

ダメ押し弾の白井

 ワンサイドゲームと言って良い展開だったからこそ、失点が悔やまれる。「後悔はしないように修正しなければいけない」(DF堀内璃子、スポ4=宮城・常盤木学園)と、全日本女子選手権(皇后杯)を前に、また1つ教訓を得る結果となった。しかし、後半頭のアタッキングサードにおける迫力は驚異的であった。サイドバックとサイドハーフが関わり合いながら多層攻撃が生み出され、千葉の投入によって「縦に当ててその次、みたいなつながりも見えた」(後藤史監督平21教卒=宮城・常盤木学園)。

 

 これで2つのリーグ戦、関カレと関東リーグを合わせて全36戦を戦い抜いたア女。リードして最終盤に逆転を許した試合の悔しさも、冷静に守備戦術を遂行しシュート1本で勝利した試合の喜びも、余すことなくチームに還元されているはず。たとえ100点満点でなくても、100パーセントが出せれば今のア女に怖いものなどない。自信をもって、全国の階段を駆け上っていってほしい。

(記事、写真 大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 丸山翔子 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
→90分 15 小林舞美 スポ2 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→75分 18 栗田彩令 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
→84分 34 エロイーズ・ハンセン 商3 グレイズヴィル・レイヴンズNPL
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
MF 30 大山愛笑 スポ1 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
→84分 22 阪本環 スポ2 日体大FIELDS横浜U18
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→HT 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――90分間振り返っていかがですか

 非常に収穫の多い内容で、結果はもちろんのこと、今やっているシステムや攻撃のつながりなど、課題になっている部分に対して選手たちがよくトライしてくれた、良いゲームになったと思います。

――前半と後半でシステムの変更がありましたが、どのような意図がありましたか

 前半はサイドがしっかり取れていたのですが、どうしてもウイングが1枚になってしまっていました。横の動かしがあった時に、守備でワイドの選手が下がっていて高い位置が取れないという現象が多くあって、そこで攻撃がスピードダウンしてしまっていたんです。4バックならサイドハーフが必ずいて、サイドバックが回るという状況を作れるようになりますし、結果的に中にいくにしろ、サイドの起点を高くすることができるので、それを狙って4枚に変えたという感じです。

――後半は実際にサイドをうまく使った厚みのある攻撃ができていましたが、手応えは感じましたか

 後半はりり(千葉)が入って、フォワードが結構絡めるようになりました。縦に当ててその次、みたいなつながりも見えましたし。相手が疲れてきていたのもありますが、後半の動かし方はすごく良かったと思います。

――千葉選手投入後、ワンタッチでの細かい崩しなども増えたように思いますが、手応えはいかがですか

 もともとできる子たちなので、それをどこで発動するかというところが共通認識として持てていないと、それこそ大東文化大戦(10月29日、関カレ最終節、△0-0)の後に言ったような話になると思います。リスクを負う攻撃でもあるので、今日の試合だったらカウンターが強いチームですし、もちろんやり切ってくれるのが一番ですが後ろがカウンターのリスクを警戒するとか。そういう意味ですごく収穫がありましたし、前試合からのつながりとリズムが出た試合ではあったかなと思います。

――今季の関東リーグ全体を振り返っていかがですか

 関東リーグはどうしても関カレの次の日にある試合で、選手は流動的ですし、何よりトレーニングは基本的に関カレの分析や準備がメインになってきます。本当に今年の関東リーグはどちらかというと精神的なタフさ、戦術的な部分が準備できず、技術的に差がある分、しっかりと体を張ってみんなで守って1点でももぎ取るんだ、という姿勢を見せてもらいましたし、私だけでなく選手たちも大事なものをメッセージとして受け取ったリーグでした。5位という結果は真摯に受け止めながら、このメンバーでやってきた中で毎試合毎試合自分たちの力を出し切れたということは感じているので、それは自信にして来季につなげてもらいたいと思います。

――トレーニングマッチも含めて、皇后杯初戦に向けてどのような準備をしていきたいですか

 皇后杯を見据えているからこそ違うシステムに取り組んでいるということもありますし、今日前半を1-1で折り返した時に、大会であれば1点を取られて仕舞えば負けなので、やっぱり得点をとって勝ち切るということは必ず皇后杯につながっていると思います。切り替えるというよりはこれまでリーグ戦で積み上げたものをブラッシュアップして、今日の収穫は必ず皇后杯に生きてくると思っています。ただ自分たちが掲げているものがWEリーグチームを乗り越えたいというものであるならば、今日の横パスの1本、それこそ昨季の大宮戦は最初の1本の、声の掛け合いのミスからでした。じゃあ今日の入りはWEリーグの相手に失点しないの、ということですよね。攻められてシュートまで行かれて、あれがWEリーグのチームだったら決められていたかもしれない。そこの基準というのを自分たちの掲げているものと照らし合わせた時に、あの1本の横パスはどうだったのか、前半はシュートを打っているけど決められていない、こぼれに反応できていない、もいうところが基準になってくると思います。練習試合では確実に力のある相手とやらせていただけるので、それに合わせて自分たちも(基準を)引き上げないと勝てなくなると思いますし、積み重ねてきたものをもう少し加速させるようなイメージを持ちながら準備をしたいと思います。

 

夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)

――90分間振り返っていかがですか

 1失点はしたものの、ひとまず3-1で勝って終わることができたという安心感が大きいです。

――夏目選手は関東リーグでもかなり出場してきたと思いますが、関東リーグ全体を振り返ってどんなリーグ戦でしたか

 なかなかメンバーが揃わず、練習でも合わせる機会が少ない中で戦ってきて、関カレと比べて総力戦になってくる部分がありました。リーグ目標は優勝で結果としては5位だったのですが、みんなが積み重ねてきたことややろうとしてきたことが、内容面で結びついてきたので、後期になるにつれて内容的にはチャレンジできることも増えて、すごく収穫のあるリーグ戦だったなと思います。

――今日は3バックでのスタートでしたが、システムについてはどのように感じていますか

 ここから皇后杯、インカレと負けられない試合が続いていく中で、どういうメンバーが出るかは分からないですし、相手チームがどういうシステムでどういう特徴を持っているかというのもバラバラだと思います。自分たちが3バック、4バックもできというのは1つの武器にもなると思いますし、自信にもなると思っているので、そういうチャレンジできる場を提供してくれることにはありがたく思っています。

――先制した後すぐに失点してしまったというのが課題、修正点になると思います。失点シーンを振り返っていかがですか

 セットプレーの失点は今季も何回もあって、1点取られると厳しい戦いがここから続きますし、そういう意味でもセットプレーはすごく大事になってくると思います。ただハーフタイムでも喋りましたが、修正すべき点だなと感じてはいるものの、(失点した時に)下を向く人もいなくて、その中でも前向きにチャレンジできる雰囲気を自分たちで作ることができたのも成長したところかなと思います。

――後半は主導権を握りましたが、攻撃面では幅を使った厚みのある攻撃ができていた印象です。手応えはいかがですか

 前半のサイドでのプレーなど、ハーフタイムに色々話し合った中での後半でしたが、話し合った分、より良いかたちでプレーできたのはひとつ自信になる部分なのかなと思いました。ただやっぱり試合の中で修正して、前半の内にもう1点返せていたら大きかったとも思うので、ハーフタイムの時間も大事なんですが、試合の中で自分たちで変えられる力をもう一つつけなければいけないのかなと思いました。

――関カレも関東リーグも負けることなく良いかたちで終えました。ここからの大会に向けてどのように調整していきたいですか

 もう皇后杯まであと2週間ということで、平日の練習はありますが(実戦で)合わせられるのは来週のトレーニングマッチで最後だと思います。けが人も戻ってきますしもっとスタメン争いも激しくなると思うので、自分も含めチームとしてもう一段階上げられたらなと思いますし、次からは、次が保証されている試合は1つもないので。このチーム全員でできる試合を1試合でも多く増やせるように、また一つずつ取り組んでいきたいと思います。

 

堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)

――90分間振り返っていかがですか

 正直難しかったなというのはあります。個人としては、全然一つ一つのプレーの質が、今日も含めここ数試合、ベストから落ちている部分はあって、それをトレーニングの中で修正しきれていなかったというのは個人の課題だと思います。前半は特にチームの最終ラインの選手としてリズムを作ることができなかったので、そこは皇后杯、インカレに向けて絶対必要になってくる部分なので、そこまでに自分のベストに到達させなければという風に感じました。

――個人として課題を感じているプレーは具体的にどの辺りですか

 今色々なシステムをやっていて、フィードが自分の武器の一つとしてある中で、それがサイドの選手に届かなかったり、ボールの落とす位置が一つ手前になってしまったりする部分から相手に拾われてしまうという部分はありました。3バックでやっていると、近くの選手は距離感は近いのですが、遠くの選手に出す時の質は上げないと、そこから攻撃のスイッチを上げるためにはやっぱりピンポイントに入れなければいけないと思うので、そこが一番(の課題)かなと感じています。

――前半と後半でシステムに変化がありましたが、関カレ最終節を含め適応できている感じですか

 私はもともと高校の時は3バックでプレーしていて、自分自身のポジションについてはつかめていると思います。ただこのメンバーでの3バックは前期からオプションとして使っているという中で、まだ味方同士の距離感などでまだまだコミュニケーションを取らなければいけない部分は多いと思います。やっぱり後期は4バックで積み上げられた部分が多かったので、3バックで前にウイングがあるという良さも含めた上で変化を加えるという風に捉えるというか、そっちの方が一人一人の感覚としてはやりやすかったのもあると思います。変えたことによるゴタゴタとかは無かったのですが、どっちも高いレベルでできるのが一番だと思うので、今後どうなっていくかは分からないですが、しっかり調整していきたいと思います。

――先制点直後の失点シーンを振り返っていかがですか

 セットプレーからの、何回か見たことあるような失点になってしまいました。それこそ負けられない試合の時に足を引っ張ってしまう部分もあると思いますし、今までも何度も言ってきましたが、後悔はしないように修正しなければいけないと思います。

――後半には主導権を握って押し込んでいましたが、後半のダイナミックな攻撃には手応えを感じますか

 サイドチェンジを繰り返す中で、システムの変更によってサイドハーフに当ててもサイドバックが関わっていけるというのは大きかったです。前半は特にみゆき(新井)に(パスが)入った後の関わりとかが少なくて、自分たちはやっぱりつながれると崩しなどで良いシーンが多くなるので、後半は攻撃により勢いを持たせられたかなと思います。多分前半ありきの後半で、変化させたことでより良さが生きてきたという感じだと思います。

――堀内選手自身、今季序盤は関東リーグで出場し、関カレに出場し始めてからも途中出場などで関東リーグに関わってきました。リーグ全体を振り返っていかがですか

 スタートは関東リーグで出ていて、関カレメンバーに食い込めるように自分ができることをやらなければいけないなというのが1番でしたし、そこは常に変わっていないです。いつ自分がどこで出るかなんて分からないですし、与えられた環境、立場で自分のもっているものを全て出すというのは、日頃から意識はしています。けが人とかの関係などで、関カレからの連戦出場はどうしても起きてしまいますが、その時ももちろん自分にできることをやるのに加えて、普段ゲームで合わせることのできないこともあるので、上手くコミュニケーションをとってみんなが生き生きとプレーできるようにということは、自分が最終ラインでかつ4年生であるということも含めて、トライしやすい環境を作ることを意識していました。

――皇后杯まで約2週間となりました。今後に向けてどのように準備していきたいですか

 個人の部分ではさっきの課題の部分を突き詰めていかなければいけないと思いますし、チームとしては、コミュニケーションをとってどんなフォーメーションになったとしても自分たちの軸をぶらさずに、一人一人がマックスを出すということ。全体が個を生かすというか、この特徴を生かしつつそれを集め切った時が1番強いと思うので、お互いの良さを引き出すためにもコミュニケーションをとって連携を高めていきたいと思います。