関カレ、強豪に3連勝! MF白井の虎の子の1点守り切る

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 1-0(前半)
0-0(後半)
帝京平成大
【得点】
(早大)20分:白井美羽
(帝京平成大)なし

 残り2試合と大詰めに差し掛かっている関東女子大学サッカーリーグ(関カレ)。前節、同勝ち点で並んでいた東洋大から勝ち点3を奪い、3位に浮上したア式蹴球部女子(ア女)は、1週間を経て今度は勝ち点42で並ぶ帝京平成大との一戦に臨んだ。試合は序盤から拮抗(きっこう)した展開が続く中、20分に右サイドのDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)からのクロスをMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)がうまく合わせ、ア女が先制に成功する。その後は実力伯仲の両校同士、球際を中心に緊迫した攻防が繰り広げられ、なかなか追加点を奪うまでには至らない。終盤にはMF三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)の突破から相手ゴールへと迫るが、ゴールネットは揺らせず。一方で数少ない相手のチャンスシーンはGK石田心菜(スポ3=大阪学芸)を中心に冷静に対処する。そのまま試合は1-0で終了。ア女は上位を争う帝京平成大から貴重な白星を挙げ、関カレ2位浮上となった。

 

パスを出す白井。前半はサイドで、後半は中盤で違いを作った

 序盤から強度の高く、気の抜けない一戦となった今節。ア女は相手に自陣のサイドから攻め込まれ、守勢に回る時間も増えるが、集中した守備で完全に崩されることはなく、徐々に自分たちのリズムを生み出していく。すると20分、最終ラインからDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)背後へとボールを送ると、三谷が反応。ボールを受けた三谷の仕掛けは阻まれるが、こぼれたところにいた夏目がダイレクトでクロスを上げる。これに合わせたのは白井。左サイドからスルスルとゴール前にポジショニングを変えると、「歩美(夏目)さんから本当にドンピシャのボールが来て、緊張したのですが合わせるだけでした」と豪快なボレーシュートを突き刺し、貴重な先制点を決めた。この試合のファーストチャンスを見事にモノにしたア女は、追加点を狙うべくさらに攻勢を強める。27分には、右サイドで三谷の落としを受けたMF大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が、少しためてから追い越した三谷へとスルーパス。三谷はそのまま敵陣深くまで侵入するも、これは相手DFに阻まれてしまう。39分にも、再び三谷が右サイドを突破しクロスを上げると、相手DFが処理し切れないところを白井が拾いシュート。しかし、これは枠を外れてしまう。その後はスコアは動かず、1-0のまま前半を折り返した。

 

石田は90分間通して安定感を見せた

 後半に入っても上位対決ということもあり、なかなか強度の落ちない試合展開が続く。そんな中、流れは少しずつ1点を追う帝京平成大へと移る。66分にはペナルティエリア手前からの柔らかいパスにゴール前でダイレクトで合わされるが、これは枠の外へ。直後にもフリーキックからピンチを迎えるが、石田を中心に体を張ったディフェンスで何とか難を逃れる。逆に終盤になると、疲れの見え始めてきた相手に対し、左サイドに回った三谷のところからシュートシーンをつくるが、決め切ることはできない。それでも、最後まで白井の虎の子の1点を死守したア女。1-0で勝利し、関カレ3連勝。これで対戦相手の帝京平成大をかわし、最終節を前にして2位に浮上した。

 

ア女の「飛び道具」、三谷。終盤にかけて流れの悪い中でも、三谷のスピードはピッチ内で別次元の輝きを放った

 前節の東洋大、今節の帝京平成大と上位陣相手に連勝を収めたア女。共に前期の対戦では敗れている相手であり、1年を通してチーム力が向上している姿が伺える。後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)も、「ここ数シーズンの中で今季、勝ち切る力がついていることについては自信にしてほしいと思っている」と、リードした状態で勝ち切る力、チームとして苦しい試合展開でも粘り強く勝ち点3を拾える力がついているとした。これで関カレは最終節、大東文化大戦を残すのみ。現在関カレ最下位に沈む相手ではあるが、前回対戦では2点リードから終盤に立て続けに失点し追い付かれ、勝ち点3を逃した相手でもある。引き分け以上で関カレ2位が決まるが、あくまでも狙うは勝利のみ。「今日の試合で見えた課題と向き合いながら、チーム全員で一つずつ積み重ねていきたい」(夏目)、「次の大東文化大戦にしっかり勝ち切って関カレを良いかたちで終わらせて、その中で皇后杯などでも勝っていくためにもう一つ強くなっていけるよう、日々の練習に臨んでいきたい」(白井)。関カレが終わった後に待ち受ける皇后杯やインカレに良い流れを持っていくためにも、最終節、勝って関カレを締めくくってほしい。

(記事 髙田凜太朗、写真 前田篤宏、大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
DF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 30 大山愛笑 スポ1 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
→70分 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――90分間振り返っていかがですか

 タフな試合だったなという感想です。想定していた通り、縦に速く強い攻撃を受けて、特に後半は耐える時間が長かったと思うのですが、よく耐え切って勝ち点3を掴み取ることができました。それが一番の収穫ですね。

――東洋大戦もそうでしたが、前期対戦時と比較すると結果に関しては改善しました。具体的にどこが改善していましたか

 東洋大戦もそうでしたが、前半に自分たちが主導権を握れているというのが大きいと思います。多少縦にいかれることはありましたが、自分たちがボールを握る時間帯も作れて、狙っていた時間を作れるようになりました。シンプルにロングボールやセットプレーという失点パターンが多かった中で、大きくクリアするとか、そういったゲームマネジメントの部分に関しても後期は成長が見られているかなと思います。

――セットプレー面で言うと、相手のショートコーナーに対して必ず2人マークがつくといった対策がうまくいっていました

 帝京平成大さんはコーナーキックの引き出しがすごく多くて。色々なパターンがあって、特に前期対戦時も1点目はCKからやられていますし、スカウティング班がそこはしっかりとケアしてくれました。

――大山選手が三谷選手を走らせる新たな関係性が見えたこと含め、今日の攻撃面評価していかがですか

 勝ち点3を取ったことが一番の収穫なんですが、実際切り替えの早さ、球際、セカンドボールの回収面については、帝京平成大のレベルの高さを改めて突きつけられたという印象です。ピッチに立った選手たちが1番分かっていると思いますが、関カレで終わりではなくインカレで戦う可能性もありますし、勝ったからこそ自分たちを見つめ直さなければいけないと感じさせられました。

――最終節、勝てば2位フィニッシュです。どのように準備して大会につなげていきたいですか

 ここでしっかり勝ち点3を取って2位になったとはいえ、大東文化大も降格や入れ替え戦争いでモチベーションは高いと思いますし、なにより前期引き分けている相手です。やっぱり今日の勝ち点3は嬉しい気持ちより悔しい気持ちが大きいという試合だったので、彼女たちにはもっとできることがあると思いますし、その悔しさを次の試合にぶつけて結果だけでなく内容で成果を得られるようにしっかりと準備していきたいと思います。

 

夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)

――90分間振り返っていかがですか

 とりあえずホッとしましたし、純粋に嬉しいなというのが試合振り返っての感想です。

――内容面で言えば上回られる時間帯は多かったですが、良い結果に結びついた要因はどのあたりにあるとお考えですか

 失点した後に重ねて失点してしまったり、攻めている中でもなかなか点が取れなくて失点して崩れしまったりというパターンが前期多かった中で、夏合宿以降後期にかけて、自分たちが試合を積み重ねる中で見つかった課題から、練習中に意識して積み重ねてきたことが、やっと結果に結びついたかなと思います。終盤に耐え切れたところも、全員で走り切れたのが大きな成果につながったんだと思います。

――前期の対戦時はご自身もCBでの出場でしたし、結果も異なりました。4失点したあの試合から、具体的にどのような成長ができていましたか

 自分たちの時間帯が少なくとも前期よりは増えていたと思いますし、後半相手の時間帯になってセカンドボールを拾われるシーンも多かったですが、その後に自由な時間を与えなかったというのが大きいかなと思います。中盤の選手たちがそこも総力戦で、頑張って走り続けてくれたのは大きな違いだったと思いますし、根本としてシステムが変わって守り方が違ったというのもあるとは思うのですが、結果として自分たちのペースが前期より長い時間作れたのが1番大きいかなと。

――相手の強度に苦戦したというのはもちろんあると思いますが、攻撃面で課題になる部分はどこになるでしょうか

 流れの悪い、押し込まれるシーンで失点しないというのは少しずつできてきているところには手応えを感じているのですが、そこからいかに自分たちのペースにつなげていくかというところはまだまだできていない部分だと思っています。今日は和華奈(三谷)が個人で引っ張ってCKを獲得したりしてくれていましたが、チーム全体としてどこで自分たちの時間を作っていくかについては、まだまだ課題かなと感じています。

――関カレは残り1節となりました。どういった準備をしていきたいですか

 まずは絶対勝ちたいという思いがあるのと、自力で2位を掴みに行きたいと思っています。1週間でここから大きく変えられることは少ないと思いますし、今日の試合で見えた課題と向き合いながら、チーム全員で1つずつ積み重ねていきたいなと思います。

 

白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

――90分間振り返っていかがですか

 前期に0-4で負けている相手だったので絶対に勝ちたいと思っていました。押し込まれる時間は長かったですが、少ないチャンスを決め切って、全員で守って勝つことができたので良かったです。

――攻められつつも決定機は多くは作らせませんでした。プラン通りにプレーできたという感じですか

 相手は前に大きく蹴って攻めてくる攻撃だったので、それに対してのリスク管理は徹底していたからこそ、決定機は作らせなかったのかなと思います。

――ご自身のゴールを振り返っていかがですか

 歩美(夏目)さんから本当にドンピシャのボールが来て、上手すぎて緊張したのですが、合わせるだけでした。決めることができて良かったです。

――後半はさらに守りの時間も長くなって、サイドから中盤へのポジションチェンジもありましたが上手く適応できましたか

 サイドよりもセカンドボールを回収するところを意識しました。初めは相手に触られてしまうことが多かったですが、途中から改善できましたし、取り切ることができなくても競り合うことができていたと思います。

――前期対戦は、シーズン通して最も圧倒された試合だったと思います。そこからのリベンジを果たしたことについてはいかがですか

 率直に嬉しいです。ただ内容を見れば負けているところもありますし、まだまだ攻守両面で相手のプレッシャーに負けている面も多かったと思います。インカレで当たる可能性もありますし、もし次当たったらしっかりと勝てるように頑張りたいと思います。

――東伏見での最後の関カレの試合でした。ア式の選手の応援もありましたが、雰囲気などどのように感じましたか

 まさか男子部の人たちが来てくれると思っていなかったですし、応援してくれたことは本当に嬉しかったです。いつも以上に良い雰囲気で試合に臨めましたし、ラストだったので、全員で戦って勝てたことがとても嬉しいです。

――皇后杯やインカレも始まりますが、強豪との連戦には区切りがつきました。今後どのように戦っていきたいですか

 まずは次の大東文化大戦にしっかり勝ち切って関カレを良いかたちで終わらせて、その中で皇后杯などでも勝っていくためにもう一つ強くなっていけるよう、日々の練習に臨んでいきたいと思います。