前半の得点が決勝点に! 関東リーグ再開初戦で4節ぶりの白星

ア式蹴球女子
第29回関東女子サッカーリーグ
早大 1-0(前半)
0-0(後半)
東洋大
【得点】
(早大)31分:阪本環
(東洋大)なし

 関東女子リーグ(関東リーグ)後期第3節、前日の関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)に引き続き、ホーム東伏見での土日連戦となった。序盤から東洋大がボールを保持する展開が続いたが、31分にMF淀川知華(商2=山梨・日本航空)の放ったシュートがキーパーに弾かれたところをMF阪本環(スポ2=日体大FIELDS横浜U18)が押し込み先制に成功。後半は守る時間が長くなったが集中して守り切り、1-0でア式蹴球部女子(ア女)が勝利した。

 

後半終盤にシュートを打つMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)

 曇り空の下、今季両リーグ通算3度目の東洋大戦が行われた。序盤から相手にボールを持たれる展開が続いたが、「『持たれているのではなく持たせている』『自分たちが主導権を握っている』という気持ち」だったと後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)。焦らず粘り強く、勝機を探った。7分には自陣で奪われたボールを攻撃につなげられるが、1対1のシーンでGK丸山翔子(スポ3=スフィーダ世田谷FCユース)がブロックした。10分の相手フリーキック(FK)のシーンではMF阪本環(スポ2=日体大FIELDS横浜U18)がクリアし、こぼれたボールもDF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)がかき出した。序盤のピンチを防ぐと、ア女も最前線のFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)を起点にチャンスを増やす。25分には右サイドを駆け上がったDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)のクロスに千葉が飛び込んだが相手キーパーにブロックされる。27分にも千葉が運んだところから左サイドの阪本へパスが出ると、スルーパスにMF栗田彩令(スポ3=静岡・藤枝順心)が飛び出したがシュートはならない。そんな中31分、淀川が思い切りよく放ったミドルシュートを、弾かれたところに阪本が走りこんで詰めて1-0。膠着(こうちゃく)気味だった試合展開を、2年生ミッドフィルダー2人が動かした。

 

パスを出す阪本。先制点のシーンについては「どんな形であれゴールは狙っていたので、(相手キーパーが)弾くのを予想して」いた

 1点のリードを守りたいア女は、前日フル出場の夏目とDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)を交代。57分にもDF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)を投入する。60分、厚みのある攻撃からFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のクロスにMF川本美羽(スポ1=新潟・帝京長岡)が飛び込んだが惜しくもポスト。27分には逆に相手FKを合わせられピンチを迎えたが、バウンドしたシュートを丸山が弾き出し、事なきを得た。その後も攻められる時間は続いたが、全員が強度の高い守備を展開し続けたア女。試合終了間際には堀内が見事なシュートブロックを見せるなど集中力を切らさず、試合は1-0とア女の勝利で幕を閉じた。

 

無失点に抑えた丸山。「自分だけ公式戦で1勝もしていなくて、今日が初めて(の公式戦勝利)。(キーパーの2人と)切磋琢磨して練習してきたし、自分もチームを勝たせられる選手になりたいと思って準備していた」と語った

 ぷつんと切れてしまえば雪崩のように崩れていくことも想像できる、“危うい”までの集中力。いわゆる「ゾーンに入った」ような選手たちの戦いぶりを、ベンチ内外のメンバーたちが後押しする、関東リーグならではの光景があった。同リーグ上位チームとの勝ち点差は大きいが、この勝利はチームにとっても大きな意味を持つはずだ。「関東リーグの全員で守り切った姿というのは、おそらく昨日関カレで出場していたメンバーにとって響くものがあったと思う。ピッチの中で泥臭く戦うというところを体現してくれた」(後藤監督)。各舞台で躍動する選手たちが共鳴し合うことで、さらに強いア女に成長していけるはずだ。

(記事、写真 大幡拓登)

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 丸山翔子 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
DF ◎2 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
→HT 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 15 小林舞美 スポ2 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
DF 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
MF 19 淀川知華 商2 山梨・日本航空
MF 22 阪本環 スポ2 日体大FIELDS横浜U18
MF 17 藤田智里 スポ4 神奈川・大和
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
MF 29 川本美羽 スポ1 新潟・帝京長岡
FW 18 栗田彩令 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
DF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
FW 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――関東リーグでは4戦ぶりの勝利となりました。振り返っていかがですか

 気持ちで勝った試合かなというのが正直なところで、本当に全員で走ってよく守って頑張った試合だなと思います。

――終盤に高い集中力を保って守り切りましたが、狙ったかたちが出たという感じだったのでしょうか

 もともと関東リーグのメンバーはこういう展開の試合をやってきているので、まずはしっかり守って、そこから前線が収めながら追い越していくというところができていたと思います。今日は特に東洋大がボールを持つことが大前提でしたし、「持たれているのではなく持たせている」「自分たちが主導権を握っている」という気持ちを持ちながら、最後の最後足を伸ばすところまで、90分間やり続けてくれたので、事前に準備していたところを体現してくれたと思います。

――チーム状況もあったかと思いますが、崎岡選手がサイドバックでの出場になりました

 崎岡は関カレではフォワードとして出場しているのですが、サッカーIQの高い選手ですし、紅白戦や関東リーグ前期のVONDS戦でもサイドバックで出場しています。守備も上手いですし、攻撃面も上がっていくタイミングや試合を作る、起点になるところも非常に上手いので、実はサイドバックとしてのポテンシャルも高いと私は評価しています。ただ今年のチーム状況や彼女のアラートさ、動き出しというところでフォワードでも結果を残していますし、これからもサイドバック、サイドハーフ、フォワードでポリバレントにやってくれるんじゃないかと思います。

――今日は丸山選手がスタメン出場しましたが、キーパーの人選についてはどのような基準で考えられていますか

 ア女のキーパーは3人とも能力が非常に高いですし、日々それぞれが切磋琢磨してくれています。今は心菜(石田心菜、スポ3=大阪学芸)が関カレで今日はマル(丸山)が関東リーグでしたが、3人それぞれがそれぞれの良さを持っていて、いつ誰が出ても大丈夫という大前提の中で、練習内のプレーでアピールしてくれた選手が出場するというのが現状ですね。コーチはこれまでもいましたが、昨年の卒業生である近澤(澪菜、令5スポ卒=JFAアカデミー福島)がGKコーチに入ってくれて、より「見られている」意識が高くなったのもあると思いますし、3人とも競い合い高め合ってくれているので、(誰が出場するか考えるのは)嬉しい悩みです。

――関東リーグならではの勢いというか、ゾーンに入ったような集中力がありました。あの猛攻を受けた中で失点せずに耐え切った守備陣は評価したいところですか

 昨日関カレに出ていた4年生たちがサイドをしっかり守ってくれたのも大きいですが、はる(杉山遥菜)や舞美(小林)の出足、相手がフォワードにつけるボールに対してガツンと行ってくれたこと、それを知華(淀川)と美羽(川本)がしっかり拾ってくれたこと、とにかくそこで中軸をやらせなかったのが非常に頼もしく、素晴らしかったと思います。

――関カレ同様関東リーグも連戦になり、相手のレベルも上がってきます。どのように準備し、戦っていきたいですか

 関東リーグの全員で守り切った姿というのは、おそらく昨日関カレで出場していたメンバーにとって響くものがあったと思いますし、今日はピッチの中で泥臭く戦うというところを体現してくれた試合でした。2チームに分かれているわけではないですが、それぞれのメンバーがサッカーの姿で高め合えているのが非常に良いことだと思っているので、お互いがお互いに影響しあいながら勝ち点を積み重ねていきたいと思います。

 

丸山翔子(スポ3=スフィーダ世田谷FCユース)

――勝利という結果になりましたが、振り返っていかがですか

 前半に1点とってくれて安心したんですが、後半は攻められる時間も多くて、「なんとかみんな走って、耐えてくれ」と思いながらプレーしていたので勝ち切れて良かったです。

――守備の時間は長かったですが、守備時にチーム全体として意識していたことはありますか

 やっぱり1点をとって勝っている状態で、とりあえず大きくはっきりと、分かりやすいプレーすること、とにかく耐えることを意識していました。

――終盤にはナイスセーブがありましたが、何を考えてプレーしていましたか

 とりあえず、自分もはっきりとしたプレーをしなければならないと思っていました。みんな走ってくれていたので、自分はそれでしかチームを助けられないですし、そういったプレーでチームを救えるように準備をしていました。実際にできて良かったです。

――関東リーグでは4戦ぶりの勝利になりました

 個人的には長いトンネルを抜けたような感覚があって。とにかく嬉しい勝利になりました。

――昨年は関東リーグや皇后杯で出場機会を重ねていた中で、今季は田村選手も加入した上で出場を目指すかたちになっていると思います。ポジション争いに関しては今季ここまでどのように考えていますか

 自分だけ公式戦で1勝もしていなくて、今日が初めて(の公式戦勝利)でした。2人の活躍も見ていて、一緒に切磋琢磨して練習してきましたし、自分もチームを勝たせられる選手になりたいと思って準備していたので、今日はそれが良い結果になって良かったと思います。

――ここから強豪との連戦が続きますが、どのように準備して戦っていきたいですか

 今日は勝ったのですが、個人としてもチームとしても課題は沢山あります。そこを1つずつ潰しながら良いところは継続できるようにして、2連戦は結構しんどいと思うんですが、頑張っていきたいです。

 

阪本環(スポ2=日体大FIELDS横浜U18)

――まずは90分間振り返っていかがですか

 特に後半は、結構自分たちが耐える時間帯が長かったのですが、こうなることは想定していたので、相手に回させているという意識で粘り強く戦い、勝ち切ることができて良かったです。

――想定していた、というのは相手にボールを回されるというところですか

 チームの中でそれは共有していて、とにかく粘り強くやっていこうというのが今日のテーマでしたし、そこについては体現できたかなと思います。

――ご自身の先制点のシーンはどのようなことを考えていましたか

 どんな形であれゴールは狙っていたので、(相手キーパーが)弾くのを予想して、そこに詰めたらちょうどボールが転がってきたので、流し込むだけでした。

――左サイドハーフながら中に絞ったポジショニングをすることも多かったですが、ゴールへやボール奪取を意識したことからの判断ですか

 相手が流動的な動きをしてくるので、中盤とのマークの受け渡しというところも意識して、中から締めてサイドで取るという感じの狙いがありました。

――関東リーグでいうと4試合ぶりの勝利になりました

 中断期間があけての久しぶりの試合だったので、自分自身強い気持ちでは臨んでいたのですが、緊張もありました。とにかく順位がまだ低い中で、ここで勝ち点3を取ることができたのは大きかったかなと思います。

――今後も強豪との連戦が続きますが、どのように準備していきたいですか

 夏でチーム力を高められたと思うので、連戦が続きますが、しっかりとコンディションを維持して頑張っていきたいです。