筑波大を4得点粉砕! メニーナ出身の注目MF、大山のデビューも

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 2-0(前半)
2-0(後半)
筑波大
【得点】
(早大)4分:宗形みなみ、45+1:築地育、67分: 千葉梨々花、68分:新井みゆき
(筑波大)なし

 皇后杯予選の連戦を終え、2週間ぶりに関東大学女子リーグ(関カレ)が再開した。再開初戦は敵地での筑波大との一戦。試合は立ち上がりからア式蹴球部女子(ア女)の一方的な展開が続く。開始早々、MF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)が自ら獲得したPKを決め先制に成功すると、前半終了間際にはフリーキックの流れからMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)の追加点が生まれる。後半にもFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)とMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のゴールでさらにリードを広げ、終わってみれば4-0の大勝。終始、相手を寄せ付けない試合運びで、関カレ再開初戦を白星で飾った。

 

得点の築地。今季は中盤の底での出場を重ねながら、この日の得点で関カレ6点目

 残暑から一転、少し肌寒い気候の中始まったこの一戦。試合は序盤からブロックを敷く相手に対し、ア女がボールを握る展開が続く。すると3分、ディフェンスラインの背後に抜けたFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)から宗形がボールを受けると、スルスルとペナルティエリアに侵入し倒され、PKを獲得。このPKを自ら冷静に決め、幸先良く先制に成功する。その後は細かいパスワークに加え、ピッチを広く使う多彩な攻撃で追加点を狙うア女。17分には最終ラインでのビルドアップからDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)、築地、崎岡、築地とテンポ良くボールを回し、右サイドのMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)に展開。三谷のクロスは惜しくも味方には合わなかったが、流れるようなパスワークからの見事な崩しを見せた。一方、守備陣も高いライン設定の中、背後を狙う相手の攻撃に対しセンターバックのDF田頭花菜(スポ3=東京・十文字)、DF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)を中心に冷静に対処。良い守備から良い攻撃につなげ流れを生み出す。37分には左サイドでの細かいパス交換から築地がクロスを上げるが、これはポストに当たってしまう。そんな中前半終了間際、敵陣中央で築地がフリーキックを得ると、MF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)が放ったキックがバーに直撃。その跳ね返りを築地が豪快に合わせ、追加点を奪う。そのまま2点リードで前半を折り返した。

 

センターバックで出場の杉山。安定したパスと思い切りのよいシュートで最終ラインからリズムを作った

 迎えた後半も、ア女が試合を支配し続ける。特に目立ったのは試合途中から左サイドにポジションを移した三谷の仕掛けだ。49分にはボールを受けるとカットインから自らシュートを放つがこれは枠外へ。61分にも再び三谷のカットインからチャンスをつくるが、得点には結びつかず。それでも迎えた66分、DF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)のパスを受けた三谷が反転からシュート。これは相手GKに弾かれるが、こぼれ球を途中出場の千葉が詰め3点目を奪う。さらに68分には、右サイドで新井がボールを受けると、「パスを受けた瞬間に打とうと思っていた」と迷わず右足を振り抜く。これがそのままゴールに吸い込まれ、リードをさらに広げる。その後も主導権を握り続けたア女。終盤には長期離脱から復帰したMF大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が待望のア女デビューを果たすという明るい話題もありつつ、関カレ再開初戦を4-0の快勝で終えた。

 

得点を決めた千葉(写真右)と喜ぶ白井

 今節見られたのは何といっても前後半通じて試合を支配し攻め続ける貫禄の戦いぶり。大東文化大戦や国際武道大戦といった、複数得点を奪いリードしながらも同点に追い付かれてしまう展開にはせず、先制点、追加点、ダメ押し弾を確実に決め4-0の大勝を演出した。後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)も「練習試合をしながら積み重ねてきたことが、攻守ともに出た試合。内容としても収穫のあるものになった」と手応えを得ている。ここから先、関カレ、関東リーグともに終盤戦に差し掛かり、連戦も続く。「もっとこのチームは良く、強くなれると思うので、しっかりと勝ち点を取りこぼさず、順位を上げていきたい」と後藤監督。ここから先のア女の戦いから目が離せない。

(記事 髙田凜太郎、写真 大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
DF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→77分 30 大山愛笑 スポ1 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
MF ◎9 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
→77分 29 川本美羽 スポ1 新潟・帝京長岡
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
→7分 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→62分 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――90分間振り返っていかがですか

 皇后杯で悔しい思いをしましたし、その後1週間で諸大学のお力を借りて練習試合をしながら積み重ねてきたことが、しっかり攻守ともに出た試合でした。内容としても収穫のあるものになったかなと思います。

――前後半流れ変わらず押し込み続けることが出来た要因はどこにあると思われますか

 想像していた以上に筑波大さんがブロックを引いてきたというのはあって。自分たちが保持できる前提ではあったのですが、想定以上にブロックを引いてすぐ蹴ってくる感じだったので、シンプルに自分たちが優先順位としてどこを狙っているのか。特にそう(宗形)の1点目については、由真(崎岡)の走り出しとそうのボールと、というところで狙い通りの形になりましたし、しっかりとそこからPKを獲得してくれました。守りの部分でも切り替え早く、奪い返すというところも全体的にできていましたし、攻守共に切り替えの速さというのは体現できていたので押し込み続けられたのかなと思います。

――後半も勢いを維持できた要因として、1年生を積極的に投入してみんなが結果を出した、というところが一つあると思います。頼もしさは感じますか

 特にフォワードの由真とりりか(千葉)はタイプが全然違います。由真がしっかりと前線で相手の穴を突いてくれることで、相手ディフェンダーが下がる。どうしても疲れてきてはしまうので、今度はりりがその間で受けてターンをする、というふうに2人とも自分の特徴を生かして、今日も勝利に貢献してくれたなと思います。そしてなにより愛笑(大山)が長期離脱からの復帰ということで、少しドキドキもしたんですが、愛笑らしいボールタッチも見れましたし、これからが楽しみな選手ですね。

――アンカーが主戦場ともお聞きしましたが、今後どのように起用していかれますか

 基本うちの中盤の選手は流動的なんですが、今日に関しては終盤ヘディングで競らなければいけない展開だったので、育(築地)や綺乃(笠原)が後ろで競ってもらった方が良いかなと。愛笑はどちらかというとその次を拾ったり、そのあとのつなぎで顔を出したりという方が得意だと思いますし。あとはそうも美羽(白井)インサイドハーフといいつつ結構受けに下がってくるじゃないですか。あまり中盤で固定、というよりはバランスと役割を理解しながらやってくれる中盤の選手たちですし、ただその中で、アンカーの方がボールを沢山受けてリズムを作れる選手かなとは思っています。

――前線も試合中に様々なポジションチェンジを行われていますが、最適解を模索しているという感じなのか、相手の守備陣形に合わせて柔軟に変更しているのか、どちらの意図をお持ちですか

 最適解はだいぶ見えてきたかなという感じはあります。ただそれを考える上でのベースは相手の守備陣形にも関わっていて、どこにスペースがあるのかというのが重要にはなってくると思います。そういう意味での最適解は固まってきていますし、選手たちも「なぜ自分がここに置かれているのか」みたいなものも理解しながら、自分の良さを出してくれているなと思っています。

――今後は相手のレベルも上がってきますし、土日連戦も続きます。どのように戦っていきたいですか

 やっぱり全員が思っていることだと思いますが、東洋大や帝京平成大などの前期負けた相手、自分たちより上の順位の相手には、勝たないとその差は埋まらないので。今日4点をとったことは非常に高く評価していますし、選手たちもやってきたことが結果につながったという意味で自信になったと思いますが、じゃあ本当に4点で終わりのゲームだったかというとそうではないと思います。クロスへの入り方や最後に足を伸ばさなきゃいけないところで先に触られたり、コーナーキックまで行かれてしまった部分など、沢山改善する部分はありました。もっともっとこのチームは良く、強くなれると思うので、しっかりと勝ち点を取りこぼさず、順位を上げていきたいと思います。

 

新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)

――ナイスゴールでした。ゴールした瞬間の気持ちを教えてください

 嬉しいという気持ちはありましたが、ホッとした、というのが1番大きいです。前期はケガを繰り返していて、関カレも関東リーグもベストコンディションで挑める試合が少なく、なかなかチームに貢献できていないというもどかしさがありました。今日はこういった形で得点できて、まずはホッとしているという感じですね。

――シュートの瞬間はキーパーを見てすぐ、という感じでしたか

 りりかからパスを受けた瞬間に打とう、と思っていました。

――急遽、前半途中からの出場になりました。どんなことを考えて試合に入りましたか

 途中からではありましたが、自分のできることを最大限やってチームの勝利に貢献しようと思っていました。

――左サイドに入ってから右に移りましたが、柔軟に対応できたという感じですか

 自分自身左サイドでのプレー経験が全くないので、なかなかうまくハマらなかったのですが、和華奈さんとサイドを変わった後は自分らしさが出せたかなと思います。

――押し込む時間は長かったですが、試合全体としてどのようなことを意識していましたか

 自分はやっぱりサイドで仕掛けることがストロングなので、サイドで受けたときは積極的に仕掛けていこうということは個人的に意識していました。

――次戦以降強い相手との連戦になってきますが、そこに向けて意気込みをお願いします

 強い、上位の相手とやることになってくると思いますが、これまで通り目の前の相手に絶対に負けないという気持ちで戦いたいです。自分自身サイドの一対一をどんどん仕掛けて、シュートやクロスでチームの勝利に貢献していきたいと思います。

 

大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)

――まずは公式戦への復帰というところ、今の率直な気持ちを教えてください

 素直にうれしいです。9カ月くらいピッチを離れていて、ここ(ア女)に入ってから1度も公式戦でプレーできていなかったので。プレーはベストには戻っていないですが、まずピッチに立つことができて良かったと思います。

――ア女に入ってからもリハビリ期間長くあったと思いますが、どのようなことを考えていましたか

 入ってきたときは全然動けていなかったので、みんなのプレーを外から見るのは辛かったですし、動かし始めてからも、手術後「自分の足じゃないな」と気付いたときはメンタル的にはきていました。ただこれをきっかけに自分の体と向き合って、足りない部分を強化しようと思えたのは良かったと思います。

――ア女の雰囲気など、どのような印象をお持ちですか

 今までクラブでずっとサッカーしてきて、クラブのサッカーしか知らなかったので、新たなサッカーを知れたというか。自分でどうにかしないといけない場面もあったり、自分自身が成長できる場所だと思います。

――今日の出場に関しては、投入された時点で4点のリードがありました。どのようなことを考えてピッチに入りましたか

 1番はケガをしないように安全にサッカーをしながら、「チャンスがあればゴールいって来な」と史さんにも言われていたので、自分のプレーを出して、ゴールにもいけたらいいなと思いながらピッチに入りました。

――今日のご自身のプレーに関してはどのような評価をしていますか

 思っていたよりは戻ってきているかなと思います。

――これから出場機会も増やしていくと思いますが、どのようにチームに貢献していきたいですか

 ここから皇后杯やインカレなど負けたら終わりの大会が続くので、まずはベストコンディションに戻して少しでも長く試合に出られるように練習していきながら、余裕ができたら、今までW杯やWEリーグで経験してきたことをチームに還元して、大舞台で勝つために頑張っていきたいです。