完勝で皇后杯出場権獲得! 決勝点は4年DF堀内の大学初ゴール

ア式蹴球女子
第45回皇后杯関東予選
早大 1-0(前半)
1-0(後半)
日体大SMG横浜サテライト
【得点】
(早大)40+8分:堀内璃子、79分:笠原綺乃
(日体大SMG横浜サテライト)なし

 ア式蹴球部女子(ア女)は10日、皇后杯関東予選順位決定戦で日体大SMG横浜サテライト(日体大)を2-0で破り、皇后杯本戦への出場を確実にした。序盤の均衡状態から徐々に主導権を握るようになると、前半アディショナルタイム(AT)にDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)がコーナーキック(CK)を足で合わせ先制。後半に入るとア女が攻勢を強めるもののあと一歩得点に及ばない展開が続く。それでも終了間際の79分にMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)が追加点を決めた。ア女は大一番を見事な試合運びで制し、WE撃破への舞台をつかみ取った。

 

勝利を手繰り寄せる笠原の2点目に笑顔がはじける

 ア女は前日の敗戦で窮地に立たされていた。勝てば皇后杯本戦への出場権を得ることができたが、負ければ『WE撃破』という今季の目標を、本戦を待たずして失うことになっていた。堀内が「今日にかける思いは強くなった」と話すように、序盤はその緊張感は垣間見え、ボールは持っているものの上回るまでではなかった。裏へのパスが多く見られたが、なかなか前線の選手につながらずチャンスには至らない。それでも30分、35分に見られたMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)からMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)へのパスを起点にした攻撃など、時間を追うごとにチャンスの頻度も増えていった。すると前半のラストプレー、CKから堀内が足で合わせて先制。値千金の先取点は、堀内にとって大学4年目での大学初ゴールだった。初めて歓喜の輪の主役になった堀内は笑みを浮かべながら「喜び慣れていないので恥ずかしかった」と、独特な表現で喜びの瞬間を振り返った。

 

先制点の堀内。ここ数試合のサイドバックでの出場については「思い切ってプレーすることを意識してやった」

 後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)が「あの点は大きかった」と振り返るように、先制点がイレブンの気持ちを楽にさせたのだろう。データこそないが、その大半がア女優位な時間帯だった。要因のひとつはハーフタイム明けから投入されたMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)だ。コンディションなどを考慮してのベンチスタートだったが、右サイドに入ると相手との駆け引きの中で背後へのスプリントで味方からのボールを引き出し、クロスを中心にチャンスを演出した。49分には逆サイドの笠原が、53分にはFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)が、それぞれ三谷のクロスから惜しいシュート放つなど、追加点まであと一歩のところまで迫っていた。互いに連日での試合の中、試合が進むにつれ疲労から相手の勢いが劣ることも想定通りで、試合運びとしてもあとは追加点を奪うだけだった。すると79分、右サイドを突破した三谷のマイナスのクロスが宗形へ。右足で放ったシュートはゴール前で笠原に当たり、ゴールネットへと吸い込まれていった。終了間際に試合を決定づける2点目奪取に成功したア女。終始相手の狙いであったカウンターの芽を摘み取ってきたDF陣に隙はなく、後半ATのGK石田心菜(スポ3=大阪学芸)によるビッグセーブを最後に、その鉄壁ぶりを見せつける形となった。ア女は2-0で勝利。勝たなければいけない試合をものにし、無事に皇后杯本戦出場を決めた。

 

後半から出場の三谷。ア女に流れを引き寄せた

 言葉を選ばなければ勝てばなんでもありだった本試合だが、ア女のやりたいサッカーを体現し内容の伴った結果を見せた。後藤監督は、4年生は言わずもがなセンターラインを担う下級生の活躍の目覚ましさに語気を強めながらこの日の試合内容を評価した。一方、十文字高戦で露呈した被プレス時の対応など大会を通じて見えた課題もある。予選だからこそこの課題も、今後の修正次第では大きな収穫にすることができる。笠原は「関カレも4位でこれから上位のチームと戦う機会もある。皇后杯本戦もインカレも、ここから先はあっという間だと思うので一日一日を大切にしたい」と、更なるレベルアップを図る意気だ。ここからまた、日本で一番熱い冬を過ごすための山登りが始まる。

(記事、写真 前田篤宏)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
DF ◎6 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→HT 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→77分 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――負けたら終わりという一戦で2-0勝利という結果、試合を振り返っていかがですか

 昨日の試合の結果を受け止めた上で切り替えて選手たちが準備してくれたことが、今日の結果、内容につながったという試合でした。何より勝って良かったです。

――負けてからの今日、ということで切り替えるためにかけた声やアクションはありますか

 落ち着いて考えたときに、私自身の準備が足りていなかった、ということを1番に感じていて。4年生たちが(皇后杯の)出場権を逃してはいけない、という部分を大きく背負っていて、かつフレッシュな高校生が相手だということをもっと想定して、準備していれば対応できたものを、完全に私が準備不足だったと思ったので、そこの部分に関してはしっかりと考えました。日体大とメニーナ(日テレ・メニーナ)の試合を見た時に、前線からプレスをかけてくるチームだと思ったので、昨日の課題をしっかりとクリアできるように準備をしたというのは私からあったのですが、4年生を中心にしっかりと自分たちで踏ん張って、流れを作ることができたというのが1番かなと。

――そういった意味では最終ラインの4人、点を決めた堀内選手もそうですが、4年生が躍動していた印象がありました。後半はア女ペースになっていったと思いますが、前半についてはどのように振り返りますか

 想定していたよりも、前線からのプレスが来なかったかなと。というのも日体大さんの方が昨日の遅い時間に試合をやっていますし、9番の選手が今日は出ていなかったというのもあると思います。メニーナを相手に相当運動量を多く戦っていて、暑さもありますし、今日の方が強度はなかったと思います。その中でも縦への速さ、怖さはあったんですが、しっかり自分たちがボールを動かせていれば体力的には有利になってくるだろうなと思っていました。後半ああいう風に自分たちがペースを握ることは想定できていましたし、前半の最後に得点できたことですごく楽になったと思います。

――三谷選手の投入は相手にとっても厄介な存在になったと思いますが、後半以降についてはいかがですか

 前半は新井を右に置いていましたが、これまで途中からはあっても、スタートから浦部と組ませたことがなかった中で、しっかりと仕事をしてくれて。三谷についても途中から行くつもりでしたし、ちゃんと仕事をしてくれました。三谷はもちろん、スタートの新井も素晴らしかったですね。

――右サイドからのチャンスは多かったですね

 先ほども言ったように、絶対に後半(相手の調子が)落ちてくると思っていたので、そこで三谷が入ってきたら相手は凄く嫌ですよね。1年生がくるなら頑張れちゃうかもしれないですが、三谷なら「うわ、来た」みたいな存在感があったと思います。また昨日の試合の出来を見て、今日の前半メンバーでネガティブなことになるとは思っていなかったので。

――昨年の終盤戦と比較すると、選手交代をある程度計算できるのは、監督からすると大きいですが

 確かに昨年はケガと過密日程でチームとして「意識がない」状態だった気がするので(笑)。4年生の活躍ももちろんですが、ここにきて今日、崎岡ら1年生、宗形、築地(築地育、スポ3=静岡・常葉大橘)、白井(白井美羽、スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)、田頭(田頭花菜、スポ3=東京・十文字)、石田という2、3年生の活躍が凄く大きくて。もちろん4年生は後ろの選手が多いのもあって、ずっとこのチームを支えてきてくれている中で、2、3年生が本当に貢献してくれています。りり(千葉梨々花、スポ1=東京・十文字)も交代から良い仕事をしてくれましたし、下からの突き上げは凄く大きいかなと思います。

――今季の前半戦、チームのやりくりに苦しみながらやってきたことが今になって生きてきたという感じですか

 今は崎岡が縦への速さ、強さを引っ張ってくれていると思いますが、これを90分間やるとなると自分たちの時間ばかりにはならないと思います。ただここに若葉(後藤若葉主将、スポ4=日テレ・メニーナ)と大山(大山愛笑、スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が加わってきますし、そういった意味ではインカレ(全日本大学女子サッカー選手権)に向けて自分たちが横に動かしたりする時間をもっと作って、チームとしてもう少し作っていければさらに面白いチームになってくると思います。ただやっぱり十文字高戦であのプレスをかけられた時のプレーを考えると、今後のリーグ戦、そしてトーナメントまでにそこを乗り越えないといけないと感じています。

――とはいえ絶対に勝たなければいけない試合に勝って、厳しい日程の続く9月上旬までを乗り越えました。今後日程も元に戻っていくと思いますが、後期が始まってからのここまではどのような印象ですか

 後期というと合宿からになると思います。合宿は私にとっても初めてだったのですが、やっぱりチームにとってすごくプラスだったなと思います。それまでも決してバラバラだったわけではないですが、合宿を経てからチームが良い空気になったというか。山梨学院大戦(関カレ後期第4節、8月27日、●1-2)は負けてしまいましたが、それこそ国際武道大戦(関カレ後期第5節、9月6日、◯4-2)は、前期終わりの大東文化大戦(関カレ前期第11節、7月1日、△2-2)と似たような状況から2点を取って勝つことができました。タフさのようなものが合宿明けから見えてきていると思いますし、下級生の存在感も大きくなったと思います。毎年合宿をやっていたわけではないので分からないですが、合宿をしてから下の子たちの存在感が増したように思うので、恐らく1つのキーポイントだったかなとは思いますね。WEリーグ(チーム)撃破を掲げている以上、4年生はすごく重いものを背負っていると思いますが、とにかく今日の試合を越えたことはすごく大きいんじゃないかなと思います。

 

笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)

――絶対に勝たなければいけない試合に勝つことができた、今の気持ちを聞かせてください

 後がない状況で緊張感もあったのですが、勝って予選突破を決められたということでひとまずほっとしています。ただ個人としてチームとして、まだまだ課題はたくさんあると思うので、目標に一歩近づけた試合でもありますし、もっと高められると感じた試合にもなりました。

――昨日の試合から一夜明けての一戦、気持ちの変化や切り替えに関してはいかがでしたか

 昨日のミーティングの中でも監督から「みんなで切り替えよう」というような話があって、個人的にも良い意味で気持ちを引きずりすぎないように切り替えて、試合に臨めたのかなとは思います。すぐに切り替えるのは少し難しかったですが、そこは意識しました。

――左サイドハーフでの出場でしたが、何を意識してプレーしましたか

 サイドバックの璃子(堀内)やインサイドハーフの美羽(白井)との関係性を考えて、和華奈(三谷)のように個人で突破するタイプでもないですし、その連携面とかは意識しつつやっていました。ただ今日の試合に関してはすごくうまくいった、という感じではないので、もっとコミュニケーションをとって自分の意図を伝えたりしていきたいなと思いました。

――昨年からそういったポジションの変更、中盤とサイドの入れ替わりなどあると思いますが、ポジションについて考えていることはありますか

 インサイドハーフのときはバランスをとるプレー、もう1人のインサイドハーフとアンカーとの間で、守備であればセカンドボールの回収、チャンスがあれば得点も狙っていくということを意識しています。サイドハーフの時はよりクロスボールが上がった時にチャンスがあるので、得点の部分にはよりこだわっています。

――今日もいくつかかたちは作れていました

 そうですね、あとは自分が決め切るだけです(笑)。

――ア女でのラストイヤー、皇后杯をかけた一戦という意味では非常に緊張感のある試合だったと思います。これを乗り越えられた要因についてはどのようなことを感じていますか

 やっぱり東伏見に残っている人や試合に出られないメンバーの分も背負って戦う、ということは意識していたので、そこのチーム力というのはあると思います。

――今日を持って毎年8月末から9月にかけてある過密日程にも、大会にもひとつ区切りがついたというところで、今後の抱負や、目標を教えてください

 関カレもまだ4位で、これから10月にかけて上位校との対戦機会があります。前期はそういった相手に負けてしまっているので、そこでまずしっかりと勝ち切るというところ。また今日皇后杯本戦出場が決まって11月下旬にありますし、インカレも徐々に、あっという間に近づいてくると思うので、そこに向けて1日1日を大切にして、またチーム全員で高め合っていけたらいいなと思います。

 

堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)

――勝たなければいけない試合で先制点を決めて勝利しました。振り返っていかがですか

 とりあえずほっとしています。試合前はすごく緊張していたんですけど、4年生内でも話したりしていた中で、良い緊張感ではプレーできたのかなと思います。自分が得点を決められたということよりかは、勝ち切って、昨日の敗戦から次につなげられたというところに安心しています。

――一夜明けての今日でしたが、気持ちの切り替えは上手くできたという感じでしたか

 切り替えが上手くできたかどうかは分からないですが、その分今日にかける思いは「絶対に落とせない」というところで強くなりましたし、やるしかないと自分をもち上げて、史さんや同期、仲間にたくさんの言葉をもらって、なんとか取り繕ってという感じです(笑)。

――得点だけではなく守備も、ベンチから「ナイス」と声のかかるような良いプレーが多かったですが、調子は良かったですか

 ちょっと前からサイドバックをやらせてもらっているのですが、自分自身まだ掴みきれていないと感じていた中で、そこで消極的になっては良くないと思いますし、割り切って、というより思い切ってプレーすることを意識してやりました。

――先制点のシーンを振り返っていかがですか

 なんか、恥ずかしかったです(笑)。初得点で。

――それはア女でですか

 そうです。高校時代を含めても(得点が)あまりなかったので、喜び慣れていないというか。試合中もみんなが喜んでいるところを見守っているタイプなので、そこに自分が入っているのに違和感、という感じでした(笑)。

――得点をきっかけにチームも勢いに乗って後半はア女ペースになったのかなと思います。やりやすくなりましたか

 やりやすい、というよりは自分たちのペースを奪われないように、飲まれないようにというのはすごく意識していました。相手もカウンターを得意としていた中で、それは1つでもピンチになりうると思いますし、前線がのびのびとプレーできるようにというのは意識していました。

――今週は3試合でしたが、これで一旦過密日程にも大会にも区切りがついたかなと思います。合宿明けからここまで、どのような1カ月でしたか

 合宿の中で追い込むところを追い込んで、みんなで高め合ってこられた中で、試合結果だけをみたら「やってきたこと、間違っていないかな」と思ってしまうような、メンタル的に難しい部分は正直あって。でも内容、中身を見た時にひとつ、ふたつ強くなっているというのも感じています。この1カ月はしんどいことの方が多かったですし、4年生としても今後どうしていくか、ということを悩んだ時期でもあったんですが、この皇后杯予選も「とりあえず良かった」と言って終われる状況でもないですし、(この経験を)つなげていかなければいけないと思わせてくれるきっかけになったと思います。