ア女、中2日の乱打戦制す! 見えたのは前期とは一味違う”勝負強さ”

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 2-0(前半)
4-2(後半)
国際武道大
【得点】
(早大)14分:崎岡由麻、33分:宗形みなみ、79分、88分:築地育
(国際武道大)48分:三田幸望、76分:北沢心愛

 関東大学女子リーグ(関カレ)は後期第5節、ア女はホーム・東伏見で国際武道大を迎え撃った。ア女が序盤から主導権を握り、14分にはFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のゴールで先制。33分にはMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)が追加点を決め前半を折り返す。しかし48分には守備の隙をつかれ失点し。76分にも最終ラインでボールを奪われ失点し試合は一時同点に。それでも79分、クロスをMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)が頭で押し込み再びリードすると、88分にもコーナーキック(CK)から築地が決めて4-2。苦しい打ち合いのゲームを制した。

 

長短の精確なパスでチームの攻撃を後押ししたDF田頭花菜(スポ3=東京・十文字)。プレッシャーを受ける中でのルースボール処理や、エリア内でのシュートブロックなど守備面でも集中したプレーを見せた

 序盤はア女が主導権を握りながら、互いに出方を窺う展開。10分には左サイドを崩されるが、裏を取る相手のスルーパスはGK田村亜沙美(スポ1=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)が飛び出して抑えた。試合が動いたのは14分、DF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)の左後方からの鋭いパスに反応した崎岡が、相手最終ラインの隙間を巧みに抜け出すと、キーパーとの一対一を制しゴール。「(パスが)くると感じていた。ダイレクトのタイミングで出してくれたので、それが一番大きなポイントだった」と崎岡は振り返った。21分には右サイドからテンポよくパスをつなぎ、宗形から堀内、MF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)と左サイドへ。三谷がシンプルに上げたクロスに、エリア内に入っていた築地がフリーで合わせたが枠の左に飛んだ。33分には中盤から裏に抜けた宗形に、MF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)のロブスルーパスが出る。相手ディフェンダー頭上すれすれを抜けたボールを見事なコントロールで収めた宗形は、寄せてくる相手選手をさらりとかわし、最後はキーパーをよく見てゴール左に流し込み2-0とした。それでも前半終盤にはピンチになるシーンも。相手CKのシーン、田村がパンチングでクリアすると、こぼれ球を打たれたシュートも田村がはじき出し窮地を脱した。

 

先制点を決めた崎岡(写真左)とDF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)。崎岡は関カレ後期に入り4得点と好調を維持

 前半を2点リードで折り返したア女だったが、48分にまさかの失点を食らう。相手のフリーキックのクリアボールを拾われ、右サイドの角度のないところからニアサイドを抜かれ1-2。49分には宗形のロングボールをクリアされたところにMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)がループで狙い、55分には左サイドをパスで崩し崎岡が狙ったがいずれも相手の好守に阻まれた。ア女が攻勢を強めた中で76分、相手のアバウトなロングボールを最終ラインで収めた途中出場のDF杉山遥菜(スポ1=東京・十文字)がミスタッチ。相手フォワード選手が回収したボールをシンプルに中に入れ、同点弾を決められてしまう。関カレ前期の大東文化大戦(7月1日、関カレ前期第11節、△2-2)も頭をよぎる苦しい展開だったが、ここからのア女は一味違った。79分、エリア付近中央で途中出場のFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)が収めると、左サイドを駆け上がってきた浦部へ。浦部があげた弓なりのクロスに、ファーサイドで待っていた築地が頭で合わせ再びリード。さらには88分、右サイドからのCKに、またもファーサイドで待っていた築地が豪快なヘディング弾で突き放した。4-2となったスコアはその後動かず、ア女の勝利で試合は終了。両軍合わせて6点が入る打ち合いを見事制した。

 

逆転弾の築地。「後半ここぞというところでアンカーから上がる、というのは意識していた」

 皇后杯予選の2回戦から中2日の厳しいコンディションでこの日の試合に臨んだア女だが「コンディション的にはいつもと変わりなくプレーできた」(田頭)、「身体的なコンディションというよりも精神的な部分をもっとしっかり準備したい」(築地)と選手たちはドライに振り返った。前半圧倒的に押し込んでいながら、1度追いつかれてしまったのは間違いなく修正すべきポイント。それでもそこから誰一人パフォーマンスを落とすことなく、むしろ相手を上回るハングリーさを見せたという意味では、シーズンを通して様々なシチュエーションを経験してきた成果が出ているとも言えるだろう。次戦は皇后杯予選3回戦、再び中2日で挑むことになる。この日見せたハングリー精神、チャレンジャー精神は高校生にも引けを取らないはず。今はまだ遥か遠くに見える目標に向け、ア女は一歩ずつ確かな足取りで進んでいく。

(記事 大幡拓登、写真 永田怜、渡辺詩乃)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 田村亜沙美 スポ1 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
→HT 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
MF ◎6 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
→82分 18 栗田彩令 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→78分 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
→62分 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

田頭花菜(スポ3=東京・十文字)

――試合展開を振り返っていかがですか

 このような展開になるゲームではなかったというのが正直な感想で、ただ勝ち切れたのはすごく良かったと思います。

――皇后杯予選から中2日と、厳しいスケジュール下での試合になりましたがコンディション面はどうでしたか

 コンディション的にはいつもと変わりなくプレーできました。

――そこまでプレスをかけてくる相手ではなかったとは思いますが、ビルドアップの時に意識したことは

 前半はあまり動かし方的に良くなくて、結構ポジションチェンジをしていた中で、前のバランスもうまくいかなかったです。後半は中央を経由しながらボールを動かして、ワイドに広く使うことを意識してやることができたのでよかったです。

――強みであるフィードも生きていたように思いますが、意識されていましたか

 意識していました。前半も2本ぐらいはあったのですが、いつもそこは狙っているところなので、そこまでラインは高い相手ではなかったのですが、スペースはあったので狙ってはいました。後半直接自分からというシーンはあまりなかったのですが、横に動かせていた分、中を使えました。

――また中2日で土日連戦となり、次戦は出身校の十文字高校との戦いですが、意気込みをお願いします

 この前の皇后杯予選の山梨学院大とのPKも、個人的には十文字高校を応援していて(笑)。自分自身は被っていない子たちなので、りり(千葉梨々花、スポ1=東京・十文字)やはる(杉山遥菜、スポ1=東京・十文字)はすごく嫌だと言っていたのですが、自分的にはすごく楽しみです。絶対に負けられないですし、大学生として圧倒できるようなゲームにしたいと思います。

 

築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)

――中2日、厳しいコンディション下での試合になりましたが振り返っていかがですか

 追いつかれたのですが、チームとして盛り返せたのは後期に入ってからの成長かなと思います。追いつかれてから下がらなかったのは、今後トーナメントもあって厳しい試合が続く中で、メンタル面においてすごく大事になってくるのかなと思います。

――ご自身の1点目を振り返っていかがですか

 後半ここぞというところでアンカーから上がる、というのは意識していたので、攻撃的な姿勢を忘れずにあの位置に入っていけたところは、やっぱり自分の強みだと再認識できました。

――ご自身の2点目はコーナーキックからの得点でした

 コーナーは今年自分たちの武器にしようという話はしていたのですが、前期と後期の間に集計してみると「全く決まってないね」と(笑)。昨年と比べるわけではないですが、本当に自分たちの武器にしようと考えてきた中で、なかなか得点につながっていないというのは、自分たちの中でネックな部分ではありました。それにこだわってやり続けていたから、良いかたちで自分がフリーになって狙っているファーサイドで合わせられたのは大きいなと思います。ここから崩しにくい相手も出てくると思いますし、セットプレーのところは決め切って自信にしていきたいと思います。

――サインプレーのシーンも見られますが、練習して狙っている部分ですか

 前期から「ファーに入れるだけじゃやっていけないよね」というのはあって、相手のマークのつき方とか自分たちのストロングについて考えて、あのようなプレーを実践してきました。練習のときに決めることができても、なかなか本番では決めることが難しいのですが、フリーでシュートを打てているシーンも多いですし、ファーで合わせるのと組み合わせれば相手もやりにくいと思います。そういったプレーについては続けていきたいです。

――前半に圧倒してほとんどシュートも打たれていなかった中で、後半立ち上がりに失点してしまったのは痛かったと思います。振り返っていかがですか

 すごく入りが緩くなってしまったとか、引いてしまったとかは無いのですが、細かいところでのミスが最終的に失点につながってしまったと思います。リスクを避けるポジション取りとか気を使う部分が個人個人で増えていけば、もっとそれぞれ簡単に、組織的にプレーできるのかなと思います。

――中2日での1戦で、次戦も中2日で土日連戦です。コンディション調整も難しくなると思いますが、どのように準備していきたいですか

 やっぱり自分は真ん中でボールに関わることが多いですし、ボールに触らないにしても自分のポジションどりはチームにとって大事になってくると思うので、身体的なコンディションというよりも精神的な部分をもっとしっかり準備したいなと思います。今日も2点取ることができたのは良かったですが、試合全体を通してみると納得のいかない、安定しないプレーだったので、チームの舵を取るという部分でもう少ししっかりとプレーしたいと思います。

 

﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)

――試合全体を振り返っていかがでしたか

 後半に同点に追いつかれてしまって苦しい時間帯も長かったんですけど、最後に得点をとって勝ち切ることができたのでとてもよかったと思います。

――ご自身の得点シーン振り返っていかがでしたか

璃子(堀内)さんにボールが入った瞬間に裏を狙っていて、良いタイミングでボールがきたのであとは触るだけでした。

――裏抜けのタイミングは合わせていたのですか

 来ると感じていました。ダイレクトのタイミングで出してくれたので、それが一番大きなポイントだったかなと思います

――ここ4戦で4得点ですが、手応えはいかがですか

 ピッチに立った時には、必ず得点をとるという気持ちを持っています。あとは、日々の積み重ねが得点という形に繋がっているのかなと思います。

――色々なポジションをやられていますが、それについていかがですか

 フォワードで入った時は裏抜けを一番意識していて、チームの連動性を出すためにも自分の動きが大切になると考えているので、そういうことを意識しています。サイドで出た時は、クロスからチャンスを作るのとゴールの意識を持っています。それぞれ(のポジション)で考えながらプレーしています。

――どこのポジションが一番やりやすいと感じますか

 どのポジションでも、その時に切り替えてプレーできているかなと思います。

――皇后杯予選から中2日の試合となっていますが、コンディション調整についてはいかがですか

 スケジュールは厳しいんですけど、チーム全体で戦うということで、一人一人いい準備ができていると思うので、力を合わせて皇后杯予選も戦い切りたいなと思います。

――今週末の皇后杯予選に向けて意気込みをお願いします

 まずはしっかり勝利できるように、そして個人的には得点だったりアシストだったりで貢献できるように、たくさん走ってチームのために頑張りたいと思います。