皇后杯予選、初戦突破! 関東王者&皇后杯出場へ向けて盤石滑り出し

ア式蹴球女子
第45回皇后杯関東予選
早大 1-0(前半)
1-0(後半)
OSAレイア湘南FC
【得点】
(早大)39分:宗形みなみ、53分:白井美羽
(OSAレイア湘南FC)なし

 ア式蹴球部女子(ア女)の皇后杯関東予選が幕を開けた。ア女にとっては初戦となる、大会2回戦で会敵したのはOSAレイア湘南FC(レイア)。序盤は拮抗(きっこう)した展開が続いたものの、39分にMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)のドリブルシュートで先制に成功する。後半からはア女が主導権を握り、53分にはMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)がクロスに頭で合わせ2点目。盤石の戦いぶりで、見事初戦を突破した。

 

チームの2点目を喜ぶ選手たち

 ア女にとって今季初の、トーナメント形式のコンペティションが始まった。負ければ終わり、というプレッシャーがかかる大事なトーナメント初戦とあって、「感覚的には今までの試合で1番緊張していた」と指揮官。40分ハーフという皇后杯予選特有のレギュレーションとなった試合序盤は、少し動きに固さがあり、前線からのプレスがなかなかはまらない。それでもクーリングブレイク後は、山梨学院大戦(関カレ後期第4節、8月27日、●1-2)でも見られたプレー強度を存分に発揮。24分には宗形からのスルーパスに抜け出したFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)がシュートを放つが、惜しくもキーパーに防がれた。26分には逆にピンチを迎えるシーンも。クリアミスをゴール前に運ばれシュートを許したが、ディフェンス陣が体を張って防いだ。32分には右サイドからMF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)がエリア内に切り込んだが、惜しくもシュート寸前でブロックされる。35分には崎岡が、浦部からのパスを後ろ足で引っ掛けるように巧みにコントロールして運び、そのままシュートを放つが相手キーパーに防がれた。そして連続でチャンスを作った前半終了間際、待望の先制点が生まれる。39分、浦部のパスを受けた宗形が、キレのあるドリブルで中にカットイン。慌てて囲い込む相手ディフェンダーをものともせずに左足を振り抜き、1-0とした。

 

シュートを打つ浦部。出場は前半のみとなったものの、いくつものチャンスに絡んだ

 1点リードで前半を折り返したア女は、後半に入るとさらに本領を発揮。ボール保持の時間を増やしながら、プレス強度を高く維持し続けた。立ち上がりこそ連続で相手コーナーキックのピンチを迎えたが、48分には途中出場のMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)が少し運んでミドルシュートを放つなど、徐々にア女ペースに。そして53分、後半から左サイドバックにポジションを移したDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)が、左前線からクロスを上げる。ファーサイドにタイミングよく走りこんできた白井が、頭でしっかりと合わせ2点目。今季公式戦初得点となった白井は、「気持ちで押し込むしかないと思った」と振り返った。その後は多くの場面で走り勝ったア女が、完全に主導権を掌握。40分には途中出場のFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)からMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)へパスが通る。新井がそのまま右足を振り抜いたが、惜しくもゴール左に逸れた。結局試合は2-0のまま終了。危なげない試合運びで、ア女が3回戦進出を決めた。

 

プレースキッカーを務める宗形。先制点のシーン然り、場面に合わせてシームレスに両足を使い分けられることが圧倒的な武器になっている

 「『持たせて良い、焦れずにいこう』というのは常に思っていたので、意識的なところで楽にやれた」と振り返ったのは先制点の宗形。試合序盤、チームとして守備がはまらない中でも、ア女は焦らなかった。加えて、この日のア女においてレイアと一線を画したのが、終盤の運動量だ。カウンターに転じたいレイアの選手陣に対し、2人、3人とプレスがかかった。夏合宿の成果も垣間見える強度面に関しては、「最後絶対にサボってはいけないところでサボらないのが、ア女の選手たちの素晴らしさ」と指揮官も称賛を惜しまない。他会場の試合結果により、3回戦の相手は十文字高等学校に決定している。勝利すれば皇后杯本選への出場が決まる、言わずもがな大事な一戦だ。相手がどこであろうと関係はない。どん欲に勝利を目指す姿勢に期待したい。

(記事、写真 大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 田村亜沙美 スポ1 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
MF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
→HT 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
MF 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→75分 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
FW ◎9 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
→70分 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――まずは試合を振り返っていかがですか

 勝つことが求められるトーナメントなので、まずは勝つことができて良かったです。

――監督も含め、初戦特有の緊張は感じていましたが

 (緊張)していました(笑)。私の感覚的には今までの試合で1番緊張していました。ただやるべきことについては、できているかどうかは置いておいて分かっていたはずなので。なんやかんやで、先日の山梨学院大戦や週中に入れている練習試合で、自分たちがやろうとしているサッカーが「できている、けど結果につながらない」という流れが続いていたので、そこに関しては緊張に慣れてくれば大丈夫になるだろうと。

――序盤は相手のビルドアップに苦戦した中で、後半はア女が主導権を握る展開になりました。どのように評価していますか

 前半序盤に緊張して入ってしまったときに、守備の球際の強さというのは自分たちの軸にしている部分である中で、そこがふわふわしていた感じが見受けられたんです。ただ途中から奪うところは奪う、埋めるところは埋めるというハードワークの部分も見えてきましたし、今日は中盤の3枚に白井と宗形が入って、どちらかというと攻撃的でしたし、いつもだと笠原が入っていて守備的なところを抑えてくれるので、その色の違いもあったと思います。多少合わない部分もあったのですが、抑えるべきところは分かって抑えてプレーしてくれていたので、守備面は問題なかったかなと思います。願わくば得点をもうひとつ奪いたかったかなと。後半何度かペナルティエリアの中に入っていく良い攻撃がありましたし、由麻(崎岡)も今日かなりハードワークしながら抜け出し続けてくれました。オフサイドになってしまったシーンなどをしっかりと決め切れるようになると、もっと怖いチームになることができると思うので。ただ、まずはみんながハードワークしてくれたので崩れることはなかったなと思います。

――人選でいうと、最終ラインの4人は全員がセンターバックとサイドバック両方でプレーできる選手を起用しました。ポジションチェンジなどもありましたが、どのような意図がありましたか

 相手の18番はスピードがありました。そのままでも問題は無かったんですが、少し前線を動かしながらの守備をして欲しかったので、夏目を中に入れて、18番は堀内がしっかりと押さえてくれると思いました。あとは攻撃と守備のバランスを考えて、結果的に堀内が18番をしっかりと抑えつつ前にも行ってくれて、出足も良くとても良かったと思います。アシストシーンも、あそこで拾えているからこそ、あの素晴らしいクロスが上げられたんだと思いますし。

――終盤に相手がカウンターにいきたくてもいけないような強度の高い守備をし続けられたのはやはり、夏合宿以降の成長だとも感じますがいかがですか

 白井、宗形は今日結構きつかったと思います。あの子たちはボールを奪ったら2枚で走って抜け出すくらいの感じで走ってくれていましたし、特に白井は最後キツそうに見えたんですけど、2人ともしっかり走ってくれると思ったので試合終了まで引っ張りました。もちろんあの2人だけではなくて、最後絶対にサボってはいけないところでサボらないのが、ア女の選手たちの素晴らしさだと思います。ただ走ったその次も大切で、特に攻撃に関しては走った後尽きてしまってはもったいないので、最後決め切るところも含めもう1つ2つ上げていきたいと思います。

――皇后杯予選、次戦の相手は十文字高等学校と予想していたものと違うとはいえ、非常に難しい試合になると思います。中日の関カレも含め今後に向けて、どのように戦っていきたいですか

 1番の敵はコンディション調整かなと思います。去年はこういったスケジュールもかなりありましたが、今年は初なので。関カレの国際武道大戦も絶対に落とせないですし、もちろん皇后杯も落とせません。しっかりコンディション調整をして、自分たちが自分たちのサッカーができるようにとにかく総力戦で、勝ち抜きたいと思います。

 

白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

――まずは初戦突破ということで、結果についていかがですか

 初戦はやっぱり緊張もしますし、上手くいかないこともあって難しかったですが、チームとしてみんなで走り切って勝つことができて良かったです。

――試合の入りはア女のプレスがなかなかハマらない時間帯もあったかと思いますが、どのようなことを考えていましたか

 もともと自分たちの守備に対して、相手が下からつないでくることはスカウティングで分かっていました。対策はしていたもののうまくプレスをかけられずに難しくなってしまったのですが、クーリングブレイク後から修正してちょっとずつハマるようになってきたのかなと思います。

――チームの2点目になりましたが、ご自身の得点について振り返ってください

 今季公式戦で初めて得点することができて、素直に嬉しかったです。璃子(堀内)さんのボールがとても正確だったので合わせるだけでしたし、あまりヘディングは得意ではないのですが、気持ちで押し込むしかないと思ったので決められて良かったです。

――後半終盤にかけてしっかりと走り勝って主導権を握り続けられていたのかなと思うのですが、そこに関しては合宿以降のフィジカル・体力面の成長を感じる部分ですか

 ここにきて、合宿や夏の成果が現れてきていて嬉しいです。今まで試合終盤に追いつかれたり逆転されたりすることは多かったですし、終わり方についてはしっかりと考えて失点せずに終わることができたのは良かったかなと思います。

――今週は関カレに加えて皇后杯予選の2戦目以降が続きます。ハードスケジュールの中でどのように成長していきたいですか

 1試合1試合に向き合って相手の対策をして、自分たちのサッカーをすることが成長につながると思います。まずは目の前の相手に負けないように、頑張っていきたいです。

 

宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)

――まずは試合を振り返っていかがですか

 自分自身もひとつ高い位置でプレーできて得点することもできたので、結果的には2-0で勝つことができて良かったと思いますが、今後の試合に向けてはまだ課題の残る試合だったのかなと思います。

――ひとつ高い位置でプレーした、というのはトップ下気味の意識だったということですか

 美羽(白井)さんとのバランスを見ながらだったのですが、中盤の右は結構育(築地)さんが寄ってきてくれる時は高い位置を取ることができました。相手もそこまで(プレスを)強くかけてこなかった分、バックが余裕をもってボールをもてていたので、高い位置を取って前で関わることができたかなと思います。

――前半のクーリングブレイクまではプレスがあまりハマらない時間もあったと思いますが、どのように修正しましたか

 練習の際にもシミュレーションしていたのですが、本番になると相手も違うことをしてきますし、うまくいかない時間もありました。ただ自分たちは(相手にパスを)回させている意識を常に持って「持たせて良い、焦れずにいこう」というのは常に思っていたので、意識的なところで楽にやれた分、相手のミスを誘ったり(プレスの)はめどころが分かったりしたのかなと思います。

――最初の1点はチームにとってもとても大きな得点だったと思いますが、ご自身の得点シーン振り返っていかがですか

 美月(浦部)さんからパスを受けて、もう1度美月さんに戻すことも考えたのですが結果的に(浦部を)囮のようにして使って中に切り込みました。足を振っていくことは自分の中で意識していたので、あそこまで侵入できる機会も少なかったですし思い切って打ったという感じです。

――後半はア女が主導権を握る傾向が強まっていった印象です。終盤にかけてはどのようなことを意識していましたか

 相手が得点を取らなければいけない分(プレスを)かけてきていたので、ロングボール中心になっていました。その中で前線を含めて走り負けをしていなかったというところと、セカンドボールの回収がしっかりできていたというところで、マイボールにできていた時間が多くもてたことが大きかったかなと思います。

――山梨学院大戦もそうでしたが、フィジカル・走行量面での成長を感じます。夏合宿の成果は出てきていますか

 夏合宿の2部練の時は、午前はボールを使わないトレーニングだったので、体力とメンタルの部分はかなり鍛えられたかなと思います。

――関カレもすぐにありますし、皇后杯予選の2戦目以降も来週です。意気込みをお願いします

 相手がどこ、というのは意識していないですし、関カレにしても皇后杯にしても緊張感を持って、自分たちがやってきたことをやれば勝てると思っています。まずコンディションを整えて、自分たちのプレーをしっかり分析しながら、さらに強いア女を作っていけたらなと思います。