首位・山梨学院大に惜敗 追加タイムに痛恨の一撃食らう

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 1-0(前半)
0-2(後半)
山梨学院大
【得点】
(早大)35分:宗形あゆみ
(山梨学院大)55分: 伊藤琴音、90分+3分: 嶋田華

 関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)後期第4節、ア式蹴球部女子(ア女)は山梨学院大学和戸サッカーグラウンドに乗り込んだ。試合前半、MF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)のPK弾で先制に成功する。後半に入り55分に同じくPKを決められると、追加タイムには波状攻撃を食らい失点。1-2の悔しい逆転負けとなった。

 

ピッチの至る所に顔を出し、キープ力の高さを発揮したMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

  前期対戦(5月12日、●0-2)のリベンジを果たすべく臨んだ、首位・山梨学院大との一戦。前半から激しい主導権争いが続き、各局面でハイレベルな球際の攻防の応酬となった。先にチャンスを作ったのは山梨学院大。2分にコーナーキック(CK)からシュート、4分にもミドルシュートを飛ばしてきた。立ち上がりの攻撃を凌ぎ切ると、試合は徐々にア女ペースへ。7分には左サイド前線でMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)が収めると、フォローの宗形、インナーラップしてきたDF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)とパスをつなぎ、最後はMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)のミドルシュート。相手キーパーが抑えたが、リズムを作った良いシーンだった。19分には右サイドでパスをつなぎ、築地のロングボールに白井が走り込むがシュートは打ちきれず。29分には逆に守備ラインを突破されるが、ゴールライン際でDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)が巧みに寄り切りシュートは打たせない。そして35分、ついにスコアが動く。ア女のショートコーナーがエリア内での混戦を生み、PKを誘発。宗形がしっかりと右に流し込み、見事先制に成功した。42分には中央の守備の穴を突かれ、ミドルシュートを許したがクロスバーに当たるなど、ピンチはありながらも決定機は作らせない集中した守備で、前半を1点のリードで折り返す。

 

スピードのある選手を相手にしてもむしろ際立つ、夏目の守備。目立ったミスもなく、最終ラインに安定感をもたらした

 後半はア女にとって苦しい展開が続いた。54分には痛恨のPKを与え、失点。同点にされた後も山梨学院大ペースが続く。「ビルドアップのところでサイドバックの位置が低くなってしまった、相手の圧に対して解決策を生み出せなかった」と後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)。リードしていたことも含め、相手に攻撃の意識の部分でも上回られてしまったとも言えるだろう。60、61分には続けざまに相手CKからピンチを迎えるが、最後はGK石田心菜(スポ3=大阪学芸)が正面で抑える。終盤の87分にも左サイドから上がったクロスを、中で収められシュートを許したが枠外へ。もちろんア女も、攻められっぱなしだったわけではない。89分には右サイドに入ったMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)の運びから、宗形、築地、裏に抜けたMF﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)とつなぎ、最後はMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)がミドルシュートを放ったが、わずかに枠右に外れた。しかしそのクオリティの差は、最後に明確な数字をもって顕在化した。追加タイム、ゴールキックをリスタートしたところ、自陣内でボールを奪われる。シンプルに中に挙げられたボールをシュートにつなげられ、一度は宗形と築地がブロックしたものの、こぼれたところを押し込まれまさかの失点。最終版の悲劇的な展開の中でも、ベンチから盛り上げる声がかかったが、反撃に残された時間はあまりに短かった。結局試合は1-2のまま終了。ア女の関カレ後期開幕以来の連勝は、3でストップした。

 

DF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)はさすがのカバーリングを見せた

 この敗戦の捉え方は、何を基準にするかによって様々だ。もちろん、皇后杯予選という、勝ち上がりをかけたカップ戦の直前であるということを考えると、試合終盤の戦い方はいただけない。「勝ち点1を失った試合」という指揮官の言葉通り、首位チームとの対戦だったことを加味しても、勝ち点を持ち帰るべき試合だった。ただ、90分間圧倒され続けた前回対戦時を思い返せば、大いに成長したとも言える。特にリードしたまま終えた前半は、球際の攻防に積極的なミドルシュート、精確なビルドアップとア女の強みを存分に発揮できていた。

 とにもかくにも、次戦は皇后杯予選の1回戦。試合時間自体が短い上、一発勝負故の緊張感もあるだろう。「首位の山梨学院大と、このタイミングで試合ができたことは大きい」と語ったのはこの日先制点の宗形。この経験は、今季最初のカップ戦に向けて大きな武器に変わるはず。「もう一回り強くならなければいけない」(後藤監督)、「現状自分の判断スピードや個人のスキルを上げることはマスト」(堀内)。帰宅の途につくメンバーの顔は、敗戦の絶望に染まったものでは決してなかった。選手たちは自身、そしてチームの成長に向けて、すでにどん欲に思考を巡らせている。

(記事 大幡拓登、写真 前田篤宏、大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
MF ◎6 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
MF 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
→83分 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――逆転負けという結果でしたが、振り返っていかがでしたか

 勝ち点1を失った試合、ということになるかなと思います。

――前半は良い時間帯も多かった中で、後半は相手ペースの時間が続いたという印象です

 ビルドアップのところでサイドバックの位置が低くなってしまったのが、ひとつ気になったところですかね。前半も相手はプレスをかけてきていましたが、剥がしながら相手の嫌なところを突いて、みたいなことはできていたので。サイドってやっぱり高さの取り合いで、その部分押し込まれてしまった感があるかなと思います。前半美月(浦部)がパスを受けていた場所で、後半は美羽(白井)が受けていました。そうすると和華奈が表(オモテ)で受けなければいけなくなりますし、後手になったわけではないですが、相手の圧に対して解決策を生み出せなかったという感じですね。

――終盤、守備陣もかなり集中力高く守ることができていた中で意表をつかれるような失点になりました。皇后杯予選を前にしてその辺りいかがですか

 アディショナルタイムのところで、コーナーキックからの流れで失点してしまいました。2018サッカーW杯のベルギー戦のラストプレーではないですが、サッカーではそういったことが起こりうるので。誰かを責めるではなく試合の最後で勝ち点を死守すべきなのか、得点の可能性が本当にあったから急いだのか、という部分に関してはしっかりと考えるべきだなと思います。山梨学院大は最後ポジションを上げてきていたセンターバックの選手が点を取っていますし、うちのPKの取られ方を振り返ると、あのディフェンスの対応が本当にベストだったのかというところも含めてそういった部分の差が、今日の結果や今の順位にも出ているということを、受け止めなければいけないなと。ただこれはインカレの決勝ではないので、この敗戦然り失点の仕方然り、どうそれを咀嚼(そしゃく)して生かすかということだと思いますし、どれほどの経験値に変えられるかが大事になると思います。

――前期の対戦時から比べると大分様変わりしたというか、今日の前半は互角に戦えていた部分も長かったのかなと思います。前回対戦時からの成長というところはどのように評価されていますか

 多分あの時のシステムは3-5-2で、相手の前の選手を走らせるという、やりたいことをやらせてしまった試合だったかなと。失点シーンはまさにその形でしたし、切り替えと球際という私たちが1番大切にしているところで負けてしまったという展開でした。今日前半はしっかり戦えていたという意味では、収穫だと思います。ただ自分たちのストロングポイントを出し切れていたからと言われれば、そうではないかなと。前半自分たちのペースだったとしても、後半は相手ペースで、自分たちが1点しか取れなくて相手は2点。そこがシンプルな差として表れた試合だったと思います。

――皇后杯予選ですぐに山梨学院大と対戦する可能性があります。今日はその前哨戦と捉えても価値のある試合になったと思いますが、今後この結果をどのように生かしていきたいですか

 ここから山梨学院大とやるとなると、もう皇后杯予選とインカレしかないと思います。ならその試合は勝たないと、もう2回負けていてイーブンにならないので。そこは自分たちの誇りにかけても結果にこだわって、対戦成績というよりも皇后杯という、勝って出場を決めなければいけない大会があるので、しっかりと準備をして、もう一回り強くならなければいけないと思っています。

 

堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)

――まずは逆転負けという結果を振り返っていかがですか

 押される時間もあったけどちゃんと押し込めている時間帯もあって、最後の失点のところはもったいなかったと思います。個人的には、自分たちの中で失点の直後に盛り上げ切れずに落ちてしまうということが前期の試合とかでは多くあったので、そこの切り替えの部分は改善しつつあるのかなと。今後に向けてプラスにはなると思いつつ、失点のところはしっかりと対処しないといけないと思いました。

――前期対戦時はかなり圧倒された展開だったのに対して、今日は互角な展開になる時間帯も多かったと思います。その辺りのチームの成長についてどのように評価していますか

 前期の時は3バックで守っていました。相手は前線の選手がしっかりと走れるというところで、今日は4バックでしっかりとチャレンジ&カバーしながら対応できていたのは大きかったかなと思います。自分が1発目にチャレンジして抜かれてしまっても、歩美(夏目)や美月、育(築地)がカバーしてくれていましたし、そこをコミュニケーションとりながら上手くできたのは良かったと思います。

――個人的には、カバーリングも含め堀内さん自身のプレークオリティも前期から上がってきているように感じます。ご自身のプレーに対してどのように評価していますか

 もともとカバーリングは自分自身の強みでもあるので、そこに関しては限度を決めずにというか、そこからさらにできるところまで上げていくイメージでやっています。今日に関しては相手もスピードに自信を持っている選手でしたし、自分と互角かそれ以上のものを持っている相手に対しては、前もって対応していく、出足を早くすることが必要になってくると思います。今後皇后杯予選、本戦、インカレやリーグの上位相手の試合で自分以上の相手と対戦していく中で、現状自分の判断スピードや個人のスキルを上げることはマストかなと考えています。

――お話にもあったように皇后杯予選が始まってきますが、今後この試合をどのように生かしていきたいですか

 個人の追求に関してはしっかりと分析していきつつ、組織としての守備、攻撃というところも重視したいと思います。個の部分で相手に上回られることも想定に入れると、その上で自分たちは組織的な守備、攻撃で相手を上回っていくことが求められると思うので、コミュニケーションをとりながらそこは上げていくところになるかなと思います。

 

宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)

――まずは結果振り返っていかがですか

 前期対戦時は個人としてもチームとしても何もできない感じだったので、リベンジするという意味でも後期開幕から無敗だったということを考えても、みんなモチベーションは高かったと思います。その中での逆転負けというのは、自分たちが合宿を通して積み上げてきた「守備でも攻撃でも」という部分が、最後までやり通せなかった結果かなという印象です。

――これまで上位相手に得点がなかった中で、PKながら先制することができたというのは大きいんじゃないかと思いますが

 コーナーキックのサインプレーからのPKで、準備してきたものが上手くいってPKにつながったので、練習の成果が出たかなと思います。今回も自分が蹴るのか分からなかったのですが、美月さんが渡してくれて、相手と駆け引きをしてしっかり決めることができました。今年に入ってPK自体の回数が多いですし、ここまで外していないので今後も蹴りたいと思っています。

――前半互角に戦えていた中で、後半先制しているのもあって相手に主導権を握られて攻撃のかたちが見出せない時間が続きました。後半に関してはどのように振り返りますか

 前半はビルドアップからやろうという共通認識があって、後ろからショートパスを使ったり背後を狙ったりと、攻撃のかたちが何パターンもできていました。後半に入って相手も勢いを持って入ってきて自分たちもリードしている中で、後ろから自分たちがビルドアップしたい位置からパスをつなげずに背後に蹴ってしまったり、ロングボールばかりになって走る距離が増えてしまったり、味方同士の距離が遠くなって孤立することが多くなったことが、難しくなった原因かなと思います。

――失点シーンはラストプレーに近い最終盤の局面でしたが、その前まで集中して守る事ができていたように思います。振り返っていかがですか

 押されていた中で、セットプレーの守備からカウンターをしようとしてからの失点でした。今振り返るとあの時間帯、全員の体力を考えてももう一つ押し上げてから行くべきだったかもしれないですし、そこは共通認識として落とし込めていなかったかなと思います。

――皇后杯予選も始まってきますが、厳しい日程の中でどのように改善し戦っていきたいですか

 後期は首位の山梨学院大と、このタイミングで試合ができたことは大きいと思っています。あとは勝ちにこだわって、皇后杯となると負けられないですし、去年の皇后杯本選でも悔しい思いをしているので、リベンジしたい気持ちがあります。次節に向けても皇后杯に向けても自分自身と向き合って、チームを勝たせられるプレーをしたいと思います。