先制成功も終盤に”落とし穴” 関東リーグ、神奈川大にシーズンダブル喫す

ア式蹴球女子
第29回関東女子サッカーリーグ
早大 0-0(前半)
1-2(後半)
神奈川大
【得点】
(早大)72分: 千葉梨々花
(神奈川大)86分:鈴木杏里、87分:江藤里桜奈

 関東女子リーグ(関東リーグ)後期第2節、ア式蹴球部女子(ア女)はアウェイ神奈川大戦に臨んだ。前半は激しい主導権争いで、両チーム得点は生まれず。後半に入ると相手の勢いに押され耐える時間が続いた中で、72分にFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)が先制点を挙げる。逃げ切りたいア女だったが、86分にコーナーキックから、87分にカウンターから立て続けに失点。悔しい逆転負けとなった。

 

右サイドバックで先発のDF木南花菜(スポ3=ちふれASエルフェン埼玉マリ)。積極的に幅を取り攻守に貢献した

 試合は序盤から熱を帯びた。8分に右サイドからクロスを上げられ、177センチの長身を誇るFW鈴木杏里(神奈川大)にヘディングシュートを許したが、GK丸山翔子(スポ3=スフィーダ世田谷FCユース)がはじき出した。10分には負けじとア女が攻撃。MF川本美羽(スポ1=新潟・帝京長岡)の縦パスをFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)が落とし、持ち出したMF栗田彩令(スポ3=静岡・藤枝順心)が狙うが、飛び出してきた相手キーパーに阻まれた。その後も主導権を握り合いながら、ア女は高いディフェンスラインを維持した「積極守備」で応戦。決定機を作らせない。23分には川本のパスを受けた千葉が鋭いターンからシュートも枠外へ。34分にはMF栗田彩令(スポ3=静岡・藤枝順心)のスルーパスに抜け出した千葉が今度はネットを揺らしたが、際どいオフサイドの判定。終盤は逆に攻められる時間帯も続いたが両チーム得点は生まれず、スコアレスのまま前半を折り返した。

 

守備での貢献が目立ったMF阪本環(スポ2=日体大FIELDS横浜U18)

 後半開始から、ペースは相手に傾く。52分には中盤を突破されるが、DF小林舞美(スポ2=ちふれASエルフェン埼玉マリ)がさすがの対人守備で対応。66分にも右サイドをドリブルで突破されたが、ゴール前で繰り返し守備陣が体を張った。すると72分、途中出場のFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のスルーパスに飛び出した千葉が、相手キーパーとの一対一を制し、先制ゴールを決める。繰り返し縦に速い攻撃でかたちを作っていた中で、ようやくそれが実った形となった。そこからは暑さによる疲れも手伝って、オープンなせめぎ合いに。リードを保って逃げ切りたいア女だったが、終盤に悲劇が待っていた。86分、相手コーナーキックを中で合わせられ1-1。DF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)の好守備でコーナーキックに逃げることができていただけに、悔しい失点だった。さらに87分、左サイドからクロスを上げられると、中で合わせられ、一度丸山がはじいたところを詰められ失点。追加タイムにはインナーラップした浦部がゴールに迫ったが、キーパーにブロックされてしまった。結局試合は1-2のまま終了。悔しい逆転負けとなった。

 

先制点の千葉。「相手のキーパーを見て、股が空いていたので股を狙った」とゴール前でも冷静さを見せた

 「1点取られて、チームの雰囲気も落ちてしまった」と、中盤で好プレーを見せた阪本は振り返る。最終盤に得点を決め逆転勝ちを収めた前日と、くしくも明暗の分かれる結果となった。しかし80分までのア女は、存分に自分たちのサッカーを展開できていた。特に守備陣に関しては、苦しい時間帯も体を張ってチームを救い続け、後半の守備は集中力を保ちほとんどミスがなかった。それでも内容は結果と必ずしも一致しないのがサッカー。もちろん、内容も完璧というにはまだかなりの距離があるというのが現状だ。幸いなことに、関東大学女子リーグ(関カレ)と関東リーグはここから中断期間に入る。「苦手を克服するには成功体験を積み重ねるしかない」と指揮官。この悔しさをエネルギーに変え、また一歩ずつ前に進もう。

(記事 大幡拓登、写真 永田怜)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 丸山翔子 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
MF ◎浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
DF 13 木南花菜 スポ3 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 15 小林舞美 スポ2 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 17 藤田智里 スポ4 神奈川・大和
MF 22 阪本環 スポ2 日体大FIELDS横浜U18
→69分 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→79分 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
MF 29 川本美羽 スポ1 新潟・帝京長岡
MF 18 栗田彩令 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→57分 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
FW 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――逆転負けになりましたが、振り返っていかがですか

 まず悔しいの一言です。試合後選手たちがどう感じ考えていたのかというのを聞くと、ちゃんとうちの子たちって考えられているし、「あの時間帯こうすればよかった」というのがちゃんと分かっているんです。今の自分達の弱さを考えてみると、失点した時あるいはその前に中盤で拾えなくなり始めていた時に、どんな声が出ていたのか。押し込まれ気味になった時に「一回切ろう」とか、「一回ひっくり返そう」というような声が出せていたかどうか。試合後にあれだけ考えていて言えるということは、試合中も気付けている選手は必ずいたはずなので、そこをもう一つ実践できるかどうかというところが大事になってくるのかなと思います。終盤まで自分たちのサッカーをしていた中で、最後に失点してしまったというケースは大東文化大戦(7月1日、関カレ第11節、△2-2)でもありましたし、もう3度目をやってしまったらトーナメントで取り返しのつかない結果になってしまうと思うので、そういった部分を改めてチーム全体で確認したいなと思います。

――お話にもあったように80分くらいまでは、集中力も保って良いサッカーができていたと思います。失点までのプレーに関してはどのように評価をしていますか

 まず守備を切り替え早く、高い位置から奪い切ろうというところはしっかりできていたと思います。崩しの形もやってきたかたちがいくつも出ましたし、サイズのある相手や枚数の多い相手の中盤に対しても、美羽(川本)や環(阪本)、落ちてきた彩令(栗田)やりり(千葉)が一生懸命拾ってくれていました。自分たちが意図してできたところに関しては、自信にして欲しいと思います。もちろん頭を使ってやらなければあのサッカーを90分間やることは難しいと思いますし、後ろで回してコントロールする時間も必要だと思います。ただあそこまで走れているので、もう一つ頭を使うことももちろん必要ですが、フィジカル的には伸び代がある子たちなので、そこについても伸ばしていきたいですね。とにかく内容として、これだけの時間意図したことができていたことに関しては、評価したいと思います。

――昨日も小林選手や阪本選手をはじめ調子を上げてきている選手がいると仰っていましたが、まさにそういった選手たちの好プレーが見られました。シーズン中盤、そういった押し上げみたいなものは感じますか

 そうですね、その2人の学年、2年生はすごく良いものを持っているんですよ。コツコツ積み重ねてきてくれているのもありますし。2年生って、中弛みしがちな学年ではあるんです。3年生は次は自分達だ、というふうに上を見ていますし、1年生はフレッシュじゃないですか。だからこそ立ち位置として難しいところもある中で、あの2人が上がってきているのは、学年は関係ないチームだとも思うのですが、すごく良いことだと思います。

――昨日に引き続き1年生が得点しましたし、関東リーグメンバーは裏をシンプルに使うのが上手いなと感じます。そのあたりは関カレにも還元できる部分ですか

 2トップなのもそれができている理由なのかなと思います。今日であれば彩令(栗田)がまず裏に引っ張って、そこでできたスペースにりり(千葉)が入ってくるとか、由真(崎岡)が入った時もそうですよね。より裏を使いやすくなりましたし、システムがどうこうということではないですが、そういった部分は関カレにも出てくると良いのかなと思います。選手たちもそれを感じているんじゃないかとも思いますし。

――そういった下からの押し上げにも期待しつつ、夏合宿含めどのようにトレーニングしていきたいですか

 合宿に関して言えば、2部練できる機会が珍しいですし、午前中はフィジカルトレーニング中心になると思います。あとはこれまでコロナの影響で、チームで寝食を共にすることがなかなか無かったので、みんなで寝て一緒に過ごしてということができると、色々な会話ができますよね。どうしても東伏見に夕方に集まって練習やって帰る、という流れだと、一緒に帰る子と近場の子とかがありますし。合宿であればプレーの話とかもできる機会がたくさんあって、密度の濃い時間になるんじゃないかと思います。あとはフィールドの中でだいぶ攻撃のかたちも見えてきていると思うので、今日のように守備の切り替えの早さからゲームの流れを作ることができていたのを、もう一個、二個高めていきたいなと思います。あとは何よりセットプレーですよね。セットプレーでの失点って今季数えたら結構あると思うんですよ、昨日もそうでしたし。自分たちがそこに苦手意識を持っているのならそこに真摯に向き合わなければいけないですし、克服するには成功体験を積み重ねるしかないので、チーム全体で突き詰めてやらないといけないと思います。

 

阪本環(スポ2=日体大FIELDS横浜U18)

――今日の試合を振り返っていかがですか

 (リーグ順位的に)格上を相手に先制点を奪うことができて、このまま勝ち切りたいなという気持ちは大きかったのですが、最後に立て続けに失点してしまいました。どちらもサイドからの失点で、気をつけようという認識はあった中で1点取られて、チームの雰囲気も落ちてしまったことで、敗戦という結果につながったのかなと思います。

――今季ここまでの関東リーグではサイドでの出場、途中交代も多かったと思います。久しぶりの中盤でスタメン、どんなことを考えて試合に臨みましたか

 関東リーグの中断期間は、育成リーグの方で試合経験を積めていたのですが、久しぶりの関東リーグで緊張感もありました。とにかく攻撃というより守備から入って、良い守備から良い攻撃を狙うことを意識して、中盤ではセカンドボールを拾うのが鍵になると思っていたので、そこを意識していました。

――実際に守備での強度の高さを出せているシーンも多かったと思います。ご自身の守備面のプレーについて、どのように評価していますか

 もともと攻撃でゴールにつながるスルーパスや展開を得意にしていたのですが、守備面については1年生の時から課題で。そこについてはだんだん成長が見えてきたのかなと思います。

――1年生が開幕から活躍を見せています。1年生に対する印象やご自身のプレー機会も含めて、シーズンここまでどのようなことを考えていましたか

 自分は正直、途中出場でもチームのためにできることを精一杯、ということをいつも考えています。1年生はやっぱり足元の技術も高いですし頼もしいので、攻守両面で1年生を頼りつつ、自分の良さも出していけたらなと思います。

――関東リーグに関してはしばらく中断期間に入りますが、夏合宿も含めチーム、個人両面でどのように成長していきたいですか

 今まで夜練が多くて暑さに慣れていないというのもあったので、夏休みは合宿もありますし、チーム全体として暑い中で90分間戦えるように、フィジカル面を強化していきたいです。あとは監督も仰っていたのですが、最後の最後に勝ち切れるチームになっていきたいと思います。

 

千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)

――得点シーンを振り返っていかがですか

 由真(崎岡)が前向きの形で相手のミスを奪ってくれて、その瞬間に由真からならパスがくると思って裏に走ったら、そこに(パスが)出てきました。相手のキーパーを見て、股が空いていたので股を狙って、そのまま入ったので良かったです。

――ご自身にとっては久しぶりの得点となりました

 ずっと点を決めたかったですし、そのために毎日練習頑張ってきたつもりだったので、今日しっかりチャンスをものにできたのは良かったなと思います。

――昨日の関カレの試合とは戦い方なども違ったと思いますが、どのようなことを考えながらプレーしていましたか

 自分がやるべきことは変わらないと思っていました。相手の特徴とかに関しては全然違った中で、自分がしっかり前線で収めて味方の上がりを待って、そこからまた自分がフィニッシャーになるという部分は変わらなかったので、昨日できなかった得点というところに昨日以上にこだわって、今日の試合に臨みました。

――後半の最初の時間に苦しい時間帯が続いていた後に、得点を含めていい流れを持ってくることができていたように感じました。そのあたりについてはどのように感じましたか

 苦しい時間帯が続いても全員が勝つためにプレーできていましたし、そこがブレなかったから守り切れたし、チームの流れがよくなったと思うので、軸をブラさずに戦えたところがよかったと思います。

――ここから中断期間に入って合宿などもあると思いますが、どのようなことを意識して練習していきたいですか

 今日1−2で負けたということは、自分が3点取れれば勝てたということだと思います。今日以上に結果にこだわって1本1本シュート決め切れるように、そして自分がチームを勝たせられるフォワードになれるように、1、2ヶ月で大きく成長して、全勝して関東リーグを終えられたらなと思います。