FW崎岡の鮮烈勝ち越し弾! 逆転で関カレ後期開幕連勝!!

ア式蹴球女子
第37回関東大学サッカー女子リーグ
早大 1-1(前半)
2-1(後半)
東京国際大
【得点】
(早大)45+2分:後藤若葉、82分:宗形みなみ、87分:崎岡由真
(東京国際大)33分:小林砂璃、53分: 小畑羅南

 関東大学女子リーグ(関カレ)は後期第2節、ア式蹴球部女子(ア女)はホーム東伏見に東京国際大を迎えた。33分に相手のフリーキックからの流れで先制点を献上するが、前半追加タイムにDF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)が1点を返し前半を折り返す。後半に入ると53分、コーナーキックを直接決められ再びリードを許すが、82分にMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)のPKで同点に。さらに87分には、途中出場のFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)が勝ち越しゴールを決め、ア女が逆転で勝利した。

 

得点を喜ぶ選手たち

 強い日差しがじりじりと肌を焼く昼下がりの東伏見。ア女は、前期1-0で辛勝した東京国際大との1戦に臨んだ。互いの守備陣の好プレーもあり、なかなかアタッキングサードで攻撃の良いかたちが作れない中でも、ボール保持力で分があるア女が、徐々に主導権を握る。11分には後藤の縦パスにFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)、右サイドのMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)とつないで飛び出したMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)へ。子気味良いパスワークでゴール前に迫ったが、白井のシュートは相手キーパーに抑えられた。24分には最終ラインから後藤がドリブルで持ち上がって千葉にパスを当て、落としを白井が裏に走る後藤へ、浮き球のスルーパス。惜しくも通らなかったが、縦に速いダイレクトプレーでリズムを作る。しかし32分の相手のフリーキックのシーン。一度はGK石田心菜(スポ3=大阪学芸)のセーブ、DF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)のブロックで難を逃れたが、その流れのまま波状攻撃を受け、ミドルシュートのこぼれ球を押し込まれて0-1。手痛い先制弾を食らう。ビハインドのまま折り返すかと思われた追加タイム、今度はア女のフリーキックがファーサイドまで流れてきたところを、待っていた後藤が右足でねじ込み同点に。前半終了間際に、頼れる主将の一撃で試合を振り出しに戻した。

 

後半投入のFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)

 1点が欲しいア女は、ハーフタイムから﨑岡を投入し、前線のポジションを変更。崎岡は右に、三谷を中央に据えた。しかし53分、コーナーキックを鋭く曲がる弾道で直接決められ1-2。再び1点のビハインドを負ってしまう。そこからは守る東京国際大に、ア女が攻めあぐねる展開に。55分のコーナーキックは、MF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)が合わせるがキーパーに防がれる。67分にはDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)の裏へのロングボールに三谷とDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)が中央を飛び出したが、相手ディフェンスに阻まれてしまう。さらには77分、再び右サイドにポジションを移していた三谷が負傷交代。連勝に向けては、暗雲が垂れ込める展開に。それでも「みんな最後まで諦めなかった」(後藤主将)。81分に宗形がカットインからシュートを放つと、こぼれ球を崎岡が左足で狙い、この枠内シュートが相手のハンドを誘いPKを獲得。宗形が「蹴る前に勝てた気がした」と落ち着いてキーパーの逆を取って決め、再び試合を振り出しに戻した。さらには87分、中盤でつないだボールを、途中出場のDF木南花菜(スポ3=ちふれASエルフェン埼玉マリ)が相手に寄せられながらスルーパス。左サイドに移っていた崎岡が反応して飛び出し、懐で巧みに収めて、倒れこみながらゴール左に流し込んだ。逆転に成功したア女はそのまま1点リードを守り切り勝利。見事、関カレ後期開幕からの2連勝を飾った。

 

PKを決めた宗形。PK誘発の起点となるシュートを打ったのも宗形だった

 ア女は関カレと関東女子リーグを合わせて、今季初の逆転勝利。守備の比重が大きいチームだからこそ、先制点を奪えば強く、そうでなければ苦戦するケースが多い。一時は敗戦ムードすら漂ったが、この日は選手たちの諦めない気持ちが逆転勝利を手繰り寄せた。下世話ではあるが、優勝するチームは、えてしてこういったゲームを勝っていくものだ。ただ、もちろん課題もある。立ち上がりやハーフタイム後の入り方、自ゴール前での確実なクリア、崩しのかたちの再現性も上げたいところ。とはいえ、しっかりと結果を出しながら課題を見つけることができているのは、むしろポジティブと捉えるべきだろう。「最後まで一人一人が役割を果たして走り切ったことが、ゴールにつながって勝利という結果になった」(崎岡)。夏も、後期も全員で。総力戦は、少数精鋭・ア女の専売特許だ。

(記事 大幡拓登、写真 髙田凜太郎、星野有哉)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
MF ◎後藤若葉 スポ4 日テレ・メニーナ
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
→63分 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
→77分 13 木南花菜 スポ3 ちふれASエルフェン埼玉マリ
FW 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
→HT 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
◎=ゲームキャプテン
コメント

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――90分振り返っていかがですか

 まず十文字大戦の流れからしっかりとシュートチャンスは作れていたと思うのですが、決め切りたい部分で決めきれない中で、セットプレーで失点してしまいました。あのセットプレーは自分たちが下がってしまった部分もありましたし、うちの課題でもありますが、切りたい(クリアしたい)ところで切りきれずに詰められてしまったという感じでした。今後皇后杯予選などでも、先に失点する厳しい展開になることはあると思います。今日はそこから勝たなければいけないというのが課題になりましたが、みんなの表情を見ていても、やれている部分を自分たちで感じられていると思いました。後半また失点してしまった中で、2点目のPKを誘発したのは由真(崎岡)ですし、3点目へのパスも木南だったので、途中交代で入った選手たちがチームを勢いづけたという意味でも、大きな収穫のある試合だったなと思いました。

――左サイドバックの夏目選手と、中盤やサイドの関わりが良いリズムを作っているようにも見えます。手応えはありますか

 4バックだと、サイドバックがゲームの起点になることが多くなるのかなと思います。3だとウイングバックとセンターバックのサイドということになってくると思うのですが。難しいポジションではありますが、今日右に入った田頭も良いフィードを持った選手ですし、そういった意味では両サイドともに意図を汲んで役割を果たしてくれていると思います。

――給水タイムを含め、90分をクォーターで分けた際の立ち上がりは意識しているという選手の話もありました。前半追いついた流れがあった中で後半すぐに失点してしまったというのは、課題の一つになるかなと思いますがいかがですか

 前半立ち上がりにぬるっと入ってしまう試合、それこそ失点してしまう試合はどれほどあるかはわかりませんが、中断前からそういった試合は結構あって。入りが良くないというか、入りでガッと勢いよく行って自分たちにペースを持ってくるみたいな、そういう入りの流れがなかなか作れていないというのは課題でしたし、できている時とできていない時があるなという感じでした。じゃあできている時は何ができていて、できていない時は何ができていないのか、それも根性論だけではなく、立ち位置なのか狙いなのか、そういったことを分析して修正していくことが大切だと思っています。特に皇后杯予選なんかは試合時間が短く、それこそ1点取られて引かれたらもっと自分たちは焦って難しくなると思いますし、流れを持ってくるというところも、詰めていかなければいけないと感じました。

――交代選手の活躍についてお話がありましたが、勝ち越し弾を決めた崎岡選手の左サイドでの活躍は印象的でした

 もともと彼女は開幕戦にフォワードとしてスタメンで出場していますし、関東リーグでも結果を残しています。もとから通用する部分は十分にありますし、関カレには絡まなくなる期間もありましたが、めげずに腐らずに自分がなんで出られなくなったかを向き合ってくれたと思います。そもそも開幕スタメンに起用できる時点で、あの短い期間で「ア女はこういうサッカーをするんだ」ということを理解するクレバーさがある選手だと思いますし、課題に向き合って真摯に練習に取り組む姿勢はずっと見てきていたので。そしてそれはスタメンで出場した千葉も一緒で、はる(杉山遥菜、スポ1=東京・十文字)はもちろん、新井(新井みゆき、スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)や田村(田村亜沙美、スポ1=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)や川本(川本美羽、スポ1=新潟・帝京長岡)も、1年生一人一人がプレーの特徴をすぐに言えるくらい、私の思っているより早い段階でチームの力になってくれているというのは、すごくポジティブな要素かなと思います。そしてこれができるのは、4年生を筆頭に上の学年が引っ張っていきながら自分、1年生に対して「やっていいよ」という雰囲気を作ってあげているからだと思いますし、そういう意味ではその結果が出てきているのかなと。夏合宿を経て2つ3つ、どの学年も個を伸ばしていって、それが掛け算になればチームの伸びにもなってきますし、そこでのレベルアップを皇后杯予選や後期に生かしていきたいと思います。

――想定よりも早い、と仰っていましたが、1年生に関しては夏期間以降本格的に主力になっていくイメージだったのでしょうか

 やっぱり合宿での走り込みなどもそうですし、半季かけてフィジカル的な部分を伸ばしていくことと、精神的にももっと周りとコミュニケーションを取れるようになってくるかなと思っていました。1年生の活躍を見て、上の学年も「やらなきゃ」となってきていますし、前期そういった意味で苦しんできた選手がすごく変わってきているので。合宿を経て、一つ一つ大きくなっていくかなと、というより大きくならなければいけないと思っています。

 

後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)

――まずは90分間振り返っていかがですか

 チーム全員が諦めなかったことが、こういう結果に繋がったのかなと思います。これまでも苦しい試合はありましたが、先制点を取られて取り返して、また取られてというようなシーソーゲームで勝ち切れたということは、これからのシーズンに向けても大きな勝利になったと思います。

――関カレに限っていえば2シーズンぶりの逆転勝利ということで、かなり久しぶりでしたがどのように感じますか

 そこについては意識はしていなかったですが、今日は本当にみんな最後まで諦めなかったですし、交代選手や1年生が躍動してくれて。そういうことは後期に向けて大事になってくると思いますし、収穫の多い試合でした。ただ課題も多く見えましたし、ここからの中断期間と夏合宿で修正していきたいと思います。

――前半の最後に1点を返して良い流れになりそうな中で、後半立ち上がりに失点してしまいました。どのように振り返りますか

 給水も含め90分間を4つに分けて考えたときに、それぞれのクォーターの立ち上がりは気をつけようというのはいつも声かけはしているんですが、じゃあそこで誰かが崩れた時に他の選手が持ち上げられているのかというとそうではないと思います。全員で崩れないように、誰かが声をかけて引き締めるというところとか、4年生だけではできないと思いますし、チーム全体で取り組んでいきたいと思います。

――ご自身はしばらくセンターバックで出場されていますが、今の布陣についてどのように感じていますか

 自分はこのままセンターバックで行くのかなと思っています。自分自身昨年ケガで試合に関われていなかった中で、今年も最初は中盤で3バックというのを十分に体感できていないので、3バックの練習もしつつ、相手によって4バックの方が良い時はそれもできるようにしたいです。もちろんバックだけじゃなくて、前に枚数が多い方が良いとかどんな関わり方が良いのかとか、色々なフォーメーションが使えるのはチームにとってプラスだと思いますし、ここからけが人が戻ってきたり1年生が力をつけることができてくれば、皇后杯予選が始まるにつれてメンバー争いも熾烈になってくると思いますし、そうなった方がさらにプラスな部分は多いと思うので、楽しみです。

――攻撃のかたちというかたちが見えてこない時間帯も多くあった中で、後藤選手が何度も縦パスを差し込んでいながらその後が繋がらないというシーンも見られました。どのように改善したいですか

 一度裏を見せることで相手のラインを下げることはまず一つあると思いますし、奥に差し込んだ時は相手も強くくるのは当たり前なので、その下のサポートをいかに早く作って崩していけるかというところが大事になってくるかなと思います。そういう崩しに関しては練習していてそこに入るようになったのはいいことだと思いますし、今日も何回か良いかたちは作れたと思うので、あとは突き詰めていくだけかなと思います。

――関カレ後期は2連勝と良いスタートを切りました。次のリーグ戦まではしばらく空きますが、どのような準備をしていきたいですか

 本当にこの後期開幕2連戦を勝ち切れたのは本当に大きいと思います。これまでの対戦相手は蹴ってくるタイプのチームでしたが、これから相手の方がボールを持つということもあると思いますし、相手のレベルも上がってくるので。前期はそういう本当に勝たなければいけない相手に勝ち切れないことも多かったですし、自分達も夏の期間で2、3段階上げていくことで、そういった相手との対戦や皇后杯予選などにも生きてくると思います。ただ今日はこの勝ちを得て、ここからが楽しみという気持ちが大きいです。

 

宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)

――宗形選手がPKを蹴るというのはあらかじめ決まっていたのでしょうか

 誰も蹴りに行かなかったので、「蹴っていい?」と言って蹴りに行きました。

――いざ蹴ることが決まってからどのような気持ちでPKに臨みましたか

 あまり(PKを)外したことがないので緊張せずにキーパーと駆け引きして、その駆け引きで蹴る前に勝てた気がしたので、落ち着いて決められました。

――試合全体を振り返って、セットプレーから失点した後半の立ち上がりをどのように振り返られますか

 自分たちは立ち上がりや試合の入りで失点したり、相手の圧に負けたりするシーンが今までの試合も多かったので、締めてはいたのですが、やはり一つ気が緩んだりとか、自分たちのミスでセットプレーを与えてしまったりとかは、これからまた修正しないといけないかなと思います。

――宗形選手はここ数試合中盤でのプレーが続いていますが、その点に関してはいかがでしたか

 あまり(位置取りが)落ちすぎたりするとバランス的にも良くないなと思っていて、そこの調節が結構難しいんですけど、相手状況もそうですし、蹴ってくるチームに対してやはりセカンドボールも大事になってきます。 守備の時にはボランチで、攻撃では1個前(のポジション)みたいなポジショニングとかの難しさっていうのは、自分の本職ではありますけど、難しさは結構感じているかなと思います。

――今日は試合全体でボールがなかなか落ち着かない展開が続いたと思うのですが、今日の試合で意識したことはどういうものがありますか

 自分は元々攻撃が好きなのですが、やっぱり守備のところでセカンドボールの回収だったり、 ファーストで競り勝つというところは自分が大学に来て伸ばせるなと感じた部分でもあったので、ファーストのヘディングの競り合いだったり、セカンドの反応だったりというところは意識して試合に入りました。

――関カレの次の試合まで空きがありますが、どういった準備をして臨みたいですか

 夏合宿に入るので、チームとしても1回空きはあるのですが、やはりそこでどれだけ自分たちのウィークポイントを詰められるかが結構重要だと思っています。暑さもありますし、自分たちの攻撃の形も完成してるわけではないので、もう一段階、形にとらわれるわけではないのですが、攻撃的なサッカーを展開していければと思っています。

 

﨑岡由真(スポ1=浦和レッズレディースユース)

――率直に試合を振り返っての感想をお願いします

 後半からの出場だったのですが、点を取って勝利につなげることができてとてもうれしく思います。

――後半頭からの出場でしたが、ピッチに入る際はどのようなことを考えていましたか

 前半で全員がたくさん走ってつないでくれた交代だったので、自分としては得点に絡むプレーをしたいという思いで試合に入りました。

――起用されたポジションも流動的でしたが、それぞれでの手応えはいかがでしたか

 最初右サイドで、途中から左サイドになったのですが、どちらのポジションでもクロスがファーサイドまで上がってきた時には絶対に突っ込んで、得点というところを意識していました。

――PK獲得のシーンは左サイドで敵陣深くまで入り込んだ結果、相手のハンドを誘発されましたが意図したかたちでしたか

 こぼれ球が目の前に来たので、ゴールの枠に入れるようふかさないように意識してシュートを打ったら、(相手の)手に当たったという感じでした。

――逆転弾となる貴重なゴールを決められましたが、得点シーンを振り返っていかがですか

 1タッチした時にゴールはあまり見えなかったのですが、後は足を出して気持ちを込めて決めたゴールでした。

――関カレ初ゴールとなりましたが、そこについてはいかがですか

 決勝点を取れたというのはうれしいですし、個人的にも関カレ初得点というところで、すごく記憶に残る試合になったと思います。

――終盤に逆転することができ、チームとしてもとても大きな1勝になったと思いますが

 後ろからもたくさんのチームを鼓舞するような声が出ていたので、それに乗って諦めずに最後まで一人一人が役割を果たして走り切ったことが、ゴールにつながって勝利という結果になったと思います。

――ここからの戦いに向けての意気込みをお願いします

 今回、個人的には初ゴールを決めることができたのですが、もっともっと点を決めて、チームに貢献できるような存在になっていきたいです。