2点リードからまさかのドロー決着 関カレは4位で折り返し

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 1-0(前半)
1-2(後半)
大東文化大
【得点】
(早大)13分:宗形みなみ、68分:三谷和華奈
(大東文化大)74、75分:粟田桃子

 関東大学女子リーグ(関カレ)は6月の対強豪連戦を終えて、第11節・大東文化大戦を迎えた。ア式蹴球部女子(ア女)は序盤から主導権を握り、13分にはペナルティキック(PK)をMF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)が決め先制。68分にも右サイドをきれいに崩しきり、MF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)が追加点を挙げる。しかし74、75分に自陣でボールを奪われたところから、いずれもドリブルから決められ同点に。その後はア女が攻め続けたが得点は遠く、関カレの前期最終節は2-2のドローに終わった。

 

この日関カレでは3節ぶりのスタメンとなったDF田頭花菜(スポ3=東京・十文字)。プレスを受けながらも中盤への積極的な配球が目立った

 この日は、これまでの関カレの戦いからシステム人選共に、大きな変化があった。昨年後期終盤から採用していた3バックでなく、4-3-3でセット。チームの精神的支柱でもあるMF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)が最終ラインに、MF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)が右ウイングに入った。この新たなシステムでのパス回しが相手にも刺さり、ア女が試合のペースを握る。12分には左サイドでパスをつなぎ、MF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)、MF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)とつないで、最後は中盤に上がってきた後藤がシュート。惜しくもブロックされたが、前節にもみられたようなシームレスな関わり合いでリズムを作る。すると13分、エリア内での宗形のドリブルが相手のハンドを誘発しPKを獲得。宗形が冷静にゴール左下隅に流し込んで、先制に成功した。飲水タイムを挟んで、MF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)を左ウイングに移すと、ア女の攻撃はさらに活性化。27分にはコーナーキック(CK)に合わせた築地の強烈なヘディングシュートが枠に飛んだがクリアされる。その1分後には左サイド、三谷が相手守備陣をものともせず高速ドリブルで突破しシュートを放つが、左サイドネットに飛んだ。

 

右サイドでドリブルをする新井。関カレでは開幕戦以来のスタメン入りを果たした

 1点リードのまま前半を折り返したア女は、後半もボールを保持し試合を優位に進める。48分には後藤からのロングボールを左で三谷が受けると、中の築地、そして右サイドの新井へ。新井が落としたところに、右後方から上がってきた杉山が相手ディフェンダーとぶつかり合いながらもシュートを放ったが、惜しくもわずかに枠の左に外れた。追加点が欲しいア女は、55分、64分にFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)、FW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)を投入する。すると68分、右にポジションを受けた三谷が、またも後藤のロングボールを受けてドリブルを開始。途中交代の千葉をおとりに使い、中の宗形とワンツーパスでゴール前に抜け出すと、落ち着いてニアに決め2-0に。大勢は決したかと思われたが、直後に落とし穴が待っていた。飲水タイム後の74分、相手のロングボールに余裕をもって対応した後藤に強烈なプレスがかかる。コントロールが乱れたところを奪われ、そのままゴール前まで運ばれると1点を返されてしまう。その直後、今度は田頭のパスを奪われると、そのまま相手のドリブルによる侵入を止めることができず失点。一気に追いつかれる、ア女にとっては最悪の展開となった。その後はア女が再び相手ゴールを攻め立てたが、相手の堅守に苦戦。それでも80分には後藤の縦パスに下りてきた宗形、築地とつないで千葉へ。キープした後の落としを築地が左足ダイレクトで狙ったがわずかに枠の右。90分のCKでも、こぼれたところを後藤が詰めたが得点とはならなかった。

 

2得点目直後、喜ぶ選手たち

 この日の結果でア女は、関東女子リーグ、関カレ合わせて5戦勝ち無し。関カレは、6勝3敗2分けの4位で折り返すかたちとなった。ここまでのア女は、課題はありながらも、堅実な戦いぶりで勝ち点を積み重ねてきた。しかしこの日は、2点のリードから追いつかれた。関カレにおいて言えば、昨年も含めア女が先制したところから引き分けに持ち込まれるケースは少なく、今季はこの日まで一度もなかった。この結果はア女の戦い方、マインドの見直しを促すものと言えるのではないだろうか。今季の目標は「皇后杯(全日本女子選手権大会)ベスト8」、「インカレ(全日本大学女子選手権)優勝」の二つ。現時点のア女は、この二つの目標を達成しうる体をなしているとは言い難い。言うまでもなく、ここ数節で監督や選手たちも口にしていることだ。長くはないが、リーグ戦は一時中断期間に入る。ひょっとすると今シーズンにおいて、いかなる試合よりも重要なポイントになってくるかもしれない。大学女子サッカー界で2番目のインカレ優勝回数を誇る強豪として今、本当の意味でのア女の「強さ」が問われている。その答えを見つけ出すまでは、もがきながら一歩ずつ進んでいくしかないだろう。それに足る強さ、向上心、どん欲さを、きっとこのチームは持っているはずだ。

(記事 大幡拓登、写真 飯田諒、近藤翔太)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
MF ◎後藤若葉 スポ4 日テレ・メニーナ
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
MF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→64分 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
MF 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→55分 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
◎=ゲームキャプテン
コメント

MF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)

――今日の試合を90分間振り返っていかがですか

 自分たちのプレスの時間のほうが長かった中で、勝ち切れなかったというのが今の自分たちの弱いところが出た試合だと思います。東洋大、帝京平成大と続いて勢いに乗り切れない試合が続いている中で、ここで一回前期が終わり自分とチームを見つめ直す時間があるので、そこはいいことかなと思います。

――前半はア女がチャンスをたくさん作ることができていましたが、前半を振り返っていかがですか

 入りからいいプレスだったとは言えないかなと思います。得点もPKでしたし、ビルドアップもマイボールではあったもののゴール前までいい形を作れていなかったです。自分としてはアンカーでチームの舵取りをできるポジションにはいたので、ビルドアップのラインに一つ(ポジションを)落ちたり、味方にスペースを開けたり、前の人をどう動かすのかであったり、そういうところの気づきをもう少し早くできていれば、前半からもう少し早く点を取れたのかなと思います。

――後半は失点してから一気に行かれてしまいました。振り返っていかがですか

 攻撃の形が連動してできてきた中で、失点の後の気持ちの部分であったり、個人個人が失点後にどういうプレーをするのかであったりというところで、チームとして同じ方向を向けなくなってしまいました。失点の後にそれぞれが自分の考えで何とかしなければとなってしまうのが、失点後にア女のサッカーができなくなってしまう要因なのかなと思います。一人一人の責任感はありますし、やらなければという意識はあると思うのですが、そこが同じ方向を向かないとチームとして強くなっていかないなと思います。自分自身も、自分で何とかしないという部分はあったので、もう少し冷静に周りを見られる選手にならないといけないと思います。

――今日のシステムはこれまでとは少し違う構成でしたが、意識したことはありますか

 たがし(田頭花菜、スポ3=東京・十文字)やみゆき(新井みゆき、スポ1=三菱重工浦和レッズレディースユース)も入ってきた中で、その人たちが思いっきりプレーできるような空気をゲバから作ることを意識しました。個々が自分の力を発揮できることが一番大事かなと思うので、そういう雰囲気を作りつつも気は遣わずにという感じで。たがしともサッカーの感じは合うので、プレーや戦術面に関してはあまり意識せずにやっていました。

――関カレ前期は最後、3戦勝利がなく終わりました。ここからどのように改善していきたいですか

 チームが1つの方向を向けるように、自分が核にならないといけないという思いはあります。あとは気持ちの部分が大きいと思うのですが、トラップなど個人の技術ももっとこだわっていかないと思います。優勝を目指しているチームなので、そういうところを突き詰めていかないといけないと思います。

 

MF宗形みなみ(スポ2=マイナビ仙台レディースユース)

――まず試合を振り返っていかがですか

 前半良い入りができた分、後半は相手の勢いに押されてしまいました。2―0というスコアが一番危ないとサッカーでは言われている中で、このような展開になってしまったのは、最後まで点を取りに行く気持ちが足りなかったからかなと思います。

――前半はア女が多くチャンスを作り出していましたが、振り返っていかがですか

  前半は相手がブロックを引いた中で、ショートパスを織り交ぜながら(ボールを)動かして攻めることができたという印象です。

――ご自身のPKについてはいかがですか

 自分が蹴るかは分からなかったのですが、最初は誰も取りに行かなかったので、蹴りに行こうと思いました。いつも左側に蹴るので、落ち着いて決めることができました。

――後半は、1失点目から一気に追いつかれましたがそこについてはいかがですか

  帝平戦(帝京平成大学戦、6月24日、●0-4)でも、1失点した後の流れが悪いという反省点が出た中での今日の2失点目なので。誰が悪いとかではなく、チーム自身で3点目を取りに行くという攻めの姿勢が足りなくて、少し後ろで気が緩んだのが大きいかなと思います。

――今日は今季これまでとは異なる少し低い位置でプレーをされていましたが、違和感なくプレー出来ましたか

  インサイドハーフという、自分が一番得意としているポジションをやらせてもらいました。最初は、相手のセンターバックと中盤のライン間で受けることを意識していたのですが、相手も絞ったりブロックしたりと対応してくるので、相手を引き出すというのを考えながら周りとつなげるようにしました。自分のキック精度や崩しのアイディアでも、もう一個この試合で攻めに関わってシュートの形までもっていきたかったですけど、楽しくはできたのかなと思います。

――関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)前期は3戦勝ちなしになりました。今後どういったことを改善していきたいですか

 前期が終わったので、少しの期間ですが自分たちの個のレベルを上げた上で周りとの連携を高めて、前期とは全く違うチームとしてのやり方を作っていかなくてはいけないなと思います。