第29回関東女子サッカーリーグ | ||||
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早大 | 1 | 0-0(前半) 1-0(後半) |
0 | VONDS市原FCレディース |
【得点】 (早大)76分:崎岡由真 (VONDS市原FCレディース)なし |
関東女子リーグ(関東リーグ)は第5節、ア式蹴球部女子(ア女)はアウェイ、VONDSグリーンパークに乗り込んだ。試合は序盤から相手にボールを握られ、我慢の時間が続く展開。しかし後半に入り迎えた76分、MF大森美南(スポ4=東京・八王子学園八王子)のクロスに反応したMF﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)が、エリア内で倒されPKを獲得。これを崎岡自ら決め、先制に成功。85分には逆に、相手にPKを与えてしまうがポストに救われる。最後まで猛攻を耐えしのいだア女は、“ウノゼロ”で今季関東リーグ初勝利を挙げた。
得点を喜ぶ選手たち
この日のホームチーム、VONDS市原FCレディース(VONDS)は第4節終了時点で2位。勝ち点はトップに並ぶ、リーグ屈指の強豪と会敵した。序盤から相手にボールを握られる展開が続くも粘り強く対応するア女。3分に右サイドの大森がクロスを上げチャンスを作ったが、それ以降は守りの時間が続いた。それでも「相手の時間が長くなるのは大前提」(後藤史監督、平21教卒=宮城・常盤木学園)と、意図的に相手にボールを持たせたうえで勝機をうかがう。37分には好位置からのフリーキックを獲得すると、DF田頭花菜(スポ3=東京・十文字)のキックから波状攻撃を繰り出す。それでもシュートは遠く、劣勢の展開を強いられながら前半をスコアレスで折り返した。
フリーキックを蹴る田頭。怪我からの復帰戦となったが、安定感のある守備でチームを締めた
後半に入っても相手ペースは変わらない。それでも「悪いイメージをもたないで、ワンチャンスでも狙っていこうというのは話していた」と大森。中盤以降で激しいプレスを展開し、決定的なシュートを許さない。70分にはフリーキックからMF川本美羽(スポ1=新潟・帝京長岡)のボールに田頭が頭を伸ばしたが届かず。72分、DF藤田智里(スポ4=神奈川・大和)の右後方からのパスにMF大森美南(スポ4=東京・八王子学園八王子)が飛び出す。大森が上げたシュート性のクロスはゴールに向かったが、キーパーに正面で抑えられた。徐々に右サイドからチャンスを作り始めた終盤、76分。右サイドに張った大森が、相手マーカーを欺きするりとスクリーン。ファーサイドに送ったクロスには、走ってきた崎岡が反応した。その崎岡がエリア内で切り返すと、逆サイド後方からの意外な伏兵に慌てたか、相手DFは思わずファウル。これにはPKのホイッスルが鳴った。プレッシャーのかかる場面だったが、倒された崎岡が迷わずスポットに立ち、しっかりと決めて1-0。値千金の先制点となった。85分には相手にもPKを与えるが、右ポストに救われ失点を免れる。最後まで守備陣が集中を切らさず、結局1-0のまま試合は終了。リーグ上位から、貴重な勝ち点3をもぎ取った。
「あまり緊張せず、自分を信じて蹴った」(崎岡)。ルーキーながら強心臓の持ち主だ
この日ア女は、関東リーグでの今季初勝利。試合後の選手たち、ベンチのスタッフにも満面の笑顔とハイタッチが見えた。相手はフィジカル、技術共に高水準で、決して勝ち筋の多いゲームだったとは言えない。それでも勝利に対するどん欲さが、あるいはチームに貢献せんとする必死さが、わずかに相手のそれを上回ったのかもしれない。この日のヒロインの言葉に、集約されているものがある。「今日の勝利は全員でつかんだ勝利」(崎岡)。細き流れも大河に。全員の「あと1歩」が勝利へ。
(記事、写真 大幡拓登)
スターティングイレブン
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 21 | 田村亜沙美 | スポ1 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18 |
DF | 5 | 田頭花菜 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 15 | 小林舞美 | スポ2 | ちふれASエルフェン埼玉マリ |
DF | 17 | 藤田智里 | スポ4 | 神奈川・大和 |
MF | 28 | 﨑岡由真 | スポ1 | 埼玉・浦和レッズレディースユース |
MF | 8 | 白井美羽 | スポ3 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
MF | 12 | 大森美南 | スポ4 | 東京・八王子学園八王子 |
→90+2分 | 20 | 澤田美海 | スポ3 | 栃木・宇都宮中央女 |
MF | 18 | 栗田彩令 | スポ3 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
→63分 | 22 | 阪本環 | スポ2 | 日体大FIELDS横浜U18 |
MF | 19 | 淀川知華 | 商2 | 山梨・日本航空 |
MF | 29 | 川本美羽 | スポ1 | 新潟・帝京長岡 |
FW | 26 | 千葉梨々花 | スポ1 | 東京・十文字 |
◎=ゲームキャプテン |
コメント
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
――会心の勝利でした。興奮冷めやらぬという感じですが、振り返っていかがですか
とにかくよく頑張ったと思います。それぞれが自分のやるべきことを90分間やり通してくれたゲームでした。
――フィジカル、技術など、相手はかなり手強かったように思いますがいかがですか
非常に個々の技術もフィジカルも高いレベルにあるチームで、加えて戦術的にもダイレクトでつないできたりと非常に厄介な相手でした。スカウティング班がしっかりと分析してくれましたが、「すごく強いチームだよね」という共通認識は持っていて、上位を走るチームだという印象を受けました。
――ボールをもたれる中でも中盤以降は球際もかなり強く、堅い守備を展開できていたと思います
持たせる、というか相手の時間が長くなるのは大前提でした。ただ記録を見ると被シュートは8本。体感的にはもっと打たれていてもおかしくないと思うのですが、最終ラインが細かく(ラインを)上げてくれていたからオフサイドが取れましたし、中盤も締めるところをしっかりと締めてくれていたから体感以上の結果が出たのだと思います。
――今日は前節から立ち位置に変更があったかと思いますが
相手の中盤が3枚で、アンカーのところをフリーにさせてしまうと、せっかく追い込んでもサイドを変えられてしまいます。相手のアンカーの14番の選手が東洋大戦でも起点になっていたので、その選手をとにかく抑えておけばある程度サイドを限定できるので。中盤の3枚がしっかり押さえに行ってくれました。加えてセンターバックの2人が戻ってきてくれて、復帰戦でよくあれだけのプレーをしてくれたなと。お互いにカバーし合いながら、最後の最後で打たせない守備をし続けてくれました。中盤も含めて、中央のラインがしっかりしてくれていたのは大きかったですね。
――今日はほとんど関東リーグメンバーのみで勝ち切ったという意味でも、大きな勝利だったと思いますがいかがですか
本当にその通りだと思います。やっぱり守備的に入るというところで、「殴り合い」のサッカーではないじゃないですか。前節のレイア戦、その前の神大戦、東洋大戦もそうですが、最後勝ち切れないというゲームが多かったと思います。普段の練習からどうしても関カレのチーム作りが、優先されているというわけではないですが、比重として重い中で、関東リーグのメンバーは日頃から悔しい思いもたくさんあると思うんです。とにかく今日は勝たせたい、みんなもきっと勝ちたい、というのは1番にあったので、今日のメンバーがスカウティング班も含めて準備して、それをピッチの中で体現してくれたかなと思います。やっぱりなんといってもこのメンバーで勝ちたかったので。この勝利は明日の関カレの選手たちにも絶対に届いているはずだと思います。やっぱり関東リーグが勝ってくれるとすごく大きいんですよね。どうしてもメンバーでいえば分かれていますが、やっぱり1つのチームなので。今日の勝ちはきっと明日につながると思います。
――ここまで内容面が良くてもなかなか結果がついてこないという中で、ようやく結果を手にすることができたという印象です。逆に内容面で課題になる部分はありましたか
試合の後にも伝えましたが、後期はもっと自分たちらしい攻撃ができれば良いよね、と。今のカウンターも関東リーグらしい、良いかたちだとは思うんですけど、私たちはもっと攻撃の時間を増やせると思っています。後期の対戦の際には、もう1つ、2つレベルアップしたいなと思っています。
――明日の関カレ、そして次週の関東リーグに向けてどのように準備していきたいですか
千葉で土日連戦という、分かってはいたもののかなりタフな週末になります。ただこの結果、内容が明日のメンバーにものすごい力をバトンタッチしてくれると思うので、明日しっかり勝ち切って2連勝して終わりたいです。関東リーグ次節は筑波大戦ですが、勝ちにこだわりながら自分たちのサッカーに磨きをかけて、関東リーグでも積み上げていけるようにまたみんなで準備していきたいと思います。
大森美南(スポ4=東京・八王子学園八王子)
――見事な勝利でした。振り返ってください
全然勝てていなかったですし、自分自身もまだあまり試合に出ることができていなかったので、結果としても内容としても良かったと思います。個人的にも達成感の大きい試合になりました。
――今日の相手はフィジカル的にも非常に優れた相手だったと思いますが、前半の印象はいかがですか
やっぱり順位が上のチームですし、フィジカルも技術も勢いもありました。ただそれをしっかりと分かった上で初勝利を目指して、集中して試合に入ることができましたし、声も出ていたことでうまく戦うことができたと思います。
――相手にボールを持たれる時間は長かったですが、集中した守備で決定機を作らせるシーンは少なかったと思います
強い相手とやる時はいつも押し込まれる時間が長く、耐える時間が多いんですが、そこに関しては悪いイメージをもたないでワンチャンスでも狙っていこうというのは話していたので、気持ち的にもマイナスになることはなくプレーできていたと思います。
――得点シーンは大森選手のクロスからでした。一連のプレーを振り返っていかがですか
何度かサイドでもてるシーンはあったのですが、なかなかクロスを上げたりつなげたりできるシーンが少なかったので、思い切ってまずは中に入れよう、という気持ちで上げたらつながったので良かったです。
――これで関東リーグ初勝利になりました。レベルの高いリーグですが、ここからどのように戦っていきたいですか
きっとこれからもこういった押し込まれるゲームも多くなると思うんですが、今日みたいに耐えられるところはしっかり耐えて、ワンチャンスでもあったら決め切れるような、今日のような積極的な姿勢で勝ちを重ねていきたいなと思います。
﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)
――90分間振り返っていかがですか
前回の敗戦から、一人一人に最後まで戦い切ろうという気持ちがあらわれたゲームだったと思います。
――レベルの高いタフな相手でしたが入りから試合中盤にかけてどのように振り返りますか
入りからは前線がプレスをかけたら後ろもかけて、という連動した守備ができていたと思います。なかなかこれといったチャンスがなかった中で、全員が気持ちを切らさずに走ることがてきていたことが得点につながったのかなと思います。
――今日は左サイドバックでの出場でした
まずは守備面で失点をしないというところを心がけて、チャンスがあれば攻撃参加をして色々な部分で貢献したいなと思って試合に入りました。
――実際に得点シーンではサイドバックながら最前線まで上がってきて、というかたちでした
美南さん(大森)が絶対クロスを上げてくれるというのを信じて、気持ちを出して全力で中に入っていきました。
――PKのシーンを振り返っていかがですか
あまり緊張せず、自分を信じて蹴りました。
――キッカーはファウルを取られた選手が蹴ると決まっていたのですか
自分で蹴るって言いました(笑)。
――関東リーグでは初勝利になりました。ここからの戦いに意気込みを聞かせてください
今日の勝利は全員でつかんだ勝利だと思います。これからも緩めずにしっかりと戦っていきたいです。