20本超のシュート乱れ飛ぶも勝ち越しならず 強豪対決は痛み分け 

ア式蹴球女子
第29回関東女子サッカーリーグ
早大 0-0(前半)
1-1(後半)
東洋大
【得点】
(早大)64分:新井みゆき
(東洋大)54分:平原花珠

 関東女子サッカーリーグ(関東リーグ)は第3節を迎えた。序盤から前線のプレスがはまりア式蹴球部女子(ア女)ペースで試合は進んだが、54分に左サイドの突破から失点を許す。しかし64分、FW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のパスを受けたMF新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)のシュートが決まり同点に。最後までお互いがチャンスを作り続けた試合は、結局1-1のまま終了し、ア女の関東リーグは開幕から3節勝ち無しとなった。

 

左翼を担ったMF栗田彩令(スポ3=静岡・藤枝順心)。ドリブルからのクロスでチャンスを演出した

 雨上がりの東洋大板倉グラウンド。昨季ア女が1度も勝ち星を挙げることができなかった東洋大と、関東リーグ第3節で会敵することとなった。前半、ボールを握られる時間帯は多いものの、ア女が主導権を掌握。前線からの守備と、両サイドの突破からのクロスで多くのチャンスを作る。19分、FW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)のパスに飛び出した﨑岡のシュートは惜しくもキーパー正面。26分には最前線の2人に加え、両サイドと最終ラインの守備から波状攻撃を繰り出すと、最後は千葉が合わせる。シュートはゴール右に外れたが、この日の歯車の噛み合いぶりを象徴するシーンであった。一方、40分にはコーナーキックを与えるなどピンチも。それでもセットプレーから2失点を喫した前節の教訓が生きたか、集中した守備でシュートを打たせない。結局前半45分はこのまま終了し、0-0で後半に突入することとなった。

 

前日の試合にフル出場を果たしながら後半45分を戦ったDF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)

 「1点取れればいける、という意識は各々持っていた」とDF田頭花菜(スポ3=東京・十文字)。後半から投入された夏目のコーチングも冴えわたり、前線からのプレスにさらに勢いがついた。先制点も遠くないかと思われたが54分、左サイドから突破を許し上がったクロスを中で詰められ0-1。手痛い先制点献上となった。それでもア女は一切勢いを緩めず、むしろさらにギアを上げ攻勢を強める。すると64分、左サイドの栗田からパスを受けた崎岡が、逆サイドの新井へ。パスを受けた新井が寄せられながらも落ち着いて右足を振り抜き、貴重な同点ゴールを挙げた。その後はハードワークと統一されたプレスで次々にボールを奪い、チャンスを作る展開に。73分には千葉が自ら持ち込みシュートを放つがキーパー正面。75分にもゴール前の混戦から新井が詰めたがミートできない。一方ハイラインを維持しているがゆえに、カウンターからピンチを迎える場面も。79分には裏を取られ決定機を与えてしまうが、GK丸山翔子(スポ3=スフィーダ世田谷FCユース)が至近距離の連続セーブでチームを救った。互いが攻め合った90分間の死闘は、両守護神の活躍もあり決着がつかず。ア女は追いつくことはできたものの、悔しいドロー決着となった。

 

同点ゴールを決めた新井。本人はサイドが主戦場と話すがゴール前で見せるクイックネスも魅力

 2023シーズンが開幕した4月、最後のゲームとなった。ア女は15本のシュートを打ちながら勝ち切ることができず。しかしこの日同点に追いついてからのア女は、シーズン開幕以来最もエキサイティングなサッカーを展開していた。厳しい日程の中、2つのリーグ戦を戦う意味。ただ単に実践経験を積むこと、チームに競争を生むこと以上のそれが、この試合で垣間見えた。「前節の神大戦よりも自信を持って戦えている部分が見られた試合だった」と指揮官。自信をもって時に泥臭く。今季もア女は一歩ずつ、間違いなく前進している。

(記事、写真 大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 丸山翔子 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
DF 田頭花菜 スポ3 東京・十文字
DF 13 木南花菜 スポ3 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 17 ◎藤田智里 スポ4 神奈川・大和
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
→HT 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
MF 18 栗田彩令 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→64分 20 澤田美海 スポ3 栃木・宇都宮中央女
MF 27 新井みゆき スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
MF 29 川本美羽 スポ1 新潟・帝京長岡
FW 26 千葉梨々花 スポ1 東京・十文字
FW 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
→85分 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
◎=ゲームキャプテン

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――悔しい引き分けだと思いますが、振り返っていかがですか

 前半開始時から狙いどころでボールを奪ってゴール前までいけているシーンが何度もあった中で、なかなか決められない、勝ちきれなかった試合ですね。

――関東リーグは関カレの布陣と少し異なっていると思いますが、戦術的に違いはありますか

 もちろんシステムによる違いはありますが、相手のプレスによって異なると思いますし、一貫しているものがある中で細かく変えているというイメージです。

――前半から前からボールを奪いにいくシーンは多かったですが、後半は特にテンション高く行けていたような印象でした

 もともと狙いどころをしっかりと決めて、前半の入りから梨々花(千葉)とかが高い位置で(相手のボールを)奪えていました。関東リーグに参加している多くのチームはプレスがハマった時にロングボールを蹴る傾向があるので、そういった部分を後半から入った夏目もよく理解していたと思いますし。対応されてしまうとリスクにもなりますが、夏目が前線の選手に対して声をかけて(プレスに)行くタイミングを整備してくれていたので、前半最後の方からもできてはいましたが、そういった戦い方がよりできるようになったと言う感じです。

――今日の試合の総走行量はかなり多いと思いますが、意識して伝えた部分ですが

 走らなければいけないということは全員が分かっていたとは思うんですが、例えば前半もっと声をかけあえればタイミングよく誘導できている部分だったと思うので。先ほど話した通り後半はそれがうまくできていて、両サイドに振られることが少なかったんですが、前半は振られて走らされる、というシーンが多かったんです。相手がどうこう、というよりはうち(ア女)の声かけのタイミングや質の問題で、今日は走るよ、アラートにスライドするよ、という前提は持ちながらも、もっと自分たちで誘導して守備ができれば良かったかなと。ここから関東リーグ、関カレでも同じ相手とまた戦うので、次はまた一つ質を上げてやりたいなと思います。

――関東リーグは未だ勝利がないと言う状況です。どのように改善していきたいですか

 もちろん結果は大切なので意識はしていますが、前節の神大戦よりも自信を持って戦えている部分が見られた試合だったと思います。じゃあ今度は決め切るために、勝ち切るためにチームに何が必要なのか。今日みたいな試合を「悔しかった」で終わらせずに、普段からの基準みたいなものを各自が一つ一つ上げていかないといけない。チームとしては良かったかもしれないですけど、個で見たら一発で中に行かれていたり、向かせちゃいけないところでターンさせてしまっていたりというシーンは少なからずありましたよね。そういった課題に向き合って、一人一人がどれだけ上げていけるかというところが、結局は結果につながってくるんだと思います。来週は関東リーグがないので、選手たちは成長する時間をもらえたと思って詰めていってほしいですし、必ずそれを結果につなげていってほしいです。

 

田頭花菜(スポ3=東京・十文字)

――率直に90分間振り返っていかがですか

 やっぱり今年のチームは失点を0で抑えるということが大事になってくると認識していた中で、先に失点してしまったというのはディフェンダーとして悔しい思いが大きいです。1点取れれば勝てた、と考えると余計に悔しいです。

――前半から前から奪いに行く姿勢を見せていましたが、後半はより強度が上がった印象がありました。なにか要因はありましたか

 前半を戦ってチャンスも結構作れていましたし、1点取れればいける、という意識は各々持っていたと思います。その中で後半もう一つギアを上げて戦おうということをハーフタイムに話して、後半に入ることができたのが大きかったかなと思います。

――最終ラインでビルドアップに関わる中で意識したことはありますか

 相手のハイラインに対して2トップを並べている分、相手の背後を取りやすいかたちではあったので、裏を狙うことは常に意識していました。

――タレント豊富なディフェンダー陣の中でのポジション争い、意識していることはありますか

 3バックをやる上で守備が一番ベースになっていると思っていて、自分は今関カレメンバーに比べてそこが足りていないなと思います。それを課題として改善しつつ、自分の良さである左右のフィードを生かしたビルドアップというところはもっと伸ばしていきたいです。

――今季関東リーグは未だ勝利がないですが、このシーズンをどのように戦っていきたいですか

 今季は1点の重みをすごく感じています。まずはディフェンダーとして失点を0に抑えつつ、目の前の相手に必ず勝つ、ということを意識してやり続けていきたいなと思います。

 

新井みゆき(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)

――ゴールシーンを振り返っていかがですか

 「今日は絶対に勝ちたい」という思いで臨み、ハーフタイムにもチーム全体で気持ちが上がっていた中で、後半頭に失点してしまいました。その時は気持ちが落ちかけたのですが、(ゴールシーンでは)絶対に自分が決めてやろうという強い気持ちを持ってシュートを打ちました。

――互いに攻め合ったゲームでしたが、90分間振り返っていかがですか

 押し込まれる時間もあった一方で、多くチャンスを作ることができ、五分五分の展開になりました。どちらが一度のチャンスを決めるかが勝敗を分けるポイントだったなと思いますし、多くのチャンスを作りながら決め切ることができなかったのが悔しいです。

――ア女に入って数ヶ月、どのような印象を持っていますか

 ユース時代と大きく違って3つ上の先輩までいるので人数が多いです。スピード感も違いますし、やはり1番驚いたのは全員左右両足のキック力があるという点ですね。サイドチェンジも積極的にできますし、そういった展開の早さはユース年代にはなかったものがあると感じます。フィジカル的なところやキックなど、自分の課題を見つけられますし、刺激を受けられる良い環境だなと感じます。

――今日のようなゴールもそうですが、どのようなプレーでチームに貢献していきたいですか

 自分はサイドでの攻撃が長所なのでそこを生かしながら、アシストやゴールの起点になれたらなと思います。

――まだ関東リーグが始まって3節ですが、このリーグ、このシーズンをどのように戦っていきたいですか

 まだ1度も勝てていないので、相手より1点でも多くとって勝利をつかみたいと思います。