敵地で今季初勝利!! MF笠原の一撃で難敵・東京国際大沈める

ア式蹴球女子
第37回関東大学女子サッカーリーグ
早大 0-0(前半)
1-0(後半)
東京国際大
【得点】
(早大)85分: 笠原綺乃
(東京国際大)なし

 関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)第2節、ア式蹴球部女子(ア女)は東京国際大と対戦した。前半は相手の強度の高い守備と縦志向の強い戦術に手を焼き、主導権を握られてしまうア女。しかし後半に入るとサイドを大きく使った攻撃が機能し始める。そして85分、右サイドの裏を取ったMF三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)が中に折り返すと、駆け上がってきたMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)が合わせ1-0。この1点を守り抜き、辛くも東京国際大を下した。

 

得点を喜ぶ選手たち。今季初勝利を手繰り寄せる一発に、感情を爆発させる

 ゴールデンウィーク初日となった29日、関カレ第2節を迎えたア女はアウェイ・東京国際大坂戸キャンパスに乗り込んだ。前半は相手のロングボールを跳ね返した後のセカンドボール回収で後手に回り、押されぎみの展開に。9分にはミスパスを奪われピンチを迎えるが、今季関カレ初スタメンとなったDF堀内璃子(スポ4=宮城・常盤木学園)がブロック。11分にも中盤からの相手のロングシュートがポスト直撃と、序盤から危険なシーンが続いた。18分、DF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)の裏へのロングボールにMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が飛び出すがシュートまで行けず。35分には堀内からライナー性のロングパスが上がり、最前線で反応したのは再び白井。相手DFのブロックを受けながら打ったシュートはゴールわずか右にそれた。終盤にはコーナーキックからチャンスを作るも決定機とはならず。0-0で前半を折り返した。

 

この日最前線でスタメン出場となった白井。献身的なプレーで攻守共に存在感

 後半は前半と打って変わってア女ペースに。最終ラインでボールを握りながら、後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)が「うち(ア女)の武器」と称する右の三谷と、この日ウイングバックに一つポジションを上げた左のMF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)の、両翼の副将コンビを生かし攻勢を強める。55分、夏目からのロングボールが最前線のスペースへ。判断よく飛び出した相手GKのクリアボールを拾った三谷がすかさずロングシュートを放つが、惜しくもゴール右に外れた。流れをつかみながらもなかなか得点が生まれないゲーム終盤、85分。最後尾でボールを引き出したMF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)から、一気に右サイドの三谷へ浮き球のスルーパス。ライン際まで引っ張った三谷がマイナス方向へ折り返すと、タイミング良く走りこんできた笠原が右足一閃。ダイレクトにゴール左上隅に突き刺し、この1点が決勝点となるかたちで試合は幕を閉じた。

 

試合を決めた笠原。「『こい!』と思って走ったらピッタリのボールがきてくれた」

 この日ア女は、今季初勝利。試合後のイレブンには久しぶりの笑顔が見えた。「選手たち、特に4年生にとってはこの1勝はすごく大きかったんじゃないかと思う」と指揮官。選手もスタッフ陣も、勝利に「飢えていた」ことを改めて実感した様子だった。前節に同じくスコアレスも頭をよぎる苦しいゲーム展開の中、勝ち切ることができたことはチームにとっても大きな自信になったはずだ。もちろん新布陣も完成形とはいいがたい。それでも、見つかった課題を伸びしろと捉えられる堅実さとポジティブさを、このチームは備えている。「結果はやればきっとついてくるものなので」(後藤監督)。地に足をつけて、目指すは高みだ。

(記事、写真 大幡拓登)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 石田心菜 スポ3 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ4 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 25 杉山遥菜 スポ1 東京・十文字
MF ◎後藤若葉 スポ4 日テレ・メニーナ
MF 浦部美月 スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 笠原綺乃 スポ4 横須賀シーガルズJOY
MF 三谷和華奈 スポ4 東京・十文字
MF 10 築地育 スポ3 静岡・常葉大橘
FW 白井美羽 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→78分 28 﨑岡由真 スポ1 埼玉・浦和レッズレディースユース
FW 11 宗形みなみ スポ2 マイナビ仙台レディースユース
◎=ゲームキャプテン

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――素晴らしい勝利でした。振り返ってください

 東国さんの戦い方ははっきりしているので、それに対しての準備をしっかりしてきていたんですが、前半の入りはまだ硬さがあって、相手の勢いに少し押される時間帯も多くあったと思います。ただよくその時間を耐えて自分たちのペースに持ってきてくれましたし、前節は攻め続けて0-0で終わってしまったということを踏まえても、同じような展開の中で今日はよく勝ってくれたなと。焦れずにボールを大きく動かしながらやり続けてくれた結果、得点が生まれて、勝利に結びつけることができたというところには前節からの成長をすごく感じました。

――得点シーンは縦に速い、美しい得点でした。狙い続けた形でしたか

 どうしても真ん中は人が集中してしまう中で、右サイドの三谷といううち(ア女)の武器である選手を生かすことができた攻撃でした。若葉(後藤)と綺乃(笠原)という運動量の多いインサイドハーフがいて、底には育(築地)がどっしり構えてセカンドを回収してくれて。それができたからこそあやのがあそこに走り込んでいくことができたと思いますし、中盤のバランスがだいぶ取れるようになってきたという印象です。

――最前線の人選は前節から2人とも変更となりましたがどういった意図がありましたか

 今日は相手がロングボールを多用してくるのもあって、弾いたボールを収められるというか、拾ってもらうという意図がありました。由麻(崎岡)は動き出しも良く速いですし、みゆき(新井)は足元の技術もあって気の利いたところに入ってくるという良さもある一方で、セカンドボールの回収やフィジカル的なところも含めると、宗(宗形)と美羽(白井)、彼女たちの動かしながら前を向いてくれたり、相手の守備陣にも負けずにそこから展開していってくれたりという部分に期待して前線に起用しました。

――1年生も多く起用している中で、早いうちに経験を積んだ下級生がシーズン後半さらに頼もしい存在になり、調子が上がってくるという想像もできるかと思いますが

 もちろん今苦しんだりしないに越したことはないですが、色々な意味で苦しみながら勝っていくという戦い方は必ず皇后杯(全日本女子サッカー選手権)やインカレ(全日本大学選手権)につながってくると思います。

――1年生ながらスタメン出場し続けている杉山選手をはじめ最終ラインは今日も無失点でした。安心感はありますか

 杉山はプレシーズン、WEリーグクラブとトレーニングマッチをした際にもしっかりと戦えていたので、これは大丈夫だなと。まだ伸び代はありますが、ロングボールの処理やプレスをかけられた際の(パスの)つなぎ、三谷へのロングボールも落ち着いて蹴れますし、そういった意味では1年生ながら期待に応えてくれてクレバーに戦ってくれていると思います。最終ラインは相手の7番をしっかりと抑えてくれましたし、全体として非常に良かったと思います。

――関東リーグも含め今季の初勝利となりましたが、この勝利をどのように次につなげていきたいですか

 選手たち、特に4年生にとってはこの1勝はすごく大きかったんじゃないかと思います。もちろん結果が自信になるのは間違いないですが、結果だけでなく自分たちが積み上げてきている結果以外の部分も自信にして欲しいです。今日は喜んで良いと思うんですが、結果はやればきっとついてくるものなので。そのスタンスでチーム、個人ともに積み上げていってくれればと思います。

 

DF浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)

――見事な勝利でした。振り返っていかがですか

 公式戦が始まって3試合勝ちがなくて、チームとしても個人としても勝ちに飢えていたんだと思います。東伏見に残っている人たちの分まで絶対に勝って帰ろうという気持ちはあったので、率直に勝てて嬉しいです。

――今日はウイングバックでの出場でした

 自分の持ち味である運動量を生かせるのがウイングバックだということで、もっといけるんじゃないか、と史さん(後藤監督)とも話して今日はそこでプレーすることになりました。

――前半は押し込まれる時間も多く、これまでの試合を見てもチームとして少しスロースターターだという印象を受けるのですがどのように感じますか

 今日に関して言うと風の向きとかもあったとは思うのですが、スカウティングで相手が蹴ってくるというのは頭に入っていて、そこに慣れるのに少し時間がかかったと言うのはあると思います。ただチームとして焦れずにやっていこうという意識は共有できていたので、前半45分をしっかりと耐え抜いたかからこそあの後半につながったと思いますし、それが結果になってよかったです。

――ウイングバックを置いているというのもあってかなりピッチを広く使った攻撃も多かったと思いますが、チームとして意識している攻撃パターンですか

 育(築地)や若葉(後藤)など、サイドにボールを振れる選手が中盤にいるので、そう言った選手がボールを持った時はワイドに素早く動くというのは意識しています。ただ自分にボールが入った後にどうプレーするか、という部分は現時点での課題かなと思います。

――今季は副将としての立場で戦うことになりますが、なにか意識していきたいことはありますか

 副将をやらせてもらっている立場ではありますが、まずはア女の一員として、4年生の1人として、というところに「副将」という役柄が乗っかっているという認識をしています。当たり前のオンとオフの切り替えをしっかりしたり、そういった姿を下級生たちにも見せたりしていきたいです。あとは自分の性格上、言葉で場を締めるというよりは、色々な選手とコミュニケーションをとってというやり方が適しているとは思うので、チームの中で誰一人取りこぼすことなく広い視野を持ってチーム作りに貢献していけたらなと思います。

――次節に向けて、どんな準備をしていきたいですか

 難しい試合が続くとは思うので、関東リーグ、関カレ関係なく良い準備をしていきたいです。加えて昨年の6月にやった神大戦は負けてしまった記憶があるので、その分をやり返すじゃないですけど、1週間また良い準備をして勝利を積み重ねたいと思います。

 

MF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)

――ナイスゴールでした、振り返ってください

 若華奈(三谷)が右サイドを突破した時のクロスはいつも狙っていて、「こい!」と思って走ったらピッタリのボールがきてくれました。

――今季以前からマイナスのクロスやこぼれ球からのミドルシュートは増えていると思いますが、意識している部分ではありますが

 ロングシュートも前が空いていたら狙う、というのは意識していますし、若華奈のクロスも絶対に入れてくれる、と信じているので、そこはいつも狙っていますね。

――前半と後半で全く違う展開になりましたが、90分振り返っていかがですか

 前半は風の影響もあってセカンドボールを相手に拾われることも多く、苦しい展開が続きましたが耐えることができたのはチームとして大きかったのかなと思います。後半も内容が良かったわけではないですし改善点は多くありますが、勝ち切ることができたのは良かったかなと思います。

――中盤はかなりプレッシャーがきつかったかなと思いますが、どのようなことを考えてプレーしていましたか

 スカウティングからプレッシャーの強度が高いことは知っていたのでそこは意識していたのですが、個人的にはしっかりとボールを収めてサイドに展開したり、もっとできたかなという反省はあります。

――チームとして課題を挙げるとすればどういったところになりますか

 ボールを後方で保持することはできているんですが、そこから前線に繋げていく部分やエリア付近での崩しがチームの課題かなと思います。そこの質をもっと上げて、来週以降につなげていきたいと思います。

――最高学年として迎えるシーズン、どんな1年にしたいですか

 あっという間に4年生になったと言う感じです。やっぱり最後は悔いなくインカレの決勝を笑顔で終わりたいので、そこに向かって1日1日を大切に頑張っていきたいと思います。