WEリーグ・ちふれASエルフェン埼玉(ちふれ)は16日、FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)の加入内定を発表した。今季のア式蹴球部女子(ア女)からWEリーグクラブへの加入内定は、廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)とブラフ・シャーン(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)に次ぎ3人目となる。
2000年12月26日生まれ。身長は158センチ。2019年に日ノ本学園から早大に入学。ア女からは早くも今季3人目のプロ内定者となった
髙橋はア女でのラストシーズンとなる今季、10番を背につけ、主要大会である関東大学女子リーグ(関カレ)と皇后杯に全試合スタメン出場を果たしている(16日現在)。ここまで公式戦45試合という超過密日程の中、主力を中心に負傷者が続出しているア女だが、髙橋はここまで離脱なく戦い抜いている。その鉄人っぷりはプレースタイルにも表れている。最大の持ち味は豊富な運動量を武器に90分間通して絶え間なく繰り返す2列目からの飛び出しや推進力のあるドリブルだ。チームメイトも絶賛する加速力とスピードで一気に敵陣深くに入り込む。シュート能力も秀逸で後期は得点力が爆発。特に関カレ後期の強豪・山梨学院大戦で見せた2点目は圧巻だった。一方で、攻撃的な選手とは思えない守備力があるのも持ち味だ。主にトップやインサイドハーフとして出場するが、トップでは前線からのプレスで相手の自由を奪い、中盤ではプレスだけでなく体の強さを生かしてボールを奪い切る部分までを完結させられる。決して攻撃的なだけではない、献身性も兼ね備えている部分に魅力が感じられる。
山梨学院大戦のゴールはYoutubeでも見られるので是非見て欲しい
「きれいにやらなきゃとか、ゴールを決めなきゃとか、そういう思いでやってたからこそ空回りしてた部分があって」。2年3年と関カレベストイレブンに選ばれ、今年2月には関東大学選抜として大宮アルディージャVENTUS(大宮)相手にスーパーゴールも決めていた髙橋だが、その後は思うような活躍ができていなかった。ポジションが下がったことで生まれる感覚の違いも影響していたはずだ。それでも、「誰よりもハードワークすることだったり、目の前のプレーに全力を出すとか、一番大事なことを思い返した」と、復調へのカギをメンタル面に見つけた。以降、8月からは吹っ切れたように公式戦で8ゴールを記録し、直近の皇后杯でもなでしこ1部を相手に3戦2発。後期の活躍が今回のプロ内定を勝ち取るうえで大きなアピールになったことは間違いない。
早慶女子サッカー定期戦で、慶大選手5人に囲まれながら前進する髙橋。
現在は2トップの一角として相方・FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)と攻守で抜群のコンビレーションを見せている髙橋。17日には皇后杯ベスト8をかけた大宮戦が控え、12月末からはインカレ連覇への道がスタートする。WEリーグ内定者という新たなプレッシャーも加わるだろうが、4年間の有終の美を飾りWEリーグの舞台へと進んで欲しい。
そしてちふれは16日時点でリーグ戦6位につけている。昨季は最下位に終わったことを踏まえればチーム状態はかなり上向いていると言える。祐村ひかるや吉田莉胡など前線の個は強力で、もちろん加入後の激しいポジション争いは必至だ。一方で上位進出に向けてはさらなる得点力アップが必須。その意味でも髙橋にかかる期待は十分に大きい。ちふれの起爆剤となれるか―――。ア女戦士がまた一人、プロの世界へと羽ばたいた。
(記事・写真 前田篤宏)