MFブラフ・シャーン(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)とブラフ・フェイ(慶大ソッカー部女子主将)(以下シャーン、フェイ)。高校まで共にプレーした双子は大学でのプレーする地を早大と慶大に選んだ。ライバルとして過ごした大学生活も最終盤。早大は無敗継続へ、慶大は初勝利へまい進する。一方で、ブラフ姉妹が早慶戦という舞台で相まみえるのも今回がラストだ。最後の『早慶ブラフ戦』を前に、その思いを語り合う。
※この取材は10月25日に行われたものです。
右が早大のブラフ・シャーン、左が慶大のブラフ・フェイ
「自分らの性格の違いって何だろう…」(シャーン)
――まずプレー面から他己紹介をお願いします
フェイ シャーンはずっといろんなポジションをやってきたから、周りを見れたりいろんなポジションをできる順応性は高いなと感じています。大学に入ってからはCBとかボランチとかやるようになって、シャーンの試合とかよく見に行くけど、周り見れたり展開力があってチームを引っ張っていくプレーはうまいなと思います。
シャーン フェイはポジションが正反対というのもあって、FWとしてスイッチが入った時のギラギラ感がすごいなというのは感じます。集中力というか、絶対点を取るという気迫の強さは昔から一緒にやってた時も今もすごい感じます。
――双子はよく似ると言われますが、ポジションはいつごろから正反対になっていきましたか
フェイ 中2まで一緒だったよね
シャーン 2人ともサイドハーフだったんですよ。そこから自分はどんどん後ろに下がって行って、フェイは前に行って、みたいな。
――それはどういうものから生まれた差なんですか
フェイ 性格かも。
シャーン そうだね。めっちゃ性格かも。
――ちなみにどっちがお姉さんなんですか
フェイ 自分です。
シャーン でも自分の方がお姉ちゃんっぽいって言われます(笑)
シャーン フェイは抜けてるよね結構(笑)
フェイ シャーンの方がしっかりしてるかな。
――でも慶応のキャプテンされてるじゃないですか
フェイ いろんな人に助けてもらわないとできないというのはあると思います(笑)
――どういうキャプテン像を持ってますか
フェイ 自分が目指しているキャプテン像としては、ピッチに立った時に自分が背中で引っ張るというのは意識していて、ピッチ外でもプレーで結果を残すための行動だったり、全てをピッチの中につなげるように意識していて、サッカーに対する姿勢でキャプテンとしてチームを引っ張るのは意識しています。他の部分で副キャプテンの子や下の(学年の)子たちもいろいろ助けてくれるので、そういうところは頼りにしています。
――性格面の話が出ましたけど、プライベートの部分の他己紹介もお願いします
シャーン まじめで、何かをやるって決めたときの執着心はすごいなというのはあって…。自分らの性格の違いって何だろう(笑)。―――。根本の「まじめ」とかは結構似てるんですよ。何だろう――。自分の方が心配性?
フェイ そうだね。
シャーン やばい。他己紹介じゃなくなっちゃった(笑)。自己分析(笑)。フェイは思い切りがいいなと思います。やると決めたときの行動力とか、あんま迷わないよね。
――具体的なエピソードかありますか
シャーン 大学受験の時なんですけど、自分は早稲田を受けるって決めてて、フェイは慶応を受けるって決めてたんですよ。自分は早稲田の自己推薦で入るって決めてたんですけど、自己推薦で落ちても一般入試でも入れるような準備とか、センター試験申し込んだりとかもしてて。だけどフェイは慶応しか考えてなくて、AOを2回受けて2回落ちて、結局一般入試しかないってなって。でもセンターも申し込んでなくて(笑)
フェイ だからそこ(AO)落ちたらどうしようみたいなことをあんまり考えてなくて、慶応に行くって一つに絞ってたから絶対にやってやるみたいに、何とか入れた感じです。今のと逆で、シャーンはどんな時もいろんな選択肢、もしこれがダメだったらこうしようって先まで考えてるなというのはいつも思っています。多分サッカーでも性格は出てるところはあるかなと。リスク管理に部分だったり、だからポジションの違いもあるのかなと思います。
――ちょっとずつ分かってきましたね
一同 (笑)
――プレー面でここは似てるなっていうところはありますか
シャーン フィジカルの強さとかげディングが強いとかです。
――じゃあCKであえてマークを付きに行くとか
シャーン 絶対付きたい(笑)
フェイ 基本的に自分が一番強い人に付くので多分シャーンになるのかな。
シャーン 自分もそうかな。
フェイ 前の早慶戦もそうだったよね。
シャーン 自分は最近CKから決めれてないんで絶対決めたいなって思います。
「離れたとしてもずっとシャーンの事を意識したい」(フェイ)
――今少し話に出ましたけど、高校まで一緒にやってた中で、早稲田に行く、慶応に行く、となった理由は何がありましたか
シャーン 自分は早稲田のインカレとか高校から見てたりして、すごい強くて憧れがあったから絶対に早稲田と決めていて。
フェイ 自分はずっとサッカーやってきてから高校までずっとシャーンと一緒で、自分的にシャーンに頼っちゃった部分があって、そこからシャーンから離れてサッカーしたい、シャーンから離れて生活したいと思っていました。今思えば離れて自分のいろんな面で成長できたところがあるなと思って。で、なぜ慶応にしたかって言うと、「離れたとしてもずっとシャーンを意識したい」、というのはあって一番ライバルなのは慶応かなと思って選びました。
――早慶のライバル校同士に行くことに対して周りの人はどんな反応してましたか
フェイ 早慶戦とかなった時にどっちの席に座ろう、みたいなのは結構話してました。
――早慶戦前とかって家の空気とかってどんな感じなんですか
シャーン みんなにすごいバチバチしてるって思われるんですけど、普通だよね。
フェイ でも絶対にぼこぼこにしてやるとかは話してます。険悪ではないです(笑)
――直近ではいつ直接対決ありましたか
フェイ 定期戦じゃないけど、去年の関カレの前期でやりました。
――マッチアップはありましたか
フェイ 自分が1年生の時にサイドハーフで、(シャーンは)サイドバックで直接対決しました。
シャーン でも一瞬だったよね。
フェイ 自分が後半途中から出て、シャーンが前半から出て後半途中で交代したんで、10分くらいしかマッチアップできなかったです。
――その10分間敵として戦って、それぞれどういう印象持ちましたか
シャーン 双子で対決してるから友達とかが見に来たりするから、絶対負けたくないみたいなのがあって。だから余計に力んじゃって、フェイが入ってきた瞬間に「うわぁ」みたいな感じでそこしか見えなくなったというのはあります。
フェイ 自分も似てますね。めっちゃ意識するんで、「絶対突破してやる」とか「絶対負けねぇ」みたいなのはあるけど、自分の場合はその集中力がプラスになることがあるなと思うので、今回はすごく楽しみです。
――今は前線ではどの位置でプレーしてますか
フェイ トップでやってるんですけど、(シャーンの)ポジションが分からないんで。願望としてはCBで出て欲しいなって(笑)
――もし右SBで出るとなったら積極的に(慶応の)左サイドに
フェイ 流れそうだな(笑)
――今回の『早慶ブラフ戦』、どういうふうに戦いたいとかはありますか
シャーン とにかく自分らのバチバチ感を見てる人に見せたくて。なかなかないじゃないですか、早慶で双子でっていうのは。だから本当に大学ラストの早慶戦になるし、とにかく熱く戦っているところをいろんな人に見てもらいたいなというのはあります。
フェイ 最後の早慶戦で、見に来てくれる人も今の時点でたくさんいて、1年生からやってきた中でずっと早稲田が勝ってきて、最後は勝ちたいなってめっちゃ思うし自分が結果を残して勝ちたいなって思うのと、この先も戦うかもしれないけどライバル校としてシャーンと戦えるのが最後になると思うから、そこは全力で楽しんで、ちょっと…ボコしたいなぁって思ってます(笑)
関カレ後期1節でプレーするブラフ・シャーン
「最後まで慶応に恩を返していかないといけない」(フェイ)
――ここで今季について振り返っていただこうと思います。シーズンも終盤ですけど、ここまでどう振り返っていますか
シャーン 前期は順当に勝ってたけど、後期になって今は全然うまくいかない状況だし、けが人も多かったりして。これから皇后杯とかインカレとかにつなげていくためにも今の時期って一番大事だし。今こういう時期があるからこそ自分らもレベルアップできるチャンスでもあると思うので、いろんな事があったシーズンだったし、これからもいろんなことあると思うけど、最後の皇后杯とインカレにつなげていけるように、と思います。
――いろいろ聞いてる中で、今季の早稲田にはどういう印象を持っていますか
フェイ 試合を見に行ったりしてるけど、今の結果だけ見ると早稲田にしては珍しく勝ち続けてないなというのは感じてるけど、見に行った時の感想としては全員がハードワークしてるチームだなというのは見てて感じるし、ピッチの中で全員で戦い方、イメージの共有をして組織で戦ってるな、というのは感じます。
――シャーンさん以外に印象に残る選手はいますか
フェイ キーパーの澪菜(近澤澪菜副将、スポ4=JFAアカデミー福島)が印象にあります。理由としてはキックがすごい飛ぶというので、押し込まれてもキックの精度でひっくり返せたりする場面があって、それは結構強みなんじゃないかなと思います。
――逆に慶応の今季はどういう1年になってますか
フェイ 去年2部に降格して今年は絶対に昇格という目標を立てたんですけど、やっぱりそんなに甘くなくて。前期は自分たちの思っていた結果とは全然違うくて。折り返した時点で4位だったかな。後期に入って徐々に勝てるようになってきて。でも昇格は無理なラインなんですけど、今になってチームの戦い方が浸透して来て、2部の上位の相手に対しても後期は勝ったりしてるので、今は調子はどんどん上がってる状況かなと思います
――注目選手はいますか
フェイ CBで1年生の小熊(藤子)、スフィーダの後輩でもあるんですけど。今年入って1年生ながらでフェンスを引っ張っていて、ピンチも防いでくれていて、そこは早慶戦は注目だなと思います。
――2月の関東学連選抜にGKの選手(野田明日香)が選ばれてました。守備には自信がありますか
フェイ キーパーは、すごいうまいシュートじゃなかったら入んないと思うので、そこは安心して攻撃できるのかなと思います(笑)
シャーン こっちも大丈夫
一同 (笑)
――ア女は守備から入るスタイルですけど、慶応のスタイルって抽象的にはどういうスタイルですか
フェイ 今の慶応のスタイルとしては、自分たちも守備からというのはあって。守備でいかに組織的に動いて、規律の守った守備から攻撃につなげるサッカーをしています。
――逆に今季の慶応についてどう見てますか
シャーン この前の国士舘とやった試合(○慶大2―1国士舘大)を見に行ったんですけど、2-1で勝ってて、ベンチからの声もすごくて中でもしっかり声掛けあってて、全員で取りに行くぞみたいなすごいいい雰囲気があって。そういうところは早稲田と似てるなって感じます。
――外から見ててフェイさん以外にこの選手怖いなって言う選手いますか
シャーン 怖いというか、フェイがさっき言ってたDFのスフィーダの後輩(小熊)は、スフィーダの時に一緒にプレーしてたというのもあって同じDFラインだったので、一緒にやってたからフェイと同じように「負けられない」というのはあります。
――個人としてはこの1年どう振り返っていますか
シャーン 早稲田はけが人が多くて、自分の本職のボランチができなかったりして、でもCBとかSBとかをやったりして、守備力とかいろんな角度から試合を作っていく部分を学ばせてもらってて。正直自分のプレーでうまくいかないことも多いし、今後の自分自身のサッカーにおける選択の幅とか、課題の克服とか。今シーズンは自分の苦手なところに向き合えたりとか、今までになかったまなびができてるなと思います
――具体的に課題ってどんなものがありますか
シャーン 守備においては前への推進力が強いけど、CBをやると背後がやばかったりとか、攻撃においてはゲームコントロールというところで全体の流れを見極めて、今は回す時間帯だとか、前の間延びを落ち着かせる時間帯とか、そういうのを自分から判断して発信するとかは自分の課題だと思っていて。それは中盤やった時にも生かせることだから、そこは今課題として頑張っているところです。
――10月に入って右SBで出場していますけど、いつもと違うポジションでどういう感覚を持っていますか
シャーン SBは攻撃参加ができるので攻撃が楽しいなと思っているんですけど、ア女のサッカーってSBが重要なポジションになるので、久しぶりにやったポジションなので慣れてないことも多いけど、ア女のサッカーを作るうえですごい重要なポジションだからやりがいはあります。
――フェイさんは大学ラストシーズン、どういう1年になってますか
フェイ 去年はけがとかがあって本当にサッカーできたのは2カ月とかで、今年も復帰したのが7月で、サッカー面で言うとブランクがあったので復帰してから取り戻すのに時間がかかったし、「自分のプレーって何だっけ」とか葛藤もあったんですけど、最近は調子も上がってきて点も決まるようになってきてるんですけど。前期は試合に出てない中で、キャプテンとしてどう引っ張って行けばいいのかは葛藤したし、シャーンに相談してた部分もあったので。そこは今年一番葛藤した点かなとは思っています。復帰してからは自分の課題と向き合って結果を残せるようにってずっと考えて調子を上げていってる感じです。
――相談も受けていた中でシャーンさんはどんな印象がありますか
シャーン 「キャプテンとして自分は背中で引っ張りたいけど、サッカーができない」という現状があった中で、どうすればいいんだろうみたいなことは結構あったけど。あれだよね、チームの練習中は自分のリハビリしないで全部ピッチ外でやって、チームの練習中は声出したりとかしてて。本来なら練習中にできるリハビリも全部、他の時間を犠牲にしてというか、やってて。それほどチームに対してキャプテンとして掛ける思いが強いんだなというのは、尊敬しかなかったです。
――そこまでの思いを掛けられてる理由ってどういうものがありましたか
フェイ やっぱり去年降格して、今年どうしても昇格したい気持ちがあったので、今は昇格がなくなった中でも来年にもつなげるためにも自分が残せるものってあると思うので、自分が一番見せないとキャプテンになった意味もないと思うので。これからチームとしてレベルアップしていかないといけないので、最後まで慶応に恩を返していかないといけない部分でもあります。
――ちなみにプレースタイルとして、点の取り方はどういう形が多いですか
フェイ いろんなところに顔を出して起点になるプレーは意識しているところで、点取ってるシーンは裏抜けの部分かなというのと、セットプレーで頭で点を取るのがパターンとしては多いです。
――シャーンさんのプレースタイルも改めて聞かせてください
シャーン 自分の長所は守備で絶対にボールを奪い取るとか、そこには自信をもっています。それと攻撃の起点となるロングパスとか、空中戦んで自分より後ろにボールを行かせないとか、そこは特徴かなと思います。
――ちなみに高校まで一緒にやっていて、共鳴するようなプレーってあったりしたんですか
シャーン 自分がSBやってて(フェイが)サイドハーフやってたから、自分から逆サイドにロングフィードとか、そういうのは結構ありました。
「早慶戦はフェイと戦える場。特別な試合」(シャーン)
「早稲田に勝ちたい」(フェイ)
――慶大としてはこの早慶クラシコが今季最終戦で、より一層かける思いは強いと思いますけど、この早慶戦に向けてどういう意気込みを持っていますか
フェイ 本当に最後の試合なんで、今シーズンのチームとしても1年間の集大成だし、4年生からしたら4年間の集大成っていう部分で。かける思いは強くて。気合は強いです。
――個人としてどういう結果を残したいですか
フェイ 最後は勝って終わりたいという気持ちはすごい強いので、今まで早稲田に勝ったことがないというのも、早稲田に勝ちたいと思います。
――早稲田としては関カレの延期分が続くというはっきりしないところに早慶戦が組み込まれてますけど、早慶戦に向けて取り組んでることはありますか
シャーン 今年4年生として最後の早慶戦だし、それこそ自分にとって早慶戦ってフェイと対決できる場だから本当に特別な試合で、今年も運営に関わっているんですけど、多くの人に見てもらうためにAGFで開催することとか、そういう所もせっかくいろんな人に見せられる試合だし早慶だから注目される試合だし、いろんな人に自分たちのプレーを見て欲しいので、関カレとは違った特別な場というか。だから早稲田としても今まで負けことがないし、今年も絶対に勝たなきゃいけない試合です。それこそ、この先の皇后杯とかインカレとかにつなげるためにもいい試合して勝って、というのは絶対だと思います。何が何でも絶対に勝ちたいです。
――個人としては何かありますか
シャーン 直接フェイとマッチアップできる機会があれば、プライドというか「フェイだけに絶対に負けたくない」というのはあるから、そこは何が何でも勝って、できれば自分もセットプレーから点決めたり、チームとしてもそうだけど自分自身としても結果を残したいです。
――最後に改めて意気込みを強い言葉でお願いします
フェイ 自分が点を決めて絶対に早稲田に勝つというのはもちろん、シャーンに対しても絶対に負けないので、自分が点決めて絶対に勝ちます。
シャーン 慶応を圧倒する、というのもそうだしそれに加えてフェイもボコボコにして終わりたいなって思います。
(取材・編集・写真 前田篤宏、写真 大幡拓登)
早慶クラシコに向けた意気込みを書いていただきました!
◆ブラフ・シャーン(※写真右)
2000(平12)年6月13日生まれ。167センチ。スフィーダ世田谷FCユース出身。スポーツ科学部4年。ブラフ双子の妹。今季はチーム事情から本職のボランチではなくCBや右SBとしてア女の堅守と攻撃を支えている。
◆ブラフ・フェイ
2000(平12)年6月13日生まれ。スフィーダ世田谷FCユース出身。文学部4年。ブラフ双子の姉。今季は背に10番をつけると共に、慶大ソッカー部女子の主将を務める。