ア式蹴球部女子(ア女)は19日、皇后杯関東予選決勝に臨む。皇后杯関東予選の正式名称は「関東女子サッカー選手権大会」。皇后杯本戦への出場チームを決めると共に、WEリーグとなでしこリーグ1部(実質WE2部)を除いた「関東一」を決める大会でもある。今大会上位7チームが皇后杯本戦への切符獲得となるため、10日の準々決勝で筑波大に勝利した時点で、ア女にとって関東女王になるための大会へと切り替わった。準決勝では東京国際大に勝利し、栄冠まであと一つとなった。
決勝は19日10時30分キックオフ。会場は群馬県、太田市運動公園サッカー・ラグビー場(写真は準々決勝筑波大戦の先制シーン)
対戦相手は東洋大。決勝の4日前、15日に関東大学女子リーグ(関カレ)で0-1と惜敗した相手だ。指揮官も「内容では上回った」と悲観はしない。8月は失点がかさみ守備ベースのア女のサッカーが失われつつあった。しかし9月に入って5戦で4失点。うち2失点は6日の関カレ・日体大戦で中1日という極度の疲労状態で終盤に許したこともあり、本質的な意味を持たない。ア女は強みである堅守を取り戻している。前哨戦での惜敗要因は得点力とセットプレー。シュート数では7対4と、その差は3だがシュートまで至らなかったチャンスを含めると相手の何倍もゴールに襲い掛かった。どれだけシュートで終われるかは前線の選手たちにかかっている。そして、内容が悪くてもCKからの得点で勝利した東洋大と、その倍のCKを決め切ることができなかったア女で明暗が分かれた試合でもあった。帝京平成大戦(◯2-1)や流通経済大戦(◯2-1)などCKからの得点で白星を積み上げてきたア女だが、日大戦(△3-3)やこの東洋戦などでは数あるCKを決め切れていない。世界のトップクラブでは専門コーチがいるほどにセットプレーは重要視されている。ア女もプレシーズンからその意識をもってCKに取り組み、結果も出してきた。大一番でもその成果を出したい。
試合内容が意味を持たないのがCK。内容がいい時こそ被CKには気を付けたい(写真はCKをミートするブラフ)
懸念点は疲労。9月に入ってこの決勝が6試合目となる。単純に計算すれば3日に1試合をこなしていることになる。これが異常であることはサッカーを知る者なら自明。さらに人数が少ないこともあり、多くの選手が90分間出場し続けている現状が重なる。「選手たちが本当によく頑張ってくれている」。ここ数試合、指揮官が幾度となく口にした言葉だ。この試合を終えればしばらく週に1試合が続く予定。タイトルをかけたもうひと踏ん張りが求められる。すでにふた踏ん張りもみ踏ん張りもしているところだがーー。
試合の見どころは中央レーンだ。15日、東洋大はア女のビルドアップ局面でサイドに配慮していた。4ー4ー2のシステムでア女の両SBと両WGを常にマークして自由にさせない守備。ア女はサイドからの攻撃で苦しんだ一方、中央レーンを攻略したことでチャンスメイクに成功。特にFW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)のポストプレーから一気に前進した場面は数えきれない。このポストプレーにFW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)やMF笠原綺乃(スポ3=横須賀シーガルズJOY)が絡み、ワイドに広げたりバイタルエリアを崩したり。東洋大のDF陣にとっては厄介だったに違いない。となれば東洋大は吉野への対策をして挑んでくることになる。中央レーンでの攻防には注目したい。
2回戦、流通経大戦で相手DFに囲まれながらもボールキープする吉野。今大会は2得点で髙橋と並びチーム内トップ
昨季はこの大会を含めた4タイトル制覇を目標に掲げた。その中で最初のタイトルとなる皇后杯関東予選で準決勝敗退に終わった。シーズン半ばで目標を失ったことでその後急失速。最終的にインカレを制覇したが、かなり苦しい秋を過ごした。そういった意味でも、特に2~4年生の今大会への思いは強いだろう。今大会期間中に見事な復調を見せているア女。上昇気流に乗り切るためにも優勝したいところだ。
(記事、写真 前田篤宏)
両チームの予想スタメン。左がア女、右が東洋大