スーパーゴール連発で4発快勝!! 高み目指し課題も明確に

ア式蹴球女子
第36回関東大学女子リーグ戦 前期1節
早大 1-0
3-0
大東文化大
【得点】
(早大)29分・69分:廣澤真穂、81分:笠原綺乃、90+3分:井上萌
(大東文化大)なし

 関東大学女子リーグ(関カレ)は16日、延期されていた今季開幕節、ア式蹴球部女子(ア女)対大東文化大の一戦を迎えた。29分、縦に速い攻撃からFW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)がネットを揺らし先制する。69分に再び廣澤がボレーシュートを叩きこむと、81分にはMF笠原綺乃(スポ3=横須賀シーガルズJOY)がミドルレンジから左足を振り抜き豪快に追加点をあげ差は3点に。このまま終わるかと思われた終了間際、DF井上萌(スポ4=東京・十文字)が放った40メートルのロングシュートがゴールに吸い込まれた。これがラストプレーとなり、ア女は4発快勝。順位は2つ上がり3位、平均勝ち点では僅差で首位に躍り出た。

 

廣澤は今日の2ゴールで今季関カレの得点数を6に伸ばした。チームの得点数の3分の1を占めている

 

 試合前の悪天候で雨水を含んだピッチでの試合となった今節は難しいコンディション下でのプレーとなった。試合開始から終了まで主導権を握り続けた中で、序盤は大東文化大の守備が光る。ア女の中盤にボールが入るとすかさず2,3人の選手に圧をかけ、ペナルティエリアにボールを運ばせない。それでもア女はボールを動かし続け、じわじわと相手を体力を削っていく。18分にはテンポのあるパスワークからFW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)がチーム初シュートを放った。プレースピードがさらに増していくと29分、井上のサイドチェンジから、受けた笠原がゴール前に駆け上がった廣澤に正確なパスを通す。DFとGKがボールに向かってくる中、ファーストタッチで放ったシュートはDFの股を抜いてゴールイン。廣澤の今季関カレ5得点目となるゴールで先制に成功した。

 

今季初得点をあげた前節に引き続いて2節連続での得点をあげた笠原。前半には惜しいシュートを2本放ち、廣澤の先制点をアシストした

 3点を奪った後半は49分のMFブラフ・シャーン(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)のバー直撃シュートを皮切りに決定機を多く作っていた。髙橋がヘディングでミートできず得点とはならなかった53分の直後には、井上のクロスがゴール前の廣澤に正確に届くも放ったシュートはキーパー正面。盤石なボール保持に加えて7試合2失点という堅守を誇るア女にとって、リードは1点で十分かもしれないが追加点は欲しい。すると69分、左SBのDF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)がカットインから逆足の右足でクロスを入れる。廣澤がDF2人に挟まれながら胸トラップで足元に落とし、宙に浮いたボールをボレーで叩き込む。シュートはバーを強打しネットに突き刺さった。廣澤は「チームが上手くいっていない時に点を取って落ち着かせる」と、まさに2得点とも欲しい時にネットを揺らした。さらに81分、髙橋が密集していた左サイドから右サイドに大きくサイドチェンジ。パスを受けた笠原がドリブルで持ち上がるとペナルティエリア外から左足を振り抜く。シュートはDF2人とGKの手を交わし、ゴール右端を射抜いた。そして後半AT、ゴール前40メートル付近でフリーでボールを受けた井上が迷わず放ったシュートはGKの頭を超え、ゴールに吸い込まれた。これがラストプレーとなり、ア女は4点もの差をつけて快勝した。

 

井上は今節の長距離弾だけでなくCKを直接ゴールに入れるなど印象的なゴールが多い。その正確なキックでアンカーとして攻撃を支えている

 

 前節に引き続き大差での勝利を飾ったア女。平均勝ち点では首位に躍り出るなど、ここまで順調に勝ち点を積み上げてきている。それでもインカレ連覇と皇后杯ベスト8という、達成すれば快挙となる目標に挑むア女は課題を見つけていた。克服すべき点はポゼッションでのボールの持ち方だと指揮官は明確にした。奪われた後の守備を徹底している今季のア女。今節も抜群の安定感を見せており、土台となる守備は完成形に近づいていることは間違いない。切り替え時の守備からポゼッションへ、ア女は次のフェーズに移っているという見方もできる。次節は大東文化大との再戦だ。同じ相手に対してのポゼッションは見どころになる。

(記事 前田篤宏、写真 前田篤宏、大幡拓登)

 

廣澤の2点目。豪快なボレーシュートは雨天で客足が遠のいた東伏見を大いに沸かせた

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 近澤澪菜 スポ4 JFAアカデミー福島
DF 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
DF 井上萌 スポ4 東京・十文字
DF 15 田頭花菜 スポ2 東京・十文字
MF ブラフ・シャーン スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 三谷和華奈 スポ3 東京・十文字
MF 14 笠原綺乃 スポ3 横須賀シーガルズJOY
MF 26 宗形みなみ スポ1 マイナビ仙台レディースユース
FW 廣澤真穂 スポ4 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 10 髙橋雛 社4 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン

 

 

スターティングフォーメーション

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――2週間ぶりの関カレになりました。試合を終えていかがですか

 来週も関カレの大東なのでイレギュラーな試合なんですけど来週の事は意識しすぎず、自分たちのやるべきことをしっかりやって勝てたことは良かったかなと思います。

――終始ボールを持つ展開でしたけど、具体的に良かった点はありましたか

 雨が(試合に)影響するくらい降るかなと思っていたんですけど、意外とグラウンド状態も良く、むしろ滑りがいいぐらいのピッチ状態で。そうしても勝った試合の後は修正点ばかり考えてしまうもので。大東が前半と後半で戦い方を変えてきたんですけど、もう少し相手を見て局所的な相手と全体像の相手をもう少し見れるようになると、ボールを保持しているだけのサッカーにならないように、意図したボールの保持をすることが後期の課題になってくるかなと思います。――良いところありました。シーズンの時からすごくうるさく言っていたのが切り替え、ボールを奪われたら奪い返す守備ベースがあっての攻撃のトライをしてくれているので、今日も取られたとしてもすぐに取り返すベースがあるからこそトライできる部分もあるので、ボール回収の速さはしっかりできていたなと思います。

――具体的にはどういうボール保持が理想の形ですか

何のためにボールを保持しているのかということをチーム全体で考えて行きたいなと。攻撃のスイッチをどこで入れるのか、どのスペースを使うのか、そのためにどうやって相手を動かすのか、その辺の質をもう少し高めていきたいなと思います。ボールをしっかり動かせるからこそ高めていかないといけないと思います。

 

FW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

――まず試合を終えていかがですか

 前半からグラウンド状況から考えると思い通りにはサッカーをできていなくて、その中でしっかりトータル4点取って勝ち切れたことはすごい良かったかなと思います。

――今日は2点取りましたけど、個人の結果についてはどう捉えていますか

チームが上手くいっていない時にしっかり点を取ってチームを落ち着けるようにするのが自分の仕事だと思うので、上手くいっていない時には常に点を取ることを考えていたので、しっかりとれたのは良かったです。

――先週は大学選抜に参加されましたけど、収穫だったりはありましたか

初めてキャプテンをやったんですよ(笑)。そういう立場に立つのがなかなかなかったからそういう面でも勉強になったし、他大の人たちと一緒にプレーするのは短い時間でしたけど楽しかったしいい経験になったと思います。相手もU-20韓国代表とU-20日本代表で、レベルの高い相手とできたのは良かったです。

――他のア女の人たち(船木、近澤、ブラフ、夏目)はどういう感じでしたか

U-20日本代表の時は早稲田全員スタメンで、後ろはほとんど早稲田だったから安心感と安定感があって、U-20相手にも全然やられることなく、いい感じに戦えていたかなと思います。

――関カレは前半戦あと3試合ありますけど、数字の目標とかそれ以外に何か目標はありますか

インカレや日本一を見据えたときにメンバー的にも早稲田はかつかつな状態でこれからも連戦続きで、また人数が減ってしまうと戦うこと自体が厳しい状態になってしまう中で、全員の力が練習の時から必要になると思うので、今は出てないメンバーも練習から全力でやってくれているのが一番大きくて、そういうことによって試合で出ている人たちが生かされると思うから、全員で練習の時から全力でぶつかり合って高め合えたらいいかなと思います。

 

DF井上萌(スポ4=東京・十文字)

――ご自身の得点、振り返ってください

 自分達が攻撃していた時にボールを奪われました。奪われた後に切り替えて素早くプレスをかけるのが自分達のコンセプトなので、まずはそこですぐに奪えたのが良かったと思います。奪った後、相手のGKが視界に入り、自分のキックの飛距離を考えれば十分狙える位置だったので、しっかりと右足を振り抜きました。

――シュートを打とうと思ったというよりは、見渡した時にGKの位置が目に入ったという感じでしたか

 周りを見て、パスの出しどころを探していた時にGKが2メートルくらい前に出ているのが見えましたね。

――今日のようなアンカーでの出場とCBとではプレーのしやすさは変わってきますか

 感覚的にはどちらかの方がやりやすいということはないです。ただアンカーの方が運動量が多く、ボールを自分で奪いに行くことも多くなるので、90分の中でペースを落とさないようにということはアンカーで出場する時に意識しています。

――奪われた時のプレスに関して、同じ中盤の選手との連携はいかがでしたか

 宗ちゃん(宗形)や雛(髙橋)は近くでプレーしてくれていて、自分の取り所が限定されるのでやりやすかったです。味方とのコミュニケーションがよく取れていたんだと思います。

――雨はプレーに影響しましたか

 水たまりができるほどひどくはならなくてよかったです。ただ序盤から芝がスリッピーになっていて、チームの中でパスミスもいくつかありました。ピッチコンディションも考えながらのプレー選択を、チーム全体でしていかなければいけないと思います。

――アンカーとしてプレーする中で、自分が秀でている部分、貢献できる部分はどこだと思いますか

 自分はビルドアップのシーンで関わるのが得意です。CBの選手が持った時に顔を出してボールを引き出して、両サイドに散らしていくというプレーは自分の特徴だと思いますし、ビルドアップ関与には自信を持ってやっていきたいです。

――攻撃している中で結果が出ない時間帯には、どのようにメンタルコントロールをしていますか

 自分はすごくメンタルが弱いんです(笑)。本当に90分間自分との葛藤だらけで。ただ意識しているのは、目先のことに捉われないということです。90分間の中のどこかで相手に大きい綻びを作れれば良いので、常に相手にジャブを入れるイメージで攻撃しています。ちょっとしたパスの出し入れや、ワンツーで少しずつダメージを与えていく感じですね。

――攻撃的な縦パスのタイミングは自分の中でどのように決めていますか

 縦パスはチームの攻撃のスイッチになります。相手がしっかり構えている時には入れないです。自分がボールを持って、パス交換をして、相手が出てきたタイミングで入れるという感じですね。相手の守備にズレが生まれた時に入れるイメージです。何もないブロックに無理やり矢を刺しても割れないじゃないですか。でも何かしらひびが入っていれば割れると思うんです。そのイメージでやっていますね。

――後期の試合にも入っていく中で、チームとして成長しなければいけない部分は何かありますか

 それこそ90分間の戦い方を身につけていきたいと思っています。例えばア女は攻撃自体にスピードがあるので、そのペースを上げすぎないこととかですね。そこのコントロールは中盤の底である自分がやらなきゃいけないと思うんです。あえてペースを落としたり、逆に「いける!」というタイミングを作ったりとか。もちろん点は多く取りたいですが、自分は90分間の試合で最後に一点取って勝ちでも、素晴らしいことだと思っています。それができれば強いだけではなく怖いチームになれると思いますし。

――今後に向けての意気込みをお願いします

 今日、関カレで初得点することができました。今後攻撃面ではもっと自分の良さを出しながら、守備面でもっと球際強く、自分の存在感を出していきたいと思います。