やっと迎えた関カレ開幕 5週間ぶりの公式戦は完勝

ア式蹴球女子
第36回関東大学女子リーグ戦 前期第5節
早大 1―0
1―0
日体大
【得点】
(早大)6分 MF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)、65分 FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)
(日体大)なし

 ア式蹴球部女子(ア女)がやっと関東大学女子リーグ(関カレ)の開幕を迎えた。というのも前回の公式戦が行われたのが4月17日。そこから5週間、関カレ4試合と関東女子リーグ3試合が延期となり、シーズン中にもかかわらずア女は公式戦の無い期間を過ごしていた。21日に開催予定だった関東女子リーグも当日に延期が決定するなど、精神的に落ち着かなかったであろう日々が続いた中での関カレ初戦。しかしながら試合の入りからペースを握ると6分にMF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)が先制点をあげる。66分にはFW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)にも得点が生まれ日体大を突き放し、2-0の勝利で開幕戦を締めくくった。

 

1年生の宗形は開幕スタメンを掴むと、キックオフからわずか6分で得点を決めた。これが大学初ゴールとなった

 

 ア女は序盤からセカンドボールの処理や守備で相手を上回り、相手陣地でボールを動かす時間帯を多く作った。6分、相手のクリアボールをFW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)が回収し右サイドに展開。MF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)が鋭いドリブルで切り込みマイナスにクロスを入れると、ゴール前に侵入した宗形がこれに合わせてネットを揺らした。完璧な崩しで早々に先制したア女。その後も常に早稲田ペースで試合が進む。特に奪われた後の素早い守備を起点にポゼッション率が高く、流れの中から日体大にチャンスを与えたのは1回のみ。41分に右サイドの裏を取られゴール前でシュートを打たれたが、左CB・DF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)の必死のカバーでシュートブロックに成功し、失点を防いだ。一方で相手にFKを与えたCKにつながった局面で絶体絶命のピンチを迎えた。14分、CKのこぼれ球を押し込まれたがGK石田心菜(スポ2=大阪学芸)がスーパーセーブ。これにはア女のベンからひと際大きな歓声が上がった。それでも石田は「味方が(コースを限定して)カバーしてくれた」と謙虚に振り返る。しかし大事な開幕戦で1点リードの場面でもあり、ハイライトのひとつであることは確かだ。

 

ビッグセーブだけでなく、最後尾からの配球やコーチングでもチームに貢献した石田。8月にW杯が控えているU-20日本代表での活躍にも期待がかかる(23日からのトレーニングキャンプにも参加)

 

 1点リードで前半を折り返したア女は、日体大を突き放すべく攻めの姿勢をより一層強める。49分、宗形の裏へのパスに反応したDF船木和夏主将(スポ4=日テレ・メニーナ)のクロスにFW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が頭で合わせる。相手GKからのプレッシャーもあり惜しくも枠は捉えきれなかったが、またもや開始早々に相手ゴールに迫った。しばらくすると相手陣地でボールを動かすもののシュートまで辿り着けない時間帯が続く。この均衡を個人技で破ったのが吉野だ。相手を背負ってスローインを受けると、そのまま反転し相手を抜き去る。ゴール手前でシュートを放ち、ゴールにねじ込んだ。「去年から磨いてきたところ」(吉野)と自身の強みを生かせた得点に笑顔を見せた。その後は反撃を試みる日体大に対し、最後まで自陣でのプレーを許さなかったア女はまさに完勝で勝ち点3を手にした。

 

 プレシーズン中の故障で4月には戦線離脱を余儀なくされた吉野にとって復帰戦となった今節。早速ゴールを決め、勝利に大きく貢献した

 

 主将の船木は難しい状況での開幕戦勝利に「公式戦が無い中、試合勘も味わえなかったが、練習から強度高くやってきたことが試合で見られてとてもいい試合だった」と振り返った。長いシーズンを戦い抜くうえで開幕戦の戦い方や結果はとても大切になる中での勝利。加えて5週間というブランクを感じさせないア女の躍動ぶりはまさに圧巻であった。来週からは土日連戦も始まり、これから暑くなる時期での過密日程は避けられない。心身ともに非常にタフになるであろう前期を乗り切れるか否か。ア女の今後に注目したい。

(記事、写真 前田篤宏)

 

直接ゴールに絡むことはなかったが、攻守に渡って存在感を放った髙橋。昨季得点数チーム2位の背番号10に期待がかかる

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 石田心菜 スポ2 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
DF ◎5 船木和夏 スポ4 日テレ・メニーナ
DF 15 田頭花菜 スポ2 東京・十文字
→78分 13 浦部美月 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
MF ブラフ・シャーン スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 三谷和華奈 スポ3 東京・十文字
→57分 11 吉野真央 スポ4 宮城・聖和学園
MF 14 笠原綺乃 スポ3 横須賀シーガルズJOY
MF 26 宗形みなみ スポ1 マイナビ仙台レディースユース
FW 廣澤真穂 スポ4 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 10 髙橋雛 社4 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン

 

 スターティングフォーメーション

 

DF船木和夏主将(スポ4=日テレ・メニーナ)

――関カレが開幕して本格的にAチームも始動という形になりましたけど、今日の試合は振り返っていかがでしたか

(関カレは)4試合、自分たちは公式戦がない中で試合勘とか雰囲気は味わえなかったんですけど、自分たちで練習から強度高くやってこれてたので、そこには自信があったしそれをピッチで表現しようという話は全員でしてたので、それが今日の試合90分通して見られたので、すごいいい試合だったなと思います

――この5週間は難しかったと思いますけど、どういうふうに過ごされていましたか

当日に試合がなくなる通知が多かったので、それまでは試合の準備をしていて、試合がなくなった後もゲバ(紅白戦)を通して、また練習試合をやらせていただいたりして、自分たちがやることは変わらないので、強度は保ってフィジカルも上げてやれてたと思います。

――メンタル的にも苦しい時期やったと思いますけど、キャプテンとしてどういうふうな声掛けやチーム作りを意識していましたか

みんなに伝えたことは、コロナで試合ができなくなったりとか試合で勝てない時期が続くだとか、そういう苦しい状況って絶対1年を通して起きることだと思うので、そういう時に絶対下を向かないで上を向いて自分たちが目標としているものを目指すために今できることを全力でやろうということは伝えたし、それが全員理解できていたと思います。

――こういった難しい状況の中でも難敵の日体大相手に2-0で勝利できたことはとても大きいことだと思いますけど、この勝利についてはどういうふうに捉えていますか

まずは開幕戦ということもあって結果が大事だと思っていたので、日体大ということもありますし、どの相手でも自分たちは相手をリスペクトしてやるべきことをやるとしていたので、今後リーグが続いていく中で最初に勝利を収められたのは良くつなげられるのではないかなと思います

――試合は強度の高い90分でしたけど、内容についてはどのように振り返っていますか

自分たちは強く速いサッカーが強みだと思うんですけど、それを90分できはしないので、いつ落ち着くとか、一回休むとか、ボールをつなげるとかいうのはもうちょっと課題としていることなので、そこはもうちょっと試合を通して作って良ければなと思います

 

FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)

――復帰戦となりましたが今日のプレーはいかがでしたか

シーズン初めからけがとかいろんなことが続いてサッカーができなかったんで、交代から入るということでその分の悔しさを晴らせるように結構意気込んで入りました。

――得点も決められましたけど、あのシーンを振り返っていかがでしたか

自分の強みが相手を抑えてターンできるところですし、そこからシュートというのは去年からずっと磨いてきたところなので、しっかり狙っていて、あとは冷静に決めれて良かったなと思います。

――チームとしては5週間公式戦が無くてメンタル的に苦しかったんじゃないかと思いますけど、この期間はどういうふうに過ごされていましたか

前日や当日に延期(決定)という日もあってみんなが戸惑ったりしてる部分もありましたけど、一人一人誰も手を抜かずにこの日に備えてバチバチと戦っていたので、充実した5週間だったと思います。

――2―0で勝利したことはチームにとって大きいことだと思います。ここから日程も詰まってくると思いますけど、ここからどういうふうに前期を終えたいなと思っていますか

試合をするうえで自分たちは絶対勝たなきゃいけないですし、だからといって常にチャレンジャー精神を忘れずに全員で戦っていきたいなと思います

 

GK石田心菜(スポ2=大阪学芸)

――今日はビックセーブも見せてとても充実した試合だったんじゃないかなと思いますけど、振り返っていかがですか

個人としては試合の入りから集中してゲームに入れたし、チームとしてもいい入りができて、その流れで試合全体も良かったのかなと思います。

――(今節はメンバー外だった)守護神の近澤選手(澪菜副将、スポ4=JFAアカデミー福島)との競争という意味でも大事な試合だったと思います。特にあのセーブは素晴らしかったと思いますけど、あのシーンは振り返っていかがですか

でもこっちに来るなというのが分かったというか、味方も(コースが限定されるように)こっちにカバーに入ってくれて、という感じです。

――ビルドアップも含めて足元の部分でもミスなく、最終ラインに安定感を持たせられたのかなと思いますけど、そういう部分についてはいかがですか

スカウティングの部分で相手のプレッシャーが前からくるとか、速いとかが頭にあったんですけど、自分自身も落ち着いてビルドアップすることを心掛けたし、ディフェンスラインもみんなが落ち着いてできたのかなと思います。でももう少しこだわれるところがあったと思うし、もっと落ち着いていたらもっといい試合運びができたんじゃないかなと思います。

――石田選手自身はU-20W杯が大きい大会の1つだと思いますけど、そこに向けて何か思いはあったりしますか

出たいという思いはありますし、W杯まであと2ヶ月しかないので、その2ヶ月で急に成長することはないと思うんですよ。なので自分が今持っている力を代表のキャンプや普段の試合の中で出していければいいなと思います。

――今節出場するにあたって近澤選手や内田GKコーチから何か印象的な言葉をかけられたりはしましたか

緊張感なく笑顔で送り出してもらったし、内田さんもいつも通りのプレーを出してこいと、そこまで緊張しなくて大丈夫だよと、周りの人も言葉をかけてくれたので、自分も試合の中でガチガチに緊張せずに入れたかなと思います。

――開幕戦を無失点で勝利を飾って終えたのは大きいことやと思いますけどここからチームとしても個人としても意気込みがあれば伺いたいです

しっかり開幕戦を勝てたことと無失点で終えれたことはチームにとってプラスになると思うし、すごくいい開幕を切れたと思うのでこの流れを次に生かして、チームで改善できることは全員で取り組んでいきたいなと思います。