約2年ぶりの有観客試合 3発快勝で東伏見今季ラストマッチへ

ア式蹴球女子
第27回関東女子リーグ戦 後期第4節
早大 3-0
0-0
神奈川大
【得点】
(早大)3分 白井美羽、20分 築地育、22分 髙橋雛
(神奈川大)なし

 ホーム東伏見に観客が戻ってきた。前節で優勝が決まった関東女子リーグ(関東リーグ)は後期第4節の神奈川大戦。残る2試合を20日、21日に連日で消化する形となった。しかし、皇后杯メンバー18人の枠を巡るチーム内競争の激化、そして何より約2年ぶりとなる有観客での開催ということも相まって、ア式蹴球部女子(ア女)は熱量のあるプレーをみせた。開始直後、MF白井美羽(スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)のゴールで先制。さらに20分、22分にMF築地育(スポ1=静岡・常葉大橘)とFW髙橋雛(社3=兵庫・日ノ本学園)が立て続けに点を決め、前半の飲水タイムを待たずして3点差をつけた。その後は序盤に比べ各スタッツは低下したものの、堅守で相手を寄せ付けず零封で試合を締めくくった。

 

2度目のシュートをものにした築地(中央、30番)

 

 3分、試合はいきなり動く。DF井上萌(スポ3=東京・十文字)が最終ラインから鋭いロングパスを送り、一気に相手陣地へと侵入。左サイドを駆け上がったDF浦部美月(スポ2=スフィーダ世田谷FCユース)クロスを上げる。このこぼれ球に反応した白井がそのまま押し込み、早い時間帯で先制点をもぎ取る。波に乗ったア女は「取られた後の切り替えを一週間やってきた」(白井)と、ボールを失った直後の切り替えで隙を見せず、自分たちのペースで試合を進めていく。すると20分、DF夏目歩実(スポ2=宮城・聖和学園)、髙橋、DF木南花菜(スポ1=ちふれASエルフェン埼玉マリ)の連携で右サイドを崩すことに成功。最後はアンカーの位置から駆け上がった築地がネットを揺らし、2点目を奪う。一度目のシュートはポストを叩いたものの、跳ね返ってきたセカンドボールを冷静に流し込んだ。さらに22分、ショートコーナーからFW廣澤真穂(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)の絶妙なクロスに髙橋が頭で合わせると、ボールはゴールに吸い込まれる。瞬く間にリードを広げたア女は、3点差で後半へと突入した。

 後半は、前半に比べてア女の勢いが劣ったことで、拮抗(きっこう)した展開が続いた。前半は競り勝てていた球際での強さが見られず、質の高かった攻守の切り替えもうまく機能しない。それでも、ボール非保持の局面でのパフォーマンスは優れていた。高い位置での守備を保ち、相手を自陣でプレーさせないア女。ボールを持たれる時間は長いながらも、作られるチャンスの数は少なかった。一方でア女の攻撃は停滞が続く。70分には夏目のスルーパスに途中出場のMF關陽南子(文構4=大阪教育大附)が、73分にはハーフタイム明けに投入されたMF栗田彩令(スポ1=静岡・藤枝順心)のクロスに築地が反応するが、どちらもあと一歩が届かずにシュートまでたどりつかない。終盤になるにつれて自陣深くで守る機会が増え、追加点を奪えないまま3―0で試合を終えた。

 

3点目を決めた髙橋(左)とハイタッチをする浦部

 

 久しぶりの有観客試合を完封勝利で飾ったア女。2点目を決めた1年生・築地は「初めての有観客試合で、勢いをもってプレーできた」と話す。前半は相手を圧倒したものの、後半に放ったシュートは0本と、攻撃の停滞は言わずもがなだ。しかし試合の流れや試合日程などを考慮すれば、無失点で終えた事に価値があるだろう。翌日は練習拠点、東伏見での今季ラストゲームだ。必ず勝利して皇后杯へとつなげたい。

(記事 前田篤宏、写真 手代木慶、冷水睦実)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 丸山翔子 スポ1 スフィーダ世田谷FCユース
DF 17 井上萌 スポ3 東京・十文字
DF 20 浦部美月 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
DF 22 夏目歩実 スポ2 宮城・聖和学園
DF 26 木南花菜 スポ1 ちふれASエルフェン埼玉マリ
→65分 14 關陽南子 文構4 大阪教育大附
DF 29 田頭花菜 スポ1 東京・十文字
MF 28 白井美羽 スポ1 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→81分 31 生谷寧々 スポ1 東京・吉祥寺女
MF 30 築地育 スポ1 静岡・常葉大橘
FW 9 廣澤真穂 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→HT 27 栗田彩令 スポ1 静岡・藤枝順心
FW 11 髙橋雛 社3 兵庫・日ノ本学園
→HT 19 笠原綺乃 スポ2 横須賀シーガルズJOY
FW ◎12 黒柳美裕 スポ4 宮城・聖和学園
→78分 24 大森美南 スポ2 八王子学園八王子
◎=ゲームキャプテン

MF關陽南子(文構4=大阪教育大附)

――試合全体を振り返って率直な感想をお願いします

まずしっかり勝ち切れたことは、チームとして良かったと思います。

――前半はベンチメンバーでしたが、ア女の戦いぶりをどう見ていましたか

関東リーグ優勝は決まっていたのですが、いつもと違うメンバーでも一戦必勝を意識していました。自分たちが絶対に勝ち切るという思いで、あとは楽しんでやるぞということをみんなで確認していました。その通りに戦っている姿を見ることができてすごくうれしかったですし、自分自身しっかり準備をしていこうと思いました。

――黒柳(美裕、スポ4=宮城・聖和学園)選手からキャプテンマークを渡された時、どんな声がけがありましたか

美裕が「陽南子、大丈夫だよ。絶対できるよ」とポジティブな言葉を掛けてくれました。すごくうれしかったですね。力になりました。

――ご自身のプレーに納得していますか

正直納得はしていないです。でも、やりたいと思っていたことにトライできたし、短い時間でしたが、試合に出られたからこそ見つけられた課題もありました。より一層身を引き締めてみんなで戦っていきたいなと思いました。正直な話をすると、今日が最後(の出場機会)でもいいようにという思いを持ってプレーしていました。

――3得点した後輩たちへの思いを聞かせてください

やっぱり4年生という立場なので、試合に出れないもどかしさだったり、みんなを引っ張っていけない不甲斐なさだったり、たくさん感じてきました。でもやっぱり、後輩たちが活躍していることがうれしいし、すごく頼もしいです。自分自身も試合に出て活躍したいとは常々思っていますが、それでも「みんなに任せる」よりは「一緒に戦う」なんです。押しつけがましいですけど、「思いを託す」というか。一人一人が覚悟を持って戦ってくれているのが練習からも試合からも伝わってくるので、そこは本当に頼もしいの一言ですね。

――次の試合に向けての抱負を教えてください

ア女は、あとは『挑戦者』として挑んでいくしかないので、相手をしっかりリスペクトしながら一戦一戦きちんとチーム一丸となって勝ち切っていきたいです。

 

GK丸山翔子(スポ1=スフィーダ世田谷FCユース)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

久しぶりのホームの有観客ということもあり、とりあえず勝てて良かったです。自分的には無失点に抑えられたので良かったかなと思います。

――久々の出場でしたが、近澤澪菜選手(GK、スポ3=JFAアカデミー福島)と石田心菜選手(GK、スポ1=大阪学芸)にはどんな言葉をかけられましたか

落ち着いて、緊張せずに思いっきりやってほしいと言われました。

――緊張せずにできましたか

昨日から出ることは決まっていたのですが、昨日の夜から緊張していました。試合前は緊張しすぎていましたが、みんなが声をかけてくれて、ちょっとは落ち着いてできたかなと思います。

――0点に抑えることができた要因を教えてください

みんながカバーしあって、ディフェンスを頑張ってくれたからだと思います。自分は特に何もしていないのですが、みんなが頑張ってくれたおかげです。

――次の試合に向けて一言お願いします

次の試合に自分が出る可能性は低いし、この先は試合に絡めないことが多くなるかもしれないけれど、自分が出る機会があったら、落ち着いて良さが出せるように頑張りたいと思います。

 

MF白井美羽(スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

――試合を振り返ってください

自分たちのペースでパス回しができたり、意図を持って展開したり、(ボールを)出し入れできたので良かったです。守備も、取られた後の切り替えを一週間やってきて、前半からできたと思うので、全体的に良かったと思います。

――早い時間帯に先制点を奪いましたが、どんな気持ちでしたか

クロスに入り遅れてしまったのですが、味方が頑張って競ってくれたので、そのこぼれ球を決めることができました。久しぶりに点を取れたので、個人としてもうれしかったです。

――先週は思い通りのプレーができずに落ち込んでいましたが、その悔しさを晴らせましたか

先週の東洋大戦は自分的にダメダメでしたが、切り替えて自分の良さを一週間考えてやってきたので、それが出せたのかなと思います。

――自分の良さとは、具体的にどこでしょうか

自分は結構周りと関わってプレーするのですが、先週の試合は要求が足りなくて、淡々とプレーしているような感じになってしまっていました。今日は欲しい時にボールを要求することを意識していました。

――トーナメントも始まりますが、今後の意気込みを聞かせてください

絶対に負けられない試合が始まるので、チームとしてこの勝利の流れを維持できるように、練習から日々頑張っていきたいです。

 

MF築地育(スポ1=静岡・常葉大橘)

――今日の試合を振り返っていかがですか

有観客試合を初めてできるということもあって、みんなで勢いを持って頑張ろうという声をずっとかけていたので、それを実行できたのかなと思います。

――観客数は少なかったですけど初めての有観客試合はどうでしたか

見てもらえる人が(いつもより)多いとなるといつもより気合も入るし、パフォーマンスも上がったと思います。

――ご自身の得点についてはどう振り返りますか

アンカーという低い位置でしたけど、攻撃の姿勢はずっと持っていました。(白井)美羽がしっかりカバーに入ってくれたのを見てゴール前まで駆け上がれたので、最後はこぼれ球でしたが、決められて良かったです。

――アンカーで出場していますが、このポジションでのプレーはいかがですか

あまり1枚でのアンカーをやっていなかったので、まずは守備からバランスを取ってチームを勝たせるようにということと、ボールを持った時にワイドに展開することを意識しています

――守備の面では前半は切り替えでもボールを刈り取れていましたけど、チームとして後半は少し精彩を欠いたように見えました

運動量が落ちてくるので、その時に頭は止めずに立ち位置をいかに速く取れるか、という予測の部分でカバーできるところだったので、後半最後までセカンドボールを拾ったりして、明日もチャンスがあるので自分たちのペースで攻撃できるような流れを意識してやっていきたいです

――序盤の3点はチームにとって大きかったですか

最初の方で流れを作れたので、入らない試合よりは自分たちのペースで余裕を持ってチャレンジできたのは良かったと思います。

――皇后杯が迫っている中で、故障者の復帰もありチーム内での競争も激しくなっていると思いますが、シーズンのクライマックスに向けてどう戦っていきますか

まずはチームで方向性を一緒にしてサッカーを楽しむというのと、個人としては出場した時に自分の持っている武器を最大限生かせるような準備を常にして、気合を入れて練習もやっていきたいです。