MF蔵田の復活弾! 上位対決はドローも今季初優勝

ア式蹴球女子
第27回関東女子リーグ戦 後期第6節
早大 0-1
1-0
東洋大
【得点】
(早大)55分 蔵田あかり
(東洋大)16分 境ひより

 11月も半ばとは思えないほどの日差しが降り注ぐ中、関東女子リーグ(関東リーグ)後期第6節が行われた。関東リーグで独走中のア式蹴球部女子(ア女)にとって、今節は優勝のかかった大一番。ところが前半は完全に主導権を握られ、浮足立ったDF陣の隙をつかれて先制点を奪われる。後半、途中出場の選手たちのプレーで息を吹き返すと、カウンターからMF蔵田あかり(スポ4=東京・十文字)の見事なドリブルシュートで同点に追いつく。その後は一進一退の攻防を続けるが、最後まで決め手を欠いた両チームは勝ち点1を分け合う結果に。それでも首位を死守したア女は、今季初の『冠』をかかげた。

 

得点直後の交代で廣澤に思いを伝える蔵田(奥)

 

 前半は、内容、結果ともに完全に上回られるかたちとなった。最終ラインから何とかボールをつなごうとするDF、MF陣に対し、東洋大は徹底的なハイプレスで応戦。苦し紛れのロングボールもほとんど回収され、ゴールに迫ることができない。すると16分、押し込まれていた右サイドからクロスを上げられてしまう。精度を欠いたボールはこぼれるが、再び相手の手中に収まる。すかさず二人で挟み込むようにプレスをかけるア女だったが、左サイドが完全に手薄になっていることを東洋大は見逃さない。フリーになった相手MFの放った見事なミドルシュートがネットに突き刺さり、最悪なかたちで先制点を献上した。

 前半はシュートわずかに一本に終わり、積極的に攻める姿勢を見せたいア女。ハーフタイムに交代で入ったDF夏目歩実(スポ2=宮城・聖和学園)、FW髙橋雛(社3=兵庫・日ノ本学園)のエネルギッシュなプレーで一気に流れを取り戻す。すると55分、中盤でボールを奪取すると、すかさず走り出した蔵田にパスが出る。「ピッチ以外の選手からもポジティブな声をもらって、やるしかないという気持ちが結果につながった」(蔵田)と、ついに待望の追加点を手にする。一気にゴール前まで駆け上がり、迷うことなく振り抜いた左足のシュートは、チームを救う同点弾となった。

 蔵田の復活の一撃で勢いづいたア女は、さらに攻勢を強める。ケガからの復帰戦となったDF後藤若葉(スポ2=日テレ・メニーナ)のロングボールが冴え渡り、FW廣澤真穂(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)、MF三谷和華奈(スポ2=東京・十文字)をはじめとする途中起用の選手たちも懸命に2点目を狙い続けた。しかしなかなか流れは傾かず、関東リーグ上位対決は1-1のドローで決着。勝ち点3は逃すも、ア女は今シーズン逃し続けてきたタイトルを獲得した。

 

キャプテンマークを巻いてプレーした黒柳

 

 前半は、皇后杯本選、全日本大学女子選手権(インカレ)を控えたア女にとって潰しておくべき、いや潰さなければならない課題が浮き彫りになった45分であった。相手ボールの際には完全に受け身になってしまい、パスコースを限定しきれない守備が続いた。それでも後半のア女は一味違った。好プレーを見せた後藤は「チームでどんどんチャレンジしていこうという感じ」だったと話す。前半にはうまくいかなかった試みが、後半には結果となって表れた。優勝のかかる試合でも多くの選手を入れ替え、挑戦し続けたことが、今日一番の収穫と言っていいだろう。「自分たちは大学日本一を目指している」(DF加藤希主将、スポ4=アンジュヴィオレ広島)。今日得た『冠』をその手に携え、ア女は『頂』の景色を目指す。

(記事 大幡拓登、写真 手代木慶、久家舞子)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 石田心菜 スポ1 大阪学芸
DF 船木和夏 スポ3 日テレ・メニーナ
→HT 22 夏目歩実 スポ2 宮城・聖和学園
DF 5 後藤若葉 スポ2 日テレ・メニーナ
DF 17 井上萌 スポ3 東京・十文字
DF 20 浦部美月 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
DF 26 木南花菜 スポ1 ちふれASエルフェン埼玉マリ
→70分 18 三谷和華奈 スポ2 東京・十文字
MF 蔵田あかり スポ4 東京・十文字
→55分 9 廣澤真穂 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 19 笠原綺乃 スポ2 横須賀シーガルズJOY
MF 28 白井美羽 スポ1 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
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11 髙橋雛 社3 兵庫・日ノ本学園
MF 30 築地育 スポ1 静岡・常葉大橘
FW ◎12 黒柳美裕 スポ4 宮城・聖和学園
→72分 15 吉野真央 スポ3 宮城・聖和学園
◎=ゲームキャプテン

DF加藤希主将(スポ4=アンジュヴィオレ広島)

――『冠』を一つとった今の気持ちを聞かせてください

二冠を逃してから、結果にはこだわるけれどサッカーを本質的に楽しむことをチーム全体として意識してきました。関東リーグ優勝という結果なのですごくうれしいです。

――ご自身は出場されていませんでしたが、ピッチの様子を見ていてどう感じましたか

前半は守備で全然うまくいっておかず、セカンドボールも拾えない場面が多かったです。後半は修正されていましたし、途中から入ったフレッシュな選手が積極的に走って、何とか追いつこう、ゲームをひっくり返そうと3年生を中心にやってくれて、頼もしかったです。

――攻撃が活性化されていい流れではありましたが、結果として引き分けでの優勝となりました

勝って優勝を決めたかったというのが正直なところではあります。でもまだ関東リーグは2試合残されていますし、より自分たちがチャレンジできる環境を準備することができたという面ではすごく良かったかなとは思います。

――まだまだ大事な試合は続いていきますが、意気込みを教えてください

やはり自分たちは大学日本一を目指しているので、インカレで優勝するための一番大事な準備期間になると思います。皇后杯もあるので、格上のチームと闘えるようにいい準備していきたいです。

MF蔵田あかり(スポ4=東京・十文字)

――引き分け以上で優勝が決まる今日の試合で、優勝した感想を聞かせてください

勝ちきることはできなかったのですが、自分たちが目標としていた関東リーグ優勝という目標を達成できたことはすごくうれしく思っています。

――後半に比べ、前半戦では思うような流れを引き出すことが難しかった要因は何だと思いますか

全体的に守備が重くなっていたことと、守備の取りどころが共有できていなくて、相手に押し込まれてしまった時間が多くなってしまったことだと思います。

――前半後のハーフタイムでは、コーチや仲間同士でどのような会話をしていましたか

守備の面で、私や花菜(木南、スポ1=ちふれASエルフェン埼玉マリ)たちサイドハーフの守備のかけ方が悪かったので、その点をコーチ含め、みんなで修正して後半に挑むよう話し合いました。

――ケガからの復活を遂げた後の得点となりましたが、ゴールが決まったときどのように思いましたか

もう無我夢中だったので、点数が決まってみんなが駆け寄ってくれたとき、「ああ、決まったんだ。」という気持ちでした。前半は自分的にも、うまくいかないプレーが多かったです。でもハーフタイムや前半後半を通して、周りのピッチ以外の選手からもポジティブな声をもらって、もうやるしかないという気持ちが結果につながったのかなと思っています。

――次の試合に向けての意気込みを教えてください

毎週公式戦があるので、あっという間にインカレが来そうです。今日結果的には、関東リーグ優勝というかたちで終えられましたが、内容は引き分けでした。明日は関カレ最終節なので、しっかり勝って締めくくりたいと思います。

DF後藤若葉(スポ2=日テレ・メニーナ)

――今季初タイトルを取りましたが、思いを聞かせてください

自分たちは『四冠』を掲げていたのですが、皇后杯関東予選で逃して、関カレも後期に負けが続いて逃しました。個人的にもタイトルがかかった試合でケガで出れなかったりして悔しくて、もう少し早く復帰したい気持ちはありました。本当はここで、自分が出た試合で勝って(優勝を)決めたかったですが、復帰して出た試合で優勝できたのは、個人としてもチームとしても皇后杯やインカレに向けて、いい景気づけになったかなと思います。

――ケガの期間はどのようなことを考えていましたか

皇后杯関東予選で日テレ・メニーナに大敗して、「またみんなやっていくぞ」という時に、関カレが始まる前にけがをして、「なんでこんなタイミングなんだろう」って落ちるところまで一回落ちたんです。でも落ちていても仕方ないし、自分にできることをリハビリ中にしたり、伝えられるところは伝えたりしつつ、チームがレベルアップして自分も食い込んでいけるように、置いて行かれないようにという気持ちがありました。

――復帰戦におけるご自身プレーを評価するといかがですか

自分の良さは対人の強さだったり、前線への攻撃参加という部分だったので、それは出せたかなと思います。でもまだロングフィードの感覚が合いきっていないです。今日は楽しさが勝っていたので走れていたのですが、これから相手が強くなっていくので、ここから体力を上げていったり、対人の強さをあげていかないと闘えないと思うので、調整していきたいです。

――先制されて流れが悪い中で前線に持ち上がったり、フィードしたりしていましたが、どのような意図でしたか

相手がマンツーマンで守備をしてくるのは、これまでの戦いで分かっていたので、アンカーの選手(のポジション)が落ちることで生まれたスペースに自分が入ってみたら使えるんじゃないかなと練習から考えていました。チームで、チャレンジをどんどんしていこうというという感じだったので、やってみたらうまくいきました。

――センターバックで井上選手(萌、スポ3=東京・十文字)とのコンビでしたが、今後に向けてどんな収穫ありましたか

萌さんと組むのは今季初だったのですが、今までやってきた歩実(夏目、スポ2=宮城・聖和学園)や璃子(堀内、スポ2=宮城・常盤木学園)とは違った良さがあります。萌さんはビルドアップの部分で良さを出していたので、自分が守備を合わせていけば危ないシーンをつくらずにチームに勢いをつけるセンターバックのコンビになれると思います。

――今後の抱負を聞かせてください

明日は関カレの最終節(武蔵丘短大戦)があります。順位の変動はないですが、勝ち切ってインカレにつなげていきたいです。再来週は皇后杯がはじまって、自分たちはWEリーグのチームに勝つという目標があります。まだまだ足りない部分はたくさんあると思うので、明日と関東リーグ最終週で強度を上げて、皇后杯はいけるところまで行く、インカレは昨年の悔しさをぶつけて優勝を目指してやっていきたいです。