連覇に暗雲 上位校同士の直接対決に敗れる

ア式蹴球女子
第35回関東大学女子リーグ戦 後期第9節
早大 0-1
0-2
帝京平成大
【得点】
(早大)なし
(帝京平成大)7分 小原蘭菜、56分 吉岡こころ、58分 古賀花野

 「結果を受け止め、関カレ(関東大学女子リーグ)連覇に向けて頑張っていきます」。DF加藤希主将(スポ4=アンジュヴィオレ広島)は、アウェイ会場に駆けつけた保護者を前に、涙をこらえながら今後の抱負を口にした。

 爽やかな秋晴れの下で行われた関カレ後期第9節。ア式蹴球部女子(ア女)は、ここまで黒星のない帝京平成大と対戦した。上位校同士の直接対決を制したいア女であったが、全日本大学女子選手権(インカレ)女王に先制点を許す。後半はさらに2失点を喫し、0-3で敗北。関カレ連覇に暗雲が垂れ込める結果となった。

 

混戦からシュートを放つ廣澤(右)

 

 「入りの10分をまず大事にしよう」という福田あや監督(平20スポ卒=神奈川・湘南白百合学園)の指示通り、序盤から強度高く相手とぶつかり、気迫のこもったプレーを披露するア女。だが7分、DF陣が審判にオフサイドをアピールしている隙に、GK石田心菜(スポ1=大阪学芸)との1対1を冷静に制されてしまう。思わぬかたちで失点したものの、ピッチ上には「次行こう!切り替えよう!」という前向きな声が聞かれた。その後はMF築地育(スポ1=静岡・常葉大橘)をアクシデントで欠き、一時は数的不利に陥るが、MF笠原綺乃(横須賀シーガルズJOY)の起用で戦況は落ち着きを取り戻す。すると、MF蔵田あかり(スポ4=東京・十文字)やMF並木千夏副将(スポ4=静岡・藤枝順心)といった負傷明けの4年生が攻撃陣をけん引。それでも前半のうちに試合を振り出しに戻すことはかなわず、1点のビハインドを背負って試合を折り返した。

 「ここで勝てば、自分たちの目標としている関カレ首位が見えてくる(加藤)」重要な一戦。気合を入れ直してピッチに立ったア女だったが、56分にFKを与えてしまう。ファーに飛んできたボールを石田が必死にかき出し、その場を切り抜けたかに見えた。しかし、主審と副審が協議した結果、判定はまさかのゴール。さらに直後の58分、傷心のア女に追い打ちをかけるように、パスミスから3点目を奪われる。ピッチ内には、放心状態で立ち尽くす選手と必死にチームを鼓舞する選手が入り混じった。再開の笛が鳴ると、少しでも点差を埋めようという気概から、押し込むことに成功。幾度かゴール前に迫るが、好機をものにできない。いつもは相手の脅威になるFW廣澤真穂(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)らが封じられ、焦りは募っていくばかり。「相手陣地でプレーする時間が増えた時に、中抜けだったりサイド突破しきれなかった」と並木副将は悔しさをにじませた。そのまま最後まで逆境を跳ね返すことはできず、関カレ後期2つ目の黒星を喫した。

 

悔しさをあらわにしながら、会場を訪れた保護者に挨拶しようと集まる選手たち

 

  試合内容は相手と遜色(そんしょく)なく、点差ほど実力が足りなかったようには見受けられない。それでも、3点も差をつけられて負けた事実に変わりはないと、ア女の誰もが自責の念を抱いているだろう。「チームとしてもう一回、球際(の強度)やセカンド(ボールの回収)といった『当たり前』の部分の質を高める」と加藤主将は気丈に語った。

 昨年、帝京平成大が関カレでア女に負けながらも、インカレを制していることがチームの光明になりつつある。しかし、その事実にすがるほどア女は追い詰められていると言っていい。ただ、まだ『冠』を手放したわけではない。一戦必勝で突き進み、奇跡を起こせるか。負けられない戦いが続くーー。

(記事、写真 手代木慶)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 石田心菜 スポ1 大阪学芸
DF 2 船木和夏 スポ3 日テレ・メニーナ
DF ◎10 加藤希 スポ4 アンジュヴィオレ広島
DF 22 夏目歩実 スポ2 宮城・聖和学園
DF 29 田頭花菜 スポ1 東京・十文字
MF 7 蔵田あかり スポ4 東京・十文字
→85分 20 浦部美月 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
MF 18 三谷和華奈 スポ2 東京・十文字
→60分 15 吉野真央 スポ3 宮城・聖和学園
MF 30 築地育 スポ1 静岡・常葉大橘
→29分 19 笠原綺乃 スポ2 横須賀シーガルズJOY
→73分 17 井上萌 スポ3 東京・十文字
FW 9 廣澤真穂 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 11 髙橋雛 社3 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン
監督:福田あや(平20スポ卒=神奈川・湘南白百合学園)

 

ⅮF加藤希主将(スポ4=アンジュヴィオレ広島)

――涙をこらえながら保護者の方々の前に立った時の気持ちを聞かせてください

ここで勝てば、自分たちの目標としている関カレ首位が見えてくる中で、残りの三冠のうちの一冠のためにかなり大事な試合を落としてしまいました。何もできなかったなと言う悔しさがこみ上げてきました。

――勝てば関カレ首位、負ければ連覇が厳しくなる非常に大事な一戦でした

頭でっかちになりすぎずにシンプルに球際やセカンドいつもどおりやろう、当たり前のことを当たり前にやろうといっていました。チームとしては、入りは決して悪くなかったと思います。全体の意識統一、ベクトルはそろっていたかなと思います。

――納得のいかない判定に泣かされた部分もあった印象を受けました

審判の方が判断したので、覆らないものは覆りません。切り替えて点を取りに行くしかないと自分は考えていました。3点目失点した時も、切り替えるしかなかったです。

――特に後半の中盤は押し込む時間帯もありましたが、あと一歩足りませんでした。得点が奪えなかった要因はなんだったのでしょうか

みんなが(得点を)取りに行こうという雰囲気でしたが、個と個のつながりしかありませんでした。前に入った時のサポートのつながりが上手くできていなかったです。最後に押し込んだ時もクリアさせてしまったので、粘りの部分が足りなかったと思います。

――それは精神的な面でしょうか

精神的にもそうですが、自分たちは守備がはまれば攻撃も勢いよくできます。前で圧をかけてボールを取ってクロスを上げるのが攻撃スタイルだと思うのですが、守備のところでうまく取りきれなかったので、攻撃の時も枚数をかけて圧を掛けられなかったのが今日の課題だと思います。

――今日の敗戦を次にどう生かしていきますか

ボールを取りきることや切り替えですね。次は東洋大で、前節引き分けていますし、絶対に勝たなければいけない試合がどんどん続いていきます。チームとしてもう一回「当たり前」の部分の質を高めていきます。この結果を真摯に受け止めてまた一週間課題に向き合っていきたいと思います。

 

MF並木千夏副将(スポ4=静岡・藤枝順心)

――今日の敗戦をどのように捉えていますか

すごく悔しいです。自分が復帰して、チームをまとめて最後まで戦いたかったんですけど、それができ切れないところがありました。ここで勝たなければならないという意識がみんなにあった中で、0-3というのはかなり課題が残る試合になったかなと思います。

――現時点で、どこが足りなくて勝利できなかったと考えていますか

攻撃で崩しきるところや、自分たちがやろうとしていることをひとつ潰された時に、選択の共通理解が足りていないなというのがあって、試合中に全体が困ってしまいました。育(築地、スポ1=静岡・常葉大橘)が抜けた時に、なかなか戻ってこなくて、一人少ない状況で低い位置での守備の時間が増えてしまいました。その後、綺乃(笠原、スポ2=横須賀シーガルズJOY)が入ってきてくれてリズムが戻ってきたのですが、相手陣地でプレーする時間が増えた時に、中抜けだったりサイド突破しきれなかったです。

――復帰戦ということで、ご自身のプレーへの評価をお願いします

全然ダメダメだったなって…情けないなと思います。4年生として、中盤(のポジション)で出る選手として、(ボールが)収まらないしつなげないし、全然ダメダメでした。

――今回の悔しさを次にどうぶつけていきますか

次の東洋大戦、ここから3試合は絶対に落とせないので、チーム全体でコミュニケーションを取って、共通したものを全員で理解できるように準備していきたいです。