昨季女王の本領発揮できず 無敗記録は19で途絶える

ア式蹴球女子
第35回関東大学女子リーグ戦 前期第11節
早大 0-1
1-1
筑波大
【得点】
(早大)54分 築地育
(筑波大)33,52分 千葉玲海菜

 「関カレ(関東女子女子リーグ)で引き分けが続いていた(△0-0帝京平成大、△0-0東洋大)中で、その流れを断ち切れなかったのはすごく悔しい」。DF加藤希主将(スポ4=アンジュヴィオレ広島)は言葉を絞り出した。今季参戦する関カレ、関東女子リーグ(関東リーグ)ともに首位のア式蹴球部女子(ア女)は、これまで引き分けを挟んで無敗を継続。勢いそのままに勝利したいところだったが先制点を献上し、後半も追加点を許してしまう。MF築地育(スポ1=静岡・常葉大橘)の得点で反撃を試みるも、相手の堅守を崩しきれない。昨季関カレ女王の本領を発揮できず、1-2で今シーズン初の黒星を喫した。

 

初めての敗戦に肩を落とす選手たち

 

 1週間前に関東リーグで7発の快勝を成し遂げた筑波大との再戦となった今節、相手はメンバーを大幅に変更。ア女は序盤から素早いスライドでスペースをつくろうと揺さぶりをかける。しかしボールを回すだけで、築地やFW髙橋雛(社3=兵庫・日ノ本学園)の裏に抜ける動きを活用できない。手応えがつかめないまま迎えた33分、警戒していた裏へのロングボールからのカウンターで失点してしまう。今季はこれまで公式戦7試合に出場し、全て零封していたGK近澤澪菜(スポ3=JFAアカデミー福島)は「最後は止めるというのが自分の仕事だった」と悔しげな表情を見せた。前半のうちに同点に追いつきたいア女は、声をかけあってリスクを管理しつつ、パスを回して機をうかがう。すると前半終了間際、こぼれ球がMF笠原綺乃(スポ2=横須賀シーガルズJOYの前へ。左足を振り抜くが惜しくもバーに当たって得点とはならず、0-1で試合を折り返した。

 後半も日差しの下にいるだけで額に汗がにじむような気温、湿度が選手を襲う。そして得点の気配がないフラストレーションからかラフプレーも増え始めた52分、パスミスを逃さず拾われてしまう。そのまま流し込まれて失点を喫し、追い打ちをかけられたア女。しかし2点リードされても、誰一人として諦めてはいなかった。直後の54分、DF夏目歩実(スポ2=宮城・聖和学園)のロングフィードに築地が反応する。「斜めに走って裏を走るようにというアドバイスをもらい、狙い通りに飛び出して良いボールがもらえた」(築地)とアウトサイドキックでゴールネットを揺らした。1点を返したことで流れをつかむかに見えたが、その後も相手ゴールに迫れない時間帯が続く。75分に髙橋のマイナスのクロスから好機が生まれるが、相手DFにブロックされて得点ならず。そのまま最後まで果敢にゴールを狙ったが、無情にも試合終了のホイッスルが鳴り響き、公式戦無敗記録は19で途絶えることとなった。

 

絶妙なタイミングで飛び出し、得点を決めた築地

 

 ア女は負けない。それは強さの象徴だった。しかし同時に、致命的な弱点でもあった。だからこそ敗戦から学ぶことは多い。それは戦術的に立て直せるかという点に留まらない。得点が奪えない焦燥感。相手の歓声を背にベンチに戻る屈辱感。それでも次戦のために前を向かなければならない寂寥(せきりょう)感。やりきれない想いを抱えた経験が、敗者となったア女を成長させる。むしろ新たな強さを手に入れたと言っても過言ではないだろう。今後は実力が拮抗する相手に対していかに得点を奪えるかが課題となる。苦闘を乗り『越』えた『挑』戦者にこそ、栄冠は輝くと信じて――。

(記事 手代木慶、写真 内海日和)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 1 近澤澪菜 スポ3 JFAアカデミー福島
DF ◎3 桝田花蓮 スポ4 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 5 後藤若葉 スポ2 日テレ・メニーナ
DF 20 浦部美月 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
DF 22 夏目歩実 スポ2 宮城・聖和学園
MF 6 ブラフ・シャーン スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
→HT 10 加藤希 スポ4 アンジュヴィオレ広島
MF 8 並木千夏 スポ4 静岡・藤枝順心
→63分 26 木南花菜 スポ1 ちふれASエルフェン埼玉マリ
MF 19 笠原綺乃 スポ2 横須賀シーガルズJOY
MF 30 築地育 スポ1 静岡・常葉大橘
FW 9 廣澤真穂 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 11 髙橋雛 社3 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン
監督:福田あや(平20スポ卒=神奈川・湘南白百合学園)

 

DF加藤希主将(スポ4=アンジュヴィオレ広島)

――試合全体を振り返ってください

想定されていた相手のカウンターで奪われて失点してしまいました。そこから自分たちが攻撃するときも、最後やりきれないプレーやクロスも上げきれない、崩そうと(相手を)動かしている間に取られてカウンターに行かれてしまう場面がすごく多い試合だったかなと思いました。

――先週は7-0で勝っていましたが、相手への対策はどう考えていましたか

先週はBチームで今週はAチームで、メンバーも違っていあした。前に蹴ってくるというのは想定していましたし、そこに対するセカンドボールの回収や攻撃面ではサイドからの攻撃を意識していました。

――警戒していたにも関わらず、失点につながってしまいました

攻撃の意識が強くなったときに中盤の選手が攻撃的なポジションを取りました。そこでのリスク管理ができていなかったと思います。

――前半はベンチから見ていましたが、どのようにチーム状況をとらえていましたか

失点してしまったときに前半の速い時間でまだまだ取り返せる時間帯だったので「大丈夫」とベンチから声を掛けていました。自分は外から盛り上げることしかできないので。

――どういう意図でハーフタイムから起用されたのですか

監督から直接伝えられたわけではないのですが、自分はフィードや対人の強さを評価されてセンターバックというポジションで使われたと思います。あとは自分の声で全体を盛り上げたり空気を変えたりすることが目的だったのかなと思います。

――後半は前半よりもボールが回せている印象がありましたが、それでも失点を重ねたことに関してはどのように感じていますか

2点目は自分のパスミスから失点してしまったので、完全に個人の課題かなと思っています。攻撃のところもクロス上げきる、ファーの折り返しに反応することができなかったのは課題かなと思います。

――今シーズン初めての黒星についてはどのように感じていますか

引き分けが続いていた中で、その流れを断ち切れなかったのはすごく悔しいなと思います。ですが明日も試合はありますし、そこは切り替えていくしかないなと。最後の精度などの課題は前々から分かっていることなので、もう少し修正したらもう一つ上のレベルで戦えるのではないかなと思います。

――次戦への意気込みを聞かせてください

次は日大戦でいよいよ後期なので、もう一回気持ちを切り替えたいと思います。2連戦も最後ですし、そこに向けてみんなで敗戦と向き合って進んでいきたいと思います。

 

GK近澤澪菜(スポ3=JFAアカデミー福島)

――今日の試合を振り返って感想をお願いします

相手が引いてきていて自分たちがボールを持っている時間が多い中で、最後の攻撃のところでラストパスがつながらなかったり、クロスを上げきれなかったりというところが攻撃では目立ちました。相手にカウンターでやられて失点という形で、相手にとってのチャンスのところで自分たちがやられてしまったという印象です。

――相手からの一発というのは警戒していた中で、なぜ2失点につながったのだと思いますか

相手の怖いところがむしろそれしかないくらいの勢いでした。中盤とディフェンスラインのところでぽっかり空いてしまって。前に向かれたら蓋をすることもできずに1対1になるので。(得点した)相手の10番はすごく足の速い選手でした。チームとしてはその間を突かれてやられたというのと、最後の1対1の部分が大きいですね。

――コンディションも厳しかったのではないでしょうか

自分は試合に出ていて状態を見ながらという感じでしたが、チームのみんなは(相手を)いなしたり裏抜けしたりで、すごく暑かったので体力を奪われたと思います。でも、そこで相手を上回らないと勝つことはできないので、最後まで走りきるという部分は練習でも修正していきたいと思います。

――個人としては今まで無失点で抑えてきた中で今日2失点してしまったことについて、評価を聞かせてください

カウンターや一発しかないという部分で警戒していたにもかかわらず、最後あのように失点してしまいました。本来ならチームとしてはあそこまでやられないというのが一番ですが、最後は止めるというのが自分の仕事だったので、もっと体を張って止めきることを意識していきたいと思います。

――チームとして初黒星になりましたが、これについてはどう感じていますか

今は負けて悔しいの一言しかないのですが、切り替えて次の勝利に向けて頑張るしかないと思います。後期は一回対戦したチームなので(※前期第4節慶大戦は8月22日に延期)、相手の特徴をしっかり把握した上で自分たちのサッカーをしていきたいと思います。

――次戦への抱負を聞かせてください

今週試合をして出てきた課題をチームでしっかり修正して、次のクールに向けて守備の強度を高くしたいです。個人としては無失点で終えられるように練習から気合いを入れて頑張っていきます。

 

MF築地育(スポ1=静岡・常葉大橘)

――今の率直なお気持ちを教えてください

初めて負けてしまいました。チャンスは何度もあり、勝てた試合だったので悔しいです。

――敗因を挙げるとするなら何だと思いますか

前半から自分たちの流れができていませんでした。一つ一つのパスや味方との動きの中で、ズレが多かったです。前半暑い時間が長かったのですが、そんな時でも丁寧なプレーをして、自分たちのサッカーをするという準備が足りなかったと思います。

――得点シーンを振り返っていただけますか

ハーフタイムでサイドハーフがワイドをとるだけではなく、斜めに走って裏を走るようにというアドバイスをもらいました。そこは狙い通りに飛び出して良いボールがもらえたので良かったと思います。

――後半になってボールに触れる機会が多くなったと思いますが、その要因は何でしょうか

一つは相手が蹴ってくるサッカースタイルの中で、チーム全体がセカンドボールを取って回すことを意識できたことです。チャンスの時に縦を突くという判断ができるようになっていました。また、自分自身も裏をとる判断や裏が無理ならばやめるというような動きができるようになりました。しっかりと足を動かせたことが良かった部分だと思います。

――明日も来週も試合はありますが、どのようなところを改善していきたいですか

今日の敗戦を引きずらずに、また気持ちを切り替えて、全員が声を掛け合うことで良い雰囲気を作れるようしたいです。また、一戦一戦積み上げていきたいと思います。