【連載】『令和2年度卒業記念特集』第16回 鈴木佐和子/女子サッカー

ア式蹴球女子

主将としての1年間

 ア女を変える——。この思いを抱き、鈴木佐和子(スポ=浦和レッズレディースユース)はア式蹴球部女子部(ア女)の主将に就任した。全ての選手に対して“4年間”という期間が設けられ、毎年選手が入れ替わる大学スポーツの世界。大学女子サッカー界で確かなプレゼンスを発揮するア女。その中で鈴木が求めたものは「変化」であった。

 2020シーズンは、2つの大きな変化が起きたシーズンだった。未知のウイルスによる活動停止。サッカーができない期間も決して悲観せず、主将としてチームの先頭に立ち、進むべき方向を示し続けた。そして改めて、サッカーと、チームと向き合い、より良いチームを目指した。監督交代。大学サッカーラストシーズンに出会ったのは、時に暑苦しさを感じさせるほど熱い福田あや監督(平20卒)。サッカーが、ピッチの中が一変した。特に大きく変わったのは「考える質」。監督の“答え”を探してしまい苦しんだこともあったというが、プレーの選択肢は増え、練習中の競争も格段に激しくなった。そして何より、「ここにきて、サッカーが楽しいなと思えた」(鈴木)という。最大の目標である全日本大学女子選手権(インカレ)優勝に向け、チーム作りは順調に進んでいるように思われた。

持ち味の的確なコーチングでチームを鼓舞する鈴木

 しかし、結果を残すことはできなかった。3連覇中の皇后杯関東予選で準優勝に終わると、12連覇を目指した関東女子リーグも2位で終了。皇后杯ではなでしこリーグ所属の相手に対して熱戦を繰り広げたが、延長戦の末2回戦で敗退。そして、最大の目標であったインカレ優勝への道は初戦で断たれ、チームとして結果を残すことが出来たのは関東大学女子リーグ優勝のみだった。その中で鈴木は持ち味の的確なコーチングと、1年間力を入れて取り組んだというクロスやハイボールへの対応を武器に若きア女守備陣をけん引したが、インカレ直前に負傷。前十字靭帯断裂の大けがを負い、ア女での4年間は幕を閉じることになった。

 インカレ直前、意気込みを鈴木に尋ねた際に返ってきたのは「自分たち(4年生)にとっては最後の大会だけど、後輩にとっては2021年のスタートでもあるので、成長過程としてインカレに向かいたい」という言葉であった。“今”だけでなく“その先”を見据え、常に優勝を目標に掲げるア女を「変える」ために主将として臨んだ1年間。ア女は変わったか。その答えはまだわからない。しかし変わっていく確かなきっかけとなったことは間違いないであろう。2021年に創部30周年を迎えるア女。彼女の存在が、今後のア女に大きな影響を与え続けるのかもしれない。

(記事 稲葉侑也、写真 手代木慶)

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