無念の逆転負けで首位陥落、自力優勝の夢途絶える

ア式蹴球女子

 ここまで4勝1分で首位に立っている関東大学女子リーグ戦(関カレ)。この日は勝ち点で並ぶ帝京平成大との直接対決が行われた。優勝するために何としてでも勝ち切りたい一戦は、前半に先制することに成功。しかし、後半には途中出場でフレッシュな状態の相手選手たちに2点を決められ、無念の逆転負け。帝京平成大に首位の座を開け渡すことになり、自力優勝の可能性が消滅した。

 幸先よく先制に成功したのはア女だった。6分、左サイドのMF並木千夏(スポ1=静岡・藤枝順心)がFW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)にボールを送る。そのままキープして河野がシュートを放ったものの、惜しくもバーを直撃。しかし、再度自身でボールを押し込み、早い時間に先制点が決まった。自分が外したシュートを自分が決めるという強気の姿勢を見せた河野によって盛り上がりを見せたア女だったが、この後はなかなかフィニッシュまで持ち込むことができない。「はっきりしたプレーができなかった」とMF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)が語るように、クリアが中途半端になりカウンターを食らう場面も何度か見られた。それでもなんとか守備陣を中心に踏ん張り、相手にゴールラインを割らせない。1-0とリードを保ったまま前半を終えた。

先制点を決めた河野(背番号10)に駆け寄るア女の選手たち

 後半になると、帝京平成大の逆襲が始まる。50分、MF倉富(帝京平成大)がドリブルで仕掛け早大ゴールに迫る。その勢いを止めることができず、そのままシュートを放たれ失点。試合は振り出しに戻された。なかなか両校ともに決定的なチャンスを作れずに停滞していた中で、その流れを断ち切ったのは主将の熊谷だった。67分、相手の甘いパスを見逃すことなくインターセプトすると、ピッチを独走。必死に戻る相手にペナルティエリアで倒されたものの、主審の笛は鳴らず。PKは獲得できなかったが、主将の気迫のあるプレーで早大の応援席を沸かせた。その後は、DF渡部那月(社4=兵庫・日ノ本学園)が積極的に前線にボールを送るも、なかなか相手のゴールに迫ることができない。フラストレーションが溜まっていく中で、ついに悲劇が起こる。試合終了間際の88分、一瞬の隙を突かれ、FW河野(帝京平成大)にループシュートを鮮やかに決められ失点。無念の逆転負けで関カレ初黒星を喫した。

後半も果敢にゴールへ向かっていった熊谷

 首位同士の直接対決に敗れ、2位に転落したア女。帝京平成大は創部史上初めてア女を下し、単独1位に躍り出た。自力優勝は無くなってしまったが関カレも残り3試合。「下を向いている時間はない」(熊谷)。残りの試合に全て勝利して優勝へ望みをつなぎたい。また、ここから先は皇后杯全日本選手権や全日本大学選手権といった大規模な大会を控えているため、この敗戦をプラスに変えていきたいところだ。「(今回の敗戦を)自分たちの成長のために捉えていってくれるといいと思う」(川上嘉郎監督、昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)。今こそア女の真価が問われる。

(記事 下長根沙羅、写真 太田彩音、守屋郁宏)

スターティングイレブン

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紙一重の勝利。主将の豪快弾で神奈川大退け4連勝/第32回関東大学女子リーグ戦(2018.10.08)

第32回関東大学女子リーグ戦
早大 1-0
0-2
帝京平成大
【得点】
(早大)10’河野朱里
(帝京平成大)50’倉富祐歌、88’河野有希
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付 優衣 スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 渡部 那月 社4 兵庫・日ノ本学園
DF 32 小林 菜々子 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 23 源関 清花 スポ3 ちふれASエルフェン埼玉
→46分 17 松本 茉奈加 スポ2 東京・十文字
DF 中田 有紀 スポ3 兵庫・日ノ本学園
MF 柳澤 紗希 スポ4 浦和レッズレディースユース
MF 村上 真帆 スポ2 東京・十文字
DF 15 冨田 実侑 スポ2 岡山・作陽
MF 37 並木 千夏 スポ1 静岡・藤枝順心
→55分 12 山田 彩未 スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
MF ◎11 熊谷 汐華 スポ4 東京・十文字
FW 10 河野 朱里 スポ4 静岡・藤枝順心
◎=キャプテン
監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)
コメント

川上嘉郎監督(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)

――試合を振り返って、敗因はどこにあったと考えますか

結果的には相手の戦う気持ちの強さというところで、こちらが受け身に回ってしまったということが一番大きなところだったと思います。帝京平成さんは同じ勝ち点でしたし、しっかりビデオとかでスカウトをして、それを共有して対策を立ててきたんですけど、スカウティングをした以上に相手の個々の能力が高かったというのもあって、厳しい試合だったなと思います。自力での優勝がなくなってしまって残念ではあるんですが、我々はもちろん関カレ優勝という目標は持っていますし、そこは最後まで目指して、残りの試合で勝つということです。あとはそれ以上に皇后杯の本戦とインカレがあるので、今日の試合を糧にして、必ず、自分たちがさらに強くならなくてはいけないと思います。そういう面では、最後に2点を取られた後に、『なんとかしなくちゃいけない』という気持ちがプレーに出てきたと思っています。ビハインドを背負って、『負けちゃいけない』という気持ちで能動的に、積極的にプレーができていたということは、これからに向けてはプラスになるかなと思っています。

――攻撃が個に依存してしまうという課題が継続して挙がっていました。現状をどう見ていますか

どうしてもタッチ数が多くなってしまって、周りの人が動かなくなってしまうということがありますし、サイドからの攻撃がなかなかうまくいかなくて、中を通そうとしてしまうところがあるので、この1、2週間、『攻めは外から、守りは内から』とコントロールして試合に取り組むようにと言っていました。逆サイドに展開してサイドから速い攻撃を仕掛けるということを意識して、(ボールへの)タッチ数を少なくすれば展開は速くなるということで、ミドルサード、ディフェンシブサードについては2タッチ以内と制限をして練習をやってきました。先週の試合が一番それ(ボールタッチ数が多い傾向)が強かった気がしていて、今週はそれよりはまだよかったんですけど、望む姿には行っていないなという感じですかね。テンポも良くなってきたんですけど、そこはまだ身についていなかったということだと思います。これからという感じではありますし、そうしていかないとレベルの高い相手には戦えないと思います。

――昨年などを振り返ると、関カレでの敗戦をきっかけにチームが変化した印象があります。ここが今年のターニングポイントになると思いますが

そうですね。強くなれるかどうかは本当に負けた時次第だと思いますね。チームがまとまって、自分たちが強くなろうとすることができればと思いますし、もしそれができなければ、ガタガタとなってしまうかなと。今日もみんなに言ったんですけど、「負けた時が一番大事で、負けた時の過ごし方、負けた後の過ごし方をどうやって次に生かしていくか。ここで崩れてしまったら、単純に弱いチームだ」と。ただ、今まで負けた数が少ないので、そういう機会もあまりないんですけど、ア女の子たちは崩れないというのも強さだと思うんですよね。負けず嫌いの子も多いですし、これでは引けないという気持ちを持って努力をできる子ばかりですから、そういう意味でも持ち直してくれるんじゃないかなとは思います。前向きに、自分たちの成長のために捉えていってくれるといいと思いますし、期待だけしていてもいけないので、それを引っ張っていきたいと思います。

MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)

――きょうの敗因はどこにありますか

全部自分たちのミスであったり、前半は守備で結構耐えていたんですけど、後半になって少しメンバーも変わってうまく対応できなかったり、はっきりとしたプレーが立ち上がりからできなかったです。そこから失点してしまったり、自分たちに原因があると思います。

――プレーしていてうまくいかなかった部分は何でしょうか

色々あるんですけど、後半の立ち上がりに押し込まれている時に、相手をひっくり返すくらいのプレーで立て直すことだったり、危ない場面が何度か続いていたのでそこで気を引きしめてやる部分とかです。

――前半には早い時間に先制点が決まりました。前半を振り返ってみていかがですか

前半も別に良かったと言えるわけではないです。一人一人集中して守備ができていたし、攻撃も早い時間で点が取れたので。攻撃もやりたいとこが前回よりはできていたかなと思います。

――後半は流れが停滞している印象でしたが

自分たちがはっきりしたプレーができなかったというのはさっきから言っている通りなんですけど、交代選手のプレーの特徴の意図を汲み取ってプレーすることだったり、状況に応じたプレーができなかったと思います。点を取りに行く姿勢も弱かったかなと思います。

――後半に追いつかれてからはどのようなことを意識してプレーしていましたか

もう1点追いつくしかないので、リスクを管理しながらという感じです。

――今回の結果で首位陥落となりましたが、東洋大戦に向けてどのようなことを修正していきますか

修正していくことはいっぱいあると思います。自力優勝は無くなってしまったので、下を向いている時間もないのでこの一週間でまた良い準備をしていかなければいけないなと思います。