雨が絶え間なく降りしきる中、関東女子選手権の決勝が行われた。連覇が懸る大一番の相手は、日テレ・メニーナ(メニーナ)。昨年の決勝と同じ顔ぶれとなり、今年も白熱した展開になることが予想された。スリッピーなピッチで戦いにくさもある中で、ア式蹴球部女子(ア女)は12分に先制。良いリズムで試合に入ることに成功し、後半にさらに1点を追加した。試合終了間際に相手にPKを与えたものの、2点を守りきり、関東女子選手権連覇を達成。今季2つ目のタイトルを手にした。
関東女子リーグ戦では、唯一土をつけられているメニーナ。今試合でリベンジを果たすべく、強い気持ちで試合に臨んだ。12分、MF柳澤紗希副将(スポ4=浦和レッズレディースユース)が左サイドでボールを持つと、ペナルティエリア外からシュート。「メニーナが食いついてこなかったので、フリーで良い状態で良かった」(柳澤)。鮮やかな弧を描いたボールは、キーパーの頭上を超えてゴール右隅に吸い込まれ、見事な先制点が決まった。しかし、相手も屈しない。迷いのないパス回しでボールを前に運び、ア女のゴールに襲い掛かる。37分には、フリーになった選手が反転して鋭いシュートを放ったが、これはGK木付優衣(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)の正面であった。関東女子選手権のここまでの戦いでは、一度も前半に得点できていなかったア女だが、今試合は早い時間で得点に成功。ア女らしいサッカーを貫き、1-0で前半を終えた。
今大会、2試合連続でロングシュートを決めている柳澤
48分、ピンチが訪れる。MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)がイエローカードを取られ、ペナルティエリアのすぐ近くで相手にFKを与えてしまう。キッカーのボールがア女のカベに当たってコースが変わり、ゴールポストを直撃。あわや失点という場面だったが、守護神・木付が懸命にボールをかき出した。さらにこの後のCKでは、相手のヘッドが良いコースに入ったが、DF陣の懸命な守備でなんとか失点のピンチをしのいだ。いつ相手に得点を許してもおかしくない時間帯が続いたが、この悪い流れを断ち切ったのはエースだった。68分、DF中田有紀(スポ3=兵庫・日ノ本学園)がクロスを供給。ファーサイドで待ち構えていたFW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)が、冷静にキーパーの位置を見極めて頭で合わせた。試合を決定付ける2点目が決まり、余裕が生まれたア女だったが、78分に相手にPKを与えてしまう。落ち着いて決められて最後の最後に失点し、2-1で試合を終えた。
試合終了間際、PKを与えてしまった
苦手意識のあるメニーナにリベンジを果たし、連覇を成し遂げたア女。「ここで満足しちゃいけないと思っている」と熊谷が話すように、本当の戦いはここから始まる。昨年はINAC神戸に大金星を挙げるなど、皇后杯で躍動したア女。今年もダークホースとしてなでしこリーグのチームから勝利をもぎ取れるか注目したい。関東の第1代表としての誇りを胸に、皇后杯に臨む。
(記事 下長根沙羅、写真 守屋郁宏)
スターティングイレブン
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エースの2発で逆転勝ち、決勝進出決定!/第40回関東女子選手権(2018.09.24)
第40回関東女子選手権 | ||||
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早大 | 2 | 1-0 1-1 |
1 | 日テレ・メニーナ |
【得点】 (早大)12’柳澤 紗希、68’河野 朱里 (大東大)78’菅野 奏音 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 木付 優衣 | スポ4 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 2 | 渡部 那月 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
DF | 32 | 小林 菜々子 | スポ3 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 23 | 源関 清花 | スポ3 | ちふれASエルフェン埼玉 |
DF | 3 | 中田 有紀 | スポ3 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 6 | 柳澤 紗希 | スポ4 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 15 | 冨田 実侑 | スポ2 | 岡山・作陽 |
→74分 | 33 | 蔵田 あかり | スポ1 | 十文字VENTUS |
MF | 5 | 安部 由希子 | スポ4 | 宮城・聖和学園 |
→59分 | 38 | 桝田 花蓮 | スポ1 | ちふれASエルフェン埼玉マリ |
MF | 7 | 村上 真帆 | スポ2 | 東京・十文字 |
MF | ◎11 | 熊谷 汐華 | スポ4 | 東京・十文字 |
FW | 10 | 河野 朱里 | スポ4 | 静岡・藤枝順心 |
◎=キャプテン 監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘) |
コメント
MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)
――今の率直なお気持ちを聞かせてください
優勝できて良かったなという安心感があります。
――今日の試合運びをどう振り返りますか
最近は前半で点を取るという展開になかなかできていなかった中で、今日は前半に1点取ることができました。入りとしては良かったと思います。
――立ち上がりから前線からのプレスが効いていました。かなり準備をしてきた部分ではないかと思いますが
そうですね。スカウティングやミーティングをやった時にどこで相手をはめに行くのかとか、どこがキーマンになっているのかということをしっかりチームで確認して、練習でも意識しながらやってきました。前半からそれを意識した良い入りができたというふうに思います。
――後半はファウルで止めるような場面も少なくなかったと思います。相手の変化は感じていましたか
前半に自分たちがうまくはめていた分、相手も対策してちょっとやり方を変えてきていました。それに自分たちが対応するのが少し遅くなってしまったという部分はありましたね。
――連覇を達成し、今年も関東の第1代表として皇后杯に向かうことができます
関東大会の優勝はチームの目標として掲げていましたけど、ここで満足しちゃいけないなと思っています。大事なのは本戦なので、ここからまた気持ちを切り替えてやっていかなきゃいけないなと思います。
――来週からは中断していた関東大学女子リーグ戦が再開しますが、強豪との対戦が続いていきます
今までは個でやってこれていた部分はありますけど、相手のレベルが上がるとそれも難しくなってくるので、チームとしてどう戦っていくかということになると思います。今回、相手のスカウティングをしっかりやって、相手に応じた戦いというものをできたので、それを関カレでも続けていければいいなと思います。
MF柳澤紗希副将(スポ4=浦和レッズレディースユース)
――優勝おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか
ほっとしているというのが一番です。
――試合全体を振り返ってみていかがですか
関東リーグ前期に、メニーナには3-1で負けていて、結構苦手意識がありました。スカウティングの人がちゃんと今回作戦を練ってくれたので、良い意味で受け身になって戦いました。(メニーナに)攻められることも多かったんですけど、しっかりした対応ができたと思います。
――作戦とは具体的にはどのようなものでしたか
メニーナは足元が上手いので、中盤3枚が顔出しがうまいのでそこのコース切りです。自分はボランチだったので声をかけて、徹底してやりました。
――柳澤さんのロングシュートで先制しました
結構、ああいうロングシュートを自主練でもしていたのでイメージ通りでした。メニーナも、思ったよりそこに食いついてこなかったので、フリーで良い状態で良かったです。
――ハーフタイムではどのようなことを話されましたか
スコア的には(1-0で)勝っていたんですけど、相手は絶対に何か変えてくると思っていました。変えてくる相手に対して、中でもっと早く気がついて修正できるようにしようと話しました。特に後ろから声を掛けようと話しました。
――後半開始間際には、危ない場面もありました。守備面を振り返ってみていかがですか
後半の立ち上がりも危ない場面も多くて、そこを防げたのは大きかったなと思いました。相手の顔出しが上手かったので、スリッピーなピッチに助けられた場面も多かったので、そこは今後の課題だと思います。きょうは結果が全てだったので、無失点で勝てなかったのは残念なんですけど、勝てたことは良かったです。
――来週から関カレが再開します
これから相手がどんどん強くなっていくと思うので、(相手に)研究もされると思います。中で自分たちが修正していって対応できるように、自分たち自身がもっと強くならなければいけないなと思います。受け身にならずに、積極的に勝ちにこだわっていきたいです。