【連載】インカレ直前特集『三連覇』第2回 高瀬はな×山田仁衣奈

ア式蹴球女子

 第2回は2年生対談。今季はCBとして出場しているDF高瀬はな(スポ2=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18)と、重要な局面で結果を残してきたFW山田仁衣奈(スポ2=大阪・大商学園)。さまざまなことを経験した1年を振り返るとともに、熱い思いも語っていただいた。

※この取材は12月15日に行われたものです。

「チームにどれだけ貢献できるかというのをこれまで以上に考えるようになった」(山田)

――まずはリーグ戦の振り返りからお願いします

高瀬 関東リーグ(関東女子リーグ戦)は9連覇っていう自分が入るずっと前から優勝していて、ことしも優勝するのが当たり前っていう雰囲気があって。でも勝つのって本当に難しいし、実際にそんなに簡単に勝てる訳ではないので、9連覇はすごいことだなと感じます。自分はあまり出ていないんですけど、こういう連覇が続いている中で勝てたというのは大きいことだなと思います。関カレ(関東大学女子リーグ戦)は逆にきょねんと同じ相手に負けてしまった(日体大戦:●0-1)ので、そこは悔しかったかなと思います。

山田 勝つことの難しさっていうのを感じた両リーグでした。関東リーグはほとんどがワセダより格下のチームで、そういう相手に対してどう戦うかというところでした。引いてくる相手に対してどう戦うかが難しかったと思います。インカレも2連覇中ということで同じような状況で相手が来ると思うんですけど、そこは難しい部分だなと思います。関カレについてはきょねん最終戦で日体大に負けたという悔しさもありましたし、優勝したいという気持ちはみんなあったと思うんですけど、また負けてしまって。勝ち続けることの難しさとかをあらためて感じました。

――6、7月ごろのシステムの変更について

山田 攻撃的になったとは思います。シャドーが2人に増えたので、FW的には関わりも増えて厚みも出たかなとは思います。でも1ボランチは結構負担が大きいのかな。運動量的にも。

――ことしのチームで特に意識していることはありますか

高瀬 監督からはハードワークしろっていうのはずっと言われ続けています。でもそれは言われなくても前提としてやっていかなくてはいけないことだと思いますし、きょねんとメンバーが変わってないとはいえども1年生とかが結構出ていたりとかはある中で、どんな人が出てもア女のサッカーはできるようにというのは意識していると思います。あと、きょねんと比べて攻撃的になったなと。今までは無失点勝利が多かったんですけど得点は少なかったかなと。接戦が多かったと思います。でもことしは失点してもそれ以上に得点できるという試合が多くて。点を取られてもはね返せる力が付いているのかなとは感じます。

――チームの強みは何だと感じていますか

高瀬 勝ち切るというところだと思います。皇后杯とかも先制される試合が多かったんですけど、失点してもそれ以上に点を取れるというのが今のア女の強みかなと思います。

山田 同じ人が出ている中で、きょねんよりももっとコンビネーションの部分とかでうまく合わせられているところが多いかなと思います。

――山田選手は関東選手権、山梨学院大戦(○3-2)で決勝点をあげていました

山田 失点が相手のCKからだったんですけど、得点した選手のマークが自分だったんです。それでまずいと思って(笑)。決めないとだと思っていたらCKでいいボールが来たのでもう触るだけだったんですけどしっかり決めることができたのでほっとしました。うれしいというよりかは「あぁ、良かった」って気持ちの方が強かったです(笑)。

――皇后杯は移動と試合、かなりきつい日程だったのでは

高瀬 自分はコンスタントに出ている訳ではなかったので、コンディションの維持とかは自分はできた方だと思うんですけど、スタメンでフルで出ている人のことを考えると本当に(笑)。毎試合すごいなという感じでした。

山田 移動してるだけでしんどいので(笑)。出てて、移動もしてだと本当に大変だったと思います。

――結果については

高瀬 INACは本当にうまくて(笑)、本当に技術に関しては全然及ばないなって思いました。でもあの時はメンバー全員が勝つって気持ちもそうなんですけど、やるしかないという感じで。試合の前に選手達で話し合って作戦を提案してそれをしっかり実践することができたので、チーム全員で取れた勝利だったかなとは思います。

これまでについて振り返る2人

――プロのチームとの対戦で感じた違いは

高瀬 皇后杯に関しては1つ1つの試合がとてもレベルが高かったです。自分は外から見ていることが多かったんですけど、それでも普段やれている選手達があそこまでやっても勝てないという感じで。もっと上のレベルにいくには技術面でもそうだし、フィジカルの面でもまだまだ課題があるなと感じました。ア女は大学の中ではフィジカルとかは強い方だと思うんですけど、なでしこリーグのレベルになるとまだまだだなと感じました。

――この経験をどう生かしていきたいですか

高瀬 これまで通りの練習だったり取り組みでは追い付かないなと思いましたし、日本代表の人もかなり出ていた試合だったのでそれを肌で感じることができたのは良かったなと思います。

山田 普段の練習を質がまだまだ足りないんだなというのは痛感しました。INACとかと皇后杯で戦った時に出せた力を普段の練習の時から出せるように練習の質をもっと高めていかないといけないなと思いました。

――2年目のシーズンということで昨年度との違いはありましたか

山田 自分はきょねん、何が何の試合なのかちょっとわかっていなくて(笑)。関東リーグと関カレの差がわからなかったんです。

高瀬 自分は(高校の時から)関東リーグに出ていたんですけど、立場が違いすぎるというか。常にチャンピオンでいないといけないところからの景色は本当に違くて。同じリーグ戦なのにこんなにも違うのかと感じていました。きょねん1年間は1年生だし、チャレンジできるという部分が大きくて。ミスを恐れずにやっていこうと、自分を中心に考えることが多くて。でも2年生になると後輩も入るし、ある程度チームのために行動しないといけないという責任感というか、客観的にチームを見ることができるようになったかなと少し思います。

――山田選手は、試合の種類はわかるようになったということで(笑)。

山田 わかるようになりました(笑)。なのでの時期のこの試合は勝たないといけないなという気持ちは1年生の頃よりも大きくなりました。あと1試合1試合の大切さっていうのを2年生になってわかった気がします。

――今シーズンはどんな1年でしたか

高瀬 ことしはポジションも変わったということもあって慣れない部分とかも多かったです。もともと出ている選手がいなかった時とかに出たりというように出場機会はあったんですけど、なかなかその機会をものにできなかったことが多くて、個人的には悩む時期が多かったかなとは思います。

――DFはいままでもやったことは

高瀬 少しはあったんですけど、1年通してというのはなかったですね。きょねんと比べたら出場機会も減ったし、その中でどう試合勘やコンディションを維持するかというのは難しい部分でした。

――山田選手はいかがでしたか

山田 自分も今まで途中出場で後半の最後15分くらいでるという感じなんですけど、INAC戦(○1-1、PK4-1)で特に付いたことがあって交代で出る選手って本当に大切なんだなって思って。それまで中で頑張ってきた選手と交代して、託されてるというのもあるし、試合の流れも変わるし、責任がすごいあるなとあらためて感じました。そのあとのリーグ戦ではその短い時間の中でFWとして点を取るだとか、チームにどれだけ貢献できるかというのをこれまで以上に考えるようになったのは良かったかなと思います。

――気付いたきっかけはいつだったんですか

山田 延長前半終わって入ったんですけど、戻ってきた時のみんなの疲れている感じがすごくて、本当にがんばっているなと。外から見ていてもわかったんですけど、「これでもし出る機会があったらこれ以上のことをしないといけないな」と思って。普段の試合でもそのように思って準備するようにはしています。

「自分たちは似ていると思う」(高瀬)

――それではここからは少し話題を変えて。お互いについて紹介をしていただけますか

高瀬 にいなはシュートがうまい。自分はとても下手なのでいつも教えてもらっています(笑)。あとは、プレーに独特のリズムがあって、自分がボランチをやっている時に1個前にいるんですけど、すごいイメージの共有がしやすいなとは感じます。普段は自分と似ているなと感じます。一緒にいることが多いんですけど、色んなところで似てるって言われるよね。

山田 同じことしちゃう。

高瀬 食べるものとかがすごく一緒で、だからいやすいですね。バイト先も一緒なので(笑)。でも気使わなくていいのでとても楽です。

山田 サッカーの時、本当にイメージが合うんです。ボランチにいてくれると本当にやりやすくて。縦パスとか欲しい時にくれるし、フォローとかもいて欲しいところにいてくれるのでとてもやりやすいです。あと、CBにいる時はトップとの関わりは少ないんですけど、前の選手をしっかり見てくれているので、楔(くさび)のパスを入れてくれるだとか、ビルドアップがうまいなって思います。普段も周りのことを良く見ててくれてるなって思います(笑)。なんでも気付いて、自分だけじゃないんですけど色んな人の相談にのったりとかしてくれてて。頼りになる人だなって思います。

――お2人にとって4年生はどんな存在ですか

高瀬 4年生は試合に出てる人がすごく多くて、チームの最高学年としての責任もあるし、試合に出ているという責任もあるし、キャプテンとかが特になんですけど。あれだけのハードスケジュールの中でコンスタントに試合に出続けて勝ち続けているというのは本当に頼もしい存在だなと思います。すごくプレーや行動で示してくれる部分が多いなと思います。

山田 サッカーもそうだし、自主練のところとかですごいなと思います。出てる選手でもものすごく練習している姿とかをずっと見ていたので。練習に取り組む姿勢もそうですし、出てる選手ってこうでないといけないんだなって教えてくれる存在です。

「字が綺麗」と高瀬さんも絶賛。マジックペンを使いこなしてフォント風に仕上げていました

――ア女はどんなところですか

高瀬 自由な人が多いなって。日本一のチームって聞くと普通まとまりがあるんだろうなって印象とか持つんですけど、ア女は全くなくて(笑)。すごくそれぞれが個を持っていて、サッカーではそれを生かしたプレーにつながっていると思うし、それがオフになるともう(笑)。自分が持っていない部分を持っている人がたくさんいるので刺激にはなります。

山田 キャラが濃いよね。『主役がいっぱい』みたいな(笑)。

――もしもこの人に1日だけなれる、と言われたら誰になってみたいですか

高瀬 難しい質問(笑)。なりたい人はいっぱいいます。にいなは自分と似てるのでならなくていいかなって思います(笑)。

山田 自分も(高瀬選手になるのは)いいです(笑)。

高瀬 サッカー面でいったらスピードがある選手。自分はスピードがないので、そういう選手になってみたいです。

山田 トミー(DF冨田実侑、スポ1=岡山・作陽)とかいいよね。

高瀬 トミーはいいね、まっちゃん(MF松本茉奈加、スポ1=東京・十文字)とかもね。

山田 フィジカルとかもすごいんですよ。ぴょんぴょん飛んでて(笑)。

高瀬 どこまでも走っていけちゃう感じがうらやましい。オフ面だったら誰だろう(笑)。それだったらちーさん(DF奥川千沙副将、スポ4=静岡・藤枝順心)かな、食べても太らない(笑)。それだけじゃなくて、常にパワフルなんです。自分とかはサッカーじゃなかったらスイッチがオフというか、ぼーっとしてるんですけど。ちーさんは全ての行動に活気が溢れてるというか(笑)。元気だなと思って、あのエネルギーがどこから湧いてくるのか知りたいです。

山田 自分はトミーの速さが欲しいです。あのスピードとバネ感を体感してみたいです。でも自分に戻った時に「遅い!」ってなりそう(笑)。

高瀬 きついね、それ。

「チャレンジャーとして必死に戦って1つ1つ勝っていけたら」 (高瀬)

――それではここからはインカレについてお聞きしていきます。組み合わせについてはいかがですか

山田 どういうサッカーをするかわからないのと、インカレは何が起こるかわからない大会なので、1つ1つしっかり勝ちにこだわってやっていかないとだなと思います。

高瀬 自分たちは対戦したことない相手なんですけど、相手はワセダだからという感じで作戦とか練ってくると思います。サッカーって失点しなければ負けないので、引いてくる相手が多くて、苦しめられている部分が多いので、知らない相手にもア女らしさを存分に出していけるように練習の時からしっかり意識してやっていかないといけないなと思います。チーム全員で共有していかないとだなと。相手が誰だろうとア女らしさを出せれば優勝できると思います。

――キーマンになると思う選手は

山田 みっちゃん(MF中村みづき副将、スポ4=浦和レッズレディース)かな。どっかで何かやってくれる人だし、期待しちゃうんです。今回のインカレでもやってくれるかなって思います。

高瀬 みっちゃんもそうなんですけど、この子持ってるなって子がア女はすごく多くて。ことしで言えば真帆(MF村上真帆、スポ1=東京・十文字)。大事な試合で決めるイメージがすごくあって、期待は大きいですね。自分は守備面でサツさん(DF三浦紗津紀、スポ3=浦和レッズレディースユース)に期待しています。もともと本当にすごかったんですけど、ユニバーシアードから帰ってきてからさらにパワーアップしていて。プレーの質がちょっとア女では1つ2つ抜けているなと。本当に安心して見ていられます。

――このチームでやるのも最後ですね

山田 早かった、この1年。

高瀬 はやくはなかった(笑)。

山田 始め遅いなって思ってたら、夏合宿終わったあたりから一瞬でした。

高瀬 自分は長かったんですけど、その分色んなことを感じたり学んだりしてやってきたのでそれを全部ぶつけるところがインカレかなって思っています。やっぱりそこで結果が出ないと1年間が無駄になるわけではないですけど、自分の成長を感じられるような大会にしたいなと自分の中では思っています。

――残りの2週間でどのような準備をしていきたいですか

山田 まずはケガをしないってことですかね、ことしケガ多いんで。なので、それが一番です。この最後の1週間が結構濃い時間になると思います。4年生とやるのも最後ですし、盗めることは盗んでいきたいですね。あとチームとしてやりたいことがかたちになるのがインカレだと思うので、それに向けて自分のこともそうですけど、チームがどうまとまっていけるか、そのために自分は何ができるかというのを考えて行動していきたいと思います。

高瀬 1、2週間で技術とかは伸びないと思うし、この短い間にできるのはイメージの共有だったりとか、チームとしてのコミュニケーションをとにかくたくさんとることかなと思います。ここまできたらサッカーの準備もそうですけど、気持ちの整理というかプレー以外の準備がすごく大切かなと思います。コンディションとかも整えて最高のパフォーマンスを出せるようにしないとだなと。普段の何気ない行動とかでも試合を意識してやっていくことが大事かなと思います。

――では最後に一言ずつ意気込みをお願いします

山田 個人としては少ないチャンスをしっかりものにして得点を取って、チームに貢献したいなと思います。チームとしては3連覇がかかっているので、ア女としては初めての快挙を達成できるように全員で戦っていけたらいいなと思います。

高瀬 個人的にはどういう状況になっても勝利に貢献できることをやっていかないといけないなと思っています。サポートの面でもそれを意識してやっていきたいです。チームとしてはやっぱり3連覇がかかっていますが、チャレンジャーとして必死に戦って1つ1つ勝っていけたらいいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 篠原希沙)

『報恩謝徳』なんと座右の銘まで一緒ということが発覚。2人で仲良く書いてくださいました!

◆高瀬はな(たかせはな)(※写真右)

身長160センチ。前所属・ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18。スポーツ科学部2年。穏やかな印象の高瀬選手ですが、言葉の端々から内に秘めた熱い思いを垣間見ることができました。悩むことも多かったという今シーズンですが、その思いをパワーに変えてインカレで最高のパフォーマンスをしてくれることでしょう!

◆名前(やまだにいな)(※写真左)

身長165センチ。大阪・大商学園高出身。スポーツ科学部2年。高瀬選手も絶賛する精度の高いシュートでチームを窮地から救ってきた山田選手。インカレでも試合の流れを変え、チームに勝利を引き寄せるプレーを見せてくれるはずです!